装者の男女恋愛が見たいッ!戦姫絶唱シンフォギア SLS 作:ふみー999
私の部屋にはクーラーが無いので、扇風機とサーキュレーターで頑張って執筆している次第ですが、最近は暑さがましで、令和ちゃんようやく仕事を覚えてきてくれたかと安堵しております。
さてさて、それでは第4話お付き合いくださいどうぞ!
QUEENS Musicの会場から少し離れた場所に一台のコンテナ車が停められていた。その内部にはおびただしい数の計器が並べられており、複数のモニターには様々な計測結果と、ライブ会場の様子、そして、心臓のような形をした物体が映し出されている。
その薄暗く怪しい空間に、車椅子に座った一人の年老いた女性がいた。
右目は幅の広い眼帯で覆われてみることが出来ない。左目は何かを憂いているような、けれども力強く決心した強い意志が宿っており、まっすぐにライブ会場の様子を見つめていた。
端末の一つが音を立てたことに気づき、老婦人はそちらを見る。そこにはメッセージが表示されていた。
≪Si Vis Pacem,Para Bellum -汝 平和を欲せば 戦いへの備えをせよ-≫
「ようやくのご到着。随分と待ちくたびれましたよ。これで計画を始められますね」
メッセージを読んだ老婦人は満足げに笑みを浮かべた。そして後ろを振り返る。
「貴女方も、準備をお願いします」
そこには二人の少女が立っている。その胸元でギアペンダントが二つ、赤く輝いているのだった。
ライブ会場では今まさにマリア・カデンツァヴナ・イヴがパフォーマンスを終えて観客へ向けて手を振っているところだった。
会場全体は彼女のカラーである白一色に染まり、割れるようなマリアコールが響き渡っている。そして、その熱気は会場だけにとどまらず、生中継で放送されている全世界中に歌姫マリアがもたらす興奮が広がっていっていた。
その様子を未来たちは会場の関係者席からサイリウムを手にして見ていた。
「おぉ~流石、マリア・カデンツァヴナ・イヴ!生の迫力は違うねぇ~!」
「全米チャートに登場してからまだ数か月なのにこの貫禄はナイスです!」
興奮冷め止まぬといった様子で、弓美と詩織はマリアのパフォーマンスを褒めちぎる。
「今度の学際の参考になればと思ったけど、さすがに真似できないわ~」
「それは初めから無理ですよ、板場さん……」
あまりに突飛なことを言う弓美に詩織は呆れて苦笑いするしかなかった。その横で未来は時計を気にしていた。
「……」
「まだビッキーから連絡来ないの?メインイベント始まっちゃうよ?」
「うん……」
響が遅れていることを気にしているのだと気づいた創世が未来に尋ねると、未来は少し沈んだ様子で答える。詩織も残念そうに会話に混ざる。
「せっかく風鳴さんが招待してくれたのに、今夜限りの特別ユニットを見逃すなんて」
「期待を裏切らないわね、あの子ったら」
弓美は呆れたといった様子で軽口を叩いた。すると、ガチャリと音を立てて扉の開く音が聞こえてくる。
「響!」
未来はようやく響が来たのだと思い嬉しそうに振り返る。しかし、そこにいたのは予想外の人物だった。
「悪いな、ヒビの字じゃなくてよ」
「流生さん?」
そこに立っていたのは、ばつが悪そうに後頭部をガシガシと掻いている栴檀流生だった。彼は申し訳なさそうにしながら、空いている未来の横の席に腰掛けた。
「重ねて悪いが、相席させてもらってもいいかい?」
「ねぇ、ヒナ。この人って」
未来が返事をしようとしていると創世が耳打ちで誰なのかと尋ねてくる。そういえば、三人とは初対面だったと気付いた未来は流生のことを紹介しようとした。しかし、それよりも先に何かに気がついた弓美が割って入ってくる。
「もしかして、噂の翼さんの幼馴染!?」
珍しいものを見たといった好奇の目を弓美が向けてきていることに気がついた流生は慣れているといった様子で三人に頭を下げて自己紹介を始める。
「ああ、自己紹介がまだだったな。
「どうしたんですか?関係者席に来るなんて。フェアじゃないし、遠いから嫌だって言っていたじゃないですか?」
そのやり取りを見ていた未来は驚いたままに尋ねる。以前彼は関係者席で見ることにかなり抵抗があると口にしていたのだ。それなのにここに来るとは何かあったのではないかと勘繰ってしまう。
