『呪術廻戦』に、白面の者(の欠片)inしたら?ネタ   作:蜜柑ブタ

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リハビリ感覚で書いてみた、お試し短編です。


今回は、ほぼこのネタのラストに近い部分になります。

書きたい部分を書くって事で、あくまでお試しですがだいたいこういう展開を予定しています。(予定通りにできたことはあまりないですが…)



今回の場面は、宿儺が虎杖という檻から脱出するためにえんを利用するために羂索と裏梅と策を練ってえんの隙を作る機会を伺い実行。
そして計画通りに行ったと思いきや……?
という展開です。

『うしおととら』での白面の者ととらの関係が、えんと睦紀にもというのがポイントになったという展開です。


一部流血シーンや、生首や、欠損シーンがあります。
ご注意を。









それでもOKって方だけどうぞ。






いいですね?





試作短編その4  『繰り返してしまった過ちから生まれた愛の呪い』

 

 

 

 大きく見開かれたえんの両の眼で、しっかりはっきりと目撃してしまったその光景は、えんにとって己の醜さを自覚した時の嫌悪感と絶望と、陽との戦いの果てに自分自身の滅びの時が決定づけられた時よりも遙かに凌ぐ衝撃と絶望となり、えんを打ちのめすには十分過ぎた。

 胴体に大穴を開けられ、しまいには首を切断寸前になるほどの傷を負ったことで噴き出す鮮血に倒れて沈む睦紀の姿。

 えんにとって世界が凍り付いて時が止まったような体感を覚えるほどだった。

 あまりのショックで声さえ出せない。心を打ちのめす感情を吐き出すことさえ忘れてしまうほどに。

 だが過呼吸のようにハクハクと開閉する口が、時間と共に少しずつ打ちのめされた心から生まれる感情を声として吐き出そうとし始める。

 これ以上無いほど見開かれた眼からはついに血涙が流れ落ちる、それと共に言葉にならない叫び声を出すために大きく口が開いた。

 その瞬間を待っていたとばかりに、虎杖から肉体の主導権を奪った宿儺が右手の小指を千切り取り、千切り取った小指をえんの口めがけて投げ入れた。

 喉の奥へと落ちていった宿儺の…正確には虎杖の小指であるが、それがえんの体内へ。

「おろかな陰の怪物よのぅ。」

 だからこそ付け入れる穴ができたと、宿儺の意識が虎杖の肉体から消失した。

 倒れた虎杖は、ハッと目を覚まして起き上がって周りを見回したとき。

 

 そこにいたのは、えんの胴体の背中から生えるように現れた四つの腕を持つ全盛期の姿に近い宿儺だった。

 まるで宿儺に上書きされるようにえんの頭部が宿儺の腹部の口の方へと移動したりもしたが、ケンタウロスのようにまだ下半身がえんの四つ足の体が占めていた。

 えんの大きさの宿儺という大きさで、ひょっとしたら伝承に記された両面宿儺のよりも巨大となっている。えんの四つ足の体と九つの尻尾をも取り込めれば更に巨体になるかもしれない。

 まるでえんを上書きするように、宿儺の呪印がえんの白い体の表面に浮かび上がり、宿儺の腹辺りに移ってしまったえんの頭部は宿儺の腹に沈むように消えて生きながら口だけが辛うじて言葉にならない声を漏らしていた。

 

 

 一方、宿儺の生得領域では。

 

『むつ…き………、むつき、む、つき、むつきむつきむつき………!!』

 赤ん坊のように小さなえんが不安定な足場の上で力無く倒れた状態で泣きじゃくっていた。

 流れる涙は血涙。

「おろかな陰の落とし子よ。」

『むつきぃ…。』

「原始の対極の片割れたる陰の化身でありながら、陽の弱者に拘ったこと、己が全てだと委ねたことが敗因ぞ。だからこうして…、呪霊堕ちした人間ごときにこうして……。」

『むつ…き……むつきぃ…。』

「………つまらん。そんなに恋しいなら抱えておけ。」

『!』

 えんを見下ろしていた宿儺が手にしていたのは、睦紀の首。

 えんがハッと顔を上げた瞬間、宿儺が睦紀の首を放り投げた。

 下の見えぬ奈落の底へ。

『ああああああああああああああああああああああああああああ!!』

 えんが血涙を零しながら落ちていく睦紀の首を追って自身も奈落へと身を投げた。

 それを見送った宿儺は、鼻を鳴らし、腕組みをした。

「安心するがいい。貴様を縛る大陰の根源との繋がりは、俺が代わりに使ってやる。貴様が親だという弱者の首を抱いて永遠に眠れ。」

 

