周回ハリーと転生オリ主の珍道中   作:ポン酢醤油

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ハーメルン初心者なので、タグの不備、設定ミスなどあれば教えて頂けると嬉しいです。


なんか思ってた主人公と違う

ああ、これが異世界転生ってやつか。

 

それが俺が、この世界で目を覚まして一番初めに抱いた感想だった。

 

「エル!大丈夫!?」

 

頭上から女性の声が聞こえる。エル、というのは俺の名前なのだろうか?外国人っぽい名前だな。カッコよくて気に入ったぜ。

 

 とりあえず辺りを見回してみる。知らない部屋だが、視界が90度に傾いていることは分かる。どうやら俺は何処かの部屋の床に寝転がっているらしい。

 

「エル、大丈夫かぁ?ずいぶん派手に転げ落ちたなぁ。」

 

 頭上から今度は男性の声が聞こえてきた。やはりエル、というのは俺の名前で間違えないらしい。

 

このまま寝転んでいても仕方ないので、俺はヨイショと起き上がる。

 

起き上がると心配そうに俺を見る女性と男性と目があった。どちらも金髪で、日本人には見えない。

女の人が封筒のようなものを手に呆れたように言う。

 

「そんなに入学許可証にビックリしたの?」

 

 …入学許可証?

 俺は思わず首を傾げる。いまいち状況が把握出来ない。入学って何の入学だ?

 

「あんなに楽しみにしてたものなぁ、仕方ない無いよ。」

 

 にこにこと男性が言う。

 

頭にハテナを浮かべたまま俺は女性から封筒を差し出され、受け取る。

 

封筒には、住所らしきものと、宛名が書いてあった。エル・トライアン…ほう、これが俺の名前か?

封筒を裏返すと赤い蝋で封がしてあった。なるほど、ずいぶんアンティークな仕上がりだな。嫌いじゃない。

封を開け、封筒から手紙を取り出し、読んでみる。

ホグワーツ魔法魔術学校…?

 

「………ん?」

 

ホグワーツってあれか?ハリーポッターの舞台の学校だろ?え?どゆこと?

 

 思わず目の前でにこにことこちらを見つめる男女を見る。ていうか多分だけどこの二人俺の両親って事でいいんだよな。

 

「えっと…父さん、母さん?」

「なあに?」

 

 おずおずとそう呼んでみれば笑顔で返ってくる返事。ああ、やはり俺はこの二人の息子に転生したのか。ということは俺も金髪外国人顔になっているのか?後で確認しねぇと。

 

「あー、これ、ホグワーツって書いてるんだけど?」

「ええ、立派な魔法使いになれるように、頑張ってね!」

「………まじか」

 

 どうやら俺は、ハリーポッターの世界に転生してしまったらしい。

 

 

 

 

俺はバカでかいトラックに撥ねられて死んだしがない会社員だ。ああ、トラックに撥ねられたのも別に撥ねられてそうな子供を助けて…だとかそんなカッコいい理由じゃ無いぞ。ただ単にボケっとして前見て無かっただけだ。クソみたいな職場で30連勤した後にな。そりゃ誰だってヘロヘロのフラフラになるよ。

  

で、驚くべきことに次に目が覚めたらどっかの家族の11歳の息子に転生していて、しかもそこはハリーポッターの世界だった!しかも俺は魔法使い!今年からホグワーツに入学だ!

 

「まじかぁ…俺ハリーポッターとか読んだことないぞ…ユ◯バは行ったことあるけど。」

 

 車窓の窓から見える9と4/3番線とやらを眺めながら俺は呟いた。

 あの手紙を読んでからいろいろな事があった。両親に連れられてダイアゴン横丁とやらに買い物に行ったり、とにかくいろいろだ。

 そして、この世界の事をある程度理解した頃にはホグワーツ入学の日になっていた。

 

 しかし、そんな中、俺はこの世界で生きていく中で一つ心に決めたことがあった。

 それは、『自分の好きなようにとことん楽しむこと』である。

 もう俺は前世のように人生を仕事に捧げ、周りに気を使って、上司にペコペコするのはもうごめんなんだよ!

