装者の男女恋愛が見たいッ!戦姫絶唱シンフォギア SLS   作:ふみー999

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どうもふみー999です。
シンフォナーレの開催が近づいてきていますね!何故アズレンの8周年イベントと同じ日になるんだとちょっと自分が呪われているのではないかと思ってしまいます。参加される方は楽しんできてください!
ナーレの響のイラストめちゃくちゃ可愛くて好きです。他の装者たちも可愛いけど特に響が可愛かった。

今回ですが、X(旧Twitter)のフォロワーさんにエキストラとして参加してもらいました!快く承諾してくれた空さん、地獄猫さんありがとうございました!

それと今回、ちょっと表現方法冒険してみました。読みづらかったら申し訳ありません。
flight feathersの魅力を伝えようと思ったらこうなってしまいました。(-_-;)
というわけで、どうぞ!


第36話 dinuovo:羽々たく翼

 ステージに差し込む一条の光に照らされてお嬢が舞台袖からゆっくりと歩み出てきた。

 シンセサイザーで奏でられるイントロと観客があげる割れんばかりの歓声が俺の体を内側まで震わせる。

 お嬢の歩みに淀みはなく、やがてステージの中央で立ち止まり手を掲げた。黎明から夜が明けるようにステージがライトアップされてその顔を照らす。そこに憂いはもうない。

 

Deja-vu みたいなカンカク 制裁みたいなプラトニック

かさね合うメモリー 届いて Wishing

 

 銃声と爆発音が響く湾岸エリア目掛けて、私は最短でまっすぐに一直線に駆け抜けた。駆けつけた先では城のように巨大で砲台を携えたノイズが一体、そして小型のノイズが数えるのも億劫になるほど辺りを埋め尽くしている。そして、そんなノイズ相手にガトリングとミサイルで応戦している少女が一人いた、クリスちゃんだ。

 クリスちゃんは両手にガトリングを携えて小型のノイズたちを蹴散らしていく。けれども、巨大ノイズの砲弾に吹き飛ばされてしまった。

「っハァ!!!」

「ッ!?」

 一気に駆け抜けて、立ち上がる前のクリスちゃんを襲撃しようとしていたノイズに蹴りを入れて粉砕する。

 次いで、右手のガントレットを引き絞り、胸の熱を握り締めて突貫の姿勢に構える。アームドギアのエネルギーを推進力に超高速でノイズの群れへと突っ込んだ。

 

重力みたいに惹かれて 1ミリのズレもなく

ハートのどまん中を 射抜いた Song

 

 紡がれる歌は繊細で、どこか儚げだ。けれども歌うお嬢の声に力が籠っている。俺は当然のごとく、両手に持ったペンライトを掲げて振るう。

嗚呼、これだ。久しく経験していなかったライブ特有の充実感に浸る。全身をスピーカーから鳴り渡る音の波が駆け巡り、歌が染め上げていく。

 客席の方に一瞬目を向ければ、皆それぞれ思い思いにペンライトを振って応援している。その顔はみんな笑顔にあふれていた。それが我が事のように嬉しかった。やはりお嬢の歌には、人を幸せにする力があるのだと世界中に向けて自慢してやりたい。

 

抱きしめて…この罪を… 両手すりぬけてゆくプロミス

お願いMy star…どうか今… 旅立つツバサの 風をAh 奏でて

 

 けたたましい轟音を響かせてノイズたちを貫き、一気に倒す。だが、動きが止まった一瞬の隙を巨大ノイズは見逃してくれなかった。

「ッ!」

 背中に目掛けて放たれた砲弾のようなノイズ。しかし、それは私に着弾する前に空中で塵となった。横から飛んできた弾丸の雨に撃ち落とされたのだ。

「貸し借りは無しだ!!」

「ッ!クリスちゃん!」

 銃弾の雨が飛んできた先を見ればクリスちゃんが大きく跳躍して後退しながら叫んでいた。彼女が助けてくれたのだと分かり、思わず笑顔を作ってしまう。

 

さぁStarting! 始まるシンフォニー 伝説は此処からと

この光のLiveはシンクロニシティ

 

