装者の男女恋愛が見たいッ!戦姫絶唱シンフォギア SLS 作:ふみー999
体調不良に仕事の監査、そしてアズールレーン7周年記念イベントの方にかかりきりになり遅くなりました。
あ~シンフォギア、アズールレーンとコラボしてくれないかな…
「うぅ…もうお嫁にいけない…」
夜のリディアン音楽院、寄宿舎へ向かう並木道を響と深は二人で歩いていた。検査を終えた響を送るよう深は了子から言われたのである。
響は肩を落としてとても疲れた様子で歩いていた。あとちょっと涙目だった。
「ごめんね。先生一度火が付くと歯止めが利かないから」
そんな響の様子を見て深は苦笑しながら謝罪する。そんな深の両手にはお土産に響が持たされた鍋とペットボトルジュースが入った袋がそれぞれ握られていた。
「よっとと」
重たいのか深は鍋の入った袋を持ち直す。
「重くない?やっぱり半分持つよ」
「大丈夫、大丈夫。これでも男だから。これくらいなんてことはないよ」
確かに顔色も変えずに持ってはいるものの深の手は少し赤くなっているように見えた。
ただそれでも深は響に荷物を持たせようとはしない。女の子扱いを受けていることにすこしくすぐったさを覚えた。そして、さっきエレベーターで握っておけばよかったな、なんてこともぼんやりと考えてしまう。
「こっちに来てどれくらいなの?」
「まだ全然、今週に未来と一緒に引っ越してきたばかりだから」
「なら今度、フラワーってお好み焼きのお店に行ってごらんよ。絶品なんだ」
「お好み焼きか~…今度、未来と私を連れて行ってくれてもいい?」
「いいよ。それじゃあ今度一緒に行こうか」
響はやったと心の中でガッツポーズをした。自然な形でデートにこぎつけたのだ。まあ、及び腰で未来まで同伴してもらうことになってしまったが。
すると足元でナ~とモチが鳴く。ヘタレと言われた気がした。
「…モチちゃん、大きくなったね」
「あぁ、この子結構食べるし。2課の皆さんが可愛がってくれるから色々食べ歩いているみたい」
そういえばと響は思い出す。さっきも職員に分けてもらった小皿によそられた鍋の具材をパクパク食べていた。
「そっか~モチちゃんも好きなものはご飯&ご飯か~」
うりうりと響がモチを抱き上げ頭をなでる。するとモチも苦しゅうないといった表情で目を細めた。どこかどや顔のようにも見える。
「なんだかモチも自慢げだね」
「ふふ~ん、おいしいご飯は幸せの象徴なんだよ。それを分かっているとはモチちゃんもやるではないか~」
撫でられたままモチはもう一度鳴く。そうだそうだとでも言うかのようだった。
「ペットは拾い主に似るって言うけど僕より響ちゃんに似たのかな。」
一人と一匹が深を見てご飯のすばらしさを講義してくる姿が余りに似ていて深は思わず破顔する。そんな姿を見た響とモチは目を合わせて首を斜めにする。
「そんなに?他にはどんなところが似てたりする?」
「う~ん、そうだね。人懐っこくて可愛いところとか。悩んだり困ったりしている人のところにすぐ行って寄り添ってくれる優しいところとか似ているかも。」
「…そ、そうなんだ。…ま、まあ人助けは私の趣味だし、しているかも」
(か、可愛いって言われた?いやいやモチちゃんのことだよね?でも似ているって)
予期せぬ回答を受け、響は顔に手を当てて視線をそらしてしまう。この人しれっとこういうことを言うのが心臓に悪い。
「そっか、やっぱり今でも変わらないんだね。」
懐かしむように深が言う。それからも二人の会話は続いた。
「学校はどうだい?」
「う~ん、最初からクライマックスが百連発だよ。昨日も木に登った猫を助けて遅刻しちゃって、初日から先生に怒られちゃった。」
「はは、響ちゃんらしい。でも猫って皆どうして高いところに行きたがるんだろうね」
「モチちゃんもそうなの?」
「うん、この前はレースカーテンに登って爪が引っ掛かってぶら下がっていた。」
「え、なにそれ絶対可愛い。写真とかある?」
「動画で撮ったから後で送るね」
「うん」
