周回ハリーと転生オリ主の珍道中   作:ポン酢醤油

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トロールって思ってたより大きいんですね

side ハリー

初めて彼を見たのは9と4/3番線だった。

駅のホームを歩いてると、僕は見慣れない家族を見かけた。はて、あんな家族いただろうか。

僕は首を傾げるとその家族に近づき、生徒の顔を見てみることにした。一体誰の家族だろう…?

 

「えっ…?」

 

その生徒の顔を見て僕はあまりの衝撃に息を飲んだ。

知らない顔だ。今までこんな生徒はホグワーツにいなかった。

どうして。一体何者、どこから。

様々な考えが一瞬で僕の頭の中を駆け巡る。

その生徒が僕の側を通って特急に乗り込んでも、僕は呆然としたまま動けなかった。

 

 

  

特急の出発を告げる汽笛が鳴り、僕は我に帰る。

そうだ。とにかくあの生徒が何者なのか、僕や先生の敵じゃないか確かめないと。

僕は慌ててホグワーツ特急に飛び乗った、

 

車両の中を走りながら僕はあの生徒を探す。

特徴はよく覚えている。金の髪に金の目。特殊な見た目のおかげで、その生徒は探せばすぐに見つかった。

その生徒は、コンパートメントの中で一人読書をしていた。

 

この時本当はもっと冷静になるべきだったんだろうけれど、僕は突然舞い込んだイレギュラーのせいですっかりパニックになっていた。

結局僕はその勢いのままコンパートメントに飛び込み、間髪入れずにその生徒に杖を突きつけた。

 

「君は一体、何者?」

 

 

 

 

どうやらこの見慣れぬ生徒の名前はエルと言うらしい。

出会って1秒で杖を突きつけてしまったせいか、過剰に僕から距離を取ってくるエルを前に僕は考える。

 

(異世界から来た…かぁ)

 

開心術でエルの心を読み、手に入れた情報はあまりに衝撃的なものだった。ひとまず僕や先生の敵とはならなさそうなので、そこは一安心だが、問題はそこでは無い。

 

この生徒の存在が、これからの展開どれだけの影響を及ぼすのか、僕には皆目検討がつかなかった。

ひょっとすると今まで起こったことが無いようなことも起こるかもしれない。…起こったことが無いようなこと?

 

そこで僕はピコーンと思いつく。それって逆に、上手く利用すればスネイプ先生を助ける足がかりになることもあるってことじゃない!?

 

いやっふぅ!僕天才!

 

思わずキラキラした目でエルを見れば、エルに思いっきり距離を離された。

うーん、まずは仲良くならないとね…

 

 

 

 

 

 

「エル!次の魔法薬学の授業、一緒に行こ!」

「だぁぁ!お前どっから出てきた!?」

 

 ホグワーツでの生活が始まって一週間。

ここでの生活にもある程度慣れてきた俺だったが、そんな俺には大きな悩みがあった。

何故かハリーポッターが…ハリーポッターがずっと俺に付き纏ってくるのだ。

 こいつ、俺がどれだけ距離をとろうとしても必ず俺の行く先々に現れやがる。

 今だってそうだ、ハリーがトイレに行った隙を見計らって先に教室に向おうとしたのに、何故か俺の前の曲がり角から出てきた。

怖い、このストーカーあまりに怖すぎる。

 

「えへへ〜、実はそこの絵画、隠し通路になってるんだ!後で教えてあげるよ!」

「いい!あと俺にくっついてくるなよ!」

「えぇ〜?でもエル今一人で暇そうじゃん。」

「ぐっ…!」

 

ハリーに指摘されて俺は言葉に詰まる。

そう、あれだけ第二の人生で友人を沢山作る!と息巻いていた俺だったが、それには1つ誤算があった。

 それは、肝心の同級生がまだ11歳の子供であることだ。いくら何でも精神年齢が違いすぎる。

どうしても話していると「あれ、なんか違うな」という気持ちが出てくるのである。

 

