異世界に転移したのは日本だけではなかった~SCP財団日本支部召喚~ 作:M6A1(晴嵐)
皆さま、お久しぶりでございます。
今回は3週間投稿してませんでしたね、申し訳ないです。
先週、長崎で行われていた護衛艦 やはぎの一般公開に行った後、10年ぶり位に原爆資料館に行ってきました。
戦争が悲惨だな、と改めて感じさせられましたね。
…と、ここまでが言い訳でございました。
それでは本編をどうぞ。
―前回のあらすじ
バルクルス基地は日本による的確な第1次攻撃で反撃能力を失い、ムー国による300機以上からの第2次攻撃により徹底的に爆撃されていた。
延々とも続いたように感じられた爆撃音が止み、司令室に静寂が訪れた。
少し待っても外からは何も聞こえない。敵の攻撃は終わったようだ。
「外の監視員とは連絡が取れません」
「外部は絶望的状況か…地下に避難出来た普通科部隊の人員数は分かるか?」
「現在確認中ですが、概ね350名程かと」
「随分減ってしまったな…無事な出口は?」
「そちらも現在確認中、第12、18、24区画からは外に出ることが可能です。また基地外へのトンネルに損傷は認められていないため、非常用トンネルは全て使用可能です」
「更なる攻撃も予想される。普通科から精鋭を、そうだな…30名選出し皇太子殿下の護衛の任に就かせる。非常用脱出トンネルを使用し、基地外へ避難せよ」
「了解しました」
ガオグゲルの指令は正確に伝わり、すぐに部隊の選出が始まった。
彼は指示を出した後、グラ・カバルに顔を向けた。
「殿下、このような醜態を晒してしまい申し訳ありません。しかし、殿下のお命を最優先で守らせて頂きます。これより護衛部隊を選出致しますので、部隊員と共に非常用脱出トンネルで基地外へ避難して頂きます。よろしいですか?」
「あ、ああ。すまんな。だが部隊編成にも時間が掛かるだろう?編成前にこの基地の現在の様子をこの目で見ておきたい。少しだけ地上に出る」
グラ・カバルの斜め上の回答にガオグゲルは凍り付いた。
「殿下、お待ちください。現在制空権は敵の手に渡っております。空から突然攻撃を受ける可能性が十分考えられます。殿下に万が一のことがあってはなりません。どうか脱出を最優先にして下さい」
「すまんな。私は皇太子 グラ・カバルとして、帝国臣民の為に命を捧げた者たちの闘いの生き様、生の戦場をこの目で確かめる必要があるのだ。たとえこの命が危険に晒されようとも、臣民の為に命を落とした者たちが必至に守ろうとしたその結果を、見る義務がある!」
「殿下、ご再考を」
「すまん、すぐ戻る」
地上に出てグラ・カバルに何かがあれば、自分どころか軍幹部全員の首が飛びかねない。
(頼むから言う事ぐらい聞いてくれ!)
