異世界に転移したのは日本だけではなかった~SCP財団日本支部召喚~ 作:M6A1(晴嵐)
8月も折り返しですね(ちょっと待て、早すぎる)。
それにしても今年は暑いですね、動いてないのに暑いよぉ~。
それでは本編をどうぞ。
―グラ・バルカス帝国 バルクルス基地
基地上空では、多数の飛行隊が警戒飛行を行っていた。
普段の数倍の数が飛んでいるが理由は皇族、それも次期皇帝といわれるグラ・カバル皇太子が基地の視察に来ているからである。
敵機や地上部隊を万が一見逃すと、どういう処分が下されるか想像に難くない。
『こちら陸軍航空隊第5小隊、第2空域異常なし』
「こちらバルクルス。了解、第3空域へ向かえ」
前回の攻撃でバルクルス基地はレーダー施設が完全に破壊され、使えなくなっていた。
そのため無線を用いて周辺の基地のレーダー情報を受信したり、航空機と連絡を取り合う等して警戒を行っていた。
「あれ?」
ふと通信士は定時連絡に使用していた無線が全く反応していないことに気づいた。
彼は故障の可能性を考えて、基地内に配備されている部隊に無線連絡を入れることにした。
「基地司令より第21小隊」
『・・・・・・』
「基地司令より第21小隊」
『・・・・・・』
全く応答がない。
「基地司令より各局、傍受した部隊あれば応答願う、どうぞ」
一言も無線から返ってこない。
「ガイア副指令!無線が全く反応しません!複数系統ある無線全てが故障したという可能性は極めて少なく、敵の電波妨害の可能性があります!」
前回と同じ敵の電波妨害の可能性を考えた彼は、即座に同室にいた副指令に報告した。
「な、なんだと!?現在は皇太子殿下の来訪中だぞ!万が一攻撃されたらとんでもない事になるぞ!」
「すぐに緊急サイレンの吹聴許可をお願いします」
「待て!サイレンで殿下に恐怖心を与え、結果何も起こらなかったらそれこそ大問題だ!」
「攻撃の可能性があるにも関わらず、何もしない方が問題では!」
「緊急用光信号を使え!あれだったら殿下は気づかんだろう」
基地に設置された赤色灯が点灯し、一定周期で点滅を繰り返す。
それに気づいた人員は慌ただしく準備を始めた。
―ムー国 キールセキ
今回のバルクルス基地攻撃にあたり、制空権を確実なものとするため、周辺の飛行基地も同時に攻撃、破壊または制圧作戦が同時並行で行われようとしていた。
バルクルス基地攻撃には空自、周辺の飛行場制圧と制空権確保は(空自に派遣されている)財団の航空隊が当たる。
「β隊(制空隊)、各機攻撃を開始せよ。γ隊(バルクルス基地以外の制圧部隊)、敵機と対空砲に注意しつつ攻撃せよ」
『こちらムー国攻撃隊、爆撃準備完了』
『こちら第2文明圏輸送隊、現在人員が搭乗中。あと10分ほどで全員搭乗完了』
「こちら司令室、了解」
確実に外堀を埋めながら連合部隊はじわじわとバルクルスへ駒を進めていく。
―グラ・バルカス帝国 バルクルス基地
飛行場に1機の飛行機が着陸しラッタルが取り付けられると、中から1人の大柄な男が姿を現した。
言わずもがな彼がグラ・カバル皇太子である。
彼が姿を現すと同時に音楽隊が演奏を始め、他の者たちは一斉に敬礼をした。
「うむ、流石は精鋭の帝国陸軍だ」
ラッタルを降り切ると1人の男が近づいてくる。
「グラ・カバル皇太子殿下、今回案内をさせて頂きます、陸軍第8軍団長、並びにバルクルス基地司令のガオグゲルと申します」
「ガオグゲルか。よろしく頼む。…ん?」
隣の滑走路から数機のアンタレス型戦闘機が離陸しようとしているのが目に入った。
「ほう。あれが陸軍航空隊か。離陸もスムーズで整然としている、流石精鋭だな」
本当は敵の攻撃が予想されたための緊急発進なのだが、グラ・カバルは出迎えのデモンストレーションだと勘違いしたのだ。
美しい離陸モーションに目を奪われた…その時であった。
突然離陸しようとしていた3機が爆発し滑走路に落ちていく。
そして落下した機体は後続の2機も巻き込んで爆発、炎上した。
突然の予想外の出来事に、グラ・カバルは体が固まった。
ガオグゲルは急いで固まったグラ・カバルの手を引き、走り始める。
「で、殿下!こちらへ!」
「おい!一体何が起こったのだ!」
「敵の攻撃です!ついてきて下さい!」
実際に初めて見る戦闘、あの飛行機に乗っていた者たちは助からないだろう。
現地からの報告で、戦死者の数は数字として目にしたことはよくあった。
1桁だとこの程度の被害で済んだと軽く考えていた。
しかし、目の前であっさりと5人が死んだ。
あれほどの練度、相当な練習を重ねたのだろうし、帝国航空兵となるために相当な勉強もしたはずだ。
「これが、戦場か!俺は今まで何も分かっていなかった!何も理解出来ていなかった!」
帝国が世界を征服する為には必要な犠牲、敵味方問わず犠牲は必ず出てしまうものであり、仕方のないこと、そう考えていた。
政治的には正しいのだろうが、目の前の死は数字で見るものとは違う。
先ほどの被害も書類では、戦死者 5 と記載されるだけで、それだけ見ても全く心は動かなかっただろう。
理性と感情が入り混じり、やりきれない思いが彼の心を駆け巡った。
滑走路から猛烈な爆発が連続して発生する。
……怖い!
