『呪術廻戦』に、白面の者(の欠片)inしたら?ネタ 作:蜜柑ブタ
今回は、現段階で一番書きたいと思ってた、呪術廻戦0の百鬼夜行を起こした夏油とえんの場面。
原作以上に酷い夏油の最後となっています。
なので夏油ファンの方は、本当に本当に読まないことをオススメします!!。
アンチを目的としているわけではないのですが、もしも夏油が呪いの神に出会って自分の思想について話をして、でも同調して貰えないことと、色んな決めつけで呪いの神の心中を全然理解しなかったら?という人間の弱さと自分で自分を追い詰め過ぎた結末というのを書きたかった。
そのために夏油を使ったことについて謝罪します。
それでもOKって方だけどうぞ。
いいですね?
その事件は、長い歴史を紡いできた呪術界でも十本の指で数えられる最悪の出来事であった。
かつて五条悟と共に最強の呪術師として切磋琢磨し、親交を深めた親友同士となった最強の呪術師のもうひとりである、夏油傑が最悪の呪詛師に堕ちて今の世に反逆を起こした。
夏油傑が持つ術式で取り込んだ呪霊達を百鬼夜行のように従え、同志となった呪詛師達と共に起こした呪術界の転覆のために。
彼が行き着いた思想である、呪術を扱えない非呪術師を排除した呪術師だけの理想郷のために。
いつからか非呪術師を猿と呼んで蔑むようになった夏油傑は、より大きな力を求めた。この時の事件は、その戦力となる存在を手に入れるために引き起こしたと…いうのが、表向きでの事件の記録となっている。
しかし、一部の人間の記憶にしか残らなかった事件のもうひとつの目的があった。
ばらまかれた呪霊達と呪詛師を無力化させて一掃させるために、嫌々舞い降りる巨体。
それは、夏油傑が乙骨という青年から奪おうとしていた特級過呪霊『折本里香』とはまったく違う存在だった。
むしろそっちよりもたちが悪く、ただの人間でも呪術師でも絶対に倒せないほどの圧倒的な者。
普段は居館睦紀という青年の両腕で抱えられるぐらいの、人間の赤ん坊ぐらいの大きさでいるソレは、さっさと命じられた仕事を終わらせるために本来の大きさを露わにして現れた。
呪いを認識できない一般の人間にも見えて聞こえて、触れることさえできる実体があるため、百鬼夜行に巻き込まれた逃げ遅れた一般人達の目を一気に集めることとなる。
無論、夏油一派と呪霊の群れを討伐するために出撃している呪術師達の目も。
それこそが夏油の狙いだった。
呪術界にて保護され、居館睦紀という人間を母と慕い、睦紀はこの子の母だと自認する歪な親子。
世界の根底にある陽と陰。その陰から生まれ落ちた、陰の化身。
かつて別の世界で白面の者と呼ばれていた怪物であり、今は睦紀によって『えん』という新たな名を与えられた呪いの神のごとき怪物。
睦紀の目には、複数の尾を持つ白い狐のような姿に見えるが、それ以外には……。
「ああ……、やっときてくれた…。待ってた…。」
死闘が繰り広げられていた現場が、ソレが現れたことで水を打ったように静まり、誰もが手を武器を止めて、奇妙な空気となる。
「…傑。……マジかよ。”そっち”が本命だったわけ?」
五条悟は、夏油の真の目的を察して頭を手で押さえた。
『………………ふんっ。』
フラフラとした足取りで歩み寄って来る夏油など目もくれず、犬がお座りをするように下半身を地面に降ろし、忌々しげに鼻を鳴らしたえんが顔を上へ向けて大口を開けた。
途端に周囲、それどころか県を跨ぐぐらいの広範囲にいた呪霊や大小関わらずあらゆる呪いがとてつもない吸引によって引っ張られて、えんの口の中へ吸い込まれ始めた。
それはその場にいた呪術師も呪詛師も影響されて、呪力を奪われる感覚にたまらず膝をついたり、いきなりのことに倒れてしまったりした。
五条はこうなることを予め想定していたため、耐える方法を使って呪力を極力残るようにした。
乙骨は折本里香を吸われまいと彼女を支え、折本里香も呪力をごっそり奪われながらも耐えた。
