装者の男女恋愛が見たいッ!戦姫絶唱シンフォギア SLS 作:ふみー999
9月、10月はどうしても仕事とプライベートが一番忙しい時期になってしまい、なかなか思うように執筆の時間が取れない次第でございました……もっと早くあげられればと忸怩たる思いです。それでもなんとか書き上げることができました!いつ応援してくださっている皆様の声援のおかげでございます!
改めて御礼申し上げます!
さてさて、そんなことを長々と述べていても仕方なし、本編にお付き合いくださいどうぞ!
突如として乱入してきた流生の存在によってステージの上は再び膠着状態に戻った。マリアは流生の実力を測るように警戒を続けている。
にらみ合いをしている流生と翼の通信機に弦十郎からの通信が入った。
≪流生、何をしている!≫
通信機からは驚きと、咎めるような響きを帯びた弦十郎の大声が聞こえてくる。あまりの大きさに流生は顔を傾けながら片目をつぶる。
「独断専行は謝るが、生身のお嬢に戦わせりゃいいってのかよ?今現場で戦えるのは俺くらいだろ」
流生は弦十郎に自分が矢面に立つことの道理を説く。すると弦十郎も流生の言い分を認めざるを得なかったのか、苦々しげに次の指示を出した。
≪クッ……緒川が今中継をどうにかしに行っている。中継が切断されるまでの間、時間を稼ぐんだ。くれぐれも無茶をするなよ≫
「……慎次兄のことは了解だ。だが、別に俺が叩きのめしても構わねぇだろ?」
≪ッ!流生!!≫
弦十郎が険しい口調で自分の名前を呼ぶのを無視して流生は通信を切った。
そんな二人のやり取りを後ろで見ていた翼はマリアから目を離さず自分の立ち回りを流生に伝える。
「流生、何とかしてカメラの死角までマリアを誘導してほしい。そうすれば私も戦える」
「……」
「流生?」
しかし、流生からの返事がなく、思わず警戒を解いて流生の方へと視線を向けてしまう。そこでようやく翼は気がついた。普段の流生とは何か雰囲気が違うことに。
「お嬢は一度引いてくれ。ここは、俺が預かる」
「え……?」
振り向かずに流生はそういうと自分を置いてマリアの方へと歩んでいく。一人で戦うとその背中が告げていた。
その後ろ姿に思わず翼は声を出してしまう。状況は分かる。ギアを纏えない自分が近くにいては戦いにくいことも、いったん引いて体勢を立て直した方がよいことも道理だ。だが、流生が自分を置いて戦いにいくことに翼は言いようのない違和感をぬぐい切ることが出来なかった。
そんな翼の心情など露も知らず、近づいてくる流生に対してマリアは不遜な態度で語り掛けてくる。
「ファンがステージに登って来るなんてマナーが悪いわよ?ここは私と風鳴翼のステージ。無粋だとは思わないのかしら?」
「そうさな、ここは
それに対して流生もまた皮肉で返した。するとマリアと流生、両方から不敵な笑みが消え身に纏う空気が、一触即発の張りつめたものへと変わる。
ステージ上に一陣の風が吹き、それ以外の全ては二人が動き出すのを待ち構えて静かになった。
「疾ッ!」
先に動いたのは流生だった。
肩に薙刀を担いだまま予備動作のない突進、そこから上段斬り。避けられたのならば勢いを殺さず、薙刀を回転させて柄で叩きに行く。
マリアはその二撃目をマイクで受け止め、返す刀で連続攻撃を仕掛ける。
そのマイクでの初撃を流生は受け流しで無効化すると、姿勢を低くして次の攻撃をぎりぎりで回避する。同時に薙刀をビリヤードのキューを扱うように、マリアの足の間に穂先を滑り込ませた。
「栖ッ!!」
自分の肩に柄を担ぎ、体を捻ることで振りぬき、マリアの足を払い体勢を崩させる。そして、低くした体勢からバネのように体を弾ませ、渾身の右アッパーカットがマリアの顎を捉えて吹き飛ばした。
「グッ!?」
よろけながらも、すかさずマリアはマイクでの反撃を行う。だが、それが当たるよりも前に流生は後ろに飛び退いて間合いの外へと退避した。