え?ならハリーポッターはどうかって?確かにこいつは随分大人びているが、それ以前に危ない匂いのするストーカーだ。ストーカーと友達になる気は無い。

それにこいつはなんか分厚い小説の主人公。迂闊に近づけば何かしらの事件に巻き込まれるに決まってる。

 

そんなこともあり、結局俺は俗に言う「クラスみんなと仲はいいけどどこのグループにも属していない人」のポジションに収まっている。

仕方がないので俺はこの世界での目標を「穏やかな学生生活を送る」に変更することにした。

 

そのためにはやはりハリーポッターと接触を避けるのが必要不可欠。なのだが、当の本人はそんな事は、つゆ知らず、にこにこと俺の隣で呑気な笑みを浮かべている。

 

「でもエルの気持ちも分かるよ!みんな見てる分には癒されるんだけどね!」

「ジジイか、お前は」

 

そしてなぜかハリーポッターもまた、俺と同じ「クラスみんなと仲はいいけどどこのグループにも属していない人」ポジションに収まっている。

本当に何なんだこの主人公…

 

「それよりも、魔法薬学の授業楽しみだね!えへへー、やっとスネイプ先生に会えるよー!」

「はぁ…」

 

ニヨニヨと笑みを浮かべるハリーの前で俺はため息をつく。ハリーポッターのストーカー対象は俺だけではない。何故かは知らないが、この学校の魔法薬学教授もまた、彼の標的となっているらしい。むしろ俺よりも薬学教授に対する執着の方が数段高いようにも思える。

 

「お前さぁ…入学してから毎日のようにその話ししてるけどさ、そもそもなんで」

話した事もない先生にそんな執着してるんだよ。俺はそういいかけて口を噤む。

いや、そんな事聞いてどうするんだ。ただでさえこいつから離れたいのに、これ以上踏み込むようなことはするべきじゃないだろ。半端な好奇心は身を滅ぼすのだ。

 

「ん?なぁに〜?」

「いや、何でもない。」

 

俺は首を傾げるハリーから視線を逸らした。

 

そりゃこいつに聞きたいことは沢山ある。

なぜ俺が別の世界から来たことを知っているのか。そんな俺になぜ付き纏うのか。なぜ入学して一週間なのにホグワーツの構造を熟知しているのか…

挙げ出したらキリが無い。

 

でも、それを聞いてしまったら最後、コイツの抱える得体のしれない事情に巻き込まれる気がしてならない。

だからこそこの一週間、俺はコイツに何も聞けずにいた。

 

「ふーん…まあいいや、なら早く行こうよ!僕一番前の席で先生の授業聞きたいんだ!早く行かないと誰かに席取られちゃう!」

「誰も取らねぇよ…あんな陰険教師のド真ん前に座りたがるやつなんているわけねぇし。」

「何 か 言 っ た ?」

「いや、何も?」

 

俺がそういった途端笑顔で振り向いてくるハリーに、俺は思わず顔を引き攣らせる。

流石スネイプ先生強加担。目が全く笑っていない。

 

「えへへー!待っててね先生!」

「はぁ…」

俺はこの後の授業を憂いて再びため息をついた。

 

「このクラスでは杖を振り回すようなバカげたことはやらん。吾輩が教えるのは名声を瓶詰めにし、栄光を醸造し、死にさえ蓋をする…」

 

魔法薬学の授業で、俺はぼけーっとスネイプ先生の講釈を聞いていた。うん、さっぱり分からん。

隣を見れば、キラキラと目を輝かせスネイプ先生の話に聞き入るハリー。一体何が彼をこうさせるのか…

 俺はちらっとスネイプ先生の顔を見てみる。

 うん、何度見ても陰気で幸が薄そうなただの教師だ。俺は一瞬頭に浮かんだ「一目惚れ」の言葉を振り払った。

 

「Mr.ポッター。」

「はいっ!」

 

演説が終わると、スネイプ先生が何故かピンポイントでハリーを指名した。いや、よりにもよってハリーはマズイだろ!

