異世界に転移したのは日本だけではなかった~SCP財団日本支部召喚~   作:M6A1(晴嵐)

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M6A1 晴嵐です。

パーパルディア編はこれでラストとなります。
色々書きたいことあるのですが、それは後書きにて。

それでは本編をどうぞ。


夜明け

―皇都 エストシラント カイオス邸

「…準備は整ったな」

 

自室に朝日が差し込み、カーテンがそよ風に揺れる。

窓の外は雲一つない青空が広がり、まさに清々しい朝である。

 

パーパルディア皇国にとって今日は歴史的な日になるに違いない。

成功すれば国の幹部として皇国が残り、失敗すれば一族郎党皆殺し…いや、亡国に一直線だろう。

 

近衛兵には息のかかった者が何十人もおり、皇帝、皇族の束縛は上手くいくだろう。

属領統治軍にも味方は数百人、行政大会議場も制圧可能だろう。

それに日本に「戦争早期終結」を条件にクーデターを手伝ってくれるよう約束を取り付けた。

 

失敗は許されない。

 

そう心の中で誓うと、カイオスは魔信で指令を出した。

 

 

―エストシラント ???

「魔信傍受、動き始めましたね」

「予定通りだな。部隊の展開状況は?」

「我々の予想通りです。軍は大会議場、近衛兵は皇族確保ですね」

「今のところは順調だな。何事もなければいいが…」

 

 

―エストシラント 行政大会議場

「一体軍は何をしているんだ!全ての属国の反乱を許すどころか、アルーニまでも陥落するとは!」

 

行政の幹部たちが集まって国の運営に対し、実質的な対策が会議される行政大会議では、皇国始まって以来の未曾有の危機を前に紛糾していた。

皇国主力海軍、3大陸軍基地の消滅、更に全属国の反乱、これらによりパーパルディア皇国の国力は大きく減衰しており、本土防衛もままならず、属国の穀倉地帯も支配権から離れてしまった。

 

軍最高司令 アルデは様々な方向からの相次ぐ罵倒を受け止めながらも説明する。

 

「現在、軍は再建中です。再建出来次第…」

「いつだ!それはいつになる!」

 

アルデの発言を遮って、農務局局長が怒鳴る。

 

「直ぐにでも穀倉地帯だけでも取り戻して頂きたい!このままではもって6ヶ月、たった6ヶ月で食料が尽いてしまう。統制すれば多少もつが、それでも8ヶ月程が限界だろう。一時的に日本国と休戦し、穀倉地帯の反乱を押さえることは出来ないのか?」

 

(こいつは何を言っているんだ…敵国が弱っているのにそんな情けをかけてくれる訳がないだろう)

アルデは農務局長の学のなさに脳内で啞然としながら返答する。

 

「第1外務局とも話し合いましたが無理です」

「では穀倉地帯を取り戻すことは出来るのか!」

「蛮族の戦力なんてたかが知れている。何故動かないんだ!」

 

アルデに対し野次を飛ばす。

 

「穀倉地帯を取り戻せるよう全力は尽くしますが、現在73ヵ国連合に加えリーム王国も参戦してきています。文明国家と戦うとなると、ある程度戦力を整えなければなりません」

「貴局作成の資料にも確かに書いてあったな…あの小国、すぐに寝返りおって!」

 

会議が熱を帯び紛糾する。

と、どこからか重低音が響いてきた。

その音は少しずつ大きくなってくる。

そしてその音はつい最近聞いた音だった。

 

「ま、まさかこの音は…!」

 

アルデの顔色がさっと蒼くなる。

同時に会議室の扉が勢いよく開いたかと思うと、武装した皇国軍70名がなだれ込んできた。

全員皇国で採用されているマスケット銃を構えていた。

 

「一体なんだ!何事だ!」

「各々動かないでいただきたい。この行政大会議場はたった今掌握した。勝手な行動をとれば命の保証はない!」

 

声を荒げたアルデに対し、部隊を指揮していた十兵長が答えた。

 

「国家存亡の危機を前に革命ごっこのつもりか!指導者がいなければ国は動かないぞ!お前たちはこの国を、パーパルディア皇国を滅ぼしたいのか!」

「この史上最悪の危機を作り出したのはあなた方だ!我々はパーパルディア皇国を、愛する祖国を滅亡させないために動いているのだ!」

「バカか!行政機関を押さえただけでは、何の解決にもなりはしない!敵がいるんだぞ、敵が!具体案か代替え案を示してみろ。それが無いなら、お前たちは本当の愚か者だ!」

「具体案なら既にある!カイオス様が日本と話をつけておられる。あなた方が何もしなければ、皇国は救われる」

「何!?カイオスが!?