そんな本音はおくびにも出さない。
「では、私も行きます」
皇太子とガオグゲル、そして基地幹部らは基地の状況を見るために地上に向かった。
「左右確認…大丈夫です。お進み下さい」
通路に危険がないか、一般兵が先行し確認しながら進んでいく。
暫くして、地上へ通じている扉が現れた。
数人の兵士が外に出て安全を確認した後、グラ・カバルは本当の戦場へ足を踏み入れた。
「くっ、これが戦争か…」
無残にも破壊され焼けただれている建物群、滑走路も穴だらけになり、帝国精強の戦闘機や飛行機が地上で炎を上げている。
敵の爆撃はかなり前に終わったはずだが、未だに熱気が立ち込めており、まるで火事の現場にいるかのようだった。
崩れ落ちた建物の中やその周辺には元々人だったと思われる物が転がっている。
消し炭になってしまった者、爆風により原型をとどめていない者、まさに地獄としか形容出来ない光景が広がっていた。
熱気に混じって、人が焼けたような嫌な臭いも時折感じる。
「ギュオオオオーーーーン!」
突然、周辺に恐怖を感じさせる咆哮が響き渡り、同時に軽快な炸裂音と共に空に向かって線が伸びる。
「生き残りの部隊が展開しているのか?」
建物の陰に身を潜ませながら、音のする方向を覗き込む。
姿はよく見えないが、数人が崩れた建物の陰から空に向かって小銃を撃っているようだ。
そしてその小銃の火線の先には、この世界の世界の覇者 ワイバーンの姿があった。
それも1騎、2騎ではない、数十、数百もの数のワイバーンが上空を乱舞していた。
小銃の発射箇所に多数のワイバーンが火炎導力弾を発射、あっという間に炎に包まれた。
「な、なんということだ…」
間違いなく敵は本気だ。
「司令!殿下!すぐに地下へ戻って下さい!」
建物の反対側を見張っていた兵が2人に声を掛ける。
幸い現在は見つかっていないようだが、いつ見つかってもおかしくない、危険すぎる状況であった。
「西側より飛行物体接近!数5!」
兵からの報告を受けたガオグゲルは、すぐに確認できる位置へ移動した。
「あ、あれは何だ!?」
衝撃を受けたガオグゲル、遅れてグラ・カバルもやってきた。
「一体どうした…な、何だ!?」
ずんぐりむっくりとした機体、それはキーンと聞きなれない音を発しながら、サイズにしては速すぎる飛行速度で近づいてくる。
更に、その機体には飛行機に必ずある筈のプロペラがついていなかった。
「お、大きい!そして速い!一体あれはどこの国のものだ…」
「早く!早く避難して下さい!機影、翼に赤丸を確認!あれは日本国の航空機です!」
兵はガオグゲルとグラ・カバルに対し何度も避難を促す。
2人が動き出す前に飛行機は基地上空に侵入、急激に速度を落とした。
「爆撃が来るかもしれません。早く!」
ようやく走り始めた2人だったが、同時に飛行機から大きな白い花が多数咲き乱れた。
「あれはまさか空挺部隊か!?遂に人を送り込んできたのか!?」
グラ・バルカスにも空挺部隊は存在するが、空からの降下は命がけであり多くの訓練が必要、陸戦経験は豊富であると言えなかった。
経験自体は低いはずだが…相手は日本国、常識が一切通用しない!
何とか司令室に戻った彼は、迎撃するため指示を出し始めた。
―バルクルス基地 非常脱出トンネル
「そろそろ陸自の第1空挺団が降下し始めてるでしょうか」
「定刻通りならそうだな。もうすぐこの通路にお客様がいらっしゃる可能性がある、総員警戒を怠るなよ」
「Sir,yes sir!」
―バルクルス基地 司令室
不快な振動と爆発音が響く。
『第12扉、破壊された!』
『敵が来るぞ!警戒しろ!』
『な、何だこれは!まさか毒ガs…』
「第6小隊、通信途絶」
「第7小隊、警戒指示!」
「何だ!何が起こっているんだ!」
司令室に様々な報告が入ってくる。
ただでさえ忙しいこの状況で話しかけてくる、皇太子に腹が立ってくる。
「今情報を集めています」
「第7小隊、通信途絶」
「第9小隊も通信途絶!」
(進軍速度が早すぎる!何故こんなにあっさりと!?)
外から時折銃声が聞こえ始めた。
帝国陸軍兵は弱兵ではない、むしろ精鋭兵と言っても過言ではない。
歩兵は所詮銃を持っているかいないか、その程度の差しかないはずなのに、何故こんなあっさりと突破されているのか。
「第19小隊、通信途絶」
暗い部屋に潜んでいる部隊もいたはずだが、まるでそこに誰もいなかったかのように突き進んで来る。
(何故だ!何故歩兵レベルでも負けるのだ!)