 底の見えない奈落の底は、血の池地獄のような赤い赤い底なし。

 赤い水中でやっと腕に取ることができた睦紀の首を全身で包むように身体を丸めて、血涙を流しながらどこまでもえんは沈んでいく。

 

 睦紀が全てだった。

 知らぬ世界に流れ着いた一欠片を運悪く受胎しながらも、自分を我が子として、自分が母親だと言って、名前も温もりも、生まれつきの欠陥で上手く出来ないことばかりなのに一生懸命愛を注いでくれた。

 本当の子供になりたかった。

 陰の化身でもなく、呪いの神などと縋られることもなく、化け物ではない、睦紀の本当の子供に。

 自分を縛り付ける生まれながらの大陰との繋がりを断ち切って、真に生まれ変わるにはどうするか模索していた。

 睦紀の寿命が来る前になんとかしたいと考えて考えて……。

 それが大きな隙を作ってしまった。

 かつて人間だった両面宿儺に自分が持つもの全てを、大陰という世界の根源との繋がりを利用される位置に入り込まれるほどの大きな穴を作ってしまった。

 睦紀がそれほどまでにえんにとって大きな存在になりすぎた。

 それは自覚していた。だが捨てるなんてことは絶対にできなかった。

 かつて白面の者と呼ばれた太妖に戻りたくなかったから。

 睦紀の子供でいたかったから。

 だから………、誰かが欲しがっているなら自分の力も大陰の根源もくれてやるという選択肢も視野に入れていた。

 だが………、睦紀がいなくなってしまったら無意味だ。

 睦紀がいなくなるということをひとつも考えなかった。

 思考さえ幼稚な幼子になった気でいたから、だから睦紀を失うことで受ける自分の痛手と隙を作ることすら考えが及ばなかった。

 

『ごめんなさい………。』

 

 コポリッと赤い液体の中でえんは目を閉じて謝罪の言葉を零した。

 全部自分のせいだ。後悔しても後の祭り。

 睦紀はもう………。

 

 

 

 

『………………えん?』

 

 

 

 

 

 睦紀の声が、えんの名前を呼ぶ。

 えんの目が開かれ、周りを見回す。

 幻聴かと思ったがそうじゃない。

 

 

『えん? 泣いてる?』

 

 

 

 ああ………、ああ…!!

 

 

 

 生きている睦紀の呼ぶ声だ。

 それを理解したとき、抱えていた睦紀の首が消滅し、体勢を変えたえんが浮上するために移動を開始した。

 だが浮上していく最中で、思い出す。

 二人でひとつのバケモノとして自分と戦い、全ての陽をまとめた片割れ。

 かつて自分が宿り、その憎悪などの負の感情を糧にして実体を持って生まれるための苗床にした男の成れの果ての妖怪。

 

 なら………、今の自分と睦紀は…?

 

 それに気づいた時、えんは一瞬浮上するのを止めかけたが、睦紀を求める気持ちが勝り浮上するのを再開した。

 

 

 

 

 

 

「………なんで?」

 