しかし、流生はというとあまり聞かれたくなかったというように渋い顔をして、やがて観念したというようにため息をついた。
「……なに、ただの情けない話さ。チケットの抽選に落ちちまってな。流石に一般だけじゃ取れなかった」
またまた予想外だった未来は口を少し開けて、かける言葉を失った。そんな未来に代わって驚いたように詩織が尋ねる。
「幼馴染ですのに、自分でチケットを取っているんですか?」
「あたぼうよ。ファンなら自分でチケットとってなんぼだろ?」
「でも、一般って。先行に応募しなかったんですか?」
得意げに詩織に返事をした流生だったが、創世の指摘に痛いところを突かれたと、ぐぅと喉を鳴らしてライブ会場が見えるガラスの方へ視線を向けた。
「……ちょいとバタバタしててな。予約するのを忘れちまってた」
「それって……」
ファンクラブの先行抽選に応募しなかったという流生の言葉を聞いて、さらに未来は驚いた。あの栴檀流生が、三度の飯より翼さんのライブが好きなこの人が、予約を取り忘れるなどあるのだろうか。もし、彼の言うことが本当だとしたら、よほどのことがあったのではないか。それを問おうとしたが、未来が口を開くより先に目を輝かせた弓美が流生に別の質問を投げかけていた。
「あのあの!幼馴染ってことは風鳴さんの昔のこととか知っているんですよね!」
「……あぁ、話してもいいがまた別の機会にな。メインイベントが始まるぞ」
弓美がぐいぐいと顔を近づけて純粋な質問をしてくる様子に流生は一瞬面食らい顔を引いたが、すぐにフッと軽く笑って暗転したステージの方を見ることで弓美たちの視線を誘導した。
照明が消えた会場には、白と青のサイリウムの光が徐々に光を放ち始める。それに答えるかのように舞台上へと二人の影が舞台装置によって上がってきた。彼女たちの後ろに設置された巨大モニターにMaria×Tsubasaの二人のアーティストの名が浮かび上がって消えていく。
「見せてもらうわよ。戦場に冴える抜身の貴女をッ!」
白いドレスのような衣装に身を包んだマリアがマイクを左手に携え目下にいる翼を見下ろしながら凛々しく言い放つ。
そんなマリアと対比になるような黒色の和装をイメージした衣装に身を包んだ翼はマリアの言葉に身じろぎ一つせず、ただ視線だけで常在戦場の意志を返した。
歌が始まる。マリアの突き抜けるような透き通ったベルディングと鋭いソプラノが完璧な調和を作り、燃え盛る不死鳥を歌に乗せかけた月が浮かぶ今宵の空へと飛び立たせた。
二人の動きは歌が進むごとにシンクロしてゆく。その二人の歌姫の雄姿に観客席からは割れんばかりの歓声が湧いた。
光が空を舞い、二人を照らす。マイクという得物を構えた二人は向き合い、同時に観客へと顔を向ける。それはデュエットでありながら、さながら歌を使った決闘のようで、二人とも決して相手には負けぬという強いまなざしをしていた。
(流石だな、お嬢。練習期間も少なかったのにマリア嬢に完璧に合わせている。……それと)
そんなライブの様子を見ていた流生は翼がパフォーマンスの質がいつもと変わらず完璧であることを確認すると横にある別の関係者席の方へ視線を向けた。
そこにはプロデューサーたちやその関係者がライブを見ているだけで、その中に先ほどの異邦人の姿は見られなかった。
「特等席ってのは、ここじゃねえのか……だったらどこに」
次いで観客席の方にも目を向け、観客一人ひとりを目視する。ざっと見でしか確認できないが、そちらにも見当たらず怪しい影は見られなかった。流生は他にもいないかと捜索を続ける。
「……」
未来は隣で視線を動かし、翼の歌を聞いていない流生に一抹の不安を感じたのだった。
衣装を翻し、歌と舞で魅せる二人。観客もまた合間にコールを乗せ、曲を盛り上げていく。
二人が歌うステージの上。照明を吊るしている鉄柱の上に静かにたたずむ一人の男がいた。男は左腕に着けている円状のデバイスの側面を回すと、そのまま吊るされている照明に触れる。
すると街路灯のような焦げたオレンジ色の光がポウッと発光して腕の機械から、照明へ移動して消えた。
「こっちの仕込みは完了……。おやおや、凛々しいねぇ」