俺は顔をキラキラと輝かせて元気に返事をするハリーを横目に焦る。

スネイプ先生はハリーに質問した。

 

「アスフォデルの球根にニガヨモギを煎じたものを加えると何になる?」

 

???

 

質門の意味がまるで分からない。俺は思わずハリーを見るが、ハリーにはどうやら答えがわかっているようで、彼は自信満々に答えた。

 

「生ける屍の水薬です!」

「ほぅ…」

 

良くわからないが、どうやら正解らしい。

スネイプ先生は何故か不機嫌そうに眉を寄せると、続けて聞いた。

 

「ベアゾール石を見つけてこいと言われたら、何処を探す?」

「ヤギの胃の中です!」

「モンクスフードとウルフベーンの違いは?」

「ありません!どちらも同じ植物、トリカブトのことです!」

 

?????

 

俺はあまりにも自然に答えるハリーに次第に不安になってくる。

あれ、もしかしてこれが実は全部めっちゃ基本的な問題で、ワンチャン俺の方が常識ない可能性ある?

思わず周りを見てみるが、どうやら周りの生徒もチンプンカンプンらしく、口をポカーンと開けていた。

よかった。俺だけじゃなかった。やっぱりハリーが特殊なだけだったんだな。

 人知れず胸を撫で下ろす俺の前で、スネイプ先生は最高に不機嫌そうな様子で鼻を鳴らした。

 

「ふん、どうやらある程度は予習してきたようだな。」

 

いや、何でそんな不機嫌なんだよ。自分が教える教科が得意な教え子だぞ。普通喜ぶだろ。

あぁ、だめだ。この授業受けてると頭がハテナだらけになる。

俺はこれ以上考えるのをやめた。

 

 

その後は、ペアを組んでおできを直す薬を調合した。

もちろん俺は半ば強引にハリーにペアに誘われた。 

しかし、今回ばかりはハリーとペアを組んで良かったと初めて思えた。なぜならハリーの手際があまりに良すぎるのだ。もうあれだ。どっかの有名ホテルのシェフかってくらい手際が良い。そのお陰で俺はほとんど何もしなくても、魔法薬はどんどん出来上がっていった。

 

そのくせ前を向いて薬を調合したまま後ろのネビルに注意するのだ。

 

「あ、ネビル。山嵐の針は入れる前に鍋を火から降ろさないと。」

「え?うわっ、ホントだ。ありがとうハリー」

 

…お前は後ろに目でも付いてるのか?

 

スネイプ先生は授業中、何度かマルフォイの手際の良さを褒めた。

どう考えてもハリーの出来の方が圧倒的に良いが、スネイプ先生がハリーの手元を見ても無反応で通り過ぎるだけだった。いやマジでなんでだよ。

 

結局ハリーが一度も褒められることが無いまま授業は魔法薬の提出をする時間になった。

 

「エル!僕出してくるね!」

 

スネイプ先生に、あんな扱いを受けて尚、全くめげずにハリーは意気揚々と、教科書のイラストと全く同じ出来の魔法薬を持ってスネイプ先生に提出をしに行った。

ハリー…お前のそのメンタルの強さは尊敬するよ…

 

ハリーはにこにことスネイプ先生に魔法薬を渡す。

 

「先生!出来ました!」

「…ふん、まあまあだな」

「ありがとうございます!先生の授業楽しみで、いっぱい予習してきたんです!」

「…グリフィンドール5点減点。」

「なんでぇ!?」

 

ああ…可愛そうなハリー。どうやらアイツはスネイプ先生に何故か相当嫌われているらしい。…この一週間の内に何が迷惑ストーキングでもしたのだろうか?なら自業自得だな。

 

そう思いながらも、俺は心の底でストーカーに、ほんの少しだけ同情した。

 

 

 

 

ホグワーツに入学してから早2ヶ月。俺は相変わらずどこに行っても現れるハリーに頭を悩ませつつ、学校生活を送っていた。

 

 ハロウィンである今日もまた、ハリーに捕まり、仕方なくハリーと次の授業に向かっていた時、それは起こった。

 

「全く!悪夢みたいなやつさ!」

 

ロンの声が聞こえたかと思うと、誰かが俺にぶつかり、そのまま追い越していった。あの後ろ姿は…ハーマイオニーか。

ロンの方を振り返ってみれば、不機嫌そうな顔をしたロンが目に入った。ははーん、さては喧嘩したな?