 サビに入り、お嬢も観客もボルテージは最高潮に達している。歌うお嬢も、誰も彼もが高揚していた。そんな中で俺は目を見開いて立ち尽くしていた。見逃さなかったからだ。ライトに照らされたステージで煌めいたほんの一瞬。歌いながらお嬢が笑った。剣に感情など無いと言っていたあのお嬢が本当に楽しそうに歌いながら笑ったのだ。

気付いてしまえばもう、目が離せない。いや、もう目を離したくない。瞬きすらせずにすべてを目に焼き付けたい。この瞬間が永遠に続いてくれと願わずにはいられなかった。

 

さぁAmazing 奇蹟起こそう 震えるくらいでいい

たぶんそれだけの物語なんだ 信じてMy road

 

 蹴り上げ、撃ち込み、ノイズを吹き飛ばす。撃ち込まれる砲弾を避けて高く飛ぶ。

「ハァアアアアアアア!」

もう一度ガントレットを引き絞り、着地と共に地面に打ち込んだ。衝撃が地面を伝い、巨大ノイズの足元を崩す。

 間髪入れずに再び右手のガントレットを引き絞る。今度は肘を越えて限界を超えて最大限にまで力を圧縮する。そして大型ノイズ目掛けて一気に飛び込んだ。邪魔をする小型ノイズたちはクリスちゃんがガトリングで露払いをしてくれる。

「うぅおおおおりゃああああ!!!!」

 裂ぱくの気合と共に拳をノイズにねじ込む。そしてガントレットにため込んだエネルギーを一気に開放し、パイルバンカーのように撃ち込んだ。

 撃ち込まれたノイズは内部から破裂するように爆発し、やがて塵となって跡形もなく消えていく。

 ようやく終わったのだと響は灰燼の中で肩で息をしながら微笑むのだった。

 

さぁStarting! 始まるシンフォニー 伝説は此処からと

この光のLiveは シンクロニシティ

 

 極彩がステージで歌う彼女を照らす。それはまるで祝福を受けた聖女のように、世界の全てから愛されているかのような神々しさすら感じられた。この空間全てが今はお嬢のためにだけ存在している。青一色に塗りつぶされた世界。

 空へと飛ぶ鳥のように、世界の全てを魅了して惹きつけて、お嬢はステージに羽ばたき舞う。見上げる誰も、そんな彼女へは手は届かない、触れられない。当然俺の手も——

「……遠いな」

 それでも手を伸ばして、小さく見えるお嬢にそっと指先を重ねた。そして自嘲げに笑った。

 遠くていい。そのまま、羽ばたいて行け。誰の手も届かないくらい高く、もっと高く歌と共に。

 それが一番、君を輝かせるのだから。その夢が一番、君を幸せにするのだから。

 滲む目をこらして俺はこの光景を目に焼き付けた。一生絶対に忘れないために。

 

さぁAmazing 奇蹟起こそう 震えるくらいでいい

たぶんそれだけの 物語なんだ 信じてMy road

 

 私が歌い終わり、曲が止まる。すると観客席から歓声と喝采が会場全体に鳴り渡った。胸を通り抜ける充実感と清々しさを感じて、目を閉じ大きく深呼吸をする。

「ありがとうみんな!今日は思いっきり歌を歌って気持ちよかった!」

 私の言葉に観客のみんなが一層大きな声で返してくれる。そんなみんなに伝えたくて息を整える。

「こんな思いは久しぶり。忘れていた。でも思い出した!私はこんなにも歌が好きだったんだ。聞いてくれるみんなの前で歌うのが大好きなんだ」

 楽しかった、本当に楽しかった。夢中になって歌うことが、それを聞いてくれた人たちが笑顔になってくれることが、どうしようもなく楽しくて、幸せだった。だからもっと、と欲が出てくる。もっとこの幸せを感じたい。 だからこそ、勇気を振り絞ってみんなに伝えなければいけない。

 私はマイクを持ち直し、目をそらさずに話を続ける。

「もう知っているかも知れないけれど、海の向こうで歌ってみないかってオファーが来ている。自分が何のために歌うのか、ずっと迷ってたんだけど。今の私はもっとたくさんの人に歌を聞いてもらいたいと思っている。言葉は通じなくても歌で伝えられることがあるならば、世界中の人たちに私の歌を聞いてもらいたい」

