装者の男女恋愛が見たいッ!戦姫絶唱シンフォギア SLS 作:ふみー999
第3話です。
コミケでシンフォギアブース盛り上がっていたみたいですね。仕事で行けなかったので悔しい限りです。
あぁ~シンフォギアライブ一度でいいから行ってみたいですね~。
それではお付き合いください。
「響、好きな人が出来たでしょう?」
「うぇ!?」
下校途中で買ったクレープを食べている最中だった。響は一緒に帰っていた未来から突然予期せぬ質問を投げかけられた。
口に含んでいたイチゴが喉につっかかりむせる。水筒のお茶を使って無理やり流し込む。
「どっ!どうしたの急に!?」
「うーん、なんていうかね。」
未来は食べかけのクレープを持ったまま響を見つめる。
夕方の街道は閑散としており人気も少ない。じっと見つめてくる未来の視線から響が逃れるすべはなかった。
「最近明るくなったというか、浮かれるようになったというか露骨に変だから。」
「え!?私そんなに変だった?」
「変だよ。机に書かれた落書きを消しながらニヤニヤしたり、隣で陰口を言われているのに聞く耳持たずで上の空になっていたり、指名された黒板の問題、普通に解いて正解しているし。」
「さ、最後のは別に変な行動じゃないでしょ!?」
「不思議に思って響のお母さんに相談したら私と別れた後寄り道して帰っているみたいだし…逢引きしてる?」
「あいっ!いやいやいや!逢引きって私と深君はそんな関係なんかじゃ…あ。」
言ってから響は自分が失言したことに気が付き固まる。徐々に顔が熱くなっていくのが分かった。そのままなかったことにしようと無言でクレープをリスのようにもぐもぐと食べ始める。シャーベットになっているイチゴの酸味とシャリシャリした触感がおいしいなぁなんて現実逃避する。
「やっぱり、白状しちゃえ~」
そんな響の脇を未来は空いている手で何度もくすぐる。
「や~っ!やめてとめてやめてとめてやめてぇ~」
くすぐりは響が白状するまで続いたのだった。未来の猛攻に響は肩で息をする。そのまま深との出会いについて未来に話すのだった。
「そっか。ライブ会場で助けてくれた人と再会したんだ。そこからまた助けてもらってなんてなんだか運命的だね~それで?それで?」
すごくキラキラとした目をした未来が食い入るように話を聞き出そうとしてくる。いつの間に食べ終えたのか。クレープを持っていたはずの手をぶんぶんと振っている。響は顔で目玉焼きが焼けるのではないかと思えるほど赤面だった。
「そ、それから河川敷で話をするようになったと言いますか。そうしていたら気づいたらちょっといいなって思っちゃったといいますか…うぅ恥ずかしいよ未来ぅ」
とうとう耐えられなくなった響が顔に手を当てうずくまる。
そんな響をよしよしと頭を未来は撫でて落ち着かせる。そして落ち着いた声音で尋ねた。
「どんな人なの、深って人は?」
うずくまっていた響だったが、少し経つと顔を隠したまま空に浮かぶ月を指さす。
「未来が私にとっての陽だまりだとしたら、深君は月明りみたいな人。」
「月明り?」
「うん、夜に月を見上げるとなんだか癒されることがあるでしょ?河川敷で話すことだってなんてことはないことなんだ。でもね、一緒にいると心にあるもやもやしたものがすっと消えて落ち着くんだ。」
俯いたまま話す響を見て未来は優しく微笑んだ。
「そっか。私、響のこと応援するよ。そんなに長々と話せるくらい好きみたいだからね」
そう言われ響は勢いよく顔を上げる。せっかく落ち着いた顔がまた赤く染まっていた。
「み、未来が聞いてきたんじゃん!」
「そうだった。ごめんごめん。」
「も~未来ぅ~」
ポカポカと未来を叩く。未来はそれから逃げるように小走りをした。響もそれを追いかける。そんな風にじゃれあっていると響の家の近くまで着いてしまっていた。
「それで?今日もこれから行くの?」
「ううん、今日は未来と家まで帰るって言っていたから行かないよ。」
「あら、私邪魔だったかな?」
未来はにやついてしまった口に手を当てて隠すしぐさをした。
「もう未来ぅ、からかわないでよ」
「ごめんごめん。親友を取られちゃったからやきもち焼いちゃった。」
ペロリと小さく舌を出して微笑む。
