周回ハリーと転生オリ主の珍道中   作:ポン酢醤油

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ユニコーンと不審者

ユニコーンと不審者

side ハリー

 

「トロールが…トロールが地下室に…!」

そう言ってばったりと倒れ込んだクィレル先生を僕は冷ややかな目で見下ろした。この人、演技だけは上手いんだよなぁ…

 

まぁ、そんなことよりも問題なのは… 

僕は視線をスネイプ先生に向ける。先生は、今まさに大広間から出ていこうとする所だった。

あぁ…このままじゃ先生が3頭犬に怪我させられちゃう…

どうしようかな…ホントなら3頭犬から先生を守りに行きたい。でもそれをしちゃうと多分今度はハーマイオニーやロンが危なくなっちゃうんだよね。先生を守るためとはいえ、流石に二人を命の危険に晒すわけにはいかないし…

 

しょうがない…今回も先生の怪我は防げずじまいが…とスネイプ先生の方を見ながら考え込む。すると不意にエルに声をかけられた。ハーマイオニーが居ないことに気が付いたのかな?

 

…はっ!

次の瞬間僕はひらめいた。

そうだ!今回はエルがいるんだった!エルに僕の代わりをやってもらえれば…

僕はエルを見て、頷いた。

 

 

 

 

「スネイプ先生スネイプ先生…」

 

あの後上手い具合にエルとロンと別行動することに成功した僕は、4階の廊下を走りながら立入禁止の廊下を目指していた。

 

 残されたエルはこの世の終わりみたいな顔をしていたけど、まあ1年生の僕とロンで何とかなったんだ。中身が大人のエルなら大丈夫でしょ!

 

「あ、先生!」

 

 やがて僕はちょうど3頭犬が居る部屋に入っていく先生を見つけた。良かった!間に合った!

僕は急いで先生の後に続いて部屋に入る。

 

「先生っ!」

 

 その瞬間目に飛び込んで来たのは巨大な3頭犬と対峙する先生。先生は3つの頭に同時に狙われて悪戦苦闘しているようだった。

 

「っ…!」

 

考えるより先に体が動いた。

僕は大声をあげて3頭犬の気を引く。

 

「こっちだよ!おいで!」

「ポッター!?何故ここに居る!?」

 

 僕に気が付いた先生が驚いて僕を見る。

だけどそれに答えている余裕はない。僕は3頭犬を誘導するように部屋の隅まで走った。

3つの頭の内の一つが僕に噛みつこうとしてきた。

 

 来る!

 

 僕は素早く後ろに飛び退いた。

 次の瞬間、ガチン!と派手な音を立てて僕の目の間で3頭犬の巨大な歯が閉じられる。危なかった。あともう少し前に居たら悲惨な事になっていた。

 

「ポッター!」

 

 先生が血相を変えて僕の方へ走ってくる。

 ああ、やっぱり先生はいつだって僕を守ることに必死なんだなって思うと、ちょっと嬉しくなった。

 だけどね先生、貴方は一周目の時に僕を十分守ってくれました。だから、今度は僕に貴方を守らせて下さい。

 

僕は先生の黒いローブを掴む。

 

「先生!ここから出ましょう!」

「何のつもりだポッター!離せ!」

 

 先生が何やら言っているが、僕はそれを無視して先生を連れて一目散に出口へと走る。

 後ろから3頭犬が唸り声をあげて追いかけて来たけど、僕達の方が少し早い。

 

 3頭犬の唸り声がすぐ後ろで聞こえる中、間一髪の所で僕と先生は部屋の外に飛び出した。

 

 先生が杖を振って扉を閉めると、3頭犬の声は遮断され、辺りには何事もなかったかのような静寂が広まった。

 

「…」

 

 急に静かになった空間で僕が呆然と今出てきた部屋の扉を見つめていると、不意に先生が言った。

 

「ポッター、離せ」 

「あっ!すいません!」

 

 僕は掴んだままだった先生の黒いローブから手を離す。

 

「あの、先生」

「なぜお前がここに居る」

 

僕は口を開きかけるも、先生の怒気を孕んだ声に遮られる。

この上なく不機嫌そうな先生の様子に臆することなく僕は答えた。

 

「えっと、僕ハーマイオニーが居ないことに気が付いて、誰かに知らせないとって思った時にちょうど先生が目に入ったので…」

「ほう、それでここまで追いかけてきたと?」

「…はい」

 

先生は盛大に舌打ちをした。どうやら先生は相当怒っているらしい。

 

「魔法もろくに使えない分際で教師の助けに入るとは…傲慢としか言いようが無いな。」

「すいません…先生を見たら体が勝手に…」

 

まあ本当は3頭犬くらい楽に倒せるんですけどね!僕はあえて!魔法を使わなかったんです!