そうして数分程度で大量にいた夏油の呪霊は一匹も残らず、五条以外の呪術師と呪詛師も戦闘の継続が不可能になった。
呪いが消えて、奇妙なほど澄んだ空気が支配する中、呪力を多く失いながら、それでも呪いを食い尽くしたえんの前に来た夏油が、ふらつきながら頭を垂れるように両膝をじめんについた。
「話を……、私の…はなしを……、答えを……もらいたい…。」
『……。』
口を閉じたえんは、首と背中を前に曲げて夏油を見下ろす。
「この世界は…、呪いを生む…。だが呪いは…呪いでなければ祓えない…。呪いの神のごときアナタは…、この世界についてどう考えているのです? 呪いを生むばかりで呪いを祓えない無力な猿ばかりが溢れるこの世界を! アナタならどうするのかを!」
上半身を起き上がらせて手の届かぬ天にいる神に必死に祈るように、ありもしない希望を謳う信仰に縋ってでも生きたいともがく心身共に追い詰められた信仰者のように。
夏油の顔は、顔から出る液体に濡れて酷いものだった。そこに最悪の呪詛師としての強者の自信も、呪いに人生を壊されて呪詛師に堕ちるしかなかった者達を率いる長としての威厳もない。
そこにあるのは、追い詰められるだけ追い詰められてあと一息で壊れる間近の疲れ果てて傷つきすぎた弱者の顔。
『えん』という陰の化身、呪いの神と呼んで差し支えない圧倒的な怪物に手を伸ばし、悲痛な祈りを捧げ、自らが求める希望と救いが欲しいと縋る。
『えん』は、そんな夏油をただ見下ろし、彼の言葉を聞き、ゆっくりと瞬きを一度してから目を開けて口を開いた。
『我は、“えん”。睦紀の子。』
ただ、その一言。
その短い言葉に込められた意味を理解できたのは、恐らくこの場でたったひとりだった。
そのたったひとりが夏油では無かったこと。それが夏油のトドメになった。
求めるばかりで、えんのことを理解しようとしなかったことが、夏油の末路を決定づけた。
これもう、結果論に過ぎないのだが……。
「ぁ…ぉお………………あ、っうぅうううううあああああああああああああああああああああああああああああああ!?」
もはや言葉として形にできない自分の想いと共に喉から血が出るほどの叫びと共に、大きく見開かれた血走った目から流れる血涙と共に天に伸ばされた手は、背中から倒れ行くともに地面に落ちて、空っぽになった肉体から代わりに現れたソレは、夏油が猿と疎んでいる一般人には視認できない呪霊だった。
えんは、何も言わず、表情一つ動かす様子も無く、目の前に現れた夏油傑だった特級クラスの呪霊を見ていた。
「仕事終わったんでしょ? ならもう下がって良いよ、えん。」
えんと夏油傑だった呪霊の間に、五条悟が割って入り、呪霊に向き直りながらえんに言った。
『かつての旧友への哀れみか?』
「そう思うなら思えば良いよ。君には関係ない話だから。ほら、睦紀が『えん、いつ帰ってくるの?』って心配してるらしいから早く行けよ。」
『!』
シッシッと嫌な相手に去って欲しいような手の振り方をした五条など気にもとめず、そんなことより睦紀が心配しているというのに反応したえんは大急ぎで地面を蹴るように跳躍して遙か彼方へ飛び去っていった。あまりに速くて一般人はおろか呪術師や呪詛師にも視認できなかった。
えんが去った後、五条は視線を夏油だった呪霊に向けた。
先にえんによってごっそりと呪力を奪われた状態から呪霊になったのだが、失った呪力は回復せず、ただそこで浮遊しているだけで精一杯というような状態で少しつつけば簡単に崩れ去る状態であることが、五条の六眼で見抜けてしまった。
呪霊の表面にある無数の目からは血涙が零れている。無数の口らしき部分からは、言葉にならない悲しみと絶望が感じられる声が漏れている。
「馬鹿だ。大馬鹿だ。傑……、お前がこんな凡ミスで終わるなんて思わなかった。なんで分かろうとしなかったんだよ? えんには心がないって? えんの価値観が呪いと同じだって思った? 何回も、何回も………隠れて話をしたんだろ? なのに…、なんで………、えんの考えてることが分からなかったんだ!?」
