装者の男女恋愛が見たいッ!戦姫絶唱シンフォギア SLS   作:ふみー999

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どうも、お久しぶりです。ふみー999です。
新年度の新体制。職場の人員も減りてんてこ舞いですが何とか頑張っております!
いや~なんとか五月からはG編を始めたいものです。

そんなこんなで「しないフォギア編」第1話をどうぞ!



しないフォギア編
Notturno:カラメル色の夜に響いて


「……ん……」

 私、立花響が目を覚ましたのは、深夜二時を回ったところだった。コチリコチリと秒針の動く音と換気扇が回る低い音だけが妙に響いてそれ以外、辺りは静まり返っていた。

隣のベッドを見れば翼さんもクリスちゃんもぐっすり眠っていて、かすかな寝息が聞こえてくる。もう一度眠ろうとして目を閉じても、妙に目が覚めてしまって寝付ける気がしない。

「喉、乾いたなぁ……」

 喉の渇きも覚えていたため、私は寝るのを諦めた。二人を起こさないように布団から出てそのまま部屋を後にする。

 廊下もまた、静寂に包まれていた。人の動く気配もなく、足元灯の淡い光だけが灯っている。その薄暗い中を進んでいくと、見知った二課の廊下なのに別の施設に迷い込んだように感じられた。

 私たち三人が、あの無人島から深君に救助されてからかれこれ二週間が経った。

救助されたのは良かったが、月の損壊やら、それらにまつわる一連の事態に対しての処理や調整が済むまで、私たちは行方不明とされていた方がいいと弦十郎司令から言われてしまった。その結果、私は現在、翼さんとクリスちゃんと一緒に二課の特設施設の中で拘留生活を余儀なくされている。

「未来、きっと寂しがってるよね~というか、連絡もよこさないで~って帰ったら怒られそう……」

 秘密保持のために未来には自分の無事は伝えられていない。帰った後のことを考えると少々不安を覚えてしまい、ため息をついてしまう。

 正直、ここでの生活は不満が多かった。面倒事から守ってもらっているということは分かる。翼さんやクリスちゃんと話をするのだって楽しい。けれども、未来には会いたいし、学校にも通いたい。はやくお日様を浴びたいものだった。

それに、もう一つ隔離生活と同じくらい不満なことがあった。

「深君……最近全然顔を出してくれないし……」

 自分で口に出した事実のせいでプクリと頬を膨らませてしまった。あの日、感動的な再会を果たしたというのに深君ときたら、ここ数日は実験室に籠ってしまったのだ。

 研究が佳境を迎えているというのは分かるけれども、流石に放置しすぎだと思う。というかもっと構いに来てほしい。同じ屋根の下で暮らしていると言っても過言ではないのだから一日に最低でも5回は会話したいのに。

自分から遊びに行けばいいのだろうけれども。それはほら、向こうから来てほしい乙女心を理解してもらいたいものなのだよ。

「ってあれ?」

 そんなことを考えながら歩いていると目の前の扉から少し明かりが漏れ出ていることに気がついた。

 こんな夜更けに誰か働いているのだろうか。不思議に思ってその扉に手を当てる。すると、自動で扉がゆっくりと開いた。

 部屋の中は様々な実験道具が置かれている研究室だった。そしてその中央に一人立っている人がいた。

月を隠す叢雲のような白灰色の髪を無造作に後ろで縛り、よれよれの白衣を着ている。そして虚ろな目に普段はかけていない眼鏡をつけた深君がそこに立っていた。

どうやら、気が付かないうちに彼のもとへと歩いてきてしまっていたらしい。そのことに気がついて顔に熱が広がる。いつもとは異なるアンニュイな雰囲気を醸し出している彼の姿を見たことも相まってことさらだった。

 深君は扉が開いたことにも気が付かずに手元にあるものをじっと見ていた。何だろうと思い、そちらを見てみる。その視線の先には湯気が出ているカップが二つ置いてあった。

「深君?」

 声をかけるとビクッと深君が肩を震わせる。そして驚いた表情のままゆっくりと顔をこちらに向けてきた。そして、声をかけてきたのが響だと分かるといつもの柔和な表情を浮かべた。