 

「へへ…魔法界だか何だか知らねぇが、俺は俺のやりたいようにやるぜ!」

 

コンパートメントの中、俺は一人ニヤニヤと第二の人生に思いを馳せる。

 

今度こそ彼女を作りたいよな。めっちゃ美人な。

 あと仲の良い男友達。前世の数少ない友人は怪しいセミナーを勧めてきて以来交流はしていなかったんだよな。あれは泣いた。久しぶりにあったらああだもん。

 

「…お、そろそろ出発か?」

 

 ゆっくりとホグワーツ特急が出発する。ホームでは大勢の生徒の見送りに来た家族が手を振っている。あ、あの走りながら手振ってる赤毛の女の子可愛いなー。いつ入学するんだろう。

 しかしその女の子も列車のスピードが上がるにつれて、どんどん小さくなり、やがて見えなくなった。

 

「さて…何しようか…」

 

 この世界の母さんはホグワーツに着くまでの間、それなりの時間があると言っていた。本当は列車内で適当に話し相手を見つけて時間を潰そうと考えていたのだが、それもやめだ。何故ならば俺は今日までのリサーチで俺と同学年に我らが主人公、ハリーポッターがいるという情報を入手したためである。つまり、この汽車の何処かにハリーポッターが乗っている。何かの間違いで遭遇してしまってはたまったものではない。

 

「楽しいことは好きだけど、面倒事はゴメンだからなぁ…死んだら元も子もないし…」

 

 あんな分厚い小説だ。何も事件が起こっていない訳が無いし、命の危険がないとも限らない。それに俺が巻きこまれないようにするためには、そもそも主人公であるハリーポッターという人物と接触するような機会を少しでも減らすに限る。

 

「まぁ、本でも読むかぁ」

 

 結局俺は暇つぶしに読書をすることにした。ゴソゴソとスーツケースを漁り、魔法史の教科書を引っ張り出す。俺は数ある教科の中でも特に魔法史に興味があった。もちろん杖を振って魔法を使うのにも充分ロマンを感じるが、これはそれとは違うベクトルで好きだ。なぜなら前世で学んだ歴史とは違って、魔法史はかなりぶっ飛んだ出来事が多い。しかしそんなカオスさが俺が魔法史を気に入っている理由だった。俺はペラリと教科書をめくる。

 

「さすが魔法族はやることのスケールが違うねぇ…」

 

 そうして俺が本の世界に没頭しようとしていたとき、突然コンパートメントの外から誰かが走る音が聞こえてきた。それもどんどん近づいて来ている。

 

「うるせぇな…人が読書してるってのに…」

 

 俺はムッと本から顔を上げる。ただでさえ友達を作るチャンスを逃したのだ。読書の機会まで奪われては溜まったものじゃない。

 

「電車で走るんじゃねぇよまったく…」

 

 俺が大きなため息をついたその時、俺のいるコンパートメントの前で足音が止まった。

 

「……?」

 

 俺が首を傾げると、不意にノックも無しにガラッとコンパートメントの扉が開かれた。

 

「うぉっ!?」

 

突然のことに目を丸くする俺の眼の前に尖った木の棒のようなものが突きつけられる。いや、ただの木の棒ではない。これは、杖だ。誰かが俺に、杖を突きつけている。…いや、どういう状況?

 困惑したまま俺は視線を杖からそれを俺に突きつけている人物にゆっくりうつす。

 緑の目に黒い髪、額には稲妻型の傷…

 

「…………ん?」

 

 コイツ、ハリーポッターじゃね?

 

「え、ちょ、」

「君、は一体」

 

 間違いない。ハリーポッターだ。ハリーポッターが俺に杖を突きつけている。

 

「……は?」

 

 アイェェェェ!?ハリーポッターなんで!?なんでハリーポッターっ!?

 俺はダラダラと冷や汗を流す。何でこんなことになってる!?俺なんかやらかした!?