「グラ・カバル殿下、ここにいる数名の兵をつけます。今すぐに非常用脱出口から避難して下さい。お連れしろ!」
グラ・カバルが口を開く間もなくガオグゲルは指示を出した。
兵たちは弾かれたかのように動き出すと、彼の手を引き脱出口に向かった。
グラ・カバルらが全員脱出口に入ったのを見届けたガオグゲルは、ポツリと独り言を呟いた。
「これまでか…俺の人生、ついてないな…」
司令室の扉が轟音と共に吹き飛び、同時に何かが投げ込まれる。
猛烈な音と光が発生し、司令室にいた者たちはその衝撃でめまいを起こしその場に崩れ落ちた。
ガオグゲルも倒れこんでからようやく視覚と聴覚がやられたことに気づいた。
「手を挙げろ」
「っ!!」
冷たい声でようやく彼は、緑の服とヘルメットを被った者に銃を頭に突き付けられていることに気づいた。
今まで感じたことのない死の恐怖。
降伏しなければ、間違いなくこの男は容赦なく引き金を引くだろう。
ガオグゲルは素直に手を挙げた。
「これまでか…降伏する。撃たないでくれよ、バケモノめ」
この日、グラ・バルカス帝国の前線基地 バルクルス基地は制圧され、基地としての機能を失った。
―バルクルス基地 非常用脱出トンネル
トンネル内を数人が走り抜けていく。
「はぁ…はぁ…何故精鋭の帝国兵が負けるのだ!」
避難用の洞窟なので基本明かりはないため、自分たちの持っている懐中電灯で足元を照らすしかない。
ずっと走っているため心臓は張り裂けんばかりに鼓動し、息も絶え絶えになってきた。
だが、敵に捕まってしまったら…帝国に恨みを持つものは少なくないだろう。
死刑で済めばいいが、最悪八つ裂きにされてもおかしくはない。
体は悲鳴を上げているが、死の恐怖が彼を限界以上に走らせる。
彼は走りながらバルクルスに来るまでの会話を思い出していた。
『最前線は何が起こるか分かりませぬ。ご再考を』
『行くのは止めておけ。皇族が行くとその準備のために兵を割くことになる』
必死の形相で止めようとするお付き、父のグラ・ルークスらの顔が浮かび上がる。
それらを振り切って、自分の考えを押し通した結果、今に至る。
何度も引き返す機会はあったし、進言も何度もされた。
前線に行くことが兵のため、国のためになると信じて推し進めた。
しかし現実は足を引っ張り、仮に自分が敵国に捕まった場合虐殺される可能性がある。
例え殺されなくても、外交カードとして利用されるに違いない。
連戦連勝、異界の蛮族だと敵を侮っていた。
「ぐぁっ」
ふと目の前を走っていた帝国兵の1人が崩れ落ちた。
「そこを動かないで頂きたい。動いたら撃ちますよ」
懐中電灯の先に数名の影が浮かび上がる。
「お前たちは何者だ?」
「答える義理はありませんね。そして質問する権利があるとお思いですか、グラ・カバル皇太子殿下」
「!?!?」
グラ・カバルは衝撃を受ける。
こちらに銃を向けているということは、間違いなく相手は敵だろう。
だが、敵はこの暗闇の中、お互いの顔が分らないのにどうして自分が皇太子だと分かったのだろうか?