「響ちゃん……ホットミルクティー入れたんだけど、よかったら飲んでいかない?」

 クマが濃く出ている疲れ切った顔と渇ききったかすれた声で深君は微笑みながら問いかけてきたのだった。

 

 

 

 

 深からのお誘いに響は答え、二人は今研究室のソファーに二人並んで腰かけてミルクティーを飲んでいた。

「突然押しかけてごめんね?なんだか寝付けなくて」

「気にしないで。僕の方こそ全然顔を見に行けなくてごめん。どうしても手が離せなくてさ……」

廊下で響が考えていた不満にドンピシャで深は謝罪をした。カップを置き、シュンとしたように肩を落とす。そんな深の姿を見て響は慌てたように両手を顔の前で振った。

「忙しいのは分かっているから大丈夫だよ!」

「……そう?」

「ホントホントダヨ」

 首をかしげて疑ってくる深から響は顔を逸らしながら答える。

本当は寂しかったと言えればいいのだけれどもヘタレてしまった。深から完全に顔をそらすとよよよっと涙を流して響は自分を呪った。あと、もっと構ってと言えば来てくれるのだろうかと邪なことを考えてしまった。

「……ありがとうね、響ちゃん」

一人嘆く響の後姿を見つめていた深はそのまま声をかける。響が振り返ると深の優しい視線が響の瞳を捉えて離さなかった。それだけで響の胸が跳ねる。

「行き詰っていたところだったから……響ちゃんの声を聴いたら、なんだか落ち着けた気がする」

落ち着くと微笑みかけられたことに胸が一層弾む。けれどもそれ以上にチクリとした苦い痛みが跳ね胸の中を細く駆けていった。

「……了子さんのこと、大丈夫?」

その笑顔には疲れだけではない、大切な人がいなくなった寂しさがあることを響は感じ取っていた。深は少し俯いて響から目をそらす。そして顔を上げると視線をラボの奥、計器に繋がれたCDの方へと向けた。

「……まだ簡単には飲み込めない。けど、約束したから……。頑張るだけだよ」

 左手で深は自分の髪をゆっくりと撫でるようにかきあげる。そして二回トントンと自分の首元を叩いた。

「それに最後はきっと……分かり合えたと思うから」

 再び響を見て無理をした笑みを深は浮かべる。そんな深の右手を響は両手で握りしめた。そしてグイッと深の瞳を覗き込むように近づく。

「何か手伝えることがあったら言ってね!私は深君には笑っていてくれた方が……その……好き……だから……」

「響ちゃん……」

 突然の響の行動に深が目を丸くして固まる。響も深も何も言わない。互いの視線が交わって溶けていく。握りしめられた手は放さないままそっと下ろされた。二人の間の距離が徐々に狭まっていく。

その時、計器からピピッという小さな音が鳴った。それをきっかけに響は降参するように両手を上げて深から距離を取る。

「わっ!わわっ!ごめん!近かったね!」

 そそくさとソファーの端っこへと響はスライドした。顔が熱くて仕方がなかった。

(好きって言っちゃった!!)

 自分の発言も思い出して、頬に手を当てて顔を冷やそうと必死になる。

 少しだけ口を開けて響のことを見つめていた深はフッと息を吐くと瞳を閉じてから微笑んだ。

「本当に……ありがとう。……あの時も」

「え?」

 あの時という言葉を聞いて、いつなのか分からなかった響は思わず聞き返してしまう。

「人殺しなんて、してほしくないって言ってくれたでしょ。あの言葉があったから、君がいてくれたから踏みとどまることが出来た気がする。だからありがとう」

 自分たちの前に初めてフィーネが姿を現した時のことを深は話し始めた。

憎しみのまま、復讐を果す覚悟のままでフィーネと対峙していたならば、きっとあの結末はなかった。それどころか、今深は生きてすらいなかっただろう。だからこそ、分かり合えると、手を繋ぎ合えると、そう言ってくれた響に深は礼を言う。