 

さっきまで俺達が受けていた魔法で羽を浮かす授業では、かなりハーマイオニーにダメ出し受けてたからな。

まぁ、実際あれはかなり難しかった。俺も何かこう…1ミリくらいしか浮かせられなかったしな。

ハリーはどうだったかって?ハリーは羽を一気に10枚くらいダンスさせてフリットウィック先生をひっくり返らせてたよ。

 

俺の横でハリーがロンに言う。

 

「ロン、謝ってきたら?」

「そうだぜ、レディーを悲しませるのは良くないだろ。」

「二人共うるさいよ、何で僕が謝らないといけないのさ。」

 

俺もロンを説得してみたが、ロンはムッと口の端を下げると、さっさと行ってしまった。

 

「行っちゃったね…」

「…まぁ、子供のケンカだ。すぐに仲直りするだろ。」

「それもそうだね」

 

ハリーはロンの後ろ姿を見ながらやれやれとでも言いたげに肩をすくめた。

…やっぱこいつ、11歳じゃないだろ。

 

 

それからの授業にもハーマイオニーは出席しなかったが、俺は、まぁ夕食には流石に出てくるだろうと考えて特に気に留めなかった。

 

しかし、その日の夕食、ハロウィンパーティで俺はその判断を後悔することになる。

 

「トロールが…!トロールが地下室に…!」

 

ハロウィンパーティの真っ最中、突然クィレル先生が大広間に飛び込んでくるなり、そう叫んだかと思えば、ばったりと倒れ込んでしまったのだ。

…トロール?

この世界では初めて聞いた単語に俺は首を傾げる。

よし、こんなときはハリーの出番だ。

何故かこいつは魔法界のことなら聞けば何でも教えてくれるのだ。

 

「おい、ハリー。トロールってのは…ハリー?」

 

言いかけて俺は思わず口を噤む。

ハリーが、今まで見たことのないような冷ややかな顔で、床で気絶しているクィレル先生を見ていたのだ。

あぁ、こういうのをゴミを見る目って言うんだなって俺はハリーを見て思った。

えぇ…もう何なんだよ…何でそんな顔してるの…確かにクィレル先生のターバン異様に臭いけどさ…だからってそんな睨む…?

 

俺が少々ドン引きしている間に、ダンブルドアがパニックになった生徒を落ち着かせ、指示を出していく。

 

「皆、落ち着くのじゃ!監督生は生徒を連れて寮へ帰るように!」

 

ざわざわと生徒たちが移動を始める中、俺は気が付く。ハーマイオニーいなくね?

 

俺が咄嗟にハリーを見ると、ハリーは今度は何故か職員席の方を見ている。疑問に思ってハリーの視線の先を見ればそこには大広間から出ていくスネイプ先生…っておい!

 

「ハリー!お前こんな時まで…!」

 

思わずハリーにツッコむとハリーははっと俺の方を向く。そして同じくハーマイオニーの事に気が付いたのか、俺に頷いた。

そしてハリーはロンに声を掛ける。

 

「ロン、まずいよ!ハーマイオニーはこの事知らない!」

 

ロンははっと目を見開いた。

ハリーがロンを諭すように言う。

 

「ハーマイオニーを助けに行かないと!」

「う、うん!」

 

ロンがコクコクと頷く。

 

え、ちょっと待て、まさか先生に伝えず自分達で探しに行くのか!?それはまずいぞ。

嫌な予感を感じ、俺はそぉーと二人から離れようとする。

しかし、ハリーに右手をガシッと掴まれてそれを阻まれる。

 

「エルも一緒に行こ!ね?」

「………」

 

結局俺達は三人で寮に向かう列を抜け出すことになった。

廊下を走りながら俺は歯噛みする。くそっ、まずい!これ絶対イベントだ!そりゃそうだ。あれだけ分厚い小説だもんな!入学して2ヶ月間何も無い訳無いもんな!