「やるわね……」
「どうした、殺気が籠ってねぇぞ?こっちは殺す気でやってんだぜ?」
マリアは殴られた顎を拭いながら賞賛する。対して流生はすぐに薙刀を構え直すと宣言通り殺気の籠った視線でマリアを射抜いた。その視線にマリアは目力を強める。
にらみ合いになった時に今度はマリアの通信機に通信が入ってきた。相手はナスターシャだった。
≪マリア、何を遊んでいるのです。彼はシンフォギア装者ではありません。戦いを長引かせたところでフォニックゲインの上昇は見込めない。早々に倒してしまいなさい≫
厳しさのある声でナスターシャは流生を早く処理せよと命じてくる。簡単に言ってくれると、内心思いながらマリアは無理やり不敵な笑みを浮かべて答えた。
「OK、マム。遠慮は無しよ」
宣言通り、今度はマリアが先に動き出す。マイクと体術を使った連続攻撃。決して流生に反撃の隙を与えないという意志が感じられた。
シンフォギアによって増幅された力のこもった連続攻撃を流生は薙刀や手足を使って受け流し続ける。しかし、勢いの増す攻撃に対して反撃する余裕はなく次第に防戦一方になっていく。
「緒川さん!中継はまだ切れませんか!」
その戦いを見ていた翼は流生を案じて通信機に叫んだ。このままでは流生の身が危ない。早く自分も戦えるようにしてほしいと願うように緒川に通信を繋ぐ。
だが、いつまで経っても緒川からの返事はなく通信機は静まり返っていた。
「緒川さん?……まさか、緒川さんの身にも何か……ッ!?」
緒川の身に何かが起きたのではと考えた瞬間、甲高い金属音がステージに鳴り渡る。驚いて二人の方を見れば、刃のように鋭くなり回転するマリアのマントによって流生の薙刀の切っ先が折れて吹き飛ばされてしまっていた。苛烈なマリアの猛攻にとうとう薙刀の方が耐えられなくなったのだ。
流生自身も苦悶の表情を浮かべながら必死に残った柄部分と体術を使ってマリアの攻撃を防いでいる。
「ッ!流生!!」
その姿にマリアはクリスとの初戦を思い出していた。あの時も自分をかばって流生は重傷を負ってしまった。このままではあの時と同じ轍を踏んでしまう。
「クッ!流生、何としてもしのいでくれ!!」
翼はそう言うとマリアの意識が流生に向いている隙をついてステージから逃げ出した。やるべきことはすでに翼の中で決まっていた。
「もう、あの時と同じ失態は犯さないッ!」
流生を案じて何もしないわけにはいかない。翼は振り返ることなく、目的地を目指して舞台裏を駆け抜けていくのだった。
「ッ!逃がさないわよ!」
ステージを後にしようとする翼に気がついたマリアがその背を追いかけようとする。
「させっかよ!!」
すかさず流生はハイキックを顔面に目掛けて繰り出して止める。
しかし、マリアも腕を顔の前に出して防御しその一撃を止めると、もう一度マントを回転させて攻撃を繰り出した。
流生はマントを避けるために膝を曲げて体を倒し回避、そのまま手を後ろについてバク転をすると横に飛び、花道に逃げ込む。
「少し本気を出したのだけれども。威勢がいいのは言葉だけかしら?」
「ハンッ、言ってくれるぜ」
防戦一方の流生を挑発するようにマリアは声をかける。流生も額に汗を流しながらも口角を上げ心が折れていない様子を見せる。
そしてすぐに、マリアから視線を外し、折れた薙刀と周りの様子を観察する。
(あのマントが厄介だな……だったら……よし。穂先は……あそこか。それなら)
折られた刃がマリアを挟んでちょうど向かい側にあることを確認すると、即座に流生はマリアに向けて突進した。
「自棄にでもなったか!」
無策にも猪突猛進してくる流生に面食らいながらも再びマリアは工房一体のマントを翻して流生を攻撃しようとする。
「なってねぇッよッ!!!」
マントが当たる直前。飛び跳ねることで攻撃を回避する。そしてそのままコマの回転軸のようになっているマリアの頭部中央部分に薙刀を叩きこみ、マリアをひるませた。
