装者の男女恋愛が見たいッ!戦姫絶唱シンフォギア SLS 作:ふみー999
今回もいやはや遅くなり申し訳ございません。
描きたいイラストがあったのとダンスの発表会近くて練習に時間を取られておりました。
言い訳ですね……はい……
それはともかく、実は仙台で11月にシンフォギアオフ会やろうと話が上がってきていました。めっちゃ行きたい!詳しくはTwitterまで~
まあそんな話は置いておいて最新話どうぞ!
フィーネの根城がある森は朝の静寂に包まれていた。鳥が鳴き、川のせせらぎが聞こえてくる。しかし、のどかな森の中には銃を携えたのどかさとは遠く離れた男たちの影があった。
そんな外の様子に気づくこともなく、城の中では櫻井了子が端末を操作している。画面に映し出されているのは融合症例第一号、立花響のデータだった。熱心にデータを閲覧する了子の後ろに特殊部隊が突入した。
「ッ!?」
異変に気付いた了子が振り返るのと、部屋の窓ガラスを叩き割って別動隊が突入してくるのはほぼ同時だった。男たちは了子に逃げる隙も与えずに即時に銃撃を始めた。了子もすぐにその場から逃げようとするが銃撃の一発が腹へと直撃し、衝撃のままにその場へと倒れ伏してしまう。
「グハッ」
腹から血を流し、痙攣を起こしながらも了子は自分を撃った男たちをにらむ。するとサングラスをかけたリーダー格の男が銃を構えたまま了子へと近づいてきた。
「I've been too presumptuous. We shall make use of the research data concerning the holy relics.(手前勝手が過ぎたな。聖遺物に関する研究データは我々が活用させてもらおう。)」
「Once you're ready to skim it off, you're no longer needed. You're thorough…….(掠める準備が出来たら、あとは用済みってわけね。徹底しているわ……)」
血の味がする喉を振るわせて了子はその男へと言葉を返す。男は了子を足蹴にし、仰向けに寝転がせた。そして腹の傷を確認してほくそ笑む。弾丸は内臓を貫いている。どう見ても致命傷だった。
「……ッ!」
かすれる意識の中で了子は何かを決心するように目を見開き、自分の傷口へと手を当てた。すると、青白い光が傷口に向かって収束するように輝きを発する。
突然の行動に男は警戒し、部下たちも銃を構える。
「グッ……アァ!!アアアア!!」
苦悶に絶叫を上げた了子の腹に何かが侵食していく。光が収まると了子は幽鬼の如く体を起こした。
「That's typical of the low-class U.S. government, deliberately leaving traces behind as they maneuver.(それも、わざと痕跡を残して立ち回るあたりが、品性下劣な米国政府らしい。)」
致命傷を食らって生きも絶え絶えだというのに、了子の眼には不気味さが映っていた。リーダーの男もまだ終わっていないと理解し銃を構える。
「Uncle Sam, a greenhorn who hasn't even glimpsed the depths of black art—(ブラックアートの深淵を、覗いてすらいない青二才のアンクルサムが——)」
ゆらゆらと力なく立ち上がると見下すように了子は男たちをにらみつける。
「Fire!(撃てッ!)」
男の号令と共に再び銃声が森に響く。室内に鮮血が舞い、男たちの怒声が轟く。そして一分も立たないうちにそれらは全て無くなった。
戦いが終わった後に立っていたのは自分と男たちの血で体を染め上げた了子、唯一人だった。
「……」
血を流しすぎて朦朧としながら、了子は床に転がる人間だったものをしばらく見下ろしていた。
「……せんなきことを」
目を細め、自分を嘲るように吐き捨てると、了子は血が流れる自分の腹を抑えながら動き出す。