満足げに笑みを浮かべ、男はそのまま目下のマリアを見つめる。パフォーマンスは完璧。それをこなす彼女の表情もステージを楽しんでいる様子だった。その表情を見た男もまた少しだけ口角を上げる。だが——
演出の炎が上がる。逆巻く熱く赤い光に照らされた男の顔にはもう、笑みは消えていた。
「
翼とマリアは燃え盛る炎が立ち上る花道を走り抜け、サビを歌い続ける。二人も、観客たちも、この燃え盛る炎のように熱く歌へと酔い溶けてゆく。
燃える火を背負って二人の動きも歌もより一層高みへと昇っていく。
不死鳥の炎が燃え盛り、焔の羽根が会場へと降り注ぐ。満足のいくパフォーマンスをすることが出来た二人の顔は晴れやかで、歌を聞いた観客たちも大満足に完成を上げていた。
「ありがとう、みんな!」
翼が声を掛ければ、会場一色が青く染まり、大歓声がさらに鳴り渡る。
「私はいつも皆から沢山の勇気を分けてもらっている!だから今日は、私の歌を聞いてくれる人たちに少しでも勇気を分けてあげられたらと思っている!」
翼の素直な気持ちを聞いた観客たちも声援でその気持ちに答えた。続いてマリアも声を観客に向けて言葉を紡ぐ。
「私の歌を全部、世界中にくれてあげる!振り返らない!全力疾走だ!ついてこられる奴だけついてこい!」
その言葉は翼と比べて挑発的で民衆を扇動する演説のようだった。絶対的な自信と共にマリアは翼の方に目を向ける。
「今日のライブに参加できたことを感謝している。そしてこの大舞台に日本のトップアーティスト、風鳴翼とユニットを組み歌えたことを」
「私も素晴らしいアーティストに巡り合えたことを光栄に思う」
翼はマリアの方へと近づくと手を差し出し、握手を求めた。すぐにマリアもそれに応じて握手で返す。
「私たちが世界に伝えて行かなきゃね。歌には力があるってこと」
「それは世界を変えていける力だ」
握手を終えたマリアがステージの中央へと歩いてゆく。そして、マイクを通して声を発する。
「そして……もう一つ」
「ッ?」
その声は先ほどまでとは異なってどこか強張ったものだった。マリアの変化に戸惑う翼をよそに、マリアは右手を高々と掲げる。
「ッ!?こいつはッ!!」
流生は目の前の事象に目を疑った。マリアが手を掲げるのと同じタイミングで観客席のいたるところから突如としてノイズが出没する。
ノイズの出現に観客たちは混乱を起こし、我先にと会場の外へと避難しようとした。
「……狼狽えるな」
ステージ上に立つマリアは小さく独り言のようにつぶやく。そして次の瞬間マイクに向かって大声をあげた。
「狼狽えるな!!」
その声を聞いた観客たちは正気を取り戻し、パニックが収束する。ノイズもまた、観客に襲い掛かることもなく、静止している。
その異様な光景を関係者席から見ていた未来たちもまた困惑していた。
「アニメじゃないのよッ!?」
「なんでまたこんなことに……」
誰もが混乱している状況の中で流生はすぐにCDの側面を回し、二課へと通信を入れる。
「こちら、流生。QUEEN Music会場内に複数体のノイズが発生。おっちゃん、状況見えているか?」
≪状況はこちらでも把握している。詳細を確認中だ≫
報告を入れると即座に弦十郎が応答する。司令部の方も突如として現れたノイズに混乱したのだろうが、すでに自体収束へ向けてそれぞれが動き出しているようだ。流生もまた、現状打破のために確認を行う。
「ヒビの字たち装者と深のやつは?」
≪現在、ヘリでそちらに向かっている。現着までには40分はかかるだろう≫
「孤立無援か……了解した」
頼りの綱がすぐに来られないことに冷や汗が出る流生だったが、仕方がないと割り切るしかなかった。すると、通信に割って入ってくる人物がいた。今話題に上がった深だった。
≪こちら槙野。流生さん聞こえますか!≫
「深か。会場の様子見えているか?」
≪はい、ライブ中継で確認しています!≫
深も焦っている様子だが、努めて平静を装っているのが伝わってくる。すると深の声を押しのけて響の声も聞こえてきた。
≪師匠!未来やみんなは無事ですか!?≫
「響!」
「ビッキー!」
響の声に反応した未来たちが声を出す。流生はその声を一通り聞かせてから落ち着いた口調で弟子に声をかけた。
「隣に全員いる。心配すんな」
