異世界に転移したのは日本だけではなかった~SCP財団日本支部召喚~   作:M6A1(晴嵐)

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M6A1 晴嵐です。

遂に7月に入り、本格的に夏が始まりますね。
クーラーかけっぱなしで電気代凄いことになりそう…

それでは本編をどうぞ。

追記)一部説明不足だった為、人物名を追記しました。


討議

―ムー国 国境数km地点

「これがグラ・バルカス帝国の戦車…我らの試作品とは大違いだな」

「所々穴が空いてボロボロですが、鹵獲して研究する分には十分ですね」

 

アルーに向けて侵攻してきた第8軍団、容赦ない空爆により95%近くを失った彼らは味方の亡骸や搭乗者を失った戦車を回収することも出来ず撤退した。

その機を逃さず日本国陸上自衛隊先行部隊の援護の元、ムー国のキールセキから回収部隊が展開していた。

アルー防衛隊は回収に参加せず、非常時に備え防衛能力を強化している。

 

「それにしてもこれほどの部隊を無傷で無力化する彼ら、日本国。一体どれほどの実力が…」

「我々が戦えば全滅しても残念だが、目の前でスクラップになっている部隊ですら止められんだろう。105mmイレール砲ならば至近距離であれば効果があるかもしれんがな」

 

そう返したのはムー国陸軍西部方面主力部隊司令 ホクゴウ、普段は回収部隊に随伴すること等ないが、グラ・バルカスの戦車や兵器を一目見ようと参加していた。

 

「それも回収して実験すればすぐに分かるだろう。それにこれらの兵器を研究、複製に成功できれば少なくともグラ・バルカスと同程度の実力は持てるうえ、新たに発見もあるだろう」

 

グラ・バルカスの兵器は自分らの兵器より遥かに性能がいい。

これだけの数を鹵獲出来れば、研究や実験に使うにしても十分すぎるだろう。

 

「次はバルクルス基地の攻撃か。日本国や第2文明圏各国が参加してくれるようだから、必ずや成功させねばな」

 

ムー国を守り抜くため、次なる戦いへ向けて気を引き締める。

 

 

―グラ・バルカス帝国 バルクルス基地

「はぁ…なんということだ…」

 

ベッドの上で横になりながらため息をついているのは、第8軍団長 ガオグゲル。

日本の攻撃により第8軍団は5%以下にまで減少、命からがらバルクルス基地まで帰投した。

 

だがなんとか帰ってきた基地は、見るも無残な姿になっていた。

レーダー施設は無くなっており、弾薬庫や格納庫があった場所周辺は吹き飛び、滑走路は穴だらけになり、基地の外壁の一部は崩れ落ちている。

パース空将によると、早朝未明に大規模な空爆を受けたらしい。

どうやら相手は、我々を攻撃すると同時に基地にも攻撃を仕掛けていたようだ。

(くそっ、相手はおそらく日本だろうが…あまりにも強すぎる。ムーだけなら何とかなるだろうが…一体どうすれば…)

 

「ガオグゲル様、お疲れのところ、少し宜しいでしょうか?」

 

突然ドアがノックされる。

ガオグゲルは少し気だるげにベッドから体を起こしながら返事する。

 

「ああ、いいぞ」

「失礼します。手短に話します」

 

部屋に入ってきた部下は1枚の紙を持っていた。

 

「先ほど本部より連絡がありました。内容ですが―」

 

 

―グラ・バルカス帝国 レイフォル出張所

現地の人々を威圧する存在の一つである石造りの建物、その一室にて若き外務省幹部のシエリアは事務作業をこなしていた。

傍らには少し性格に難があるものの、ある程度の能力は持っている部下のダラスが仕事をしている。

 

「ダラス、グラ・カバル皇太子の訪問の件だが、7日後10:30に帝都 ラグナを出発、14:00にレイフォリア飛行場に到着、16:00に同飛行場視察を終え移動。1日滞在後にバルクルス基地へ移動、同所を視察。で合っているな?」

「はい。間違いありません」

 

皇内庁から突然通達された最前線の視察、軍部はもちろん外務省も反対したが、皇太子 グラ・カバルの強い意向と命令により、視察が実現することとなった。

 

「粗相の無いようにしなければ…」

 

皇族の権力は絶大で、彼らが来るとなればその通るルートは全て舗装される。

道路標識はどれだけ新しくとも全て新品に交換され、見える範囲の景観は全て確認の対象となる。

万が一の事も考え、通るルートが3種類あればその全てが段差の一つも許されないほど、徹底的に舗装し直される。

 

それほどまでに気を使われる皇族が最前線の視察に行く。

不測の事態も考えられるため、外交官一同は気が気ではない。

と、不意にバタンとドアを開け執務室に職員が駆け込んできた。

息は切れ、汗をかき、書類であろう紙を握りしめていた。

 

「どうした?」

「今し方、帝国陸軍より通信が入りました!」

 

ダラスの問いに職員が紙を渡しながら答える。

 

「ほう、見せてみろ。もうアルーを落としたのか。皇太子がいらっしゃるから軍も張り切っているな」

 

そう話しながら紙を受け取るダラス、しかしその表情は次第に歪んでいった。

 

「な、なんだと!?」

 

汗油があちこちから噴き出し、文字を追う指先は震え始める。

 

「そ、そんな…そんなバカな事があってたまるか!」

 

