ある魔法少女の物語   作:アヤ・ノア

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~前回までのあらすじ~

恭一達はジュウげむにさらわれた奈穂子を助けるため、地下を進む。
使い魔がいるため魔女がいるはずだが、いくら歩いても魔女に出会わない。
ついに奈穂子が囚われた場所に辿り着くが、そこには少女が眠る筒がたくさんあった。
ジュウげむはの正体であるフォルテュナは「災禍の柱」で少女を魔女に変えると説明する。
恭一はフォルテュナを倒して世界を救うべく、彼と戦うのだった。


第22話 フォルテュナ

 地球を滅ぼそうとするフォルテュナとの最後の戦いが今、始まった。

 

「せいっ!」

 カタリナは空を飛ぶフォルテュナに矢を射る。

 空中にいる敵に、矢などの対空武器は効果的だ。

「せぇいっ!」

 フォルテュナが高度を少し下げたのを見計らい、まり恵は勢いよくハンマーを振り下ろす。

「炎よ!」

「フレイム・ソード!」

 フォルテュナが再び空中に浮き上がった時、三加は呪文を唱えて炎を生み出す。

 恭一は高く飛び上がり、剣に炎を纏わせた後、勢いよくフォルテュナを斬りつけた。

「ふふふ……キミ達はボクには勝てないのさ」

 フォルテュナがそう言うと、恭一とまり恵の目の前に巨大な斧が出現した。

 フォルテュナの現実改変により生まれたものだ。

「ぐあぁぁっ!」

「きゃぁぁっ!」

 斧が振り下ろされ、恭一とまり恵は斬られ、思いきり地面に叩きつけられる。

 血が出る事はなかったが、二人は多大なダメージを負ってしまう。

「ぐっ……これが、ジュウげむ、いや、フォルテュナの真の力なのか?」

 恭一は腕を押さえながら、フォルテュナを睨みつけてそう言った。

 

「人はどんな災いもねじ伏せる力を持つべきだ。そうでなければ、世界は滅ぶべきだ」

「あなたが力で災いに立ち向かおうというのなら……ギリシャ神話にこんなお話があります。

 発明家のダイダロスと子のイカロスは、

 ミノタウロス退治を手伝ったためにミノス王の怒りを買い、迷宮の塔に幽閉された。

 イカロスは蝋の翼を身に着けて脱出したが、ダイダロスの忠告を破ってイカロスは飛び続け、

 太陽に近づきすぎた蝋の翼は溶け、イカロスは海に墜落した。

 強大な力に溺れると、人は破滅する。

 だから、災いは力で対抗するのではなく、知恵で乗り越えるものなのです」

「人は強くなければならないと言ったのは誰だい?」

「力だけが人の強さではありません。心が強ければ、人は強いのです」

 カタリナはフォルテュナにそう説得した。

 強大な力で災いを退けたとしても、いずれは自分の身を滅ぼしてしまう。

 魔女になった事がきっかけで、カタリナの心は一層強くなったのだ。

「……長い間、魔法少女をしてきた身ですが、こんなに話したのは初めてですね」

「そんな戯言でボクを説得できるとでも?」

「ああ、やはり、説得は無駄でしたか」

 だが、フォルテュナはぶれる事がない。

 フォルテュナの願いはただ一つ、自分を認めない地球を滅ぼす事だ。

 