 もっとたくさんの人たちとこの幸福を一緒に感じてきたい。私の歌を世界中に届けたい。そんな夢が胸の内から溢れてきて止められない。それをみんなに伝えたくて、万感の思いを込めて言葉を紡ぐ。

「私の歌が誰かの助けになると信じてみんなに向けて歌い続けてきた。だけどこれからはみんなの中に自分も加えて歌っていきたい。だって私は、こんなにも歌が好きなのだから」

 けれども、夢への高揚感と同時に不安も感じてしまった。大切な片翼を自分のふがいなさで失って、何も悪くない幼馴染に辛く当たった。そして、防人としてノイズと戦い人を守る使命がある。

こんな私に、この夢を追いかける資格などないのかもしれない。それでも——

「たった一つの我が儘だから聞いてほしい。許してほしい……」

 それでも、この夢を叶えてみたいのだ。

 

 

—許すさ、当たり前だろ?—

 

 

 立ちすくむ私の背を押すように奏の声が聞こえた気がした。俯きかけた顔を上げると逆光のシャワーが目に飛び込んでくる。それはスポットライトと客席に灯る無数のペンライトの光。その全てが夢に飛んでいけと、夢へと羽ばたいていく未来を照らしてくれている。

 遅れて、たくさんの声が鳴り渡っていることに気が付いた。頑張れ、応援している、楽しみにしている。私の夢を否定する人はだれ一人としていなかった。

「……ありがとう」

 あふれ出す涙を止められなかった。震えてうまく動かない唇を動かしてそれでも応援してくれるみんなに感謝の言葉をなんとか伝えた。嗚咽を押し殺して、空を見上げる。ねえ奏、どうか見ていて。私この夢を叶えてみせる。だってこんなにもたくさんの人が一緒にこの夢に羽ばたいてくれるのだから。

 

 

 

 

—たった一つの我が儘だから聞いてほしい。許してほしい……—

 

 お嬢の言葉に大歓声が鳴り渡った。会場全体が風鳴翼の海外進出を心の底から応援するべく声を張り上げている。そんな中で俺は固まったまま動けなかった。

「姐さん、見に来てくれたんですね……」

 震える唇でかすれた声を出す。聞き間違えなんかじゃない。大歓声の中に奏の声が聞こえた。

「今の言葉、絶対にお嬢にも届きましたよ……だって見てくれよ……姐さん……お嬢が……やっと夢に飛べるよ……ようやく夢に……飛べたよ……」

 瞼をぎゅっとつむり、あふれ出るものを堪えようとしたけれど無駄だった。次から次へと涙があふれ出して止まらない。

「あんなに嬉しそうにさ……あんなに楽しそうに……本当に……本当に……」

 鼻をすすって、袖で無理やり涙をぬぐう。それでもまだ止まらない。呼吸すらうまくできなかった。

「ずずっ……あ゛~」

 空を見上げてうめき声をあげた。もう無理だ、これは一向に止まりそうにない。止まらないならほっといて、お嬢を見よう。

 ステージに目を向ければお嬢もまた、涙を流していた。

 幼い頃、お嬢は俺やお袋、八紘様を相手によく歌を聞かせてくれていた。歌を人に聞いてもらえるのが嬉しいのだと、大きくなったら歌をたくさんの人に届けたいと、かつてのお嬢は夢に向かって羽ばたいて輝いていた。けれども羽ばたいていた羽根は、辛い絶望を前に涙で濡れて飛び立てなくなっていた。

 それが今日、ようやく羽ばたいたのだ。この日をどれだけ待ち望んだか、どれだけ願い続けたか……

「やっぱり、そこがあんたの居場所だよ。お嬢」

 もう一度、涙をぬぐってステージを見上げる。自然と口角が上がった。そして、誰に届くでもない言葉を呟いて愛しい歌女を見つめ続けていた。

 

 

 

 