 

そう言いたくなる気持ちを僕はぐっと抑える。

 先生に逆行の事を話すつもりはない。ただでさえ先生は沢山の秘密を抱えているのに、これ以上余計な心配事を増やさせたくない。

 

「…グリフィンドール5点減点だ。これからは余計な事に首を突っ込むな」

 

苦々しげな顔で立ち上がる先生だったが、僕はそこではっと気が付く。一番大事な事を忘れていた。

 

「そうだ先生!怪我とかはありませんか!?噛まれたりしてませんか!?」

 

そう!これが1番の問題だ!僕は先生の怪我を防ぐためにわざわざエルの好感度を下げてまでここに来たんだから!

 僕は問答無用で先生の足を触りまくる。

 

「何をするポッター!離れろ!」

 

先生はぎょっとして僕から離れようとするけれど、僕は逃がすまじと先生にピッタリくっつく。

 

よし…!どこも怪我してない!

僕は先生が無傷であることを確かめると、ほっと息をつく。

 

「いい加減にしたまえ!」

「あいてっ」

 

 先生に勢いよく頭をはたかれた。

 先生はめちゃくちゃ不快そうに僕を睨んで言った。

 

「グリフィンドール10点減点だ!さっさと寮に戻れ!」

「すいませーん…」

 

うう…流石にいきなりべたべた触るのはまずかったかぁ…

 

僕がしょげかえったその時だった。

ドスン!とものすごい振動とともに大きな破壊音がどこからか聞こえてきた。

 

「っ…!?」

「えっ!?何!?」

 

 今の音ってハーマイオニーがいる女子トイレからだよね…?えっ、ロンがトロールを倒した時だって流石にこんな派手な音しなかったよ?え、もしかしてエルがなんかやらかしたの?

 

 困惑する僕をよそにスネイプ先生は素早く音がした方へと向かう。

 僕はすかさず先生の後に続いた。

 

「ポッター!なぜついてくる!?寮に戻れ!」 

「いえ、もし途中でトロールに会っちゃったら怖いので、一緒に行きます!」

「っ〜〜〜〜!勝手にしろ!!!」

 

 僕は先生と共にエル達がいるであろう女子トイレへと向かった。

 

 

 

 

女子トイレは、ひどい有り様だった。

壁をぶっ壊して倒れるトロールを僕はぽかんと見つめた。

ええ…何これ…何があったの…?

 

僕はとりあえずマクゴナガル先生に見つからないようにスネイプ先生の後ろに隠れる。ついさっき減点されたばかりなのに、また減点されてはたまったものじゃない。

スネイプ先生は「なんだこいつ」って顔で僕を見てきたけど、僕はそれに気が付かないふりをした。

 

ロンとハーマイオニーが先生達に事情を話している。どうやらこの惨状はエルの仕業らしい。

 

…え、どゆこと?

 

勢いあまって先生の後ろから出てしまったけど、そんな事はどうでもいい。

 

エルは困ったような顔で説明する。

どうやら無我夢中で杖をトロールに向けたらこうなったらしい。

 

マクゴナガル先生はエルの話を聞いて魔力暴走だと結論づけたようだけど、それはありえない。

 魔力暴走でこんなピンポイントにトロールだけを吹き飛ばすなんて、出来るはずがないもの。

 そもそも、まだ1年生のエルがそんな魔力を持っているとも思えない。

 

これは魔力暴走なんかじゃない、絶対に。

どうにかして正体を突き止めないと…

 

 

 

 

 

 

 

 

「エル!起きて!」

 

クリスマス休暇が明け、新学期が始まってしばらく立ったある日の夜、俺はハリーに叩き起こされた。

 

「何だよ…まだ夜中じゃねぇか…」

 

 文句を言ってハリーに背を向けた俺だったが、ハリーはしつこく話しかけてくる。

 

「一緒にユニコーンを保護しに行こうよ!」

「…何だって?」

 

突拍子もないハリーの言葉に俺はちらりと彼を見た。

ハリーはにこにこと俺を見ている。

聞き間違えで無ければ今、限りなくファンタジーな言葉が聞こえた気がする。

 

「ね!行こ!ユニコーンを助けに!」

「お前が何言ってるか全然分かんねぇんだけど。」

 

聞き間違えじゃ無かった。

寝ぼけてるのかこいつは…

ハリーの話をまともに聞くのも嫌になり、毛布を頭まで被る。しかしすぐに毛布を剥ぎ取られた。俺はイライラして飛び起きる。

 

「だぁ!何なんだよ一体!!!」

「シッ!みんなが起きちゃうよ!」

 

ハリーにそう言われ、俺は口を噤む。幸いルームメイトは誰も起きていないようだ。

 

「…何だよ、こんな夜中に叩き起こして」

「だから、ユニコーンを保護しに行きたいんだって。」

 

何回も言わせないでよ。とむくれるハリーを前に俺はうんざりする。よく分からんが、一緒に行けば面倒な事になることだけは分かる。

 