「平和のためには災いを消さなければならないのさ」

「そのために今も未来も捨てろというのか?」

 恭一はそう言って、剣を構え、周囲に光を放った。

 すると、恭一とまり恵の傷が癒された。

「人はこれからも、未来に向かって歩いていくんだ! たとえ良いものでも、悪いものでも!」

 恭一はそう言って、光の剣で斬りかかる。

 剣は鏡のように周囲の光景を反射し、フォルテュナにかわす隙を与えなかった。

「クリムゾン・ナパーム!」

 さらに、剣に炎を纏わせて空を駆け、その炎をフォルテュナに思い切り叩きつけた。

「ゴールデンハンマー!」

 まり恵は黄金に輝くハンマーで、フォルテュナををぶん殴る。

 黄金とはすなわち太陽の力であり、今の状況にぴったりであった。

「影縫い!」

 空を飛んでいるフォルテュナに対し、カタリナは影の矢を放ち地面に叩きつける。

「計算完了、ここです!」

 三加はフォルテュナがいる位置に狙いを定め、本を開いて炎を発生させた。

 だが、何故かフォルテュナは燃えなかった。

「な、何故燃えない!?」

「現実改変能力を使って、燃えたという現実を取り消したのさ」

「そ、そんな……!」

「いくら頭の良いキミでも、現実改変には敵わないようだね」

「……」

 フォルテュナの現実改変能力にかかれば、あらゆる攻撃が取り消される。

 なら、最初から攻撃は届かないはずだが……。

「さあ、今度はこっちからいくよ!」

 フォルテュナが手をかざすと、船の形をした霧が飛んでいく。

 霧でありながら実体を持つのは、フォルテュナの現実改変能力からだろう。

 避けられなければ、大ダメージを受ける。

「私についてきてください!」

 三加が安全地帯を見極め、恭一とまり恵とそこに誘導する。

「逃がさないよ」

「☆○▽★!」

「はっ!」

 霧が二人を追いかけて攻撃しようとしたが、カタリナとルーナが光線を放って阻止する。

 その結果、船の形をした霧は消えた。

「私は諦めない。あなたから自由を取り戻すまで、絶対に、諦めるわけにはいかない!」

「奈穂子も返してもらうぜ!」

 四人の目的は、奈穂子を助け、フォルテュナを倒して世界を解放する事。

 そのためにも、諦めるわけにはいかなかった。

 だが、時間は徐々に過ぎていき、奈穂子の目から光が消え、地球と太陽の距離が縮まっていく。

 地球はまさに、太陽に飲み込まれようとしていた。

 

「はぁ、はぁ、はぁ……」

「熱い……なんて熱さなの?」

 地球が太陽に近づくにつれて、四人はたくさんの汗をかいた。

 熱さのせいで四人の手元が狂いつつあるが、ここで諦めたら地球が消滅してしまう。

 恭一達はフォルテュナに立ち向かっていった。

「ライオンハート!」

「シューティングスター!」

「ゴールデンハンマー!」

「マナフレイム!」

 恭一、カタリナ、まり恵、三加の攻撃が、攻撃しようとするフォルテュナに命中し、

 フォルテュナに反撃の隙を与えない。

 フォルテュナも現実改変能力を行使したが、熱さのせいか四人の覇気は鋭くなっていた。

「……キミ達は災いなんて無い方がいいと思う? 災いは無かった事にした方がいいと思う?」

「災いを無かった事にしたら、また人は同じ事を繰り返すだろ!

 それで、お前はまた災いを無かった事にする……。そんな繰り返しなんて、もうたくさんだ!」

「そうならないから世界は不幸になるのに……」

「……」

 奈穂子は、なおも虚ろな目をしていた。

「ボクは人類の味方だよ? それに歯向かう者は皆、人類の敵なのさ」

「お前の幸せを黙って受け入れる奴だっているし、それを認めたくない奴だっている。

 その時点で、全ての人を幸せにするのはお前にだって不可能だ!」

「そんなのは所詮、奇麗事に過ぎないよ。もし言いたいなら、ボクに攻撃を届けてみな!」

 フォルテュナがそう言うと、その身体を光が覆い、防御力を絶望的なまでに引き上げる。

「なんだ、この光は?」

「凍りつけ!」

 フォルテュナは現実改変能力を使い、無数の氷の刃で恭一達を切り刻もうとする。

「三加!」

「はい! 炎の壁!」

 三加は周囲に炎の壁を発生させる。

 氷の刃は、炎の壁に取り込まれて蒸発する。

「未来が見えず、災いばかりが起きる世界は、もうこの手で終わらせよう」

「世界はまだ終わりません、終わらせるわけにはいきません! 火の鳥よ、彼の者を焼き払え!」

 三加が開いた本から飛び出す炎の鳥が、フォルテュナを焼き払う。

「ソードスラスト!」

「シューティングスター!」

「……!」

 恭一は真っ直ぐ狙いを定めてフォルテュナを突き、

 カタリナとルーナがそこ目掛けて光の矢を放つ。

「でぇいやぁぁっ!」

 そして、まり恵がハンマーによる渾身の一撃をフォルテュナにぶつけた。

 

「ボクに攻撃は効かないよ」

 だが、フォルテュナはけろっとしていた。

「何!?」

「言ったはずだよ、ボクは現実改変能力を持つって。

 だから、キミ達の攻撃も、ボクには届かない。そして、ボクの攻撃は、キミ達に絶対に届く」

「ぐあぁぁぁぁぁぁっ!」

「「きゃぁぁぁぁぁぁっ!」」

「ああぁぁぁぁぁぁっ!」

 現実改変能力の前では、あらゆる攻撃が通じない。

 彼らはなすすべなく、フォルテュナの攻撃を受け続ける。

 最早フォルテュナは神ではなく、世界そのものとなっていった。

 恭一達は、このまま世界と共に滅んでしまうのだろうか……。

 

 その時だった。

 