何か特別なことを話しているわけではない、普通の雑談だった。
「そういえば、今日は翼さんのCDを買いに来ていたんだった。限定版買いそびれちゃった…」
「それなら、僕から流生さんあたりに頼んでみようか?」
「え?いいの?」
「うん、あの人のことだから多分布教用くらいは買っているだろうから。」
「え、流生さんってそういう感じなの?」
「うん、あの人翼さんのことに関しては人が変わるから」
なんてことはないことでも、響はこのやり取りをとても特別なものに感じた。欠けていた心の穴が埋まるような感覚、あの頃の河川敷に戻れたような気持ちだった。
「でも、驚いたよ。響ちゃんがリディアンに通っているなんて。そんな偶然があるんだなってさ。」
「…偶然じゃないよ」
けれども、あの頃の夢はそう長くは続かなかった。深の言葉に響が立ち止まる。遅れて深も止まり振り返った。響はためらいながら言葉を紡ぐ。
「リディアンのパンフレットに、モチちゃんが映っていて。もしかしたら、深君もって思ったから」
「…僕を探して?」
こくりと響が頷く。二人の間に沈黙が降りてきた。どれくらいの時間がたったのか口を開いたのは深だった。
「…ごめん、何も言わず突然いなくなったりして」
「あ…」
深はまっすぐに響を見据えて謝罪の言葉を口にする。響は何も言えなかった。
「何を言っても言い訳にしかならないけど、半年くらいしてからあの河川敷にも行ったんだ。けれど会えなかった。」
「お父さんがいなくなった後引っ越しとか、ごたごたしてて。その頃にはもう私も行けなくなっちゃってたから…」
再び流れる沈黙。今度は響だった。
「…理由を聞いてもいい?どうしていなくなっちゃったの?」
深は空を見て瞼を閉じる。思い出したくないことを必死に振り返っているような苦痛が見て取れる表情だった。
「実は…訳があってあの日から父さんと一緒に暮らせなくなって。その後、施設で暮らしていたんだ。」
「訳?」
「…それは…話したくない。我儘でごめん」
何故と響は問えなかった。拒否する深の顔があまりにも苦しそうに見えたから。
「そっか。えっとその後は?」
「…その後は響ちゃんと似た感じかな。ノイズが出た現場に居合わせて2課に保護されたんだ。そこでシンフォギア…響ちゃんが纏っていた力について知って。そして天才、櫻井了子先生に才能を見込まれて助手にスカウトされたって感じかな」
また少しの沈黙、深は首を少し掻いた後、話し始めた。きっと話したことが全部ではないのだと響は何となく理解してしまった。けれども、それには触れないようにしようと決めた。きっとそれは深にとってつらいことだったのだろうから。
「それじゃあ、深君も巻き込まれたって感じなの?」
「半分はね。もう半分は自分からだよ。ノイズに対抗できる方法があるって知って、僕も戦いたいって思った。」
「人助けのため?」
「…まあね」
再び深が首を掻く。響の知らない癖だった。
「…シンフォギア?だっけ。私の力もそれなの?そもそもシンフォギアってなに?」
「正式名称をFG式回天特機装束。現代では再現不可能な異端技術によって作られた聖遺物、神話や伝承に登場する武器や道具。その欠片をベースにして作られたアンチノイズプロテクターがシンフォギアなんだ。」
深は響の質問にまるで教鞭をとるかのようにすらすらと解説を始めた。
「聖遺物?」
「ああ、翼さんが持つ天羽々切や天羽奏さんが使っていたガングニールがそれにあたる。平たく言うと神話とかに出てくる伝説の武器、みたいなやつが聖遺物だよ。そして響ちゃん、君が今日纏った聖遺物が奏さんが使っていたガングニールなんだ。」
「でも、私そんな伝説の剣とか持ってないよ?」
「そこなんだよ。翼さんは聖遺物の欠片をギアペンダントとして持っている。でも響ちゃんは何故なのか。さっきのメディカルチェックで何か分かるといいんだけど…」
う~んと頭をひねりながら深が答える。
「そういえば、突然胸に歌が浮かび上がってきたのはどうしてなの?」
「ん?いい質問だ響ちゃん。」
