装者の男女恋愛が見たいッ!戦姫絶唱シンフォギア SLS 作:ふみー999
前回久方ぶりに感想もらってやる気、元気が爆上げしたので早く投稿できました~
ギアマニア名古屋が来月に控えていますね。行くつもりですけどいったいいつになったら日程が解禁になるのか。このままでは休み取れなくて行けなくなってしまうと戦々恐々としている私ございます。誰も彼もが土日休みだと思うなよ運営。
ところで、今回はサブタイトルがありませんがご安心ください。仕様です。
では最新話どうぞ!
あの日、学院の中央棟に擬装された地下へと続くエレベーターを使って特異災害対策機動部二課本部へと初めてやってきた。扉が開き、その向こうに広がっていたのは無機質な廊下だった。地下特有の冷たい微風が隙間から吹き込み、古くなった蛍光灯が妙に響く音を立てて明滅する。空間全体が招かれざる相手を拒んでいるような印象だった。
「……」
小さく息を吸い覚悟を改める。例え、歓迎されない者だとしても、飛び込むこの場所が普通の場所とは異なる国の暗部だとしても構わない。家族の仇を取れるのなら。
「は~い到着~ここが特異災害対策機動部二課の本部よ。今日からここで助手としてビシバシ勤めてもらうからそのつもりでね♪」
了子さんは固まっている背中を押してエレベーターから連れ出した。緊張している自分をリラックスさせるように努めて明るくて軽い口調だった。
「……どうして」
そんな彼女にどうしても気になって尋ねた。風鳴司令も、緒川さんも、流生さんも、翼さんも誰一人として僕が二課に入ることを認めようとはしなかったから。
「どうして、僕を拾ってくれたんですか?」
貴方だけが、二課への加入を許可してくれたのはどうしてだったのか、を。
了子さんは少しだけ視線を明後日のほうに向けたがやがて観念したように目を見て口を開いた。
「————」
あの時、先生が言った言葉は——
「翼さん……師匠……あ……ああ……ああ……」
フィーネの一撃により翼と流生が倒されたのを目の当たりにし、体の全身から力が抜けた響はその場から動けなくなった。フィーネは一人勝利を確信して高笑いを続けている。
「ククク……ハハハハハ!月は破壊され、バラルの呪詛を解くと同時に重力崩壊を引き起こす!惑星規模の天変地異に人類は恐怖し!狼狽え!聖遺物の力を振るう私のもとに帰順する!」
痛みだけが人の心を繋ぐ絆、たった一つの真実である。愉快だと言わんばかりにフィーネは高々と己の主義を歌い上げる。やがて落ち着いたのか笑いを止めると無力に座り込む響の方へと歩み寄ってきた。
「貴様には感謝しているぞ。貴様という先例、生体と聖遺物の融合症例がいたからこそ、私は己が身をネフェシュタンと同化させることができたのだからな」
響の前で立ち止まりフィーネは響を見下ろす。響はゆっくりと虚ろな目のままにフィーネを見上げてその瞳を見つめた。
(翼さん、クリスちゃん、師匠、深君……みんないない。学校も壊れてみんないなくなって……私は何のために……なんのために戦って……)
絶望が心を塗りつぶしていく。冷たくなっていく思い出の中で彼の顔が浮かんだ。
「どうして……こんなことをするんですか……」
深君は最後まで貴女を信じていたのに……。言外に響が伝えたいことを感じ取ったのかフィーネは目をそらさず、細め静かに語り始めた。その瞳は遥か彼方の月を見上げていた。
「……もうずっと遠い昔、あのお方たちに使える巫女であった私は、いつしかあの人を、創造主を愛するようになっていた。だが、この胸の内を告げることはできなかった。その前に私から、人類から言葉が奪われた。バラルの呪詛によって唯一創造主と語り合える統一言語が奪われたのだ。私は数千年に渡り、たった一人バラルの呪詛を解き放つため、抗ってきた。いつの日か統一言語にて胸の内の想いを届けるために……」
月を掴むように伸ばした手をフィーネは痛みを押さえつけるように自分の胸元で抱きかかえる。
「胸の想い……だからって……」
「是非を問うのか?恋心を知る、お前が……」
非難しようとする響にフィーネは我が子の亡骸を前にした母親のように静かに尋ねた。
「ッ……」
響は言葉が詰まった。何も言えなかった。その痛みを理解できるから。フィーネが抱えた胸の痛みを響は知っていたから。だから、胸に抱く深の銃を強く抱きしめることしかできなかった。