 盛り上がる会場を後にして、トニー=グレイザーは一足先に帰路へとついていた。誰もいないロビーを歩いていると後ろから声をかけられた。駆け足でやってきた緒川だ。

「ミスターグレイザー!」

「君か、少し早いが今夜は引き上げさせてもらうよ。これから忙しくなりそうだからね」

 グレイザーが声をかけると、その言葉の意味を理解した緒川は姿勢を正し、美しい姿勢で頭を下げた。

「ッ!風鳴翼の夢をよろしくお願いいたします」

「ハッハッハ」

 良いものを見ることができたと満足気な表情を浮かべてグレイザーは笑い、会場から出て行った。その姿が見えなくなるまで緒川は頭を下げ続けるのだった。

 

 

 

 

 ノイズとの戦いの後、クリスは苛立ちをぶつけるように裏路地に置かれていたゴミ箱を蹴り飛ばしていた。

「あいつは敵だぞ……なのにどうして助けちまった……」

 それでも苛立ちが収まらず壁に拳を打ち付けた。立花響は戦っていた相手なのだ。倒す相手でしかないというのに、気が付けばノイズの攻撃からかばってしまっていた。

分からない、何もかも。何が正しいのかも。自分が何をしたいのかすら。頭が混乱して立ってすらいられなかった。

「ちくしょう、フィーネ……ちくしょう……」

 道を示してくれる人はもういない。どうしたらいいのか分からずクリスはただその場にうずくまるしかなかった。そんなクリスを隠すように月は雲に覆われていった。

 

 

 

 

 重い足取りを引きずって、深が観客席に着いたのは翼の曲が終わったタイミングだった。会場は熱気に包まれ、誰もが幸せそうに翼へとエールを送っている。けれども、深の視線はステージとは別の場所を漂っていた。

 今先ほど入ってきた入り口から、中央の通路を通って左へ手前から3列目。2年前に身重の母の手を引いて歩いた道のりに昔の自分の姿が幻のように浮かんでは消えていった。そして、深の視線はあの日の席で止まった。

「母さん!!やっぱりすごいや翼さんは!」

 そこには中学生くらいの男の子がいた。隣にいる一緒に来た母親に、興奮した様子で話しかけていた。片方の手で疲れて眠ってしまった女の子を抱きしめながら母親は優しそうな笑みを浮かべ少年の話を聞いていた。

 虚ろな目でその家族を見つめたまま、深は自分でも無意識のように片手をあげて手を伸ばそうとする。

 

—たった一つの我が儘だから聞いてほしい。許してほしい—

 

 その時、翼の声が聞こえてきた。その言葉を聞いて深の動きが止まる。中途半端にあげられた手。見開かれた瞳孔。やがてそれらは力なく降ろされて、閉ざされた。

「……」

 伏せがちに目を開けると深はそのまま何も言わずに会場を後にした。

 

 

 

 

 響がライブ会場に到着したときにはすでに全てのプログラムが終了した後だった。

「うぅ~間に合わなかったか~」

 すでに会場からはライブ終わりの観客たちがぞろぞろと出てくる様子を眺めながら響はガックシと肩を落とした。覚悟していたこととはいえ、もしかしたらワンチャンあったかななんて考えていたのだが、現実はそう甘くはない。

「とりあえず、未来や深君と合流しなくちゃ」

 気持ちを切り替えて未来と深の姿を響は探し始める。しかし、どこを見渡しても観客が溢れていてこの中から人を探すのは困難だった。

「う~ん、この中から見つけるのは骨が折れそう……ってあれ?」

 ふと人混みの中を探しているとやたらと目立つ青い法被が目に入った。

「空さん~~お゛つ゛か゛れ゛さ゛ま゛で゛し゛た゛~~~~もうね、見ました?見ましたよね!?サビのところでおじょ……翼さんめっっっっちゃいい笑顔で歌っていてもう無理マジでね!もうね!!あれはずるいってね!!!泣いた!!もう俺泣きましたよ!!号泣ですよ!!!あ゛!!地獄猫さん!!!(ガシッ!!)よ゛か゛っ゛た゛!!もうね、セトリも完璧でした!!!セトリがね!!!あ~駄目だ語彙が死んでいる!!!!」