「痛ッ!」
頭部への打撃にマリアがひるむと同時に、渾身の一撃を叩き込んだ薙刀もバキっという音を立てて折れてしまう。だが流生は気にせずそのままマリアの後ろに飛び越えて回り込む。
「おまけだ!!」
そこに落ちていた薙刀の切っ先を足で掬いあげると即、マリアの顔に目掛けて蹴り飛ばす。
「チィ!こんなもので!」
飛んできた穂先を反射的にマリアは弾き飛ばし、意識がそちらに向いてしまう。そのわずかな瞬間に流生の姿がマリアの視界から消え失せる。
「消えたッ!?どこに……ッ!」
流生の姿を見失ったマリアは焦り左右を見渡す。しかし、どこにも流生の姿はない。
「逃げた?……ッ!?」
周囲を見渡していてそこでようやくマリアは気がついた。自分の目の前、ステージの床にわずかに影が映っていることを。
「上かッ!……ッ!しまった!」
マリアは見上げることで見失った流生の姿を見つける。そして彼が背にしているスポットライトの光をじかに見てしまい目がくらんでしまった。
その隙を流生は見逃さない。天井を蹴り、一気に降下。その際に一回転し、先ほどマリアが弾き飛ばした薙刀の切っ先をかかとで回収、刃先をマリアに向け、そのままかかと落しを繰り出そうとする。
「ギルスヒールクロウだあああああ!!」
特撮界隈でも殺意の高い一撃。獲った、と流生が思った瞬間だった。
流生よりもさらに上の空から無数の桃色の丸鋸と緑の鎌、二種類の刃が流生目掛けて飛び込んできたのだ。
「ッ!?新手かッ!クッ……!!」
流生は攻撃態勢から無理やり体を捻り刃の軌道から逃れようとする。
流生は最低限の急所となる部分をガードする。しかし、得物を無くして空中にいるため防ぎきることはできず、無数の刃が流生の身体を切り刻む。傷を負った流生はそのまま吹き飛ばされ、花道の上に倒れ込んでしまった。
「グッ……装者が、三人ッ!?」
倒れ伏した流生が顔を起こして見れば、ザラリとした金属同士がこすれる音を立てて二人の少女がマリアの前に着地してきていた。しかし、ただの少女たちではない。それぞれが全身は黒を基調としつつもそれぞれ、桃色と緑色を刺し色にした装甲を身に纏っている。その装甲は間違いなくシンフォギアだった。
「危機一髪」
表情の薄い顔で流生を見つめながら淡々とつぶやいたのは桃色のギアを身に纏っていた小柄な少女だった。手に武装は確認できないが、頭部に巨大なユニットをツインテールのように装備している。おそらくそこから先ほどの無数の丸鋸を射出していたのだろう。
「まさに間一髪だったですよ」
もう一方、緑色のギアを纏った少女は対照的に自信があることを隠さない得意顔を浮かべていた。手にはその身の丈には不釣り合いな巨大な大鎌を手にしている。
「調と切歌に助けてもらわなくても、貴方程度に遅れを取る私ではないんだけどね」
マリアは調と切歌と呼んだ二人の少女の間を割って入るように流生の元へと歩み寄ると手にしていたマイクの先端を倒れている流生に向けてきた。
そして、人のいないこの会場全体に聞こえるように言葉を発した。
「さて、これで前座はおしまい。そろそろ逃げ出した本命に再登壇を願おうかしら?それとも、大事なファンが殺されなければ戦う気も起きない?」
マリアの言葉に応じるように、今までアリーナで待機していたノイズたちがゆっくりと流生を取り囲もうと近づいてくる。このまま流生を人質にして翼を炙り出す目論見のようだった。
「……誰が前座だって?」
だが、マリアの足元からひるむことのない声が聞こえてくる。その声にマリア達も流生を見下ろせば、そこには闘志の消えていない瞳があった。
「俺は、まだやれるぜ」
今にも目の前にいるマリア達を食い殺さんとせんばかりの殺気の籠った瞳。その反抗的な目にいらだった切歌がすぐに鎌を構えて流生目掛けて振り下ろした。
「だったらとっととくたばれデス!」