「……」
フィーネはそんな響をしばらく見つめていたがやがてカディンギルのもとへと歩き出す。そして、神に救いを求めるように両手を掲げた。
「さあカディンギル!今こそバラルの呪いを解き放てッ!私を、もう一度あの人のところへ!!」
フィーネの言葉に呼応するようにカディンギルにエネルギーが収束し黄金の輝きを放っていく。響はその様子をただ、見つめることしかできなかった。
響は終わりを受け入れるように目を閉じた。
「させません。だって、そんなことをしたって貴女も誰も幸せにならない。それに
懐かしい声を聴いて目を開ける。すると自分とフィーネの間に手榴弾が投げ込まれた。響がそのことを理解した次の瞬間に爆炎が轟く。それと同時に誰かに後ろから抱きかかえられ、その場から引き離された。懐かしいにおいがした。
「お前はッ!」
フィーネが自分に背を向ける男に驚きを隠せないといった声音をあげる。砂埃に閉じていた目を響は少しずつ開く。
「深…くん…?」
「ごめん、遅くなった」
月の光のような薄い黄色の瞳とそれを隠す叢雲のような灰白色の髪。響の目の前で今、誰よりも会いたかった人が微笑んでいた。
「……幽霊?」
「少なくても足はあるよ」
状況が飲み込めない響の発言に深は苦笑する。そして抱きかかえた状態からそっと響を立たせる。
「どう……して……」
「響ちゃんのおかげ、かな」
死んだはずではという疑問に深は自分の右手を上げて見せた。そこには響が送った黒猫のブレスレットが光を受けて輝いていた。
「先生にエレベーターシャフトに落とされて意識を失ったんだけど、この腕輪が壁の一部に引っかかってくれてね。九死に一生を得たよ」
ツングースカ級の威力にも耐えられるというのはあながち間違いではなかったみたいだと冗談めかして深は微笑む。
「そこから何とか換気用のダクトを見つけて脱出してきた。これがなかったらどうなっていたか」
痛むのかブレスレットを付けた右手をにぎにぎして、あまりにもあんまりな脱出劇を語る深に響は口を開けて呆気に取られた。
そんな響の頭を深は優しく手を当てて撫でた。
「ありがとう響ちゃん、君がくれたお守りが僕を助けてくれたよ。それと不安にさせてごめんね」
「……深君」
その笑顔を見て堪えていたものが決壊した。響の頬に涙が伝う。響は深の存在を確かめるように抱き着いた。
「深君が……みんなが……死んだと思って……私……私……どうしたらいいか分からなくなって……それで……クリスちゃんも……翼さんも……師匠も……みんな……みんな……」
「大丈夫。未来ちゃんたちもみんな無事だ。翼さんたちだってそう簡単に死にはしない。だから——」
泣きながら震える響の背中に手を当てて深は響の気持ちが落ち着くのを待とうとした。しかし、地面を鞭が叩きつける音がそれを阻む。
「大した悪運だな。深」
「先生……」
音の鳴る方を見ればフィーネが深のことを見つめている。表情は今までで一番険しいものだった。深は響を抱きしめたまま響をかばうように半身をフィーネへと向けた。
「だが、貴様一人がいまさらノコノコ出てきたところで何ができる!」
すでにカディンギルは臨界状態。すぐにでも発射できる。そして深には流生のように戦う力はない。いまさら出てきたところで何ができるのかと、いら立ちをフィーネは覚えていた。
「僕を誰の弟子だと思っているんですか?ここに来るまでただ油を売っていたわけがないでしょう?」
だが、一方の深は真剣な表情のまま口角を少しだけ上げ、懐から連絡端末を取り出した。そして、その端末のボタンを一回押した。
変化はすぐに現れた。フィーネの後ろにそびえ立つ臨界状態のカディンギルから響いていた駆動音が徐々に遅くなっていき、黄金に輝いていたエネルギーの光が弱弱しくなる。やがてカディンギルは息を引き取るようにその動きを止めた。
「まさか、カディンギルの制御を奪ったのか!」
その様子を見上げていたフィーネは焦りを滲ませて深をにらみつける。
「セキュリティが甘かったので。おおかた、誰かに妨害でもされましたか?」
フィーネは倒れている流生を見て忌々し気に舌打ちを打った。
「大した手際だ。だが、もう一度お前を殺して制御を取り返せばいいだけの事」