 内心パニックになっている俺の前でハリーポッターは再び口を開く。

 

「君は一体、何者?」

「………ん?」

 

一瞬質問の意図が理解できず、俺は首を傾げる。…あ、よく見たらハリーポッター息切らしてる。じゃあやっぱさっき走ってたのこいつか。

するとハリーポッターはしびれを切らしたようにさらに杖をずいっと俺に突きつけてくる。

 

「ねえ、答えて。」

「い、いや…何者って…俺はただのホグワーツの1年生…」

「…本当に?」

 

 答えても何故かハリーポッターは疑うように俺の目を覗き込んでくる。いや怖い怖い!何なんだよまじで!まさかとは思うが俺が異世界から来たことと何か関係が!?

 

「ねぇ君」

「はいっ!?」

「もしかしてこことは別の世界から来た?」

「はぁぁぁぁっっ!?」

 

 なんで分かるんだよ!?エスパーかよ!?あ、それ以前に魔法使いだったか。え、魔法使いって心読めたりするのか!?怖っ!!!

 

「否定しないってことはそうなんだね。」

 

 にこにことハリーポッターは俺に向かって首を傾げる。その様子に俺はただ頷いて肯定することしか出来なかった。

 

「はい…」

「へぇ〜、そっか、別の世界から…ふーん…」

 

 うんうんと勝手に納得したようにハリーポッターは頷くと、そのままどかりと俺の正面に腰を下ろす。

 

 って、ちょっと待てぇ!!

 

「えっ、おいっ!何当たり前のように居座ってんだよ!」

「えー?だって他のコンパートメントもう一杯なんだもーん。」

「そんなわけねぇだろ!ここだいぶ前の方だぞ!もっと後ろ探せ!」

「ひどいなぁー、同じ1年生同士仲良くしようよ!」

「さっきまで杖突きつけてきた奴が何言ってるんだよ!」

 

 これはまずい、非常にまずいぞ。

 俺の頭の中で学生生活プランがガラガラと音を立てて崩れていく。

 

「あ、自己紹介がまだだったね!僕ハリーポッター!気軽にハリーって呼んでね!」

 

 知ってるよ…

 

「君の名前は?」

「…エル トライアン」

「エル!エルって言うんだね!よろしく!」

 

有無を言わせない態度に気圧され、思わず名乗ればハリーはパァッと顔を輝かせる。

 ああ…どんどんハリーポッターとの親交が深まっていく…

 

どうやらハリーは俺に興味津々なようで、このコンパートメントから立ち去ろうとしない。

 

ああクソ、こうなったら俺が席を立つしかないか?

 

ため息をついて俺が立ち上がろうとしたとき、再びガラッとコンパートメントの扉が開いた。

 入ってきたのは赤毛の男の子だ。

 

「ゴメン、ここ空いてる?」

 

ああ…ここにハリーポッターが居なければ友達第一号になれた筈なのに… 

だが彼が来たのは逆にチャンスだ。悪いが利用させてもらうぜ!

 

「ああ、それなら俺と変わってくれよ。この眼鏡、めっちゃ失礼なやつだからちょうど出ていこうと」

「どうぞどうぞ!僕の横座ってよ!」

 

 しかし俺が言い終わる前にハリーは赤毛を引っ張り込むと自分の隣に座らせた。

 そしてにこにこと俺を見つめながらパクパクと口を動かす。

 

『に が さ な い よ ?』

「ヒェッッッ」 

 

この主人公怖ええぇぇ!!!

 

ビビる俺をよそにハリーは自分の隣に座る赤毛に話しかける。

 

「僕、ハリーポッター!気軽にハリーって呼んでね!」

 

 すると赤毛の男の子は目を丸くしてハリーを見る。

 

「えぇ!?君があの!?」

「まあね、それより君の名前は?」

「僕は、ロン、ロン ウィーズリーさ。」

 

ロンと名乗った少年は俺の方を向く。

 

「君は?」

「俺はエル トライアンだ。よろしくな!」

 

にこやかに挨拶してみれば俺の向かいでハリーは大げさに驚く。

 

「ちょっと!僕の時とえらい違いじゃない!?ひどいよ!」

「お前がいきなりあんなもん突きつけてくるからだろうが!」

「あ、あれはー…」

 

ムキになって思わず言い返せば、ハリーはむぅ、と頬を膨らます。

そんな俺達を見てロンは首を傾げて言った。

 

「なんというか…君たち、仲いいんだね!」

「はあっ!?」

 

どこからどう見たらそう見えるんだよ!?