ピンと指を立てて深は響の方を見る。ますます教師みたいだった。
「聖遺物と言ってもそのほとんどは経年による劣化により完全な状態を保っているものはほぼ存在しないんだ。でも、欠片だけでも力が宿っている。その欠片の力を増幅して解き放つ装置がシンフォギア。そしてその鍵が特定振幅の波動なんだ。」
「特定振幅の波動?」
「まあ、つまりはその聖遺物に適合する歌ということだよ。響ちゃんの胸の歌がガングニールに共鳴した結果シンフォギアが起動した。」
「それで、あの時胸の奥から歌が浮かび上がってきたのか」
「うん、歌の力で活性化した聖遺物を一度エネルギーに変換し鎧の形に再構成したものがシンフォギア。つまり、カラオケで強くなる強化スーツってわけだよ。そしてシンフォギアを起動できる歌を歌える人を適合者と呼んでいるんだ。」
一通りの講釈が終わり響はぱちぱちと拍手を送る。その間モチは響の頭の上で興味なさげにだらけていた。
「なんだかよく分からないけど、知らない間にすごいことしていたんだね」
「まあ、いきなりこんなぶっ飛んだ装置の話されても現実感湧かないよね。」
ゆっくり飲み込んでいけばいいよとフォローを入れ深は再び歩き出す。響もその隣に並んだ。
「深君は、そのシンフォギアを作っているの?」
「いや、シンフォギアを作ったのは先生だよ。先生の提唱する櫻井理論がベースになっているんだけど、僕もまだ完全には理解しきれていないんだ。僕がしているのはシンフォギアのメンテナンス作業と個人的な研究だよ。」
「個人的な研究?」
響が聞き返すと深は気になるかと言わんばかりに目を輝かせて饒舌に話し始めた。
「うん、僕の研究テーマは聖遺物の欠片を使用しない対ノイズ兵装の開発。聖遺物を装甲に変換するのではない。シンフォギアの発するアウフヴァッヘン波形を疑似的に再現し、それを軸にフォニックゲインを収束させる。そしてエネルギー体であるフォニックゲインそのものをマテリアライズすることで適合者でなくても身に纏える装備とする。これにより…」
「えぇっと…?」
矢継ぎ早に話される内容を理解できず響が困惑している様子に気が付くと深は話を止めた。
「ああ、ごめん。つい熱くなってしまった。シンフォギアだけでもややこしいのに更に困惑させちゃったね。簡単に言うとシンフォギアとは別のものを開発しているんだ。」
「言ってること全然わからないけど、ともかくすごいことをしているんだね」
「まあ、そういうこと。まだ、何の成果も出せていないけど…」
ポカンとした響がそういうと苦笑気味に深が肯定する。気が付くと寄宿舎の前まで到着してしまっていた。つまり、もうお別れの時間だった。エントランスまで一緒に行きエレベーターのスイッチを押す。上階からゆっくりとエレベーターが降りてくる。響はなるべくゆっくり来ないかななんて思ってしまう。
「送ってくれてありがとう」
「これくらいはなんてことはないよ。…久しぶりに会えてよかった。」
響が深の顔を見ると深は朗らかに微笑んだ。
「正直、久しぶりに会って気づいてもらえるかなってちょっと心配だったんだ。髪もだけどノイズと戦うのが日常になっていたから。あの頃とは変わっちゃったのかなって思って。」
響は深を見つめ返し、ゆっくりと首を横に振った。
「ううん、むしろ一目見て安心した。深君は深君のままだったから」
「僕は僕のまま?」
「うん、あの親子を見ている時の深君は私がよく知っている顔していた。人の幸福を素直に喜べる優しい顔」
響はあの現場にいた深の顔を思い出していた。親子が再会した時本当に心から喜んでいるのが見て取れた。その顔は響が恋した少年のものだった。
「…そうかな?」
自身がなさそうに深は問いかける。響は自信を持って答えた。
「そうだよ。まあ背丈とか髪とかは変わったかな。大人っぽくなったと言いますか」
かっこよくなったとは恥ずかしくて言えなかった。回りくどい言い方でお茶を濁す。
そのタイミングでエレベーターが軽い音を立てて扉を開けた。響は深から荷物を受け取るとエレベーターに入る。別れの挨拶をしようと振り返ると深から声をかけられた。