 

会議場がざわつく。

 

「だが、日本を押さえただけではどうにもならん。反乱軍を、73ヵ国連合とリーム王国を押さえなければ我々は助からない。仮にそれらを押さえたとしても、我が国は日本に殲滅戦を宣言している。彼らが守ってくれるとは到底思えん」

「あなた方は我々一般兵よりも日本のことを知らないと見える。情報は上に行くほど簡素化され、都合よく捻じ曲げられるのだな。まあいい。これ以上問答する気はない。動かないでいただこう。一応忠告するが、現在皇都上空には日本の飛行機械が飛んでいる。もし我々を倒し外へ出た時は、彼らが問答無用で攻撃を開始することをお忘れなく」

「…後悔するぞ、貴様ら」

 

こうして、行政大会議場は無血制圧された。

 

 

―皇都 エストシラント 皇城

「カイオスよ、これは一体どういうつもりだ」

 

ルディアスの横には屈強な軍人が5名、彼を囲うように立ち、目の前にはカイオスが立っている。

 

「皇帝陛下、皇国の為しばし動かないで頂きたい」

「革命か…小癪な事を。こんな事をしても国民はついて来ないぞ。すぐに軍によって首が刎ねられる」

 

あくまで威厳を保ちながら、ルディアスはカイオスに話す。

 

「私が日本との戦争を止めます。そして反乱軍からも皇国を救います。もはやあなたには任せられない」

「我をどうするつもりだ?」

「皇帝陛下は今後政治に口を出すことは許されません。皇族として儀礼的行事には参加して頂き、政治に関して未来永劫影響を持てないように致します」

「一文明国家から列強まで成長させたのは皇族だぞ!国の運営に皇族の介入なくして皇国が成り立つわけがないだろう!」

「このままあなた方に任せると、日本、73ヵ国連合、リーム王国により近い将来、皇国はこの世から消え去り、亡国と化します。私が国を掌握すれば必ずや日本や他国と講和し、国を存続させます。講和の後は、皇族の方々の強い発言権が必要です。陛下、ご英断を」

「…レミールはどうなる?」

「レミール様は日本人虐殺の首謀者だと、日本から思われています。日本国外務省の職員の前で、民間人に対する処刑宣言を行っています。日本側からも引き渡しは絶対だと伝えられていますので、残念ながら…」

「…そうか」

 

ルディアスとカイオスが話をしてると、一人の軍人が入ってきた。

彼はカイオスに敬礼すると、

 

「無事レミール様を捕らえました。現在牢に護送しております。ただ一つ気になることが…」

「ん?何だ?」

「我々が邸宅に突入した際、既に内部は制圧されており、レミール様も気絶させられておりました」

「え?一体何があったんだ?目覚めた者に聞いてみてくれ」

 

その後何人にも聴取が行われたが、全員「何が起こったか分からず、気が付いたらベッドに寝かせられていた」と答えた。

もちろんレミールにも聴取があったのだが、彼女も何も知らなかった。

 

 

―少し時を戻しレミール邸

「早く逃げなければ…私は日本に捕まるわけにはいかんのだ」

 

レミールはそう呟きながら、支度を整えていた。

仲の良いメイドが危険を察知し、自分の持っている動きやすい服装とある程度まとまった現金、武器としてナイフを持たせてくれた。

準備が終わると、急いで裏口から路地に飛び出した。

 

「きゃっ」

「うわっ」

 

と、出会い頭に誰かとぶつかった。

 

「あいててて…大丈夫かい、娘さん?」

 

ふと顔を上げると、そこには薄汚い服を着た男が自分に手を差し伸ばしていた。

レミールはその手を無視し、さっと立ち上がる。

ふと、男の視線がレミールの足元へ向いた。

 

「娘さん、そんな危ない物持ってどうしたの?」

 

え?と思い、レミールは下へ目を向ける。

足元には護身用のナイフが転がっていた。

まずい、そうレミールが判断した瞬間、彼女は行動を起こした。

 