 

 

 

 

 その後も俺はコンパートメントから出ることは叶わず、ハリーと、ロンと共に雑談をすることになった。

 車内販売から買ったかぼちゃパイを食べながら俺はロンの魔法界の話に耳を傾ける。

 

「へえ…クィディッチってのはそんなに面白いスポーツなのか?」

「エルもそのうち分かるよ!世界一面白いスポーツさ!」

「学校でも開催されるんでしょ?みんなで見に行こうね!」

「あ?お前一人で行けよ。」

 

ナチュラルにハリーに立てられそうになったフラグを俺がへし折った所で、再びコンパートメントの扉が開かれた。

入ってきたのは気弱そうな顔をした少年と、女の子だ。

 

「誰かネビルのヒキガエルを見なかった?」

「ヒキガエル?」

 

 そんなもの学校に連れてくるのか…

 俺の横でロンが首をふる。

 

「ううん、見てないや。」

 

 するとネビルと呼ばれた気弱そうな男の子はなきべそをかきはじめた。

 

「どうしよう…もうすぐホグワーツに着いちゃうのに…」

 

 するとハリーが立ち上がってネビルに声をかけた。

 

「よし!僕に任せて!」

 

そう言ってハリーは「ネビルのカエルの事、すっかり忘れてたや」なんて呟きながら杖を取り出した。

…忘れてたって何だ?

 

「ネビル、君のカエルの名前は?」

「トレバー」

「よし、トレバーだね。」

 

 ハリーは頷くと杖を振った。

 

「アクシオ、トレバー!」

 

 すると、びゅん、と風を斬るようにして何かが飛んできた。ヒキガエルだ。ヒキガエルはハリーの杖先で停止する。ネビルがはっとする。

 

「トレバー!」

「ネビル、手出して。」

 

 言われるがままネビルが両手を差し出すと、その上にポトリとヒキガエルが落とされる。

 

「よし、もういなくならないようにね。」

「あ、ありがとう…!」

 

 ネビルは感激したようにヒキガエルを見つめる。

 するとそれまで目を丸くしてその光景を見ていたロンが叫んだ。

 

「おったまげー!!!ハリー、君もうそんな魔法が使えるの!?」

「すごいわ、そんな魔法、1年生の教科書の何処にも載ってなかったもの。私、教科書は全部暗記したつもりだったけれど、やっぱりまだ足りなかったのかしら…。私、ハーマイオニー グレンジャー。貴方達は?」

 

ハーマイオニーと名乗った女の子は興奮したように早口で言った。

 ていうか教科書全部暗記したってまじかよ…それで足りないなら魔法史しか読んでない俺はどうすりゃいいんだよ。

 

「僕ハリーポッター!」

「ロン ヴィーズリー。」

「俺はエル トライアンだ。」

 

 各々が自己紹介を済ませるとやはりハーマイオニーはハリーポッターという名前に反応を見せる。

 

「貴方がハリーポッター?私、貴方を本で沢山見たわ。」

「えー?そうなんだ、なんか照れるや。」

「その魔法の腕にも納得ね。貴方、ひょっとしたらレイブンクローかもね。私はグリフィンドールがいいけど。…私はそろそろ行くわ。もうすぐホグワーツに、着くみたいだし。」

 

それだけ言うとハーマイオニーは出ていった。ネビルもハリーにもう一度お礼を言うと彼女を追いかけるようにコンパートメントから出ていった。

 

「…何だったんだ。」

 

 思わず呟いた俺の横でロンが目を輝かせてハリーを見る。

 