鎌が振り下ろされる直前に流生は震脚の要領で地面を叩いて体を跳ね起こして鎌を避ける。そしてそのまま、攻撃してきた切歌に目掛けて拳を振るおうとするが、横からマリアの蹴りが飛んできて脇腹にもろに食らってしまう。
「グッ……!」
多少は加減されていたのだろう蹴りだったが、シンフォギアの蹴りを食らった流生は苦悶の声を上げてアリーナへと吹き飛ばされてしまう。流生が飛んでいくとまるで得物を投げ込まれた魚のように、ノイズたちが流生の方へと集まっていった。
「ッ!勝手なことを!」
その行動は予想外だったのかマリアも思わず声を上げてしまう。
空中にいる流生は眼下に広がるノイズたちを見下ろすと口元へ左手を持って行った。その口元が微かに笑っていたことを本人すら知りえないままに。
「悪いな深!無茶するぞ!」
腕に装着されているCDのボタンを押すと、ノイズ交じりの電子音声が鳴り渡りその起動を告げる。アイドリング状態になったCDからは明らかに何かしらの部品が正常に動いていない嫌な音が聞こえてきているが、流生の周辺には活性化された青いフォニックゲインが浮遊し始めた。
流生は変身ポーズのように腕を一度前に突き出してから右手をCDに当てその側面を一気に回転させる。
「采声ェ!!」
声紋認証が行われるとイグニッションされたCDが高速回転を始め、周辺のフォニックゲインがより一層、強力な青い閃光となって流生の身を包み込み、それと同時にノイズの群れの中へと流生は飲み込まれていく。
己が未熟の水鏡
発光が終わるのと同時に、雑音だらけの翼の歌が鳴り渡る。そして、流生の周辺にいたノイズたちが円形に一斉に吹き飛ばされて炭化していく。爆心地を見ればそこには姿の変わった流生が片膝と拳を床につけて着地していた。いわゆるスーパーヒーロー着地である。
その装いは金属のような、布のような、不思議な素材となった青いフォニックゲインが流生の全身を包んでいる。その衣装は武士が戦場で着る羽織のようなものだった。
だが、その鎧も完璧ではない。不安定さを表すかのように所々が妨害電波の影響を受けた映像のように、輪郭がぶれ、姿が明滅している。ラグが起きていると言えば分かりやすいかもしれない。そして全身に稲妻が走っており、それがパチリっと弾けるたびに流生は苦悶の表情を浮かべていた。
「くっそ、水の中にいるみてぇだ。思うように動けねぇ……テクターギアかってんだよこいつは」
ゆっくりと立ち上がりながらCDの付け心地を確認するように腕を回し、流生はその動き辛さに文句を言う。だが、どうしようもないと判断したように深く息を吐くと、様子を警戒していたマリア達目掛けて左手を掲げ、人差し指を曲げて、挑発するように招く。
「まあいい。来い、有象無象。本当の戦いはここからだぜ?」
「……ッ!」
「調子に乗んなデス!」
その挑発に応じるように調と切歌が二人同時に流生目掛けて飛び出してくる。流生は慌てることなく、右手を左手に添えるとCDの側面を再び回した。
「
CDが回転すると呼応するように流生が纏う装甲が発光を強め、フォニックゲインが蛍のような淡い光となって中に漂い始める。それはやがて流生の手元に集まっていくと一振りの薙刀の形を徐々に作り出していった。——だが。
「チィ!やっぱり無理か!」
薙刀が完成する一歩手前で集まっていたフォニックゲインが突然はじけ飛び霧散してしまう。起動実験の時にもこうなったため、ある程度覚悟はしていたが今回も失敗したことに苛立ちが募り、舌打ちをした。
失敗している間に調と切歌が近づいてきており、丸鋸と鎌を構えている。あと数歩でその刃の間合いの中に入ってしまう所だった。
「だったら……」
攻撃が来るまでのわずかな時間。流生は脳内の特撮アーカイブからこの状況を打破するための策を全力で探し回っていた。
(1対3での戦い。かつ徒手空拳で挑まなければいけないこの状況。一番合った戦い方は……あった。あの3人を相手に立ち回ったこの拳ならッ!)