「そんな心配しなくても、私の親友は未来だけだよ。」
「それならいいけど。…あっ」
あと一つ、曲がり角を進めば響の家に着く。そこで二人は立ち止まる。
「…」
「…それじゃあ未来、また明日ね」
二人で下校しても響はいつもここで別れを切り出していた。
未来は知っていた、響の家の惨状を。外壁の落書き、張り紙、投げ入れられた石、割れたガラス。
注がれる悪意によって響の家は以前よりもボロボロになってしまっている。
「…うん、それじゃあまたね。」
手を振って響を見送りその後ろ姿を見つめる。以前見てしまった家の様子と響の後ろ姿が被って見えた。
傷ついた心を隠して笑顔を見せる。きっと自分を心配させないようにそう振舞っている。素直に弱さを見せてほしい。そう思う。けれども未来は踏み出せないでいた。響がこうなってしまった原因の一端が自分にあると分かっているから。そして未来はそれを響に謝ってしまった。きっと優しい響は私にこれ以上の負担をかけないよう、弱さを見せようとはしないだろうから。
(…謝るべきじゃ、なかったのかな)
未来は空を見上げる。そこには月があった。まだ日が落ちる前に浮かぶ月は薄く青く光っている。さっきの響の言葉が重なる。
(…月明りか)
話を聞いただけで響が深という男の子のことを信頼していることは知れた。だから、どうかと身勝手に願う。どうか、傷ついた響を癒して———
「待って!響!!」
物思いにふける未来の後ろから女性の叫び声が聞こえてきた。振り返ると先ほど別れたばかりの親友が反対方向へと走り去っていった。少し遅れて走ってきた女性がサンダルに足を取られて転んでしまった。その人には見おぼえがあった。響のお母さんだ。
「おばさんっ!?」
慌てて未来は倒れたお母さんに駆け寄る。
「大丈夫ですか!?」
「…未来ちゃん…」
明らかに動揺していた。立ち上がることもままならず、ぺたりと座った状態から起き上がることもできずにいる。目の焦点が合わず、視線もあちらこちらに泳いでいる。まるで何かを探しているかのような、何かを否定しようとするかのようなそんな体の動きだった。
「主人の会社からね…連絡があったの…今日会社に来ていないって…朝会社に行くって言っていたのに。」
憔悴した顔で何かのメモを未来に見せてくる。
—すまない。一緒にはもう暮らせそうにない—
男性が書いたのだろう文字でメモにはそう短く綴られていた。
「書斎で、これを見つけて…響も…家を飛び出して…私…私…」
「ともかく、おばさんは一度家に戻りましょう。響は私が探します。」
冷静さを失っている響の母を家に送り届け未来は響を探すために走り出した。
迷わずに河川敷へと未来は向かっていた。
父の置手紙を読んだ後、瞬間的に走り出してしまった。そして電車に乗り父の職場にやってきていた。受付で話を聞くとやはり今日は来ていないという。そのまま周辺を走り父の姿を探した。バスの通る大通りも、近道になりそうな横道も、よく行くと父が話していた店の中も、探し回った。
そうして気づいたときには23時を過ぎていた。どこまで探しに来たのだろう知らない公園にいた。父の姿はどこにも見つからなかった。
乱れた息のまま響は公園の手すりにもたれかかった。
高所の団地の片隅に作られた公園で端からは下の街が一望できる。
キラキラとした光がそれぞれの家から広がっている。嫌なものが心から溢れそうになって、響はその光から目をそらし、膝を抱えた。
もう一歩だって動きたくなくて、動いたら堪えているものが溢れてしまいそうで。
(誰か…助けてよ…)
すると、ふいに足に何かが触れた。ふわふわとした柔らかい何かだった。
みるとそこには一匹の尻尾のない黒猫がいた。
「…モチちゃん?」
モチは顔を響の脚に摺り寄せていた。名前を呼ばれるとナウと短く鳴く。
気が付くと目の前に人の脚が立っているのが見えた。
「…響ちゃん」
聞き慣れた声、ここにいるわけがない声、今一番聞きたくて、今一番聞きたくなかった声。
「…深‥君?」
顔を上げるとそこには大粒の汗を流しながら響を見つめる深がいた。どうして、と問いかけようとして深の言葉にさえぎられた。
「未来ちゃんから話を聞いて、無事でよかった。」