「ハリー!君にあんなすごい魔法が使えるなんて!やっぱり、『生き残った男の子』だからなの?」

「い、いやぁ…たまたま読んだ本に載ってただけだよ…」

「にしてもあの魔法便利そうだな。あれ使えば寝てても遠くの物を取れるんだろ?全人類の夢じゃねぇか。」

「…エル、君魔法族生まれだろ?そこまで大げさにならなくても。」

 

 ロンが怪訝な顔でこちらを見てくる。おっとうっかりしていた。俺は魔法使いの両親の息子に転生したんだった。いい加減前世の価値観を捨てなければ。

 

俺達の横でハリーが口を開いた。

 

「ねぇねぇ、そろそろ制服に着替えない?ハーマイオニーがもうすぐホグワーツに着くって」

 

その時、再びガラッとコンパートメントの扉が開いた。

いや、どんだけ人来るんだよここ。

 

「このコンパートメントにハリーポッターがいるって聞いたんだけど、君がそうなのかい?」

 

 入ってきたのは男子三人だ。その真ん中の金髪の男の子がハリーを見て言った。

 

「うん、そうだよ。君達は?」

「こいつらはクラップとゴイル、そして僕が、ドラコ マルフォイだ。」

 

金髪の男の子ははんっ、と鼻を鳴らして。俺を見る。

 

「赤毛の方は聞くまでも無いな。ウィーズリーだろ。お前は?」

「俺?俺はエル トライアンだ。」

「トライアン?聞いたこと無い名字だな?まさかとは思うが、マグル生まれか?」

「?そのマグ…なんちゃらってのは分かんねぇけど、俺の両親はどっちも魔法使いだぜ?」

「ふぅん、ただの低級魔法族か。」

「…まぁ、どう取るかはお前の自由だな。」 

 

残念だったな、マルフォイとやら。世界の荒波に揉まれた俺にはそのような言葉通じないのだよ。

 

逆に名前も聞かれずに適当にあしらわれたロンが顔を赤くしてマルフォイに詰め寄る。

 

「マルフォイ!お前何しに来たんだ!冷やかしなら帰れ!」

 

 しかしマルフォイはそれを無視してハリーに向き直る。

 

「付き合う人は選んだ方がいいよ。ウィーズリー家みたいな下等な連中と一緒にいるのは得策じゃ無い。そのところ僕が教えてげるよ。」

「なんだと!?もういっぺん言ってみろ!」

 

ロンがマルフォイに掴みかかろうとしたその時、バッとハリーが間に入り、マルフォイの手を取った。

 

「そっか〜!ドラコは僕の事気にしてくれてるんだね〜!ありがとう!」

「ハリー!そんなやつの手なんて握るなよ!」

 

 ロンが驚いてハリーに叫ぶ。するとハリーはロンの手を取ると無理矢理マルフォイと握らせた。

 おいおい…そんなことして大丈夫かよ…

 案の定手を繋がされた二人は顔を赤くさせたり青くさせたりしている。

 

「まあまあ、僕達これから七年も同じ学校で過ごすんだよ?仲良くしようよ!」

 

にこにことハリーは二人に言う。

 

「だからドラコもさ、二人にごめんなさいして僕達と友達になろ?」

「だっ、誰がこんな奴らに!」

 

 マルフォイは顔を赤くして目の前のロンを見て、俺を見た。

 目が合ったのでウインクしてやる。サービスだぜ。

 

「ねぇ〜ドラコ〜!」

 ハリーはキラキラとした目でマルフォイを見つめる。

 そんな視線にマルフォイは一瞬たじろぐような様子を見せるも、すぐにロンと繋がれた手を引きほどくと。コンパートメントから出て行ってしまった。

 

「あ、あんまり僕をからかうなよ!」

 

 ピシャン!と言う音と共に扉が閉まった。

 

「ああ〜、やっぱり駄目かぁ…」

 

 残念そうに呟くハリーの横でロンが「マルフォイと…手握っちゃった…握っちゃったよ…」とショックを受けたようにぶつぶつ呟いている。

 そんな嫌だったのか…

 