やがて、目的の戦い方を見つけた流生は余計な力を体から抜いた。
調と切歌の攻撃が来る瞬間、流生の身体は完全に無防備になる。それを絶好の隙だと判断した二人は同時に大鎌と丸鋸を繰り出した。
「猛きこと、獅子の如く……」
「うそ……」
「まじデス!?」
その攻撃が流生の身体を引き裂くことはなかった。調の丸鋸は流生の右膝と肘によって挟まれて止められ、切歌の大鎌は間合いを詰められて柄の部分を腕によって抑え込まれていた。
「強きこと、また獅子の如く。臨獣ライオン拳!この程度のハンデ、なんするものぞ!」
二人の動きが止まった隙を流生は見逃さず、二人の武器を弾き飛ばして体勢を崩させるとサイドキックを浴びせて蹴り飛ばす。遅れてマリアもマントを飛ばして突き技を放つが、流生は上体をずらすことで避け、マリアが近づいてくるのに合わせて正拳突きを繰り出した。
マリアも相殺するべく蹴りを繰り出す。両者ともに相手の一撃によってそれぞれ弾き飛ばされ、マリアはステージの上にまで押し戻されてしまった。
「まるで手負いの獣ね。厄介だわ……1対3で仕留めきれないだなんて」
攻撃を受けた足のしびれを感じながら、流生の実力を改めて評価し直している。
(くそ、装甲がまともに働いてねぇ!装者が三人、さらに後詰でノイズの軍団。長期戦になればじわじわ削られていくだけだ……)
一方の流生も、攻撃に対応できたものの、相手の威力が高く、攻撃を受けた部位に鈍い痛みを感じていた。そして、周りを見渡せば、吹き飛ばされたために数多いるノイズたちの中央へと来てしまい、再び囲まれてしまっていた。ステージを見ればこちらを再攻撃しようと機をうかがっているマリアたちの姿が見える。CDを使っても劣勢が覆ったわけではないようだ。
(だったら、乾坤一擲だ。フィーネの時のように必殺の一撃で全員蹴散らす!)
流生はCDに拳を叩きつけるようにしてボタンを長押しする。
すると、再度CDからひび割れた電子音声が鳴り、流生の羽織が稲妻を帯びて発光を始める。
「グッ!じゃじゃ馬がぁ!