だがフィーネは冷静に現状の打開策を口にする。一時的に制御を奪ったところで深も響も戦えないことに変わりはない。フィーネは鞭を構えて深たちへと向けた。
「……借りるよ」
深は響を抱きかかえたまま、響が持っていた自分の拳銃を手に取り、フィーネへと構える。その様子をフィーネは侮って見つめた。
「撃てるのか?お前に!私が!」
深には打てない。フィーネはそう高を括った。そもそも深が
けれども深は躊躇いなく、銃の引き金を引いた。
「深君ッ……!」
乾いた銃声が響き、響は驚きに声を上げる。
撃たれた箇所の銃創がふさがっていくのを見つめ驚いた後、フィーネは自棄になったように笑った。
「フ、フフハハハ!ようやく復讐するための決意が固まったのか?それもいいだろう。だがもう遅い!お前にはなにも成せない!仇もとれない自分の無力さを嘆いて——」
「違いますよ。引き金を引くのは——戦うのは復讐のためじゃない」
声を張り上げたわけではない深の声がフィーネの声を塗りつぶす。
「未来ちゃんに気づかされたんです」
暴走する響を止めようと翼が戦っている姿をモニターで見つめながら未来は通信をつなげてきた深へと焦りを隠さずに尋ねた。
「深さん、なんとか、響を助けたいんです。何か、何か手はないんですか?」
通信の向こうでカディンギルを掌握するためにコンソールパネルをひたすらに叩き続けていた深だったが、未来の質問に手が止まる。
「一つだけ……一つだけ可能性があるかもしれない」
「本当かッ!それはいったい?」
深によって提示された可能性を聞いて弦十郎は思わずと言った様子で会話に割って入る。弦十郎たち側の雰囲気が少しだけ明るくなったのを感じながらも深は重い口を開いた。
「——シンフォギアの決戦兵装、エクスドライブです。限定解除されたギアならあるいは先生に対抗できるかもしれません。けど——そのためには二年前のライブ会場と同等、いやそれ以上のフォニックゲインが必要になってくる。それだけのゲインを……歌を、今誰かが歌えるのか……」
深が提示したのは理論的には可能な作戦だった。しかし、達成するための条件があまりにも厳しいものだ。そのことを特に理解している弦十郎たち二課の面々は特に表情を暗くする。
「歌……」
そんな中で未来は深の言った条件を独り言のように繰り返した。そして決心するともう一度通信している深へと問いかける。
「深さん、ここから響に声を、私たちの無事を伝える手段はありますか?」
「未来ちゃん、まさか君が……」
「たとえ万に一の可能性だとしても私にできることをしたいんです。響を助けるために」
未来が何をしようとしているのかを察した深が驚く。未来の決意が通信越しに伝わってくるようだった。そして声を上げたのは未来だけではなかった。
「……だったら私も歌うよッ!」
「弓美!?」
後ろで話を聞いていた弓美もまた、未来と共にやると怯えながらに宣言する。
「アニメだったらさ、こういう時、みんなの力がヒーローを助けるんだよ!だったらやらないと!」
「これは、アニメじゃないんですよ?危険が伴うかもしれない」
状況を理解していない、あるいは恐怖で混乱しているのかもしれないと感じた深が心配すると、舐めるなというように弓美は通信機をまっすぐに見つめた。
「アニメを真に受けて何が悪い!ここでやらなきゃ私アニメ以下だよ!非実在少年にもなれやしない!この先……響の友達と胸を張って答えられないじゃない!」
「……ッ!」
弓美の啖呵に深は思わず息を飲む。以前から響の戦う様子を見てきた未来とは違う。先ほどまで平和に暮らしていた少女が見せた覚悟に驚嘆したからだった。
「ナイス決断です」
「そうそう、ヒナだけじゃなくて私たちだってやれることをしてかないとね」
弓美の言葉を聞いていた詩織と創世もまた、同意するように未来に向かって頷いた。未来もまた驚いた後、友達の勇気に頷き返す。
「みんな……深さんやらせてください。私たちに!」
未来たちの言葉を聞いた深は少しだけ躊躇った後、割り切ったのか小さく息を吐いて指示を出す。
「……分かった。くれぐれも無茶だけはしないでね。朔也さん、学校の施設が生きていればリンクして声を送れるはずです。電力を供給するための変電所がどこにあるか分かりますか?」
「今調べたところだよ。2ブロック先にある変電所を操作すれば可能だ」