 俺は思わずハリーに言う。

「ハリーお前…だいぶ変わってるな」

「え?そうかな?」

 

彼が首を傾げると同時に、ホグワーツ到着を告げる放送が車内に流れた。

 

 

 

 

「これから組分けの儀式を行います。名前を呼ばれたら前に出て帽子を被って下さい。」

 ホグワーツの大広間で、マクゴナガルという先生が俺達に向かって言った。

 

「組分けかぁ…エルはどの寮がいい?」

「お前が居ない所」

そして何故か俺のすぐ隣にはハリーポッターがいる。

どうしてこうなった?

  

ホグワーツ特急を降りてからというもの俺は、すぐにハリーから離れることを試みた。しかしやはりというべきかそれが許される訳も無く、アイツから離れようとした瞬間にガシッと腕を掴まれて『ど こ い く の ?』なんて言われて無理やり同じ舟に乗せられてしまった。

 

「何なんだよまじで…」

 

目の前で組分けが行われていく中で俺はため息をつく。

こうなればハリーポッターから逃げる方法は一つ。組分けで違う寮になることだ。

もうね、あんなふうに来られたらシンプルに怖い。ストーカーじゃん。

 

「エル トライアン!」

 

 そんなことを考えている内に俺の名前が呼ばれる。

 ハリーがにこにこと俺に手を振る。

 

「エル!いってらっしゃい!寮のテーブルで会おうね!」

「…そうならない事を祈ってるぜ。」

 

俺は組分け帽子の所まで歩き、帽子を被る。すると、帽子から低いささやき声が聞こえてきた。

 

『ふーむ、随分と珍しい生徒が来たものだ。異世界からの来訪者とは。』

「ん?分かるのか?」

『もちろん。…しかしそれと組分けは特に関係ない。重要なのは君がどうあるかだ。…さて、君はどのような寮をご所望かな?』

 

 俺は即答した。

 

「ハリーポッターが来なさそうな所で。」

『なるほど、ハリーポッターが…何だって?』

「ハリーポッターが来なさそうな所。」

『ちょっと君の言っている意味が分からないのだが…』

 

 困惑したような帽子の声に俺は捲し立てるように答える。

 

「だってアイツ、初対面で杖をつきつけてきたと思ったらそこからずっとストーカーみたいな事してくるんだよ!訳わかんねぇよ!」

『ストーカー…生き残った男の子が?』

 

 ますます困惑する帽子に俺は懇願する。

 

「頼む!アイツと別の寮にしてくれ!このままだとアイツに俺の優雅な学生ライフが壊されるに決まってる!」

『うむ…しかし、一概にはそうとも言えん…』

「何言ってんだよ!ハリーポッターだぞ!七年間何も起こらないわけねぇだろ!」

『うーむ………』

 

帽子は考え込むように黙り込んでしまったが、やがて再び口を開いた。

 

『…私に出来ることは帽子を被ったものを適切な寮に入れることのみ。すまんが、ストーカー被害は考慮できん。そして、お主が入るべき寮はすでに決まっておる。』

「な…んだと…」

『彼の者が同じ寮にならないよう、祈ることだな。』

「ちょ、ちょっと待って、考え直してくれ、マジでアンタに俺の人生掛かってる…」

『グリフィンドーーール!!!』

 

その瞬間、帽子が外され、視界が開ける。

グリフィンドールのテーブルから拍手が巻き起こる。

俺はふらふらとそのテーブルに向かい、席についた。

 

他の人の組分けがされている間、俺はずっとハリーポッターの組分けについて考えていた。果たしてハリーポッターは俺がいるグリフィンドール以外に行くだろうか?そうなる可能性は普通に考えて3/4だ。75%、そう考えると希望はあるような気がしてきた。

 

 やがて彼の順番が来る。

 

「ハリーポッター!」

 

 その瞬間、にわかに辺りが騒がしくなる。

 

「おい、聞いたか?ハリーポッターだってさ!」

「あのハリー ポッター?」

 

何処からともなくそんな囁きが聞こえてくる中俺はぎゅっと目を閉じて祈る。

 

大丈夫だ、ハリーポッターがグリフィンドールなわけない!だって特急の中でロンが言っていた。グリフィンドールは勇猛果敢な騎士道精神を持つものが入る寮だと!ぶっちゃけあのストーカーは騎士道精神なんて持ち合わせているとは思えない!

