ある魔法少女の物語   作:アヤ・ノア

2 / 24
~前回までのあらすじ~

謎の生き物が地球の災いを終わらせると宣言する。
若林恭一と柿原奈穂子は普通の高校生だが、学校が未知のウイルスのために休校になる。
奈穂子と恭一は、奈穂子だけが聞こえる声を追いかけると、二人の運命が変わり始める。
太志は彼らを見送り、自宅に帰るが、恭一と奈穂子の歯車が狂い始めるのだった。


第1話 始まり

 声がしたのは、真字駆公園のマギマギ池だった。

 そこに行った恭一と奈穂子は、きょろきょろと辺りを見渡す。

「どこにいるの? あなたは誰?」

―助けて……。

 恭一と奈穂子の頭の中に、声が聞こえてくる。

「あなたなの……?」

 そこでは、オッドアイの謎の生き物が苦しそうな表情をしていた。

―恭一、奈穂子、今、世界が疫病の脅威にさらされているだろ?

 でも、今はもう一つの問題がある。だから、ボクを助けてほしいんだ。

「ど、どうしてそれを知っている!」

 謎の生き物は恭一と奈穂子にテレパシーで事情を伝えた。

 恭一は、全ての事情を謎の生き物が知っている事に驚いた。

―そんな事はどうでもいい、早くボクを……!

 次の瞬間、公園内の風景が変わった。

 風景の中央には、苦痛に歪んだ表情の少女が浮かんでいる。

 さらには、緑の皮膚と小柄な体格の亜人が、恭一と奈穂子を取り囲んだ。

「こ、こいつらは……!」

―こいつは魔女が生み出す使い魔だ。

「魔女……!?」

 謎の生き物が言う「魔女」が何なのか、二人には分からなかった。

―魔女は災いを生み出す邪悪な存在だ。奈穂子。キミは優しいんだよね。

 さあ、ボクと契約して、魔法少女になってくれ。

「嫌!」

 奈穂子は謎の生き物の勧誘を拒否した。

 彼女の返答に一瞬驚く謎の生き物だが、当然だろうな、という態度に戻る。

―でも、魔女と使い魔は魔法少女にしか倒せない。だから、ボクと契約を……。

「ふざけんな! こいつらは俺が倒す! 奈穂子、お前は安全な場所に逃げろ!」

「うん!」

 そう言って、恭一は使い魔に生身で突っ込んだ。

 奈穂子はそんな恭一を心配そうに見守りながら、使い魔の攻撃を受けない位置に逃げた。

 

「ケーッケケケケケケケ!」

 使い魔は恭一を袋叩きにしていく。

 恭一は使い魔に立ち向かうが、使い魔の力は強く、こちら側も思った以上に力が出なかった。

「くそ、力が出ねぇ……!」

 使い魔に丸腰で立ち向かうのは、無謀だった。

 それでも恭一は必死で使い魔と戦うが、次第に劣勢になっていった。

 そして、ついに膝をついてしまう。

「くそっ……俺は、奈穂子を守れないのか……!?」

 幼馴染を守れず、死んでしまうのか。

 恭一が目を閉じた、その時。

 

―諦めてはいけません。

 

 今度は、謎の女性の声が聞こえてきた。

 しかも、その声は恭一にしか聞こえていない。

「誰だ……?」

―この剣を、取ってください。

 その声が聞こえると同時に、恭一の目の前に柄が青い剣が現れた。

 剣は光っていて、恭一を待っているかのようだ。

「……これを、使ってほしいのか?」

 剣は頷くように光る。

 恭一がその剣を取ると、彼の中に強い力が入り込んできた。

 同時に、恭一が負っていた傷が癒される。

「力がみなぎっていく……! よし、これならこいつらと戦える!」

「頑張って、恭一君!」

 恭一は剣で使い魔を斬りつけた。

 使い魔はなおも恭一に襲い掛かってくるが、恭一は攻撃をかわし、反撃する。

 今までとは違う、身体が軽くなったような感覚に、喜んでいる恭一と奈穂子。

 そのまま恭一はジャンプして使い魔を斬り、残りの使い魔もそのまままとめて切り裂いた。

 