トロールの出現と主人公の単独行動…このままこいつらに同行したら、確実に遭遇する!ああクソっ!だからハリーポッターなんかと絡みたく無かったんだ!

 

せめてもの抵抗として俺は二人に提案する。

 

「あー、俺、この事を先生に伝えて来るからさ。二人はそのままハーマイオニーの事探しといてくれよ。」

「何言ってんのさエル!?そんな事したら後で先生に怒られるだろ!」

 

案の定ロンに反対されるが、俺は冷静に答えてやる。

 

「まあまあ、どうせ俺達が居なくなったことはすぐ先生にバレるだろうしさ。それならあらかじめ言っておいたほうがまだマシだと思わねぇか?」

「う…うーん?そうなの、かな?」

 

我ながら適当な理論だが、こういうのは今の一瞬だけ乗り切ればそれで良いのだ。

まだ先生も大広間に何人か残っているだろうし、先生と合流さえ出来れば、後はどうにでもなる。

しかしそんな俺の提案にハリーは笑顔でこう答えた。

 

「じゃあそれ僕が行くよ!僕なら学校の近道知ってるからさ、先生の所まですぐ行けるし!」

「は?」

「じゃあそうしよう!エル!行こう。」

「いや、ちょっと待、」

 

俺が反論するよりも先にロンがそれに賛同し、俺の渾身の策は一瞬で破綻した。

いや、てかハリーも、今まで散々俺にくっついて来てたくせに、急にどうした?

 

「頑張ってねー!」

 

ハリーが俺達に手を振り、来た道を戻っていく。

後に残される俺とロン。

ああ、もうこれ行くしかないのか。

流石に11歳の子供一人をこのまま行かせる訳にはいかない。

仕方なく、俺は頭を抱えたくなる気持ちを押さえ、ロンと共にハーマイオニーを探しに向かった。

あ、そういえばハリーにトロールがどんな魔法生物か聞くの忘れてたな。

 

 

 

「うーん、たしかハーマイオニーは女子トイレにいるってパーバティが言ってたんだけどなぁ…」

「女子トイレ?それって何階の女子トイレだ。」

「さぁ…?」

 

 ロンとそんな会話を交わしながらハーマイオニーを探し、とりあえず近場のトイレに向かっていた俺達だったが、女子トイレに近づくにつれ、俺は違和感を覚えるようになった。何だか辺りに不快な匂いが漂っているような気がする。俺はロンに尋ねてみる。

 

「なぁ、なんか妙な匂いしないか?」

「匂い?」

 

そう言ってロンが首を傾げた瞬間、どこからか甲高い悲鳴が聞こえてきた。続けて何かが壊されるような音。

 

俺とロンははっと顔を見合わせる。

 

「ハーマイオニーだ!」

 

急いで女子トイレに駆けつけると、ムッと鼻をつく匂いが俺達を迎えた。それと同時に目に入る破壊されたトイレと、巨大な棍棒を持ったトロールの巨体。

…いや、デカくね?どう考えても4メートルはあるぞ。

 

「えぇ…」

 

正直俺はトロールの事舐めてた。もっとこう…ア◯雪みたいな大きさ想像してたわ。

まぁそりゃそうだよな…あんだけ学校大騒ぎになるんだもん…こんなくらいデカイよな…

 

トイレの奥に目をやると、そこではハーマイオニーが青い顔で座り込んでいた。

 

「ハーマイオニー!」

 

ハーマイオニーに気が付いたロンがトイレの中に飛び込む。

 

「お、おい!待て!」

 

どんな肝っ玉してんだこいつは!?

