お金のない夜凪(偽)さん 作:貯金は大事
今回は本当にただの日常パートです。
あれからというもの地獄の様な生活が幕を開けた。次第に体調が悪くなる母親。私のそばでずっと、ずっと… あの人は悪くないと壊れた機械のように毎日呟く姿をみていると、あの日起こったことが現実だと叩きつけられているみたいに感じてくる。悲しくて辛くて忘れたくても忘れられない記憶になるだろうと私はこの時、改めてそう思った。嗚呼、憎い。
唯一マシなことがあるとするならば、それは私の義務教育が終わるまでは私とお母さんを捨てた“あいつ”が仕送りをしてくれる位だ。正直言って腹が立つし、そんなお金なんて使いたくもない。だけどそうは言ってられないほど経済的に裕福でもないのは紛うことなき事実なので仕方なく使わせてもらっている。
現実逃避の一環として私は中学生ながら新聞配達のアルバイトをすることにした。もちろん走って午前5〜6時までの間だが。ふむ、今考えると己の身体能力に驚くが今更気にしたら負けな気がするので気にしないでおく。某演劇漫画の主人公の彼女も似たようなことをしていた気がするがこれもあまり触れないでおこう。
着々と似たようなことをしている自分に恐怖しながら、今日も押入れの中のビデオテープ達を取り出す。
「………………………」
3時間。多分それくらい。やっぱり画面の向こう側の彼らを観ていると全てが私の中に溶け込んで来るみたいに入ってくる。
───嬉しかったあの時の感情も
───激昂したあの時の感情も
───悲しかったあの時の感情も
───楽しかったあの時の感情も
全て、全て。
そして私は今日もまた、その感情に浸るのであった。
かくして時は流れ、私は中学3年生になり立派な受験生に昇格したのだ。そして義務教育の終わる音が聞こえる気がする…… のは気のせいだろう。そうで合ってほしい切実に。
「行ってきます」
誰もいない家に向かってそう呟き、学校へ向かう。中学2年生の夏、母が倒れた。その日から私は新聞配達のアルバイトを辞め、学校が終わるとそのまま病院へ直行する生活を送っている。
「おはよう」
「おはよー」
教室に入り、クラスメイトが挨拶をする中私は速やかに移動する。このクラスにも慣れてきたものだ。私が席に着くと前の席にいる女の子が話しかけてきた。
「ねぇねぇ夜凪さん!」
「何?」
彼女は確か……星野さんだっけ?あまり話したことがないからよく覚えていないけど……。
「今日って体育あるよね!?楽しみだなぁ〜」
「そうだね」
「夜凪さんは運動得意?」
「……普通かな」
「えー!意外!」
そんな会話をしているとチャイムが鳴った。先生が教室に入ってくると号令がかかる。授業が始まるようだ。こうして私の一日が始まったのだった。1時間目、2時間目の授業が終わり昼休みになったので私はいつものように屋上へ向かうことにした。理由は単純明快で人がいないからである。弁当を持って階段を上り扉を開けるとそこには先客がいたようだった。男子生徒が一人、ベンチに座ってパンを食べているところだった。
「…………」
私は特に何も言わずに彼の隣に座り弁当を食べ始める。ベンチが一つしかないので仕方ない。彼もこちらには興味を示さず黙々と食事を続けていたので、私も気にせず食べ進めることにした。しばらく沈黙の時間が続いた後、彼が口を開いた。
「なぁ」
「……何?」
「……いつもここで飯食ってるのか?」
「……まぁそうだけど」
ふーん……、と彼はそれだけ言うとまた黙り込んでしまった。一体なんなんだろうと思っていると今度も向こうから話しかけてきた。
「お前って友達いないの?」
「……いない」
「ふーん」
「……」
また沈黙が流れる。なんなんだこの人は……。自分だって一人で、それも屋上で食べている癖によくも私にそんなことが言えたものだ。とはいえ、自分で友達いないと言ってしまうと悲しくなって来るのはなぜだろう。
「ねぇ、なんでそんなこと聞くの?」
「別に深い意味は無いよ。ただ気になっただけ」
「……そう」
私はそれだけ言うと再び食事に戻った。そして食べ終わった後、弁当箱を鞄の中にしまい立ち上がる。すると彼も同時に立ち上がった。どうやら私と同じタイミングで食べ終わったようだ。そのまま二人で教室まで戻りそれぞれ自分の席に着いたところで授業開始のチャイムが鳴ったので教科書とノートを出しておくことにした。
「それでは号令」
「起立、礼。ありがとうございましたー」
授業が終わり放課後になったので帰る準備をしているとふと声をかけられた。振り返るとそこには星野さんがいた。
「ねぇ夜凪さん!一緒に帰らない?」
「……いいよ」
断る理由もないので了承することにする。二人で下駄箱まで行き靴を履き替えた後外に出たところで彼女が話しかけてきた。
「夜凪さんっていつも一人で帰ってるけど寂しくないの?」
「……」
私は何も答えられなかった。確かに友達と呼べるような人はいないし寂しいと言えば寂しいのかもしれない。だけど今更誰かと仲良くなりたいとも思わなかったし、何よりこの生活に慣れてしまっている自分がいるのもまた事実だ。
「そっか……じゃあさ、今度一緒にどこか遊びに行かない?」
「……え?」
突然の提案に思わず驚いてしまった。一体どういう風の吹き回しだろう?「あ!もちろんお金はこっちで出すから安心してね!」と言い出す星野さん。そういう問題ではない気がするが……まぁいいか。どうせ母の様子をみた後は暇だし断る理由も特に無いしね。「いいよ」そう答えると彼女は嬉しそうに笑った。彼女の笑顔に今私は心から笑えているだろうか。いや笑えてはいないだろう。だから画面の中の
次回はもう少しちゃんと話を進める予定です。