ある魔法少女の物語   作:アヤ・ノア

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~前回までのあらすじ~

恭一と奈穂子は新たな魔法少女、カタリナと出会う。
カタリナは父との不仲を解消するために魔法少女になったらしい。
恭一は奈穂子が魔法少女にならないように守る決意をする。
その夜、奈穂子はジュウげむと出会い、魔法少女になる運命を否定する。
ジュウげむは彼女の決意を受け入れ、去っていく。
奈穂子は恭一に自分が魔法少女にならないと約束するのだった。


第9話 吹雪の魔女

 カタリナが魔法少女になった理由は、父親との不仲を解消するためだった。

 親孝行な彼女を見た恭一は、自分も奈穂子を守ろうと誓った。

 そして、今日は日曜日なので、学校の予定は無い。

「それじゃ、ゲームでもしようかね」

 このまま、普段通りの生活になるだろう。

 そう思った恭一だが、それを阻む出来事が一つ。

 

「……そうはいかないよ」

 そう、ジュウげむの出現である。

 彼(?)は決まって魔法少女や魔女が現れると、このように恭一達に知らせるのだ。

「まさか、また魔女が現れたのか?」

「うん。今回は奈穂子ちゃんが巻き込まれてるよ。

 あの子、魔法少女になりたくないのに、困っている人は放っておけないようで」

「何!?」

 奈穂子が巻き込まれているようでは、恭一は黙っていられない。

 きっと、他の魔法少女だっているはずだ。

 このままでは奈穂子が大変な事に……!

 恭一はいてもたってもいられず、ジュウげむに魔女がどこにいるか話した。

「ジュウげむ、魔女はどこだ!?」

「ボクについてきて!」

 恭一は大急ぎで、ジュウげむの後を追っていった。

 

「ここか!」

 恭一の目に映ったのは、吹雪を纏った巨大な女性が周囲を凍えさせる光景だった。

 また、銃を構えた兵士が、一般人を攻撃していた。

「な、なんだこれは……!」

「ここは“吹雪の魔女”の結界。そしてあの兵士は、魔女が生み出した使い魔さ」

「奈穂子! 奈穂子はどこだ!?」

 恭一はかなり慌てていた。

 もし、奈穂子が傷ついていたら……そんな思いが、恭一の中で渦巻いていた。

 幼馴染の事で焦っている恭一の頭の中に、女性の声が聞こえた。

―慌てないで。奈穂子は必ず助かります。

「……でも、魔女を倒さなきゃ……!」

―落ち着いて。町を守るのも必要ですよ。

 女性の声と同時に、恭一の前に光が現れる。

 その光が大きな剣になると、恭一は剣を取った。

「そいつから離れろ!」

 奈穂子を守りたいという気持ちはあるが、女性の言う通り、町を守るのも必要だ。

 恭一はまず、使い魔の銃撃をかわし、剣で斬る。

 こうして一般人は助かるが、恐怖のあまりへたり込んでいた。

 恭一は手を引いて、安全な場所に避難させた。

 

「使い魔を倒したら、後は奈穂子を探さなきゃ……」

 恭一は使い魔を粗方倒し、一般人を避難させた後、幼馴染の奈穂子を探していった。

 結界の中は広く、まだ避難していない一般人も多くいて、探すのは難しかったが、

 数分後に恭一は奈穂子の姿を発見した。

「奈穂子、無事だったか!?」

「あ、恭一君……私……怖いよ」

 幸い、奈穂子は傷ついていなかったが、魔女の結界に入ってかなり怯えていた。

 恭一は彼女の前に立ち、優しく頭を撫でる。

「大丈夫だ、奈穂子。お前は俺が守る。下がってろ」

「……うん」

 恭一は奈穂子を安全な場所に避難させ、魔女を倒すために走り出した。

 結界の中で一番騒がしい場所に行くと、案の定、まり恵、三加、カタリナの姿があった。

 三人は魔女と戦っているが、苦戦していた。

 そんな三人を放っておけない恭一は、すぐに彼女達を手助けしようとした。

 

「まり恵、長根先輩、カタリナ!」

 恭一は戦場に辿り着く。

 三人の魔法少女は、吹雪の魔女と激闘していた。

「せいっ!」

 カタリナは吹雪の魔女に閃光弾を投げ、怯ませる。

 その隙にカタリナは弓を引き、吹雪の魔女の急所を狙い撃ちした。

 だがそれでも、吹雪の魔女には掠る程度だった。

「何なの、この固さは!」

「吹雪の魔女は炎に弱い。よって、この魔法で温度を上昇させます。

 炎よ巻き起こり、魔女を焼き払え!」

ギャアアアアアアアア!!