声紋認証を済ませCD側面を思いきり回すと、さらに噴出されるフォニックゲインの出力が上がる。その度に電撃が自分の体を焼いていく痛みが増し、流生はそれに耐え続けた。
それでも力を制御しきれていない。流生の身体から漏れ出たフォニックゲインが周囲の会場を破壊しながらノイズを消し炭に変えてゆく。
「臨獣ライオン拳臨技ッ!」
それでも流生は止まらない。最大の一撃を放つべく、獅子のような型を演じて構えを定める。己の身体から吹き出るエネルギーを推進力へと変え、壇上にいるマリア達へと突撃していく。
「地獄へえええええええ!!」
踏み込むごとに吹き出す威力を増していく流生。だがしかし、前に進めば進むほど、CD不適応による体への負荷とは異なる抵抗力が生まれていくのが感じられた。それはまるで蜘蛛の糸に徐々に捕らえられたかのような感覚だった。
「クッ!剛勇衝打ぁ!!!!」
だがそんなものを流生は気にも留めない。速度を上げ、壇上にいるマリア達目掛けて渾身の拳を振りかぶる。まさに必殺の一撃だった。
「おやおや、酔いしれろとは言ったが、突撃しろなんて言ってないぜ俺は?」
男の声が聞こえてくるのと同時に、流生の拳はマリアの顔面から数センチのところで止まった。いや、拳だけではない。流生の全身は見えない何かに縛り付けられたかのように空中で制止したのだ。
「こいつはッ!?」
流生が状況を理解できずにいるとゆっくりとした靴音が舞台袖から聞こえてきた。
「……やっと来た」
「遅いデス!」
その靴音と声を聞いた調と切歌が砕けた雰囲気を出しながら文句を言う。マリアは目を閉じると少しだけ表情を柔らかくして声のする方へと顔を向けた。
「働きなさいって言わなかったかしら?」
まだ舞台裏の暗闇の中にいる声の主はフッと軽く笑った様子で三人からの苦言を受け止めた。
「おやおや、手厳しいねぇ~。これでも色々仕込んで来たんだが」
ゆっくりとその人影が舞台へと昇り、ついにその姿を現した。流生にはその姿に見覚えがあった。
鍛えられた筋肉に、口元には整えられたひげを蓄えている。そして印象的な街路灯のようなオレンジがかった茶色い短髪をした異邦人。ライブ開始前に舞台裏でぶつかった男だった。
だが、重要なのはそこではない。その装いが先ほどとは別の物に代わっていたのだ。金属のような、布のような、不思議な光で構成された白銀の白衣を男は身に纏っていた。
「てめえは、さっきの!?何者だ!」
「おやおやオレかい?」
流生が叫ぶと男はおどけたように答え、指をパチンとはじく。すると、スポットライトの光が男に向けられた。
男は仰々しく芝居のように手を添えてお辞儀をする。その手には流生のものと同じCDが装着されていた。
お辞儀を終えると男はゆっくりと顔を上げた。
「ジョー=アニマーレ。しがないただのテロリストさ」
最後までお付き合いいただきありがとうございました!!
今回は色々と語りたいことがあります!!
まずなんと言ってもとうとう名前を名乗ることができた第三のオリ主!ジョー=アニマーレ、ジョー=アニマーレでございます!皆様お騒がせしておりますジョー=アニマーレでございます!ジョー=アニマーレを何卒よろしくお願いいたします!皆様のご声援にお答えしたくジョー=アニマーレこれから励んで参ります、ジョー=アニマーレ、ジョー=アニマーレに清き一票をよろしくお願いしますなんてボケをかましたくなるくらいには早く出したかった男。名乗りの場面は初期構想から考えていたので今回書けて感無量です!しがないただのテロリスト、一度は言ってみたい日本語ですね、はい。
そんな彼がこれからどう活躍するのかぜひご期待くださいm(_ _)m
そして今回はもう一人語りたいです。そう流生ですね。やっぱり彼の戦闘シーンは書いていて楽しくなります(笑)グリングリン動くので表現するのに苦戦しながらもその苦戦が楽しかったりする次第です。あと何と言っても特撮ネタを仕込めるところが好き。臨獣ライオン拳使おうってなったときは思わず叫びましたからね。ひゃっおう理央様最高だぜ!構想段階では、宇宙拳法とか星心大輪拳とか使う案もあったのですが(その場合ホワタァーと彼に叫ばせていました)、きっと頭の中のメレ様が使えと言ってきたのでしょうそれなら仕方がない。ギルスヒールクロウもやっぱり今年はアギト20周年ですからね仕方ないです。……いやちゃんと心理描写としての意味も含めてますけどね?
調と切歌たちも本格的に参戦してきましたし盛り上がってまいりましたね!!
さてさて、いつにもましてあとがきが長くなってしまいました。これ以上は本編で表現していきたいと思います。どうか、今後もお付き合いいただければ幸いです。
それではまた次回お会いしましょう!
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