お金のない夜凪(偽)さん 作:貯金は大事
金欠になったので投稿します。
あれからと言うものあの幼女について考える日々が続いた。あの日見つける事が出来なかったのは仕方ない。そもそも名前すら知らないのだから当然と言えば当然なのだが……。
私は部屋に戻るとベッドに横になる。そして大きくため息をついた。
「一体、あの子は何だったのかしら……」
私は天井を見つめながら考える。彼女は何者なのか?目的はなんなのか?そもそも人間なのかさえ分からないのだ。ただ一つだけ分かる事があるとすれば彼女は何かを知っていると言うことだけだが……それだけでは何の解決にもならないだろう。
「……ダメね私、少し頭を冷やしましょう」
私はベッドから起き上がると部屋を出る。そしてそのまま玄関に向かい外へ出た。外はすっかり暗くなっており街灯だけが道を照らしている。
「はぁ……」
私は再びため息をつくと歩き出した。特に目的地があるわけでもないのだが、今はただ歩きたい気分だったのだ……しばらく歩いているとふとある事に気が付いた。それは人の気配がしないと言う事だ。いつもならこの時間でも人通りが多いはずなのに今日は一人もいないのである。
「……変ね」
私は立ち止まり周囲を見回すがやはり誰もいないようだ。まるでこの世界に自分一人しかいないかのような錯覚に陥ってしまう。
「早く帰りましょう」
私は足早にその場を立ち去ろうとするが、その時ふと視界の端に何かが映るのを感じた。それは小さな人影のようなものだったと思う。私は気になってそちらへ視線を向けるとそこには一人の少女がいた。……アレは私?嗚呼、間違いなく幼な頃の私だ。あの時、裏切られたままの姿でそこに居た。
『ねぇ、もうとっくに気付いているんでしょ?あの子が何者なのか』
───うるさい。
『あの子は“あいつ”の子供よ。憎いよね。私とお母さんを捨てたくせにさ』
───うるさい!
『でも仕方ないよね。金さえ渡せば何も言わないあなたが悪いんだから』
───うるさい!!!
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「はぁ……はぁ……」
気が付くとそこは自室のベッドの上だった。どうやら気を失っていたらしい。身体中汗まみれで気持ち悪い事この上ない。
夢にしてはあまりにもリアルすぎた。本当にあれは現実に起こった出来事ではないかと疑ったほどだ。
だけど実際はそんな訳なくて結局はただの悪夢だったのかもしれない。でも何故あんな夢を見たんだろう?思い当たる節が全くないわけではないのだけれども……
「あぁ、もう嫌になるわ。今日はお風呂入ってすぐに寝よう」
私は独り言ちると浴室へ向かった。温かいお湯に浸かり、全身を洗い終える頃にはだいぶ気分が良くなっていた。それからドライヤーで髪を乾かすと鏡の前で確認する。いつも通りの自分の姿だ。それなのに違和感を拭えないのは何故なんだろう。そんな事を考えている時だった。突然部屋にあるスマートフォンから着信音が流れた。画面を見るとそこには見覚えのある名前が表示されている。星野ルビーと書かれたそれは紛れもなく彼女のものである。私は恐る恐る通話ボタンを押すと耳に当てた。
「もしもし?」
「おっそーい!!」
電話口から聞こえてきた声は星野ルビーのものだったのだが声色的に元気が無いように感じた。何かあったのだろうか?心配になりつつもまずは要件を聞くことにする。
「どうかしたの?」
「別に何も。ただ話したくなっただけで……別にアイドルオーディション落ちたとかじゃないから!」
そう言う彼女の声はどこか寂しげな雰囲気を纏っていたように思う。
「そう……ルビーちゃんらしくないわね。普段なら落ち込むどころか次を目指して突っ走っていく感じでしょ?」
私がそう言うと彼女は一瞬黙り込んだあとに「うぅ〜!!」っと悔しそうな声を上げた後でポツリポツリと語り始めた。
「分かってる。分かってはいるんだよ。でもさぁ〜」
そう言ってさらに続ける。その声はまるで泣いているのではないかと思わせた。普段の彼女からは考えられないほどの弱々しい声だった。
「やっぱり悔しいじゃん?私だってそれなりに頑張ってきたつもりだもん。そりゃあオーディション落ちることもあるよ。でもそれって私だけのせいじゃないと思うんだ」
「どういうこと?」
「皆んな同じ条件なんだしさ、平等なんだよ」
そこまで話すと一旦言葉を区切る。その後深呼吸をして落ち着きを取り戻すかのように息を吸う音が聞こえた。そしてもう一度話し出す。今度は落ち着いた様子で話し始めた。
「だから次は絶対受かってみせる!」
力強く宣言する姿が目に浮かぶようだった。そんな彼女の声には確かな決意を感じたからだ。
「応援してるわ」
「ありがとー! ところで景ちゃんの方はどうなの? アルバイト順調?」
「まぁボチボチといったところかしら。この前エキストラのバイトに行ったら殴りかかってしまって追い出されたけど」
私がそう言うと彼女はクスクス笑い出した。
「あはは! なにそれ!」
「そんなに笑うことないでしょ! こっちは真剣なのよ!?」
そう言い返すも内心ホッとしていた。いつもと変わらない会話ができたことに安堵していたのだ。さっきまで落ち込んでいた様子の彼女もすっかり元気を取り戻したようだった。その後も少し話をして電話を切った後私はベッドに入ると目を瞑った。明日からまた新しい一日が始まりますようにと願いながら眠りに落ちていったのだった……。
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「これからよろしくねお姉ちゃん?」
目の前でそう私に言い放つ幼女見ながら、どうしてこうなったのかを考える。
朝、誰かに揺すられた気がしてゆっくりと起きたまではいい。問題はここから始まった。カーテンの隙間から刺す日差しが眩しくて横を向けば、昨日追いかけていた幼女の満面の笑みの姿がそこにはあった。寝起きで回らない頭で考えても、なぜ?と言う疑問しか浮かばない。新しい一日が始まって欲しいと願ったけどこう言う方向性は望んではいなかった。
「ごめんなさい。あなたの言っている意味がわからないわ」
「うーん? 簡単にいえば今日から私もここで一緒に暮らすってことよ」
なぜそうなる。見ず知らずの人と一緒に暮らす程、私は肝が据わっているわけじゃない。もしできたとしてもそれはただの頭のおかしい人だ。それに、ここは私とお母さんとの思い出が詰まっている場所だ。
「どうしてそうなるの? それにどうして一緒に暮らさないといけないのよ。私たち家族でもなんでもないのよ」
私の発言に彼女が人を馬鹿にしたような薄笑いと、とても暗い声色で言葉を発した。
「家族だよ私たちは…、血が半分だけ繋がっている家族」
おめでとう夜凪(偽)。これでよりお金がなくなる事案が増えたね。