 三加は計算と魔法を組み合わせて炎を呼び起こし、吹雪の魔女に放って攻撃する。

 彼女の読み通り、吹雪の魔女は炎に弱く、吹雪の魔女は悶え苦しんだ。

「どぉりゃぁっ!」

 吹雪の魔女を包む炎が消えると、まり恵はハンマーを構えて突っ込んでいき、

 ハンマーを思いっきり叩きつけた。

 まさしく、「魔女に与える鉄鎚」である。

 それを見ていた恭一は、何かを思いついて頷いた。

「そっか……あの魔女は炎に弱いんだな。いくぞ!」

 恭一は剣に炎を纏わせ、それを振って炎の衝撃波として攻撃。

 衝撃波が命中すると炎の刃が魔女を切り刻んだ。

 

「恭一! どうしてこんなところに!?」

 剣を構えている恭一の方を振り向くまり恵。

 まり恵はいきなり恭一が出てきたため、驚くが、恭一は首を横に振ってこう言った。

「話は後だ、魔女を倒せ!」

「ええ!」

 恭一とまり恵が武器を構え直すと、吹雪の魔女が巨大な腕を振るった。

「危ない、まり恵! うぐぁっ!」

 恭一はまり恵を庇い、左腕を思いっきり殴られる。

 かなりのダメージだったようで、恭一は左腕を押さえながら苦しむ。

「動かないでください」

 三加は恭一に近付き、彼の左腕を丁寧に治療した。

「サンキュ。どりゃっ!」

「いきますよ」

 恭一は炎を纏った剣で魔女を斬り、カタリナは狙いを定めて射撃する。

 まり恵は二人が攻撃して魔女が怯んだ隙に、ハンマーを振り下ろして大ダメージを与えた。

「ぐあぁっ!」

「きゃあぁ!」

 魔女は両腕を大きく振り下ろし、衝撃波を放つ。

 攻撃を食らった恭一とまり恵は大きく吹っ飛んだ。

 

「あぁ、くそ。寒い」

 吹雪の魔女の結界によって、徐々に気温が下がる。

 早めに倒さなければ、恭一達は凍り付いてしまう。

「凍ってたまるか! クリムゾン・ナパーム!」

 恭一は剣に炎を纏わせ、魔女に向かって振ると無数の火球となり、大爆発を起こした。

 炎に弱い吹雪の魔女には、かなりの痛手だ。

 続けて恭一は炎の剣で吹雪の魔女を貫き、三加も計算によって生まれた炎をぶつけた。

「ロングレンジ・ブラスター!」

 そして、カタリナが超遠距離からレーザーを放ち、それが魔女に対する致命的な一撃となった。

 すると、吹雪の魔女の周囲でみるみる気温が低下し、凍土の世界が出現した。

「これは……何!? 寒い……!」

 まり恵はその寒さによって、力が出なくなる。

 すると、ジュウげむがまり恵の前に現れた。

「どうやら、あの魔女が結界を強めたようだね。キミ達が負けたら、完全に凍っちゃうよ!」

「……そうだなっ!」

アアアアァァァァァァァァ!!

 吹雪の魔女が泣き叫ぶと結界全土に鋭利な氷柱の海が生まれ、まり恵とカタリナに襲い掛かる。

 冷気をまともに食らった二人は見る見るうちに凍り付いていく。

「まり恵! カタリナ!」

「うぅぅぅぅぅ……」

 まり恵とカタリナの身体が氷に覆われる。

 恭一は剣で氷を叩こうとしたが、氷ごと二人を巻き込んでしまう可能性もある。

 どうすればいいか、と考えていた時だった。

 

 突然、まり恵とカタリナの氷が解けた。

 誰が解かしたのかと恭一が振り向くと、三加が本を開いていた。

「氷を解かす方法を考えていました。私の計算通り」

「……ありがとう、長根先輩! よし、いくぞ!」

「ええ!」

 まり恵は震えながらもハンマーを握り締め、吹雪の魔女の頭目掛けて振り下ろす。

 カタリナは吹雪の魔女の急所を矢で怯ませる。

「とどめだ!!」

ギャアアアアアアアアアアアアアア!!

 そして、恭一が高く飛び上がり、吹雪の魔女を炎を纏った剣で真っ二つにした。

 魔女は炎に包まれながら悶え苦しみ、身体も分かれたため苦しみはさらに増した。

 炎が完全に消えると、吹雪の魔女は白い光になって消滅し、同時に結界も消えた。

 

「ふぅ……終わった、な」

「そうね」

 戦いが終わり、恭一の剣が光になり、魔法少女達の変身も解ける。

 奈穂子も、恭一の下に駆け寄り、彼に「ありがとう」とお礼を言った。

「元気だったか、奈穂子」

「恭一君、大変だったね」

「ああ……」

 恭一はふぅ、と汗を拭う。

 まり恵、三加、カタリナもかなり疲れていた。

 魔女との戦いの激しさを物語っている。

 しばらくすると、ジュウげむがやってきた。

「おめでとう、また一つ世界から災いが消えた」

「……」

「今回、キミ達が戦った災いは、スペイン風邪だよ。第一次世界大戦中に流行った疫病さ」

 新型コロナウイルスに続き、また一つ、パンデミックが無かった事になった。

 それは嬉しい事かもしれないが、恭一はその事を疑問に思い、ジュウげむに質問した。

「なぁ、新型コロナウイルスの時もそうだったが、

 どうして疫病まで無かった事にしなきゃいけないんだ?」

「疫病は人間を忖度しない。だから、魔法少女という存在が必要なんだ。

 ただ、そこにあるだけの、人間を苦しめる災いを払うためにね」

「人間人間って……お前は本当に人間の味方なのか? どう見てもそうは思えないんだが……」

「そんな事を言って、キミ達は魔女に勝ったじゃないか。

 結果オーライだよ。これ以上は何も言わないでよ」

「何も言うな、ってどういう……」

 恭一がジュウげむに手を伸ばそうとした瞬間、ジュウげむは煙のようにその場から消えた。

 

「くそっ、また逃げやがって。ジュウげむの奴、どこまで俺達を馬鹿にするんだ」

「恭一君、ピリピリするのは分かるけど、今は日常が戻った事を喜ぼう」

「そ……そう、だな」

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