 むしろ目的の為なら手段を選ばない…スリザリン的だ!そう、アイツはきっとスリザリンに入れられる筈…!

 

ハリーが帽子を被ってからだいぶ立つが、一向に寮が決められる気配はない。それにつれてハリーの顔はどんどん不機嫌そうになっていく。多分今頃帽子にスリザリンを進められてるんだろうな。

 

やがて、沈黙を破って組分け帽子が声を上げる。

  

『スリザリ…』

 

 よっしゃ来た!俺の学生生活はこれで安泰だ!

 

「 」

 

そう俺が安堵したとき、ハリーが何事かを呟いた。

 

その瞬間、組分け帽子は何故か引き攣った声で別の寮の名前を告げた。

 

『グッ、グリフィンドーーール!!!』

 

 …………は?

 

 帽子を脱いだハリーが、笑顔で俺めがけて駆けてくる。

 いやいやちょっと待て、だってもう、スリザリ、まで言いかけてたじゃん、なんで土壇場で変わった?

お祭り騒ぎのグリフィンドールのテーブルの声が、何処か遠く聞こえる。お前ら、喜ぶんじゃねぇ!こいつは絶対にスリザリンだ!グリフィンドールが何よりも敵視している筈のスリザリンだ!

 

「エル!」

「うわぁぁぁ!!こっち来んじゃねぇぇぇ!!!」

 

ハリーが当たり前のように俺の隣に座ってくる。俺は反射的に離れようとするが、ガシッと手を握られて立ち上がれなくなる。

 

「エル!同じ寮になれて僕嬉しいよ!これからよろしくね!」

「俺は嬉しくねぇよ!ていうかお前絶対スリザリンに組分けされてただろ!どんな手使った!?」

「別にぃ…?ちょっと組分け帽子に『お願い』しただけだよ?」

 

黒い笑みを浮かべて言うハリーに俺は思わず顔を引き攣らせる。

 

こいつ、やっぱりスリザリンだ………!

 

 

その後、ロンも同じくグリフィンドールに組分けされた。ロンはハリーの隣に座りながら

「おったまげー!僕達みんなグリフィンドールだ!」なんて言っていた。

俺もロンと同じなのは嬉しい。ロンと同じなのはな。

 

組分けが終わると、職員席の真ん中に座っていたサンタみたいな人が立ち上がった。

 

「あの人誰だ?」

「アルバス ダンブルドア。ホグワーツの校長だよ。」

「ふーん…」

 

 ハリーポッターが振り向かずにそう教えてくれる。

 しかしそこで俺は気が付く。

 こいつ、明らかにダンブルドア校長の方を見ていない。校長が話しているのにも関わらずだ。

 

 どこ見てるんだ…?

 

 俺は疑問に思ってハリーポッターの視線の先を追う。すると、職員席の端のほうに座っている男性に目が行った。

 

真っ黒な服に真っ黒な髪、真っ黒な目。

 何もかもが黒で統一されたその教師を、ハリーポッターは何故かじっと見つめていた。

…何で?

そんなにガン見する理由が俺には分からない。

 陰気臭くて、いかにも幸薄そうなただの教師じゃねぇか。

 

 しかもよく聞くとハリーポッターは何やらぶつぶつと独り言を呟いている。

マジで何なんだ…

おれはそっと耳をそばたてた。

 

「えへへ…先生…スネイプ先生…!今度こそ…!」

 

…聞かない方が良かった。どうやらハリーポッターのストーカー対象は俺一人じゃ無かったらしい。

 

 俺は心のなかで幸薄教師にそっと合唱した。

 

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