深の遺体はどんな姿になってしまったのか、とふと考えてしまった自分を振り払うように。
放課後、職員室への提出物を届け終えた響と未来は廊下を歩いていた。外からは合唱部が歌う校歌が聞こえてきた。
「———♪——♪」
「何?合唱部に触発されちゃった?」
その歌声に合わせて鼻歌を歌い始めた響に未来は尋ねた。
「う~ん。リディアンの校歌を聞いていると、まったりするっていうかすごく落ち着くっていうか。みんながいるところって思うと安心する。自分の場所って感じがするんだ。入学してまだ二か月ちょっとなのにね~」
窓の外を響は静かに見つめる。どこまでも澄んだ青空と放課後の穏やかな風景がそこには広がっていた。
あの頃、学校は傷つけられる場所だった。未来と一緒にいるときと、深君と一緒にいる放課後だけが楽しみで、できることなら一秒でも早く一日が終わって欲しいとすら考えていた。だから、学校がこんな風に安心できる場所だって思える今がとても幸せなことだなって思えた。
「でも、いろいろあった二か月だよ」
「うん、そうだね……」
未来の言葉にこの二か月のことを振り返って思い出す。
本当にいろいろなことがあった二か月だった。入学してすぐにノイズに襲われて、シンフォギアを訳も分からないまま身に纏ってノイズと戦った。それから、二課に協力するようになって翼さんとぎくしゃくして、師匠と特訓して強くなった。ついでに特撮が若干詳しくなった。
そして何より、深君と再会できた。
(深君にもこの歌を聞かせてあげたいな。)
色々な事があったけれど、今がこうして幸せなのだと思えたことを彼に話したい。そんな思いが自然と胸の内に湧いてくる。あの河川敷でそうしていたように、また普段の何気ないことを話したい。できることなら今こうして聞いているこの歌を深君に直接聞いてもらって、同じものを聞いて同じ瞬間を共有してみたいけれど……。
そうだ、夏の文化祭には深君も来てくれたらいいな。文化祭の日は一緒に屋台を回って、ステージを見て、そういう普通な青春が送れたら楽しいだろうな。一緒に回ってリディアンのことを、私のことを教えたいな。
「——今の私にはこんな風に大事に想える場所があるんだよってね」
「もう、相変わらずお熱ね。声に出ているよ?」
「うぇ!?ほんと!?」
頭で考えていたことが口に出ていたことを指摘されて響は驚きと羞恥で飛び跳ねる。そんな様子を呆れた様子で見ていた未来はジト目を作って続けた。
「ところでそれ、文化祭一緒に回ってほしいって響から言えるの?」
「うぐっ、それは……」
「今から誘う練習しておいたら?」
「う~ん、これは特訓が必要だなぁ~」
立ち止まって顎に手を当てて唸り声を響はあげた。恋愛の特訓となると誰を頼ればいいのか。戦い方を教わった流生は、長年翼さんへの片思い拗らせているから、頼りにならなそうだし……。
了子さんが前に話していた『気になる彼を落とす3億165万5722の方法』を借りるべきかな……。
「……」
そんなことを考えていると響は2課の通信機を手に取る。端末を操作してメールアプリを開くと受信したメッセージがないかを確認する。新しいメッセージは無く、今度は昨晩深に送った「大丈夫?」というメールを開いて眺め続ける。
「返信、来ないの?」
「……うん。忙しいのかな……」
スマホを隣から覗き込みながら未来は尋ねる。響はあからさまに落ち込んだ声音でそれに答えた。今まで返信がここまで遅れていたことはなかったから余計に不安になる。
響が落ち込んでいるのを見ると未来は露骨にため息をついた。
「まったく。響を悲しませるなって言ったばかりなのに、あの人は。またどこかにふらふら行ったんじゃないでしょうね」
「あはは……大丈夫だよ。勝手にどこかにもう行かないって約束してくれたし。きっと確かめなきゃいけないことに手間取っているだけだよ」
深に対して怒る未来を苦笑いでなだめて響は端末をポケットに仕舞った。そして未来をくるりと回してそのまま背中を押して歩きはじめる。
「さ、未来。私たちも帰ろっか。今日の夕飯は何にしようかねぇ~」