俺はロンを追ってトイレに入る。

 

「こいつ!ハーマイオニーから離れろ!」

 

ロンがトロールに瓦礫をぶつける。するとそれまでハーマイオニーを向いていたトロールは俺達の方を向く。

あー、もう、まじかよ…!

 

トロールは起こった様子でロンに棍棒を振り下ろす。

 

「あぶねぇ!!!」

 

俺はロンの後ろ襟をぐいっと引っ張った。

次の瞬間、ロンの目と鼻の先をトロールが振り下ろした棍棒が猛スピードで通過する。

 

「う、うわぁ!?」

「くそっ…!」

 

馬鹿力にも程がある。こんな攻撃、一撃でも当たったらお陀仏だぞ…

 

恐怖に腰を抜かすロンの前に立ち、俺は必死に考える。ぶっちゃけさっさとここから逃げ出したいが、流石の俺も子供を置いて逃げるなんて非人道的な事は出来ない。

 

なんとかして二人を連れて逃げねぇと…!

 

何か一瞬でもトロールの動きを止める方法が無いか、俺はトロールの全身をざっと眺める。

足も胴体も攻撃は通じそうに無い。なら顔は…俺はそこで閃く。一つ、地球上の大体の生物に通じる弱点があった。目だ。

 

「ロン!お前は先に逃げてろ!」 

 

そう言うと俺はロンをトイレの外に押し出すと、床で砕け、砂のようになった瓦礫を掴み、トロールに投げつけた。

砂はトロールの顔面に命中し、トロールは目を押えて動きを止めた。

 

今だ!!!

 

俺は急いでハーマイオニーの元まで駆けると、恐怖で動けずにいる彼女を助け起こす。

 

「今の内に、逃げるぞ!」

 

ハーマイオニーは恐怖で立ち上がれないのか、座り込んだままだ。

 

「くそっ!」

 

俺はハーマイオニーを助け起こそうとするが、その間にトロールが迫ってくる。

俺は咄嗟に杖を取り出し、トロールに向ける。だか、まだ入学して2ヶ月の俺に使える呪文なんてたかが知れてる。

ましてやトロールを倒すための呪文なんて習っているわけがない。

 

トロールが棍棒を振り上げる。

あれ、俺もしかして死ぬ?転生して2ヶ月で?マジで?

振り下ろされる棍棒がゆっくりに見える。

いや、それは困る。せっかく転生したんだ。もっと人生楽しみてぇよ!

俺はまだ死ぬわけにはいかないんだよ!

俺はぎゅっと杖を握る手に力を入れる。すると、バチバチと辺りの空気が電気を帯びたように震え始めた。

それと呼応するように俺の持つ杖も激しく振動し始めた。

次の瞬間、杖先から閃光が迸った。

それはトロールに命中し、トロールは数メートルほど吹っ飛び、トイレの入り口を破壊した。

そしてトロールはそのまま動かなくなった。

 

「…は?」

 

何だ今の。

俺は突然の出来事に呆然としたが、ガラガラと入り口の方から聞こえた物音に俺はハッとする。

そうだ、入り口にはロンが!

急いで駆けつければ、ロンはペッペッと口に入った砂を吐き出しながら、服についた砂ぼこりを払っていた。

 

「ロン!大丈夫か!?」

「う、うん…なんとかね…」

 

どうやら吹っ飛ばされたトロールとの直撃は避けられたらしい。

ほっと胸を撫で下ろす俺の横で倒れたトロールに気が付いたロンが目を丸くした。

 

「わぁーお、エル、これ君がやったの?」

「い、いやぁ…?どうなんだろうな…?」

 

ロンの問いに俺が言葉を濁らせていると、廊下からバタバタと誰かの足音が聞こえてきた。

 

すぐにマクゴナガル先生、スネイプ先生、クィレル先生が俺達の所に駆けつけた。

 

「これはどういうことですか!?」

 

壁をぶっ壊して倒れるトロールを見てマクゴナガル先生が声を上げた。

 

「殺されなかっただけでも運が良かったのですよ。何故寮に居なかったのですか!?」

 