「お、願、い……みん、なを、助け、て……」

 囚われている奈穂子が、か細い声で祈りを捧げた。

 奈穂子は仲間の危機を感じ取り、僅かではあるが意識を取り戻したのだ。

 すると、祈る彼女に反応するように、魔法少女の身体が光り出した。

「奈穂子!?」

 もしかしたら、奈穂子がこの窮地を救ってくれるのかもしれない。

「お願い、奈穂子! どうしたらフォルテュナを倒せるか教えて!」

「みん……な、で、恭一君、に、力を、与えて……」

「……最後は俺に希望を託すというわけだな」

 やっぱり、奈穂子は俺が大事なんだな。

 そう思った恭一は、口角を上げて剣を構え直した。

 彼の後ろにいる三人は、頷く。

「恭一、あたしが力を送ってあげるわ」

「一人一人の力では、現実を操る者には敵いません」

「ですが、みんながいれば、絶対に勝てます!」

「★○▽■◇!!」

 まり恵、三加、カタリナが手を合わせて、前にいる恭一に力を送った。

 ルーナも、珍しく恭一を応援した。

「みんな……」

 恭一ならば、歪んだ現実を元に戻してくれる。

 そんな仲間達の思いが、恭一を奮い立たせた。

「よしっ、この一撃で終わらせるぞ!」

 恭一は三人の力を自らの剣に纏わせ、その剣が力によって巨大化する。

「これ以上、世界の命運も、人々の生きる道も、お前に決められてたまるかぁぁぁぁ!!!」

 奈穂子を救い、世界も救うために、彼は希望の光を纏う剣を持ち、立ち向かう。

 剣の軌跡が空気摩擦を引き起こし、紅蓮の竜に変わり、フォルテュナを飲み込もうとする。

 

「そ、そんな……このボクが、負けるなんて……」

 恭一の超神速の奥義が、フォルテュナに直撃する。

 そして、洞窟の中で大爆発が起こった――

 

「なーんて、ね☆」

 大爆発が治まった時、そこにいたのは、なんと、無傷のフォルテュナだった。

 フォルテュナは倒された事すらも、現実改変能力で無かった事にしたのだ。

「嘘だろ……ここまで頑張ったのに、こんな事って、あるのか……?」

「あいつの真の狙いは、これだったのですね」

 これまでの努力を全て無に帰す結果となり、四人、特に恭一は落胆していた。

「やっぱり、あたし達には、奴を倒す事は不可能だったのね……」

 地球と太陽の距離は、人間でいうと目と鼻の先になった。

 最早地球の滅亡は、避けられなくなってしまった。

 

「恭一君……何、これ」

 すると、虚ろだった奈穂子の瞳に光が戻る。

「決まってるだろ、奈穂子! 今、世界が滅ぼうとしているんだ!

 俺達はフォルテュナを倒したはずだけど、現実改変能力のせいで無駄になっちまったんだ!」

「世界が……滅ぶ……?」

「何とかならないのかよ、奈穂子!!」

 四人の攻撃は現実改変能力により無駄に終わり、動けるのは奈穂子のみとなっていた。

 気温も徐々に上昇し、大地は太陽に飲み込まれる。

 そんな危機的状況を見た奈穂子は、意を決したように表情を変え、こう言った。

 

「……恭一君、ごめんね。私、魔法少女になる」

「奈穂子、何をするつもりだ!」

 あれほどなりたくなかった魔法少女に、奈穂子がなると言い出したのだ。

 恭一は彼女を止めようとするが、奈穂子は彼の顔を見て、首を横に振った。

「私、ね。やっと分かったんだ。ずっと、恭一君に守られてたから今の私ができた。

 そんな私が、やっと見つけた答えなの。絶対に、みんなを助けたいから。

 みんなの思いを無駄にしたくない。だから、私は、フォルテュナと契約する」

「やめろぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーっ!!」

 恭一の叫びも空しく、奈穂子は呪縛から脱出し、フォルテュナに契約しに行った。

 

「私は……あなたが歪めた世界を、元に戻したい」

「……! 本当にそれでいいのかい? 世界はまた、災いだらけになっちゃうよ?」

 フォルテュナは世界に災いをもたらすのか、と奈穂子に問いかけるが、彼女は首を横に振った。

「幸せしかなかったら、人はいずれ堕落する。人が成長するためには、災いという試練も必要。

 ウイルスだってただそこにあるだけだし、自然災害だって単なる自然現象。

 そこに人が入り込んだから、災いが起こる。私達が欲しいのは過去じゃない。

 これから先にある、未来なんだ。これが、私の願い。さあ、叶えてよ!!」

 柿原奈穂子の全身が光に包まれ、衣装が派手できらびやかなものに変わり、

 手にはステッキが現れる。

 それが、柿原奈穂子の、最初で最後の、魔法少女の姿だった。

「はは、それがキミの願いか。せっかくボクが綺麗にした世界にまた災いをばら撒いちゃうのか。

 でも、ボクはそんな願いなんか……無かった事にしちゃうもんね」

 フォルテュナは現実改変能力を使おうとしたが、何故か何も起こらなかった。

「どうして? 力が使えない……?」

 狼狽えるフォルテュナに、魔法少女になった奈穂子はこう言った。

「あなたは、願いを何でも叶えてくれるんだよね。それを否定するのは自分を否定するのと同じ。

 だから、無かった事にはできないんだ。

 ……もう、私達人間を含めた全ての存在は、フォルテュナの思い通りにはならない!!」

 そして、奈穂子はステッキを振り、極太レーザーをフォルテュナに向かって放った。

 フォルテュナにそれが着弾すると大爆発し、洞窟が光の中に包まれた。




次回で「ある魔法少女の物語」は最終回です。
最後まで待っていてください。
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