「ちょっと、響。押さないでよ~」
響は努めて明るい声を出して未来と話し続ける。そうしていると次第に未来も自分で歩き始め、響よりも先に進んでいった。
「……」
響は少しだけ立ち止まると空を見上げる。夕方の空にはまだ月は登っていなかった。
再会して深君が二課にいる理由も知った。家族を失って、奪った相手への復讐を誓っている。響にはそれが不安で仕方がない。いつかその暗い心に引っ張られて深が取り返しのつかないことになってしまうのではないかと考えてしまう。
「……大丈夫、だよね?」
自分に言い聞かせるように呟いて、響は未来を追いかけて駆け出した。
フィーネの館へと駆け込んだクリスが見たのは荒らされた部屋とそこに転がる死体の山だった。
「何が……どうなっていやがるんだ?」
おそるおそる死体の転がる部屋の中へと踏み入れていく。すると、自分が入ってきた入り口から物音がしてクリスは振り返った。
そこには険しい表情をした弦十郎と流生の姿があった。
「違う!あたしじゃない!やったのは……」
とっさに弁明しようとクリスが口を開くと銃を構えた黒服の男たちが突入してきた。弁明は無理かと判断したクリスがとっさに構える。しかし、黒服たちはクリスに構うことなく現場検証を始めた。
「誰もお前がやったなどと疑ってはいない。全ては君や俺たちの近くにいた彼女の仕業だ」
「へ?」
困惑するクリスの頭に手を置きながら弦十郎は説明する。その表情は険しいままだった。
「風鳴司令」
「……おう」
黒服に声をかけられて弦十郎はそちらへ歩いていく。見ると遺体の一つに紙が乗せられていた。そこには血で『I LoVE YoU SAYONARA』と書かれている。
「……ッ!?待った!!取るな!!」
黒服がその紙を手に取ろうとした時、少し離れたところにいた流生が何かに気が付き声を上げて近づいて行く。しかし、忠告も虚しく黒服の手は紙に触れ持ち上げてしまった。
すると紙に括りつけられていた極細の糸が引っ張られ、繋がれていた爆弾の信管を引き抜いた。
瞬間、部屋全体を覆うような爆発が発生する。部屋の中が黒煙に包まれた。
「どうなってんだよこいつは……」
黒煙が晴れ、自分の周りを認識できるようになったクリスは困惑気味につぶやく。大量の瓦礫が落下してきていたが周りにいた黒服は全員無傷であり、流生に至っては追撃を警戒して薙刀を構えて戦闘態勢をとっている。そして、自分は片手で瓦礫を持ち上げている弦十郎に抱きかかえられていた。
「衝撃は発勁でかき消した」
「そうじゃねえよ!なんでギアを纏えない奴があたしを守ってんだよ!」
自分を抱きかかえる腕を無理やり引っぺがし、弦十郎からクリスは距離を取ってにらみつける。
「俺がお前を守るのはギアのあるなしじゃなくて、お前ばかし少しばかり大人だからだ」
「大人……あたしは大人が嫌いだ!死んだパパとママも大嫌いだ!とんだ夢想家で臆病者、あたしはあいつらとは違う!戦地で難民救済?歌で世界を救う?いい大人が夢なんか見てるんじゃねえよ!」
「……大人が夢を、ね」
弦十郎の答えに怒りを隠さず、駄々をこねる子どものようにクリスはまくし立てる。
「本当に戦争を無くしたいのなら戦う意思と力を持つ奴らを片っ端からぶっ潰していけばいい!それが一番合理的で現実的だ!」
「そいつがお前の流儀か。なら聞くが、そのやり方でお前は戦いを無くせたのか?」
「ッそれは……」
淡々と言い聞かせるような弦十郎の言葉にいつかの夜に言われた深の言葉を思い出す。自分のやり方は、新たな憎悪を生み出すだけだと深は言った。あの時は否定したが実際にこのやり方でクリスは争いを、戦いを終わらせることはできなかった。それを自覚してしまい返答する言葉に詰まった。
「いい大人は夢を見ない、といったな。そうじゃない、大人だからこそ夢を見るんだ。大人になったら背も伸びるし、力も強くなる。財布の中の小遣いだってちっとは増える。子供のころはただ見るだけだった夢も大人になったら叶えるチャンスが大きくなる。夢を見る意味が大きくなる」