「そっか、力になれたのなら嬉しいな」

「響ちゃんは、ずっと力になってくれているよ」

どくんと再び響の心臓が跳ねる。さっきから顔が熱を持ったまま冷めてくれない。

「わ、私もね……深君の隣にいると、落ち着くんだ」

あの河川敷で話をしていた時からずっと。そう響が答えると深は愛おし気に目を細めた。

「それなら、眠くなるまでここにいていいよ」

 深の言葉は響にとってはとても魅力的だった。思わず浮かれそうになったところで、彼の後ろに置いてあるCDが響の目に留まった。

「うん!あ……でも私のことは気にしないで。研究、佳境なんでしょう?」

「え、でも……」

「いいから。その代わり、私も隣で見ていていいかな?」

「もちろん」

 上目づかいで尋ねてくる響に、少しだけ躊躇ってから深は了承し、先ほど音の鳴ったタブレット端末をソファーにまで持ってきた。パネルを操作するとポンと落ち着いた音が響いた。

 響もその端末を深の隣に座って覗き込む。

「今は何をしていたの?」

「響ちゃんとガングニール、翼さんと天羽々切、それぞれが発生させるフォニックゲインのパターンを、波動関数を用いて計測したんだ。だけど、これがゴールドバッハ彗星レベルの関数幅が生まれてしまっていて、このままだと流生さんや僕が適応するための必要条件や設定が処理しきれない情報量になってしまう。だから調整が必要になってくるわけで、僕や流生さんの生体情報を包除原理の応用を使ってできる限り極少の値に変換すれば……」

「ストップ!ごめん!もう少し分かりやすくいってくれないかな!?」

 あまりに専門的な用語が飛び出してきて思わず響は悲鳴を上げてしまう。そんな響の様子を見て深はきょとんとした後にあーっといった様子で上を見て考え始めた。

「ええっと簡単に例えて言うと、響ちゃんたちからもらったお下がりの服を僕たちが着れるように縫い直しているところ、かな?」

 その例えなら分かると言うように響が大げさに頭を縦に振るのを見て深は安心して苦笑いをすると再びタブレットへと意識を移した。

 響も邪魔してはいけないと思い、その様子を黙って隣で見続けている。

 そうして、二人とも言葉を発さないまま静寂が研究室を支配し始めた。

深の横顔を見つめる響に聞こえてくるのはコチリコチリと秒針の動く音と換気扇が回る低い音、そして自分の内から響いてくる心臓の音だけだった。

心地よいリズムの心音とホットミルクの微かに甘い匂い。そして隣に居る深の熱が夜の静寂に溶けて自分の中に沁み込んでくるのを響は感じていた。自然と、響の身体から力が抜けていく。

「深君は……すごい……よね」

「どうして?」

 徐々に重くなる瞼に耐えながら響は思ったことを言葉にする。深はタブレットに集中していてもその言葉に返事をした。

「だって……ノイズと戦う力を作ろうとしているんだもん。……たくさんの人を救えることだよ」

 たどたどしく、途切れ途切れに述べられる響の素直な賞賛を聞いて、深の手が動きを止める。

「そう……かな……」

 自信がないというように弱弱しく深は響に聞き返した。

「うん……だって……私のことも……貴方は……」

「響ちゃん?」

深の問いかけに響から答えが完全に返ってくる前に、深は自分の肩にとんっと心地の良い重さが掛かってきたのを感じ取った。

顔を上げて自分の肩を見てみれば、瞳を閉じた響が穏やかな寝息を立ててもたれかかってきている。

「……寝ちゃったか」

「ん……」

 力が抜けた響の体がバランスを崩して肩から外れて倒れかけてしまう。深はすぐにタブレットを机に放ると空いた手で響の体を抱きかかえて支えた。そしてそのまま自分の膝の上へと響の頭を移動させる。

「……ん、深……君……」

 膝の上に頭を乗せた途端、響は寝言で深の名前を呼びながら身じろぎをして位置を整え、完全に安眠するためのポジションを確保した。

「やっぱり、モチにそっくりだ」

その姿が膝の上でよく眠る飼い猫にそっくりで深は苦笑する。

初夏とは言えまだ夜は冷える。深は着ていた自分の白衣を脱ぐと響の体にかけてあげた。

あどけない幼い寝顔、膝にかかる重さはあまりにも軽かった。シンフォギアを身に纏って戦う普段の彼女とは違う、年相応な少女がそこにはいた。

「……」

 その寝顔を見て深はそっと響の頭を撫でて髪を梳く。優しく、愛おしむような穏やかな手つきで何度も何度も。

「おやすみ……ヒビキ」

眠る響に、違う誰かの影を見た深はそっとつぶやき、頭を撫で続ける。

かつて、誰かにそうしてもらったように。いつか、誰かにそうしたいと願ったように。

時計は深夜3時を回る前だった。まだ、夜は続く。

 