部屋中にダラスの狼狽した声が響く。

 

「どうした?」

 

ダラスが震える手で書類を渡してくる。

その紙には下記の内容が記されていた。

 

・バルクルス基地が空爆を受けた

・空爆前にレーダーが機能しなくなる現象が発生、また早朝未明だったということもあり、迎撃出来なかった

・アルーを空爆する予定だった編隊は、全て地上で撃破された

・日本軍と思われる飛行機にて基地の重要部分を破壊され、基地機能の9割を喪失した

・アルーを攻撃しに向かった陸軍第8軍団は、アルーに向かっている途中、日本軍の攻撃を受け5%以下にまで減少、アルーを占領出来ずに帰投した

 

「な、何かの間違いではないのか…?」

 

シエリアの問いに誰も答えられない。

帝国陸軍は通常、戦果や損害を外務省に通告してこない。

なのに、わざわざ通告してきたということは、皇太子をまともにお迎えすることが出来ないという意思表示だろう。

皇内庁の指示により警備は軍部が行うが、案内と総責任は外務省が担うことになっている。

このままでは皇族の指示を外務省が守れなかったという事になり、その責任はレイフォル出張所責任者のシエリアと現場責任者のダラスが背負う事となっていた。

 

「こんな…こんな事が帝国にあってたまるか!」

 

ダラスが叫ぶ。

仮にアルーに案内出来なければ、いやバルクルスに案内出来なければ少なくとも彼の出世の道は閉ざされるだろう。

衝撃が走った執務室は、静寂に包まれている。その静寂を破るように1本の電話が鳴った。

 

「はい、こちらシエリア」

『シエリア様、陸軍将校ランボール様が至急説明のためお会いしたいと』

「分かった。すぐに通してくれ!」

 

シエリアとダラスは至急応接室へ移動する。

一時すると、ドアが開き陸軍将校ランボールが入ってきた。

 

「急な来訪失礼します。通信文では状況が伝わりにくいと思いガオグゲル様の代理として説明に参りました。ムー国征伐軍最前線基地バルクルスは、空爆により壊滅的被害を受けました。率直に申し上げてとてもではありませんが、皇太子殿下をお迎え出来るような状況ではありません」

「何故だ!何故そんな事が起きたのだ!」

「現在目下調査中です」

 

ダラスがランボールに怒鳴る。

ランボールはダラスの部下ではないうえ、他省庁に対する態度ではない。

ランボールは少し気を損ねたが、ダラスはそんなことお構いなしに続ける。

 

「調査中?そんな情報を持ってきてどうする!何故まだ分からないのだ!軍のタイマンでないか!皇太子殿下の来訪を断るというのが、どういう事か理解しているのか!」

「分からないから分からないのです!第8軍団も基地も短期間の間に壊滅しました。情報は初期段階では断片的なものしか入らないのです。情報を精査して確実な情報をお届けすれば、相当な時間が掛かります。迅速な情報というのは不確定なものなのです!精査した後であれば時間が掛かりすぎて、あなた方は遅いと文句を言うでしょう!」

 

二人ともけんか腰になってきたため、シエリアが割って入る。

 

「ダラス、喧嘩をしても意味がない。ランボール殿も迅速な情報を伝えようとわざわざ来て頂いてるのだ。ランボール殿、失礼した。続けてほしい」

 

シエリアがランボールに頭を下げる。少しだけ溜飲が下がった。

 

「おほん。分かりました。バルクルスを空爆してきた飛行機はとても高性能であり、また第8軍団との報告も加味して話し合った結果、現時点では相手は日本国ではないかと疑っています」

「な、なんだと!?」

 

ダラスの脳裏に先日行われた、朝田との会談が浮かび上がる。

会談では映像で発展した都市を見せつけられ、80年近くの技術格差があると言われた。

しかし映像では、兵器に関する情報は全く出てこなかった。

 

『貴国がムー国への侵略を開始した時…グラ・バルカス帝国の終わりの始まりとなるだろう』

 

会談で朝田が言い放った一言だ。

まさかブラフではなく、本当のことだったというのか?

いや、本当であれば兵器の実演映像を見せてくるはず。

そちらの方が外交上の効果が大きいからだ。

 

実際にはグラ・バルカスに技術の方向性を明確に与えない物や、対策をされると軍事情報を得られにくくなってしまう情報は出すことが出来なかった為、兵器等の実演映像は見せられなかったのだが、ダラスはそんな事に気づかない。

 

ダラスが思考を巡らす中、ランボールが続けた。

 

「軍部では今回の基地壊滅を非常に重く受け止めています」

 

転移後、連戦連勝を重ねてきたグラ・バルカス帝国。

世界連合艦隊すらも退け、グラ・バルカス帝国臣民の誰もが世界征服に疑念を抱いていなかった。

しかしムー大陸制圧初期のこの段階で、最前線基地が正体不明の攻撃を受け全滅に近い被害を出す。

更に最強の陸軍部隊と言われた第8軍団が壊滅状態に陥ったため、陸軍上層部は蜂の巣をつついたような騒ぎになっていた。

ランボールは続けた。

 

「海軍から情報は来ていますか?」




次回もあまり原作と変わらないので、水曜日に投稿します。

今後のパーパルディアは?

  • 原作通りに敗北
  • 更に大敗北を喫す
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