ひとまず、友人たちの安否が確認できたことに響が安堵し息を吐いたのが聞こえてくる。その様子を隣で見ていた深が話を本題に戻した。
≪……実はソロモンの杖を移送する際にも操られたノイズの襲撃に遭いました。そして、岩国基地にも襲撃があり、ソロモンの杖が奪取されています≫
「はぁ!?んな話こっちは聞いてねえぞ!?……おっちゃんと慎次兄か。それで、お前はこの状況をどう見る?」
寝耳に水な突拍子もない大事件を聞かされた流生は驚き声を荒げる。しかし、すぐになぜ自分や翼にその情報が来なかったのかを理解して、情報を止めていたであろう二人の顔を思い浮かべた。後で、ライブに集中してほしいとかそういった理由だろうが、自分にまで連絡が来なかったことについては後で小言を言ってやろうと頭の片隅で考えながらも、この状況について深の考察を訊ねる。
≪二つの事件は無関係ではないと思います。岩国基地を襲撃し、手に入れたソロモンの杖でライブ会場にノイズを発生させた。そう考えるのが一番自然なんだとは思うのですが……≫
「なるほど、同意見だ。だが、なにか引っ掛かってんだな?」
自分の考えていたこととほぼ同じことを言う深に流生は同意する。しかし、真の歯切れの悪い言い方に引っ掛かりを覚えた。
≪……相手がソロモンの杖を手に入れようとした動機が分からないんです≫
「あ?そんなのノイズを操る力を手に入れるためだろう?」
≪そこなんですよ。ソロモンの杖はノイズを召喚、使役する完全聖遺物。それ以外には能力はない。だというのに、ノイズを操る敵がソロモンの杖を求めた。矛盾していませんか?≫
「なるほどな……。なにか裏があるってことか」
言われてみれば確かに変だと、流生も顎に手を当てて考察する。だが少し考えても答えは出ず、一度、首謀者の考えを推理するのを止めた。それ以上に、今考えなければいけないことはノイズによって人質にされた観客とステージ上にいる翼のことだった。
改めてライブステージを見る流生。ノイズによって会場の観客たちは動けないでいる。
「すぐに動く必要があるな。お嬢が鞘走りかねない」
今、この会場は全世界に中継されている。翼がシンフォギアを身に纏えば、全世界にその様子が晒されるだろう。それはアーティスト風鳴翼の死と同義だ。
そして、観客の命と己の夢。その両方を天秤にかけられたとき、翼は間違いなく迷わず観客の命を選ぶ。
(そんなことはさせねぇ。お嬢以外で戦えるやつがいればいいんだ……)
麻薬のような考えが頭に浮かび、流生は通信をしているCDに視線を落とした。
「深、とにかく大急ぎで来てくれ。それまではこっちでなんとかする」
≪流生さん。くれぐれも無茶はしないでください。貴方はまだ万全に戦えるほど天羽々斬と同調することが出来ていないんです。CDで戦うのは、無茶ですよ≫
流生の言葉から何をしようとしているのかを察した深が慌てて止める。
深の言葉を聞いた流生は無理やり不敵に笑ってみせた。
「……無茶かもしれないが、無理じゃない。この場で今戦えるのは、俺だけだ」
≪流生さんッ!≫
声を荒げる深を無視して流生は通信を切る。そして、関係者席の出口から出る前に振り返り、不安げにしている未来たちに声をかける。
「小日向さんたちはここにいてくれ。もし、逃げられそうな隙があったならすぐに逃げろ」
「流生さんはどうするつもりですか?」
未来が流生を案じるように声をかける。流生は視線を外して少しの間考えた後、再び未来の方を向いて答えた。
「やれるはずのことを、ただやるだけだ」
そう言い残し、流生は部屋から飛び出していくのだった。
最後までお読みいただきありがとうございます。
とうとう動き出したマリアさんたち!一体どうなってしまうのか!!
それはそうとやっぱりデュエット曲の色変えが大変だよぉ!!どうじでこんな大変な描写思いついちゃったんだよぉ!!!うわああああん!!!
と毎度毎度悲鳴を上げておりますww
不死鳥のフランメめちゃめちゃ好きですけどね~~
あと、今回からアンケートを実施したいと思います!読者の中で誰が一番気になるキャラなのかなぁ~と私が気になるので!!皆様ご協力お願いします!
それではまた次回お会いしましょう!!
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