「響ちゃんも変わってないけど、変わったよ」
意外なことを言われて目を丸くする。
「本当?どこが変わったかな」
「綺麗になった」
「…」
おやすみと深から声をかけられエレベーターの扉が閉まる。ゆっくりと階数が徐々に上に登っていくのがランプの点灯で見て取れた。やがて目的の階に着く。亡者のようにふらふらと歩き部屋の扉を開ける。すると未来が出迎えた。
「響!?こんな時間までどこに、ってちょっと響!?」
荷物を床に置き近づいてきた未来に抱き着く。響はそのまま腰が抜けたようにその場に崩れ落ちた。その顔を真っ赤に染まっていた。
「——ッ」
声にならない声を響は上げる。その不意打ちはあまりにも反則だ。そう思った。
響を送り届けた後、深は2課本部にある自分のラボに帰ろうとしていた。廊下を歩いていると待っていたと言わんばかりに了子が壁にもたれかかっていた。
「あの子のことちゃんと送り届けてきたかしら?」
「もちろんですよ。寄宿舎のエレベーター前まで送りました」
ならいいけどと言い了子は壁から背を離し深に近づく。そしてニヤニヤしながら深の顔を見てくる。
「そのまま部屋に上がり込んで来ればよかったのに」
「未来ちゃんもいますし、そもそもそういう冗談はやめてください。」
「あら~初心な子ね~」
楽しそうにからかい体をくねらせる。そしてしばらくして落ち着くと今度はまじめな声音で問いかけてきた。
「あの子、貴方のこと気にしていたわよ。ちゃんと説明したの?」
「…父と生活できなくなって、先生に拾われたことは話しました。」
深は少し言いよどんだ後答える。その様子に了子は質問を重ねた。
「それだけ?それじゃ響ちゃんも納得できないんじゃない?」
「…言えるわけないでしょう。父親に無理心中されそうになって、それから自暴自棄でノイズの前に飛び出したら二課に保護されたなんて」
了子から目をそらし深が答える。その姿を見て了子は腰に手を当てため息をついた。そして出来の悪い教え子を諭すように注意する。
「まあ、それもそうね。でもね、それでもあの子にちゃんと話をしなさい。…訳も話さず、突然いなくなられたら女の子は死ぬほど苦しい思いをするのよ。それこそ、狂ってしまうほどに。」
最後の言葉には妙な説得力が籠っていた。その言葉を受けて深が了子を見る。だが、すぐに目をそらして歩き出した。
「…失礼します。」
そんな深の後姿を了子はただじっと見つめていた。
やがて深は自分のラボに到着する。壁のホワイトボードには様々な計算式が書かれている。部屋の中には様々な計器が置かれておりそれらはパソコンに接続されていた。パソコンの画面には≪Project Cambia Driver Specifications of Amenohabakiri≫の文字が記載されていた。そして、そのパソコンからひときわ大きな配線が奥の台座に繋がっている。その台座の上には一つの円形の装置が配線に繋がれて置かれていた。
深はその装置を手に取る。それは少し小さめのポータブルCDプレイヤーのような形をしていた。
「…完成にはやっぱり、シンフォギアが限定解除状態になった時のデータが必要かな」
そうつぶやくと深は手に力がこもる。何も持っていない左手は爪が食い込み少し血が流れていた。
「だけど、そんなのどうやって…」
深が響に伝えなかったことがある。それはあのライブ会場のノイズは誰かによって意図的に召喚された可能性が高いこと。そして、自分が二課に入ったのは人助けのためではないということ。
「父さん…母さん…ヒビキ…」
失った家族のことをつぶやく。その眼には怒りが燃えていた。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
今月から11月までいろいろと予定が立て込んでいるのでもしかしたら投稿遅くなるかもしれません。
申し訳ありません。
※2024年9月23日、最後の文改訂しました。