押し黙るクリスに弦十郎は言い聞かせるように話を続ける。淡々とした口調だったが、そこには子どもを諭し見守る優しさが滲んでいた。
「お前の親はただ夢を見に戦場に行ったのか?違うな。歌で世界を平和にするって夢を叶えるため、自ら望んでこの世の地獄に踏み込んだんじゃないのか?」
「なんで……そんなこと……」
「お前に見せたかったんだろう。夢は叶えられるという揺るがない現実をな」
「ッ……」
告げられた言葉にクリスは息を飲む。見開かれた瞳は揺れていた。
「お前は嫌いと吐き捨てたが、お前の両親はきっとお前のことを大切に思ってたんだろうな」
「……ッ」
弦十郎はクリスに歩み寄ると涙をにじませるクリスをそっと抱きしめた。抱きしめられたクリスは堪えていた涙を留めることはもうできなかった。その温もりに忘れかけていた大切な思い出を思い出してしまったから。
声を抑えることもなくクリスは弦十郎の胸の中で泣き続けるのだった。
「やっぱりあたしは……」
「一緒には来られないか?」
しばらくして、弦十郎たちが現場から撤収する様を少し離れたところから見ていたクリスは弦十郎問いかけに頷いて返した。
「お前はお前が思っているほど一人ぼっちじゃない。お前が一人道を行くとしてもその道は遠からず俺たちの道と交わる」
「今まで戦ってきた者同士が一緒になれるというのか?世慣れた大人がそんなきれいごとを言えるのかよ」
「ほんと、捻てんなお前。ほれ」
弦十郎はクリスの言葉に呆れたように苦笑いをしながら手に持っていたものを投げ渡した。
「通信機?」
「そうだ、限度額内なら公共交通機関が利用できるし、自販機で買い物もできる代物だ。便利だぞ」
それだけ言い残すと車に乗り込みエンジンをかける。そんな弦十郎にクリスは意を決して叫んだ。
「カディンギル!」
「ん?」
「フィーネが言ってたんだ。カディンギルって。それがなんなのかは分からないけどそいつはもう完成しているみたいなことを……」
「カディンギル……後手に回るのは終いだ。こちらから打って出てやる」
クリスの言葉に少しだけ考え込んだ弦十郎は険しい表情作るとそのまま車を発進させた。その後に二課の職員たちを乗せたセダンが続く。
流生もまたその後に続くためにバイクのエンジンを掛けた。
「なあ!」
そんな流生にクリスは声をかける。流生はヘルメットのバイザーを上げて何も言わずにクリスを見つめた。
「えっと、その……えっと……」
「……たいした傷じゃねえから気にするな」
素直に言いたいことを言えないでもじもじしているクリスを見かねて流生が先に答えるとクリスは若干頬を赤らめながら声を荒げた。
「なっ!んなことを気にしてたんじゃねえよ!」
「はいはい、分かった、分かった。……お互い苦労するな、夢を追っかける親を持つとよ」
「へ?」
クリスのことを軽くあしらった後、流生は息を吐きながらそんなことを呟いた。唐突な物言いにクリスは面食らった。
「子どもからすりゃ普通にそばにいてくれりゃそれでいいのによ。俺たちには背中だけ向けてどんどん先に行っちまいやがる」
自分に語りかけられているにもかかわらず、クリスには流生がここにはいない誰かを見つめて語っているように見えた。困惑するクリスに構うことなく流生はヘルメットの中で小さく笑うと言葉を続ける。
「けど、そんな背中を気づけば追っちまう。呆れながらもその背中を誇っちまう。子どもなんて存外そんなもんだ。それでいいんじゃねえか?」
「お前……」
「べらべらしゃべりすぎたな。とにかく、あんたがお嬢と協力してくれるってんならやぶさかでもねえ。お嬢やヒビの字も別に気にしちゃいねえだろうよ」
それだけ言うと流生はバイザーを下げ今度こそバイクで走り出した。クリスは小さくなっていく流生を見えなくなるまで見送った。
最後までお読みいただきありがとうございました。
次回もよろしくお願いいたします!
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