深からの問いかけを受ける前に朔也は必要な情報を検索しモニターに提示していた。
「ありがとうございます。指令、そちらの操作は任せます。僕は片付き次第、響ちゃんの救援に行きます。カディンギルが地上に押しあがった今、ここからのほうが行くのが近い。それに……」
作戦に向けてやるべきことの確認を円滑に進めていた深の言葉が詰まった。そして、言いにくそうに次の言葉を絞り出す。
「……それに先生と向き合うのは、弟子の僕が果たさなければいけない責任です」
「深。できるのか、お前に?」
絞り出すような、明らかに無理をして言っているのが伝わってくる深の言葉に、弦十郎は問いかける。戦うことが難しいのならば無理に行くなと暗に伝えるような優しさがそこに滲んでいた。
「……分かりません」
弦十郎の問いかけに先ほど以上に苦しそうに深は答えた。震える声は続けた。
「まだ、先生とどう向き合えばいいのか。答えは出ていないです。……あの人は、母さんを、ヒビキを殺した張本人で……許すことは……できません。けれど……行き場を失った僕を育ててくれた恩人なんです。殺したいとはもう思えない。たくさんのものを……先生から貰いすぎました……」
「……」
弦十郎も、朔也も、緒川も、友里も深にかける言葉を持ち合わせてはいなかった。二課で共に働いていたからこそ、深がどれほど了子を慕っていたのかを知っていたからだ。
「その気持ちが答えだと思います」
「未来ちゃん?」
大人たちが沈黙する中で、未来だけが深へと言葉を投げかける。それは自分の胸に灯った素直な気持ちだった。
「されたことが許せないことでも、その人の全てを否定する理由にはならない。その人を大切だと思う気持ちが嘘になるわけじゃない」
それはかつて響をめぐって深とぶつかった未来だからこそ語ることが出来た言葉だった。
「向き合って自分の気持ちをぶつけて、相手の気持ちを知って初めて見えてくるものだってあると思います。私はそうだったから。だから深さん、向き合うことをどうか恐れないでください」
「……分かった。ありがとう、未来ちゃん」
少しの間の静寂を得て、深は通信を切った。最後の声はもう震えてはいなかった。
深はカディンギルの制御を終えると即座に地上へと脱出した。瓦礫の陰に隠れて響たちが戦っている現場へと近づいて行く。
「ッ!流生さん……!」
途中、重傷を負い意識を失った流生を発見し、フィーネたちに悟られないように応急処置を済ませる。その時、ついでに手榴弾を拝借した。
そして月を見上げるフィーネと力なく座り込む響の姿が見えた。突入するタイミングを見計らうため、深は瓦礫の影に隠れて様子をうかがう。
「どうして……こんなことをするんですか……」
「……もうずっと遠い昔、あのお方たちに使える巫女であった私は、いつしかあの人を、創造主を愛するようになっていた———」
風に乗って絶望している響の声が、悲しみに耐えている先生の声が聞こえてきた。風向きが変わったために最後までは聞こえなかったが、初めて先生の本心を聞いた。
「……あぁ、そうか」
胸の中でずれていた歯車がかみ合うように靄が晴れた気がした。そして、深は初めて二課に来た時のことを思い出した。
(どうして、僕を拾ってくれたんですか?)
あの時、先生にどうしても気になって尋ねた。風鳴司令も、緒川さんも、流生さんも、翼さんも誰一人として僕が二課に入ることを認めようとはしなかったから。
貴方だけが、二課への加入を許可してくれたのはどうしてだったのか、を。
先生は少しだけ視線を明後日のほうに向けたがやがて観念したように目を見て口を開いた。
(自分に似ていたから……かしら。私もね、昔、自分のせいで大切な人と会えなくなってしまったの。今でもそのことに囚われて嘆いている。だから見ていられなかったのかもしれないわね)
自分の過ちを語る先生の顔は笑っていたけれど苦しそうで、今にも泣きだしてしまいそうだった。先生は僕の頭に手を置くと引き寄せ、自分の額と僕の額を重ねる。
(孤独という暗闇を一人ぼっちで歩いていると、怖くて怖くて仕方がなくなる時が来る。誰かに手を差し伸ばしてもらいたいと思うものよ。だから、一人でやろうなんて思わないのよ?今日からはここが貴方の居場所になるんだからね?)