肩で息をする深。響を探して町中を探してくれたことがありありと見て取れた。
「…ごめんね、深君。迷惑かけちゃったね」
響は努めて明るい口調で笑いかけた。
よっこいしょと芝居がかった動作で立ち上がると振り返り、手すりから乗り出して街を見下ろす。
「…もうこんな時間になっちゃったから帰らないとね。そういえば晩御飯もまだだった。お腹すいちゃった。」
お腹をさすりへへへとおどけて笑う。
「お父さんのことは…」
背中から深の声が聞こえてくる。その話を聞かないでほしい。
「…大丈夫だよ。きっとそのうち帰ってくるから。会社でだってプロジェクトリーダー任されたって言っていたし、頼りになるんだよ」
「響ちゃん」
案ずるように名前を呼ばれた。いつものようになんてことない話がしたい。そうすればきっとこの心のざわめきも静まってくれる。
「頼りになると言えば未来だよね。今日だって英語の宿題が出てたんだけど、私うっかり忘れちゃって。そうしたら未来が一緒に解こうって言ってくれたんだ。いや~やっぱり持つべきは親友だね~」
だからどうか、話に乗ってほしい。いつもみたいに朗らかな顔で私の話を聞いて。そして笑いかけて。そうしたらきっといつも通りでいられるから。
「響ちゃんっ!」
そんな願いは届かなかった。深はさっきよりも強い口調で名前を呼ぶ。やめて、どうか私の心を揺さぶらないで。
「…へいき、へっちゃらだよ」
絞り出すように口癖を言った。私は今笑えているだろうか。自分の表情もうまくわからない。だから深の顔を見ることが出来ない。溢れそうになるものを堪えようと空を見上げる。
そこには弓張の月が静かに浮かんでいた。
「…え?」
すると突然背中に優しい衝撃を受けた。顔を下げると深の腕が首に巻かれている。
包み込むようにコーヒーの甘い匂いがした。
後ろから抱きしめられているのだと響は少し遅れてから気が付いた。
「深…君?」
「誰にも心配をかけたくないから、そんな風に笑おうとするんでしょう?」
心を見透かされたのかと、ぴくりと体が震える。
「心配をかけていい。迷惑だなんて思わない。辛い気持ちを隠さなくていいんだ。」
抱きしめる腕に力が入る。けれど決して痛くないよう加減がされていて温かかった。
「抱えきれない思いは全部ぶちまけていい。僕は全部受け止めるから。だから君が抱えているものを聞かせて。」
響はそう言われて振り返った。深を見るとその瞳はまっすぐに響を見つめている。やがて堪えきれなくなった瞳から雫が落ちて流れていく。
「…頑張ってリハビリをして元気になったら…皆喜んでくれるって…思ったんだ。」
視界がぼやけて深の顔がよく見えなくなってきた。
「なのに、みんなに苦しそうな顔ばかりさせちゃって。お父さんだってあんなに優しかったのに…出て行っちゃって…」
深の胸に響は自分の頭を預ける。そうしないともう立ってもいられないほどクラクラして気分が悪い。
「私のせいなのかな…私が、生き残っちゃったから。みんなをこんな目に合わせているのかな…。私が生き残ったことが悪いのかな」
深はそんなことはないと首を振り、今度は正面から響を抱きしめる。
「響ちゃんのせいなんかじゃない。未来ちゃんだって、響ちゃんのお母さん達だって君が生きていてくれてよかったと思っている。」
「ならどうして!こんなつらい思いをしなくちゃいけないの?どうして、こんな苦しい思いをみんなにさせなくちゃいけないの?分からない…分からないよ」
立っていることもままならず響は倒れそうになる。深はそれを支えながらゆっくりとその場に跪いた。響が泣き疲れて眠ってしまうまで深はそのままでいるのだった。
「ここ…」
「目が覚めた?」
目が覚めた響が辺りを見渡すと見おぼえがあった。どうやら自分の家の近所を歩いているようだった。深の声が隣から聞こえてきた。
「ごめんね、あの後響ちゃん眠っちゃって。夜も遅かったから家まで送った方がいいと思ったから。」
寝ぼけたまま深の声を聴いているとどこかおかしい。なんだか妙に近いところから聞こえてくる気がする。どうやら深に背負われているようだった。
「え!?」