 ぬいぐるみを持った人物と熱く語り合い、緑色の法被を着た年上男性と熱い抱擁を交わしながら涙を流している流生がいた。

「……よし、見なかったことにしよう」

 その方がお互いのためだと即座に判断した。響は気を取り直して再び深たちを探し始める。とはいえ、あの例外を除けば見つけるのは無理だと諦めそうになった。

「あ、いたいた。響ちゃん」

 そんな時、後ろから肩を叩かれて振り返るとそこには深と未来がいた。どうやら向こうから探してくれたようだ。

「深君、未来~よかった、もう会えないかと思ったよ~」

「そんな大げさだなぁ。深さんから聞いたよ?お疲れ様、響」

「うぅ、私も翼さんのステージを見たかったよ~」

 未来からのねぎらいの言葉に思わずため息をついてしまう。どうせだったら私も深君と一緒にライブを楽しみたかった。それなのにノイズときたらこのタイミングで現れるとは。やはり自分は呪われているのかもと響は思わずにはいられなかった。

「すごく良いライブだったよ。ね、深さん?」

「え?……あ、あぁ、そうだね」

「?……二人ともずるい~」

 未来からの問いかけに対する深の反応が一瞬、変だったように感じた。しかし、それ以上に翼の復帰ステージを見られなかったことがショックで響は肩を落として凹んだ。

「また次のライブを期待するしかないよ。その時は今度こそ一緒に行こう?」

 そんな響を見かねて深が項垂れている響の頭をポンポンと撫でてくれた。

「……約束だよ~」

 頭を撫でられたことに恥ずかしさを覚えて顔が赤くなるが、それ以上に手の感触が気持ちよくてにへらっと頬を緩めてしまう。

「ん゛ん゛っ」

 そんな様子の響を見て未来が咳ばらいをする。深からちょっとしたスキンシップをしてもらうだけですぐに調子が戻ってしまう響のちょろさに少し呆れる未来だった。

 未来からの無言の忠告に正気に戻った響はわたわたと手を振って深の手から頭を離した。

「わわわっ、そ、そういえば深君。この人混みの中でよく私のことを見つけられたね!」

 そして、恥ずかしさをごまかすために話題を逸らす。深は特にその様子を気にせず質問に答えた。

「まあ、それはね、トリックがあるんだよ」

 そう言って自慢げにポケットからスマホを取り出すと画面を響に見せてきた。画面には会場のマップが映し出されており、今響がいる場所に赤い点滅が映し出されていた。

 その画面に響は見覚えがあった。

「それって確かクリスちゃんと初めて会った時に使っていたのだよね?……あっ!もしかして」

 そう言って響はポケットの中を探す。すると探し物はすぐに出てきた。それは出発前に深から渡されていた一発の弾丸だった。響が弾丸を取り出すと深は微笑みながら頷いた。

「正解。終わった後に会場周辺が混雑するのは分かっていたから。すぐに合流できるように渡しておいたんだ」

「すごいですね。この弾丸一つで発信機になっているんですか?」

 未来が興味深げに弾丸を眺めていると、深には珍しく饒舌に我が子を自慢するように話し始めた。いい質問をしてきた生徒を相手にするようにピンっと指も立てている。

「弾丸が、というよりも中に詰めているナノマシン一つ一つが発信機になっているんだ。着弾と同時に相手に付着するようにしていて、一つでも付着すれば相手を追跡できる。肉眼では視認することはまずできない大きさだから、相手は発信機を取り付けられたと認識することすら……不可能……」

「深君?」

 途中まで得意げに話していた深だったが、途中から言葉が尻すぼみに小さくなっていき、ついには押し黙ってしまった。そして、自分の首をそっと触れた。

 不審に思った響が声をかけるが深は目を見開いたまま、弾丸を見つめ続けて押し黙っていた。まるで気づいてはいけないことに気づいてしまったかのようだった。

「……ごめん、響ちゃん、未来ちゃん。行かなくちゃいけないところが出来たみたいだ」

 数十秒押し黙った後、深は絞り出すようにそうつぶやいた。

 




最後までお読みいただきありがとうございました。
当初そこまでするつもりはなかったのに流生のギャグ適性がどんどん上がっていってしまうのは何故なのか……
感想、評価、お気に入り登録、心からお待ちしております!
次回も頑張って書きます!!
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