「ふう……これで最後か?」

 使い魔が全て消え、恭一は汗を拭う。

 だが、風景はまだ、元に戻っていない。

「まだ残ってるの?」

―そうだよ。使い魔と共にいるのは、もちろん。

 謎の生き物がそう言った途端、地響きが起こった。

「な、何!?」

「何だ、何だ?」

 恭一と奈穂子が困惑すると、地面から謎の生物が姿を現した。

 生物は右手にナイフを握っており、男と少女の顔が身体に浮かび上がっている。

「こ、こいつは……!」

 化け物の姿を見た恭一と奈穂子が恐怖で震える。

 さらに、謎の生き物がテレパシーで話しかける。

―これが魔女さ。魔女を倒せば、災いはなくなる。さあ、奈穂子。

 ボクと契約して魔法少女に……。

「待て、こいつは俺が倒す。使い魔を倒したんだから、魔女も倒せるはずだ」

 恭一は謎の生き物の勧誘を阻止し、剣を構え直して魔女の前に立つ。

 魔女は唸り声を上げると、恭一に襲い掛かった。

「わっと!」

 恭一は攻撃をかわし、反撃するが、魔女は左手を伸ばして剣を弾き返す。

 さらに、魔女は右手のナイフで恭一を斬りつける。

「あのナイフ……どうにかして落とせないか?」

―ヒントを言おう。ナイフは魔女が魔女である証。

「……?」

 謎の生き物曰く、あのナイフが魔女の力の源となっているらしい。

 恭一の予想通りだったが、どう対処すればいいのか分からなかった。

 魔女はなおも、ナイフで恭一を攻撃しようとする。

 恭一は避ける事で精いっぱいだった。

「……待って、恭一君! あの腕を見て!」

 すると、奈穂子が魔女の腕の違和感を発見し、それを恭一に伝える。

 恭一が魔女の腕を見ると、一部分だけが細くなっていた。

「そこかっ!」

 恭一がそこに向けて、剣を突き刺す。

 すると、魔女の腕が衝撃でちぎれ、ぽとりとナイフが落ち、黒い煙になる。

ギャアアアアアアアアアア!!

 魔女は叫び声を上げながら、大暴れする。

 恭一は魔女の攻撃をかわしつつ、的確に魔女の身体に斬撃を刻む。

「そこだっ!」

 恭一は剣で魔女の身体を貫く。

 魔女は腕を伸ばして恭一を持ち上げ、思いっきり地面に叩きつける。

「ぐあぁっ!」

 恭一は何とか受け身を取り、骨折を防ぐ。

 しかし、恭一の疲労が溜まっていく。

 恭一はケリをつけるべく、剣に力を溜めた。

うおおおおおおおおおおおお!!

ギャアアアアアアアアアアアアアアア!!

 溜めた力が光となり、魔女に向かって一閃された。

 魔女の身体が四散し、黒い煙になって消えていく。

 そして、風景は元の真字駆公園に戻った。

 

「……ふう、終わったか」

「凄かったよ! 恭一君!」

 恭一は汗を拭い、奈穂子は彼の勝利を称える。

 すると、謎の生き物が二人の前にやってきた。

―魔女を倒せば、起きた事の全てはリセットされるんだ。

 つまり、この事を覚えているのは、君達だけという事だね。

「……は? どういう事だ?」

―さあね。

「そんな事より、お前の名前は何だよ」

―ボクの名前はジュウげむ。魔女を狩る魔法少女を生み出す者だよ。

 ジュウげむと名乗った謎の生き物は、姿を消した。

 

「リセットされるって、どういう事?」

「さあ……分からないよ。そろそろ帰ろう、恭一君」

「ああ」

 恭一と奈穂子は、互いに別れを告げて帰った。

 

「おにぃ、テレビみて」

「ん……?」

 恭一が自宅に帰ると、妹の由美がテレビを指差す。

 テレビには、こんな映像が映っていた。

「次のニュースです。

 溝渕容疑者に殺害されたと思われた大澤ひかりさんには、何の外傷もありませんでした。

 溝渕容疑者は何をしていたのか分からない様子です」

「……え? 何?」

「殺人事件が無かった事になったみたいよ」

 恭一はもう一度テレビを見る。

 そこには、殺人事件が無かった事になったという「事実」しか映っていなかった。

 本来ならば喜ぶべき事だろうが、本来ならばあり得ない事だったため、

 恭一と彼の母、そして妹は頭を捻っていた。

 これも、魔女を倒したからだろうか。

 とすると、風景に浮かんだ少女は、殺人事件の被害者だった大澤ひかりで、

 魔女のナイフは溝渕容疑者が使っていた凶器なのだろうか。

 恭一には分からなかった。

 だが、魔女を倒せば事実は無かった事になる――ただ、それだけが「事実」だった。

 

「……ジュウげむ。あいつは一体何者なんだ。でも、絶対に、奈穂子を魔法少女にはさせない」

 

 ジュウげむと出会った恭一と奈穂子。

 彼らの歯車は、少しずつ狂い始めていった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。