 かつて夏油傑だった死体の頭に入って、その死体を操る呪詛師、羂索は、目に映る光景に驚きを隠せなかった。

 確実に命を奪ったはずだった。実際に生命活動は完全に消え去っていたはずだった。

 だが睦紀は起き上がった。

 負った傷は恐ろしい速さで癒えて、出血の跡だけが色濃く残った状態で、ふらつきながら立ち上がる。

 恐らく大量出血による一時的な貧血だろうが、しかし睦紀は生きていた。

 ふらつく足取りだが、一歩一歩、確実に宿儺に取り憑かれたえんに近寄っていく。

 一方でえんに取り憑いた宿儺の動きが止まっていた。

 世界の根源の片割れたる大陰に切れない縁のあるえんのその力を手に入れるために、睦紀の命を奪った。

 虎杖という檻から抜け出るついでに、呪いの根源にもあたるであろう、この世を構成する重大な要素である力への近道を手に入れて更なる高みに昇る足がかりとするために。

 そうして上手く事が進んだと思った矢先にこれだ。

 睦紀が蘇った。

「なーんで死なないの?」

 そこへ真人が睦紀の背後から迫り、睦紀の後頭部を掴んだ。

 その瞬間、真人が表情を一変させ、後頭部を掴んだ真人の手が弾かれるように離れた。

「なっ!?」

 真人の腕が内側から何かに食い荒らされるように蠢き、真人が慌てて腕を根元から引きちぎって胴体への侵入を防いだ。

 切り離されて落ちた真人の腕からは、飛妖というえんの体毛から生成できる小型の妖怪が十数匹出てきて切り離された真人の腕を食い尽くした。

「なんで…!? あの人間から、あの化け物の一部が出てくんの!? えっ? むしろ、アイツがあの化け物? なんで!?」

 真人はかなり混乱していた。

 魂ごと肉体を変異させる極悪な呪術を使える呪霊である真人は、人間であるはずの睦紀に触れた時に見えたものが、えんと同じであることに驚愕していた。

 それを聞いた羂索は、意味を理解し、頭を抱えた。

「それは…、反則じゃないか…。」

 つい笑えてしまうほどの答えに、羂索はその場に座り込むほどだった。

 虎杖の宿儺の受肉とも、他の特級クラスの呪霊の受肉とも違う。

 文字通り腹の中で血肉を分けて、お腹を痛めて(※えんが腹を突き破っての誕生だったが)産まれたえん。

 手順を踏めば余所の肉体に移ることは可能だ。実際宿儺が実践できているのだ。

 だがえんは違う。

 えんは、呪霊を遙かに凌ぐ存在だ。

 そんな者をその身に宿した経験を持つ睦紀は……。

「死なない…、いや、この場合、死ねないが正解か…。どっちかが生きてたら死ねない運命共同体になってるなんて、意図して仕掛けを施したって…わけでもなさそうだね。」

 えんと睦紀の日頃の状況を見ていたら、えんが意図してそういうギミックを作ったわけではなさそうだ。

 今まで睦紀を手厚く守ってきたのは、えんの暴走を恐れてのことだったから、逆に気づくことができなかった二人の繋がりと呪いと呼べる恐ろしい運命。

 

 睦紀は、えんが生きている限り死ぬことはない。

 えんは、睦紀が生きている限り滅びない。

 その繋がりは二人の間でしかない強固で深く、だからこそどれほど深く意識が沈んでしまっても、声は必ず届くのだ。

 

「宿儺さま!!」

 宿儺の忠実な僕である呪詛師、裏梅が悲痛な叫び声を上げた。

 釣られて見ると、えんの体から生えていた宿儺の上半身を数本の尾が巻き付いて包み込むように締め上げていた。

『な……、な、な、な…ぜ…だ…!?』

 ベキベキメキメキと嫌な音を立てて締め上げらる尾が鉛に変異し、締め上げるどころか宿儺を小さく圧縮するように潰しにかかってくる。

 浮上してくるえんに体の主導権をあっさり奪われた宿儺は、潰されながら何が起こっているのか必死に理解しようとした。

 

 

「えん?」

 

 

 眼前まで来た睦紀が両手をえんに伸ばす。

 爪先立ちになっても届かないが、それでも懸命に伸ばす。

 宿儺の腹の口になりかけていたえんの口がブルブル震える。

 宿儺の一部として溶けていた頭部が形を取り戻していく。

 そして。

 

 

 

 

『お……お、お、おぎ………、お、おぎゃあああああああああああああああああああああ!!』

 

 

 

 睦紀を、親を求める大きな大きな泣き声をえんがあげた。

 えんの眼から零れるのは、血涙ではなく透明な涙であった。

 

 

 

 

 

 

 




確か白面の者ととらは、とらが白面の者を憎む限り白面の者が滅びないってギミックになっていたっていう状態でしたっけ?
でも最終決戦でとらが白面の者を憎悪しなくなり、逆に哀れにさえ感じるようになったことで白面の者を倒すことが可能になったとかって。
つまりこのギミック解除ができなかったら詰んでたってことだから……、どれだけ白面の者が無理ゲーな敵だったかが本当に痛感させられます。


このネタでは、睦紀とえんの関係がかつての白面の者ととらの過去での出来事から始まった切っても切れない繋がりと同じになっていたということにしています。
えんは、それを意図してやったわけじゃなく、睦紀の方も知らなかった。
睦紀に何かあればえんが絶対暴走するから手厚い保護を受けていたので、睦紀が死ぬ程の致命傷を受けるまで誰も気がつかなかったという流れです。
運命共同体であるため、お互いのことを深く理解できるし、底なしの奈落に沈んでしまった意識にも声を届けることが可能ということにしました。

宿儺は、えんから睦紀を奪う(殺す)ことでえんに大きな隙を作らせ、えんが持つ力を扱える場所に居座ってえんの意識を底なしの生得領域に沈ませた状態で好き勝手しようと企んだ感じです。
でも睦紀がすぐ復活してきたため、すぐ失敗……。
睦紀が死なないって分かってたら別の策を考えていたと思います。
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