 

 

 

覚めた響が最初に目撃したのは自分の顔の上で目を閉じて小さく寝息を零している深の寝顔だった。

 寝ぼけていた脳が状況を理解するまでに数十秒を要してからようやく、響は自分が深の膝の上で眠っていることに気が付いた。

「—————っ……——ッ!!?はわわわわわ!」

 途端に羞恥が全身を襲い、響は悲鳴にすらならない声をあげ、バネのように勢いよく深の膝の上から飛び起きる。

 やってしまった。邪魔をしないようにと思っていたのに彼の膝の上でぐっすり眠ってしまうなんて、と恥ずかしさと後悔と先ほどまで感じていた心地よさへの名残惜しさをない交ぜにしながら、響は自分にかけられていた深の白衣を握り締めて頬を赤らめている。

「……深君」

 熱のこもった表情のまま、響が深を見つめて呼びかける。しかし、深は起きる様子もなく、ん…と寝息を零すだけだった。

 深が起きないことに少し安堵した響はすぐにこの場を後にしようと考えた。それはあまりに恥ずかしさが限界を迎えていたからだった。

「ピッ!?」

 しかし、響の目論見はうまくいかず素っ頓狂な声を漏らすしかなかった。というのも動こうとした瞬間に深の体が響の方へと倒れこんで来たからだった。図らずも今度は響が深を膝枕する形となった。

「ちょっ……これはッ!」

 裏返った声で深に触れることもできずに威嚇するレッサーパンダのような体勢で硬直するしかない響。

 そんな彼女のことなど気にも留めずに深は寝息を立てて身じろぎをする。

 その行動が一層響の羞恥心を爆発させる。チクチクとした髪の感触が膝に伝わるたびにゾクゾクとした電流のようなものが体に流れていった。あまりの感覚に響はきゅっと目をつぶる。

「深君……そんな…くすぐったい……」

 もう限界だった。なんだこの幸福空間は。もうだめだ。このままでは私の中で何かが壊れてしまう!そうなる前に何とかこの天国(試練)から逃れなければ————

「……先…生」

 浮かれていた響は冷や水を頭から掛けられたように先ほどまで感じていた高揚感がすっと引いていくのを感じた。そして、その代わりに胸の中に血がにじみ出るような痛みが広がっていく。

「…………」

響はあげていた両手をそっと下ろして、深の頭を包み込むように抱きしめる。

テーブルの上には少しぬるくなったミルクティーが置かれていた。

冷たい胸の痛みが今まで気づかなかったことを気づかせていく。そのミルクティーを入れたときに、深君は誰を想っていたのかも。

「大丈夫だよ……」

それ以上は言葉に出せなかった。もし声に出してしまったら、静かな夜が壊れてしまいそうで。

だから、ただ寝顔を見つめ続けた。

夜の闇を抱えたまま眠るその横顔を。

そして、心の中でそっと呟いた。

—あなたが誰を呼んだって……私は、ここにいるから—

時刻は朝の4時を指している。

夜明けにはまだ、時間がかかるみたいだ。

 




最後までお読みいただき誠にありがとうございました!

え?しないフォギアなのにギャグじゃないって?まあそれはうん。すみません、こういう雰囲気が好きなものでついつい筆が乗ってしまいました。

次回は流生が主役!ギャグ回にするつもりなのであしからず!!

それではまた次回お会いしましょう!!

感想コメント、お気に入り登録、評価、心からお待ちしております!!
何時も書いてますが、感想は本当に飛び跳ねるほどうれしいのでどしどし書いてくださいな~この前なんか職場で感想が届いていることに気が付いて飛び跳ねてしまい先輩に白い目で見られましたからねww
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