憤慨するマクゴナガル先生だったが、それに答える声があった。ハーマイオニーだ。ハーマイオニーはやっと立ち上がって俺達の方に歩いてきた。

 

「二人共、私を探しに来たんです。」

「ハーマイオニー!?」

 

ハーマイオニーの言葉にロンが驚愕の声を上げる。

 

「私がトロールを探しに来たんです。その…トロールの事は本で沢山読んだので、私一人でも倒せると思って。」

 

ロンが口をOの字に開けている。そんなに口開けて、顎外れても知らねぇぞ。

ハーマイオニーは続ける。

 

「それで、ロンがトロールの気を引いて、エルが見たこと無い魔法でトロールを倒してくれたんです。」

 

余計な事言うなよハーマイオニー!

案の定先生達が俺の方を向いた。

 

「Mr.トライアン、それは本当ですか?」

「あー、えっとー…」

「すごかったよね。トロールが急に吹っ飛んできて…」

 

だから余計な事言うなよロン!!!

 

俺が思わずロンの方をジトっと睨む。

 

 その瞬間、スネイプ先生のローブの影から、ひょっこりとハリーが現れた。

 

「エルが?本当に?」

 

ハリーは初めて会ったとき以来の驚愕の表情で俺を見ている。

 

…っておい!お前何してんだよ!?先生を呼びに行ったんじゃなかったのかよ!?何で大広間の外に出たはずのスネイプ先生と一緒にいるんだよ!?

 

そこからハリーが出てくるのは皆予想外だったのか、ロンや他の先生達も、口をぽかんと開けてハリーとスネイプ先生を交互に見ている。

スネイプ先生は居心地が悪そうに咳払いをした。

 

「おいハリー、先生を呼びにいったんじゃ」

「スネイプ先生とは途中で会ったんだよ!それよりこれ!ホントにエルがやったの!?」

 

俺が思わず聞くと、ハリーは早口でそう言うと、再び俺にそう聞いてきた。誤魔化された感は否めないが、問題はその後の質問だ。

この出来事がきっかけでこの先先生に目をつけられるようになることは絶対に避けたい。

 

「あー、その、俺もよく分からなくて…」

「中途半端に隠すと余計怪しくなりますぞ、Mr.トライアン。」

 

スネイプ先生に指摘され、俺は言葉に詰まる。

だめだ、どう考えても良い言い訳が思いつかない。

仕方無いので俺は事実をそのまま話すことにした。

 

「本当によく分らないんです。トロールに追い詰められて、無我夢中で杖を向けたらトロールが吹っ飛んでいって…」

 

そう言ってちらりと先生達を見ると、以外と皆納得したような顔をしていた。

さっき俺の身に起こった出来事は魔法使いにとっては割と理解できることだったのだろうか。

 

「恐らく運良く魔力暴走が起こり、トロールを倒せたのでしょうね…」

 

マクゴナガル先生がそう呟いた。

なるほど、さっきのアレは魔力暴走って言うのか。

 

マクゴナガル先生はハーマイオニーの方に向き直った。

 

「それはそうとして、Ms.グレンジャー。一人でトロールを倒そうなんて、なんて愚かしい事を。グリフィンドール5点減点です。」

 

ハーマイオニーはしょんぼりと項垂れている。

ロンはずっと何か言いたげにしていたが、俺はそれを目で制した。せっかくの彼女の心遣いを無駄にしてはいけない。

 

マクゴナガル先生は今度は俺とロンを見た。

 

「先程も言いましたが、あなた方は運が良かっただけなのです。ですが、大人のトロールと対決出来る1年生はそういません。一人5点ずつあげましょう。」

 

そういうとマクゴナガル先生は俺達を外に出るように促した。

 

「ほら、寮に戻りなさい。ポッターも、何故そんな所にいたのですか。」

 

俺達は先生に言われるがまま、トイレを後にした。

何故かハリーは寮に戻るまでの間、じっと俺を見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

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