菫色の瞳が僕を覗き込んでいた。僕はこの時、自分が孤独に凍えていたのだと初めて気づいたのだ。
「———ッ」
深呼吸を一回。閉じた瞳を開ける。思い出したやり取りに、深の中で決意が固まった。
「させません。だって、そんなことをしたって貴女も誰も幸せにならない。それに
手榴弾を投げると同時に深は響を助けるために駆け出したのだった。
そうして時は今に戻る。
深は銃を構えたまま、話を続けた。
「未来ちゃんに気づかされたんです。先生は僕と同じだったって。一人ぼっちが寂しかったんでしょう?」
「……」
深の言葉にフィーネは何も答えない。ただ、少しだけ不愉快そうに眉を動かした。
「家族を奪ったことは許せません。許せない、けど僕は……僕は貴女がこれ以上一人で苦しむ姿は見たくない」
「……黙れ」
許せなくても、フィーネがここに至るまでの5千年間を悩み、苦しみ、そして想い続けたことに深は気が付いた。その寂しさを、孤独を非難することは深にはできない。その悲しさを否定することなどできはしない。ましてや、拒絶して遠ざけて存在を否定するようなことなどできるはずがなかった。
「貴女のことが大切で、大好きだから。これ以上、大切な人に罪を重ねさせないために。これ以上、貴女が傷つかないために——」
痛いくらいに、苦しいほどに、そう、愛おしくなるほど共に過ごした時間の全ては決して偽りではなかった。受け取ったものは確かにあったのだ。
「黙れと言っている!理解したようなことを勝手にほざくな!」
フィーネは激昂して鞭を振るい、深のすぐ脇の地面を抉り取った。それでも深は微動だにしない。まっすぐにフィーネを見つめ続ける。
「貴女を止めるために、僕は戦う。そのためになら、僕はこの引き金を引ける!」
圧倒的に有利な状況にいるフィーネが苛立ちに肩で息をしてにらみつけ、深はブレることなく前を見据えている。
「お前ひとりで私を止められるとでも?」
突き放すようにフィーネが底冷えするような声音で深に問うと、深は困ったようないつもの笑みを浮かべ銃を下した。
「僕一人じゃ、無理ですよ。それに先生が言ったんですよ?一人でしようとするなって」
深が銃を下すのとほぼ同時に周辺のスピーカーから音の割れた歌が聞こえてきた。響には馴染みの深いリディアンの校歌。そして歌っている人たちの声に聞き覚えがあった。
「これ……みんなの……声?」
「そうだよ。みんな無事だって言ったでしょ?未来ちゃんたちも自分のできることで戦ってくれている」
深の腕の中にいた響が辺りを見渡すと深は響を見つめる。
「こんな耳障りな歌で何ができるというのだ」
何をしてくるのかと警戒していたフィーネは呆れるようにその歌を嘲笑した。
「できるよ。一人一人の力が小さくて弱くても、束ねて繋げばきっとどんな奇跡だって起こせる。この歌声一つ一つが響ちゃん、君を想う人の声だ。君の居場所で帰りを待つ人たちの願いだ」
けれども深はフィーネの言葉など気にも留めず響の目を見てそらさない。
未来たちの歌が高めたフォニックゲインが幻想的な光となって夜明け前の薄暗い辺りを包み始める。
深はいつもの困ったような笑みを浮かべる。けれどもその月のような瞳には決して折れない覚悟が宿っていた。
「情けないけど、僕一人じゃ先生を止められない。先生の嘆きに寄り添えない。だから——」
「力を——貸して。響ちゃん」
夜が明け朝日が昇る。響の瞳にも光が灯る。
ここからは太陽と月が共に空に昇る時間。
「そっか……よかった……私を支えてくれているみんなはいつだってそばに」
光の灯った響の瞳を見つめて深は頷いた。
「そうだよ、いつだってそばにいる。だから——」
「だから——まだ歌える!頑張れる!!戦える!!!」
周辺に浮かんでいたフォニックゲインが急速に活性化し響の周りへと収束していく。
小さく瞬いていた光が一条の光の柱となって響を包んでいく。深の手を離れた響が一歩、また一歩と前へと進んでくるのをフィーネは目を見開き、衝撃を受けて見つめた。
「まだ戦えるだと!?何を支えに立ちあがる?何を握って力と変える?深、お前の仕込んだものか?それとも鳴り渡る不快な歌の仕業か?そうだ、お前が纏っているのはなんだ?心は確かに降り砕いたはず。なのに、何を纏っている?それは私が作った物か?お前が纏うそれはなんだ、何なのだ?」
「決まっています。これは——!」
混乱するフィーネに深が答える。それと同時に地上から三つの光が天へ翔ける。
「「シンフォギアアアアアアアアアアアア!!!!!」」
深と響の言葉が重なる。今、三人の戦姫が復活を果たした。
第44話 Listen to my song:シンフォギア
最後までお読みいただきありがとうございました。
サブタイを最後に持ってきたら熱くないか!?と書きあがってから思いつき今回の形にしてみました~いかがだったでしょうか?
さてさて、深君が久しぶりの、7話ぶりの登場です。この作品はあくまでもシンフォギアの二次創作、主人公は響だとしてもオリ主の中では主役なのにこの扱い……深、強く生きてくれ。
そして次回からはついに1期最終回に突入いたします。書き始めた頃はここまで来れるか不安でしたが何とかなりそうです。このまま最後まで駆け抜けてやりますとも!!
それではまた次回お会いしましょう!
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