背負われていると気づいて響は途端羞恥に襲われた。先ほどからの自分の行動を振り返ると、好きな人の前で泣いて、そのまま寝て、そしておんぶまでされているのだ。もう恥ずかしいやら嬉しいやらで混乱した。
隣を歩くモチが短くナーと鳴いた。落ち着けと言われている気がした。
「どのくらい寝ていたの?」
「2時間くらいじゃないかな」
「…そっか。」
「…」
当たり障りのない会話をしてその後無言になった。響は何を言えばいいのか浮かばなかった。無言のまま頭を深の背中に預ける。チクチクとした髪の感覚とコーヒーの匂いが心地よかった。沈黙を破ったのは深だった。
「…君と、初めて河川敷で出会ったときさ。」
「…うん」
「溺れる君を助けた後思ったんだ。あぁ、生きていてくれてよかったって。きっとそれが全てなんだよ。未来ちゃんも、お母さんたちも、それに僕も。それはお父さんもそうだよ。」
「…そうかな」
「そうさ。だから、負けないで。苦しい現実に押しつぶされないで。必ず、幸福が待っているはずだから。」
祈るような声でそう深は告げる。
それは自分自身に向けた言葉のようにも響には感じられた。
「響ちゃんが幸せになってほしいと願っている人がいる。君を想う人がいることを忘れないで。」
「…私を想う人がいる。」
深に言われた言葉を口の中で転がすように響は繰り返した。
悲しさばかりを感じていたのに、なぜかその言葉はすっと胸の中に入っていくようだった。
深と出会ったあの日、助けた響を見ていた深の顔が心からの安堵を浮かべていたのを覚えていたからかもしれない。きっとそれが誰かに想われることなのだと理解できた。
そう思うと少しばかり心が楽になった気がした。
そして余裕が出た響は思い出してしまう。深は安堵した後、赤面していたような。
「そういえばあの時、下着見られたんだった。」
濡れた自分の姿を見られたことまで思い出し、恥ずかしさから響は反撃する。
思わぬところからの強襲に深はたじろぐ。
「えっ!?い、いやあれは不可抗力というか」
「…エッチ」
「っすぅ…ごめんなさい。」
たじろぐ深が愛おしくて少し首に回す腕の力を強める。なんだかそれだけで幸福な気がした。存外、私はちょろいのかもしれない。
(ねえ深君。私ね、貴方のことが…)
そこまで考えているとふと深の脚が止まった。
「着いたよ」
気が付くと響の家の前まで着いてしまっていた。深は響を背中から下ろすとインターホンを押す。
未来と会う際はあれほど気になった壁の張り紙も気にならないくらい響は名残惜しさを感じていた。
やがて玄関の明かりがつき勢いよく扉が開かれる。中から未来と母、祖母の三人が血相を変えて飛び出してきた。
「響!」
三人は響を見つけると抱きしめる。
「未来!お母さん!お祖母ちゃん!」
三人から抱きしめられ少し苦しくなる。
「心配したんだから!」
震える声で未来が言った。目にはうっすらと涙を浮かべていた。
「ごめん、でもお父さん見つけられなかった。」
「いいの、響が無事ならそれでいいの」
母が涙を流しながら響を抱きしめる。祖母が深に近づきお礼を言っていた。
「孫を見つけてくださり、本当にありがとうございました。」
「いえ、たいしたことはしていませんから。響さんが無事でよかったです。」
優しく笑みを浮かべ深は答える。そして抱きしめあう響たちを見つめてつぶやいた。
「…いいご家族ですね。」
深は目を細め、唇をぎゅっと結ぶ。その下でモチが小さく鳴いた。深はモチに帰るかと告げる。送っていくと言う響の母の誘いを丁重に断り、来た道を一人と一匹で歩きだした。
「深君!」
響は去り行く深に向かって衝動的に声をかけた。深がゆっくりと振り返る。
「えっと…またね」
何を伝えたいのかもわからず当たり障りのない別れを告げる。深も微笑むと手を振って答えた。
「あぁ、またね響ちゃん」
月の光のような優しい笑みを浮かべ深とモチは夜の闇の中に消えていった。
響たちは見えなくなるまでその姿を見送る。
そしてそれが、響が深を見た最後の姿だった。
次の日から深は響の前に姿を見せなくなった。
どうもふみー999です。
次回からようやく本編に合流することが出来ます。本当は全開でここまで書きたかったのですが長くなってしまったので2話に分けました。
ここからが本番、気張っていこー!バッチコーイ!!