五条は親友が残した呪いに向けて、呪術を放った。
「見てきただろうが……、睦紀とえんを……。こんなことまでして、何回も質問して縋らなくちゃならなくなるまでやらなくよかったんだ……。えんは……、呪いの神様でも、陰の…闇から生まれた怪物でもいたくなかった……。睦紀の赤ちゃん……、親子で、ただ……愛し愛されて……平穏に生きられるようになりたいって…………、それだけだったのに……。」
陰に、闇に、呪いという理そのものが化身となった怪物が、かつていた世界で滅び行く間際に願ったこと。
それは、無垢なる弱者である、ただの赤ん坊になって、忌み嫌われるための呼び名ではない名を貰い、自分が羨むあまりに八つ当たりで滅ぼし尽くしたかった陽の側の者達と同じに……。
望まれて生まれ、温かな無償の愛に包まれて生きる存在になりたい。
えんは、睦紀の身に受胎し、睦紀から無償の愛を受け取ったその時から、陰の化身という自分を自分たらしめる呪いから解放される道を模索し続けて、いまだ叶う見込みがない切なる願いと心の内を。
夏油は死ぬ瞬間も、呪いとなる時も、祓われる瞬間も、きっと理解しなかったのだろう。
自分が欲しい答えばかりを求めるばかりだったから。だが結局、欲しい答えは最後までえんから貰うことはできなかった。
このネタでの夏油の結末は、生きたまま呪霊になって死亡です。
肉体から抜け出て呪霊が誕生。
でも特級クラスの呪霊だったのに、先にえんにメチャクチャ呪力を吸われたのと超空気清浄したように周囲の呪いもなくなっているので呪霊としての力が出せず、形を保っているのが精一杯の状態ですぐ祓えてしまう状態に。
五条が夏油への哀れみと友としての情とかを清算するために、えんを下がらせて自分で引導を渡した流れです。
ちなみに睦紀が心配していたのは本当。
夏油は、睦紀対してやらかして接近禁止を言い渡されていて、ひと目の無い時にこっそりえんと会話を重ねているという設定にしています。
でも会話内容は、言葉を変えて同じ質問を繰り返して夏油が欲しい都合の良い答えをえんから引き出そうとしてばかりだった。
でもえんは睦紀に酷いことした夏油が嫌いだから煽りと嘲笑が混ざった言葉と声色で夏油をグサグサやって、夏油が欲しがっている答えは一度も出さなかった。
そして百鬼夜行の時に折本里香を手に入れることが表向きの犯行理由として記録されつつ、真実は一般大衆の目と耳もある中で、呪いの神のごとき怪物であるえんにこの世界をどうするのか、どう考えて何かをするのかを聞き、やはり都合の良い答えを期待した。
でもえんのことを理解していなかったから、最後の最後まで欲しい答えはもらえず、限界を迎えた夏油は呪霊になってしまった。
えんは、呪いの神として利用されることも、信仰されて縋られることも嫌で、陰の化身という怪物を辞めて、そんなこととは無縁な睦紀の本当の子供になりたいという願いを実現したい考えていた。
対極となる陽の存在すべてが美しくて見えて羨ましくて、それに比べて自分が醜くて汚れていると考えることが出来る価値観を持つせいで陽を憎んで踏み潰して破壊して自分を慰めるけど無意味なことだと理解してて……。
最後の願いを宿していた尾の欠片から復活し、睦紀という無垢なままの人間に無償の愛と名前をもらい、欲しかった物を満たされた。
でも自分が陰の化身の怪物の宿命から変われていないことを理解し、本当の睦紀の子供になりたがっているというえんの本心を夏油は理解しなかったし、しようとしなかった。だからえんは呪いの神として求めて来る夏油に、自分の願いと本心として『自分は睦紀の子』だと言い切って伝えたのですが、結果的にそれが夏油のトドメに……。
夏油のキャラ性を掴めていないと思うので、間違っていましたら活動報告か、メッセージでお伝え頂けると幸いです。
この場面は、試行錯誤を重ねて、このネタのテーマと最終回に繋げるような重要回にしたいと思っています。