足元のナイフを一瞬で拾い、男に向けて振りぬいた。

彼は咄嗟の判断でそれを避ける。

 

「ちょ、お前、何をする!」

 

男は大声を上げる。

レミールは一歩踏み込むと、もう一度斬りつけようとした。

だが、その前に男の放った拳が彼女の脇腹に入った。

 

「ぐっ」

 

レミールはその場に倒れこむ。

立とうとするが、全く足に力が入らない。

と、周りに人の気配が急に増えたように感じると同時に、彼女の意識は遠のいていった。

 

 

―皇都 エストシラント 機動部隊い-15

「行政大会議場の制圧は上手くいきそうだな」

「我々が展開するまでもなかったですね」

「イレギュラーはいつでも起こりえるからな。備えあれば患いなし、だ」

「それもそうですね」

『こちらエージェント皐月、い-15聞こえるか』

「こちら、い-15、どうした」

『皇族のレミールの様子がおかしい、逃げ出す気かもしれない。注意されたし』

「い-15、了解」

「…イレギュラーですね」

「取り逃がすと厄介だ。早く向かうぞ」

 

「こちら正門チーム異常なし」

「やはり裏口か。急ぐz…」

「ちょ、お前、何をする!」

「…面倒事になったかもしれん」

 

機動部隊員が到着した時、そこには地面に転がっているレミールと男が1人佇んでいた。

 

「この女を拘束しろ。すいません、少しお話しを聞いても?」

「ええ、大丈夫ですよ」

 

男は機動部隊の見慣れない服装に驚いたようだが、少し深呼吸をすると話し始めた。

 

「私は港で臨時職員として働いていたシルガイアと言います。路地を歩いていたら、この女と出会い頭にぶつかってしまった後、急にナイフで斬りかかってきたのです」

「なるほど。それにしてもよく無傷で倒せましたね」

「私は格闘技をやっておりまして、なかなか腕が立つのですよ」

「ふむふむ、分かりました。後はこちらにお任せ下さい。シルガイアさん、今度あなたには国から懸賞金が貰えるでしょう」

「え!?それはどういう…」

「詳しくはそのうち分かると思いますが、こいつは国家存亡の危機に追い込んだ大罪人です。その第一発見者のあなたにはそれ相応の褒美が貰えますよ。あと、もう一つ。我々は国の極秘部隊です。この事は口外無用でお願いします」

 

後日、日本からレミールを捕獲した人物はシルガイアであると伝えられ、彼には名誉職として海軍幹部として抜擢された。

 

 

―サイト-8100

「以上でパーパルディア皇国に対するSCPは終了となります」

「色々イレギュラーもあったようだが、無事終わって良かったよ」

「私もです。パーパルディア皇国は名前をそのままに再出発、国力がガタ落ちで大変だと思いますが、カイオスさんには頑張って欲しいですね。そういえば虐殺首謀者のレミールは明日外務省の職員が身柄を引き取りに行くそうです」

「…そうか。今週の週末、サイト-81□□の大広間を押さえてくれ」

「何かありましたか?」

「虐殺に巻き込まれた職員と関係者の追悼式を行おうと思ってな。もっと早めにやりたかったんだが…」

「…分かりました。手配しておきます。彼の同僚や上司、部下にも送っておきますね」

「頼んだ」

 

有田が部屋を出ていく。

新藤は振り返り窓を覗くと、そこには綺麗な青空が見えた。

 

「これ以上争いごとに巻き込まれなければいいのだが…」

 

一つの戦いは終結した、だが財団の苦悩はまだまだ続く。




はい、改めてパーパルディア編終了です!
読んでくださった皆さん、ありがとうございます。
途中「今年中に終わらないよおお!」と取り乱したこともありました。
大丈夫だったぞー、過去の自分!

来年からはグ帝編です。
自分の書きたい話はかなり先です(早く書きたいなぁ…)

そして遂に、お気に入り登録100件&UA2万を超えました!!
皆さん、ありがとうございます!
こんなに読んでくださって嬉しいです!
今後も今作品をよろしくお願いします!

25日にTale「財団のクリスマス」、そしてこれと同時にIFルートを投稿しております。
以前とったアンケートに沿ったIFルートです。
宜しければご覧ください。


それでは皆さん、良いお年を!
来年も宜しくお願いします!

今後のパーパルディアは?

  • 原作通りに敗北
  • 更に大敗北を喫す
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