「安心してください皇太子殿下、一切危害を加えることはありません。保護させて頂きます」
「保護だと?」
「もし私達を突破したとしても、周辺には多数の敵兵が展開しています。ムーであれば良いですが、もし文明レベルが低い国の場合、どうなってしまうか…想像出来ますよね?」
「……」
「さあどうされますか?我々に保護されるか、それともハイリスクハイリターンで外に逃げ出すか」
少しの時間グラ・カバルは思案すると、男たちの方を向いた。
「分かった、そちらの要求を飲もう」
「ご理解ありがとうございます」
「ただ1つだけお願いがある」
「何でしょうか?」
「ここにいる者たちを含めて、バルクルス基地の帝国兵全員の身の安全を保障してほしい」
「…分かりました。絶対に保障させて頂きます」
かくしてグラ・バルカス帝国の皇太子 グラ・カバルは日本国(財団)の保護下に置かれることとなった。
―日本国 サイト-8100
『新藤君、何と勝手なことを!一国の皇太子を財団の一存で捕縛するとは!国際問題になりかねんぞ!』
「総理、落ち着いて下さい。彼を無傷で捕まえるにはこうするしか方法がありませんでした。もし彼が大怪我を負ったり、最悪死んでしまった場合はそちらの方が取り返しのつかない事態となっていました。財団はこれ以上国際関係を拗らせたくないのです」
『彼の身柄はどうなっている?』
「現在、財団管理下にあるホテルの一室で休んで頂いております。細かいことはそちらと決めようと思いまして」
『…分かった。できれば今日中に話し合いたいな』
「では後ほどそちらに伺います」
「で、結局どうするんですか?管理官」
総理との通話が終わると、有田が尋ねてきた。
「相手の出方次第だな。皇太子の身柄の引き渡しは要求してくるだろうが、正直これ以上戦争を長引かせたくない。彼には日本を学んでもらって、絶対にグラ・バルカスが勝てない相手だということを知ってもらい、講和の架け橋になってもらいたいな」
「ですが相手はグラ・バルカス。もしかしたら我が国に対し懲罰攻撃を行う可能性も…」
「十分考えられるな…総理の次は防衛省とも相談しないとな」
―1日前 福岡 とあるホテル
「こちらがグラ・カバル殿に滞在して頂くお部屋となっております」
黒いスーツを着た男が部屋の扉を開けると、絶景が広がっていた。
部屋に設置された大きな窓からは海が広がっており遠くまで見渡せる。
ベッドは白く清潔感にあふれ、試しに座ってみると雪のように柔らかかった。
(まるで帝都の自宅のベッドのようだ)
「おい、このベッドは特別な物なのか?」
「いえ、これは普通のベッドですよ。まぁ、お値段分ある程度いいベッドとは思いますが」
「何!?こんな良質な物が普通だと!?」
帝国で普通に売られている布団やベッドに寝たことは無いが、これほど良い物ではないだろう。
彼の目にふと壁にかかった黒い四角形の物が入ってきた。
「何だこれは?」
「こちらはテレビです」
「テ、テレビ!?こんなに薄い物がか!?それに画面がでかすぎる!」
帝国のテレビといえば、とにかく高価で重く、白黒でどれだけ大きくても68cm程である。
だが目の前の物はどうか。画面は大きく数倍はあるだろうし、横から見ても帝国の物と比べると紙の様に薄い、だが一番の驚きは映像が全てカラーであるということだろう。
かなり鮮明に映っており、蟻まで綺麗に見えるのではないかと思ってしまう程だ。
「持ってみても良いか?」
「どうぞ*1」
職員から持ち方を教わってからカバルはテレビを持ち上げてみる。
「ほう、軽いな…」
この軽さなのにこの性能、日本はどうやら一部の技術が帝国より高いらしい。
「ではまた明日、お部屋までお迎えに上がります。何か用がありましたら、そちらの電話からお願いします」
様々な説明を受けた後、職員はそう言って部屋を出て行った。
自身の扱いはとても丁寧で、身の安全は心配しなくてもよさそうだ。
「日本か。思ったより技術が発達しているようだな。占領出来れば、我が帝国は更に大きく発展するに違いない」
日本の技術を吸収し発展していく祖国を想像しながら、グラ・カバルはふかふかのベッドで眠りに就くのだった。
来週も6000文字程度になると思います。
今後のパーパルディアは?
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原作通りに敗北
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更に大敗北を喫す
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