「くそっ!」
自分が殺されるかもしれない恐怖というのは、これほどのものなのか!
対空砲火が曳光弾を交えて空に向かって撃ち上げられる。
基地内にはサイレンが鳴り響き、軍人たちは慌ただしく駆け回った。
階段を降り、ガオグゲルとグラ・カバルは基地司令塔の地下に作られている堅牢な地下司令室に入る。
この司令室には無線が使えない時に備え、基地内の各部屋と連携できるよう伝令管が設置されていたため、基地の状況が集まってきている。
更に外の状態を把握できるよう、潜望鏡の様な装置も設置されている。
外からは爆音が絶えず続いており、恐怖を加速させる。
「対空砲陣地、全て沈黙!」
「航空機格納庫、爆発!航空機大破!」
「移動式対空砲格納庫も爆発しました!」
「戦車部隊、自動車部隊、全滅したもよう」
「無線基地局、空爆を受けました」
絶望的な報告が続く中、ガオグゲルは必至に頭を働かせる。
「普通課部隊に連絡。皇太子殿下がおられる地下司令室周辺に転進、爆撃をやり過ごすと共に周辺の守りを固めろ」
「了解」
暫く爆撃音が続いていたが、ふと音が消えた。
「攻撃が終わったようだな。被害報告!」
無線、対空陣地、滑走路、格納庫、移動式対空砲等、全てが破壊されたようだ。
あまりにも正確無比な爆撃、前回同様だ。
「た、大変です!監視員より報告、敵第2波接近中!複葉機、数…300を超えています!」
「さ、300だと!?ここを更地にでもするつもりか!?」
1つの基地に300機以上の爆撃隊、ムー国は本気のようだ。
「おい!ここはどうなるんだ!?」
あまりの不安にグラ・カバルは堪えられず、ガオグゲルに尋ねた。
「殿下、この司令室は地中に埋まった要塞です。仮に爆撃で地上が更地になったとしても、ここは安全です」
「そ、そうか。すまん、続けてくれ」
外からは爆発音に加え、機銃掃射の音も聞こえ、司令室は不快な振動音に包まれる。
いつもは何も感じていない複葉機のエンジン音も、今は恐怖しか感じない。
「耐えるしかないか…」
「司令!バルクルスのエアカバーは本基地だけではありません。周辺基地からすぐにでも帝国航空隊が飛んできて、制空権を取り戻すでしょう」
「…甘いな」
「はい!?」
「甘いと言ったんだ。基地航空隊も第1次攻撃で全て撃墜され、駐機する戦闘機も破壊された。おそらく、付近の友軍機によるエアカバーは突破されているだろう。今回は援軍を頼りにせず、ひたすら耐えるしかないだろう。しかし、この司令室は地下要塞と言ってもいいほど堅牢だ。ムー国程度の爆撃では突破されまい。普通課には地下への撤収指示も出した。上部構造物はどうなるか分らんが…」
基地が全滅するであろう絶望と、それでも自分たちのいる場所は安全だという安心感。
複雑な感情が場を支配した。
今後のパーパルディアは?
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原作通りに敗北
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更に大敗北を喫す
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