「行くわけねぇだろ…お前一人で行けよ」

 

 馬鹿らしい、と再びベットに潜りかけた俺にハリーは迷いなく言った。

 

「もし手伝ってくれたら明日1日絶対話しかけないよ!」

「…何?」

 

思いがけないハリーからの提案にちらりと彼を見やる。入学して半年以上この男からのストーカー被害に悩まされている俺にとってその提案はまさに晴天の霹靂だった。俺は少し悩んだ挙げ句、再び起き上がって言った。

 

「…詳しく聞かせろ」

「うーん、この提案に乗られるのは流石にショックだけど、まあいいや。」

 

 

ハリーは少し不満げな顔で話し始めた。

 

「えっとね…禁じられた森にいるユニコーンがね?最近誰かに…いたずら?されてるみたいなんだよね。」

「どこ情報だよそれ。」

「えっと、ハグリットから」

「ハグリット…あぁ、あの森番か」

 

俺は頭の中でモジャモジャのヒゲを生やした大男を思い浮かべる。あの強烈なビジュアルは一度見たら忘れられない。

 

ハリーはいたって真剣な顔で言う。

 

「…まあ要するに、ユニコーンへのいたずらを僕達で止めに行こうって事なんだけど…」

「先生に任せればいいだろ。何で俺達が校則違反してまで行く必要あるんだよ」

「えっと〜、今ってテスト期間で先生も忙しそうじゃん?だから、せめてこれくらいは僕達がやってもいいんじゃないかなって…」

「へぇ…お前もそんな事考えるんだな」

 

思いの外ハートフルだった計画に俺は拍子抜けする。このストーカーがそんな事考えていたとは。

 

もっととんでも無い提案が来ると思ってたけど、まあそんなくらいなら…

だって生徒数人注意しに行けばいいだけだろ?

 

明日1日の自由と夜間外出のリスクを天秤にかけ始めた俺に畳み掛けるようにハリーは俺に問い掛けた。

 

「で、どうする?行く?行かない?」

「…行く」

 

 

ここで軽はずみな決断をしたのがいけなかった。

ここでこの提案に裏がある事に気が付くべきだったのだ。

 

 結局、俺はこの決断を数年先まで後悔する事になる。

 

 

 

 

「てってれー!透明マントだよ!」

「はぁ…」

 

ドラ◯もんかよ。真夜中に叩き起こされてテンションだだ下がりの俺はそんな感想を抱きながらおざなりな反応を返した。

 

「えー?もっと反応頂戴よ!透明マントだよ!?すごくない!?これ使えば夜の学校歩き放題だよ!?」

「いや、魔法界の「すごい」の基準なんてまだわかんねぇよ…」

 

グリフィンドールの談話室でブーブーと騒ぐハリーに俺は辟易する。こんな事ならやっぱり断っておくべきだったか…

 

「というかホントはクリスマス休暇にこれを使ってもっと面白い物見に行けたんだよ!?なのにエルが休暇中家に帰っちゃうから…」

「当たり前だろ。何が悲しくて休暇中まで学校に残らないといけないんだよ。」

「えー?学校のクリスマスパーティも結構楽しいんだよー?」

 

口を尖らせるハリーに俺はため息をつく。こいつはすぐに話を脱線させるのだ。

 

「それで?それをどうするんだ?」

「えへへ…よくぞ聞いてくれました…見てて!」

 

ハリーはニヤニヤと笑うと透明マントとやらを羽織る。

するとマントで覆ったハリーの体が消えた。まるで彼の頭だけが宙に浮いているようだ。

その光景に非常に既視感を感じ、俺は思わず呟く。

 

「ゆっ◯りハリー…?」

「え、なにそれ」

「いや、何でもない。忘れろ。…それよりこれ面白いな。どうなってんだ」

 

俺はハリーの胴体部分があるであろう部分をつつく。すると確かに感触が返ってきた。

ほーん、魔法ってすごいな。

 

俺が関心しているとハリーが戸惑ったように言う。

 

「え、何か思ってた反応と違うんだけど。もっとこう、ギャーとかワーとか、無いの?」

「いや…透明マントって名前の時点で大体起こることは予想つくからな?」

「あ、そっか!あー!今のもっかいやり直したい!」

 

悔しがるハリーだったが、俺はツッコミを放棄する。

この調子でやっていると夜が明ける。

 

「…なぁ、さっさと行こうぜ。俺は早く終わらせて早く寝たいんだよ。」

「えー?つれないなぁ、夜はまだまだこれからだよ?」

「…俺はお前と長い夜を過ごすつもりなんてねぇよ」

「ホントにつれないねぇ…」

 

 

 

 

「うへぇ…まじでここ雰囲気最悪だな…」

 

鬱蒼と木々が茂る、禁じられた森の中で俺は思わず呟いた。

森には初めて入ったが、想像以上の暗さと陰鬱さだ。まじでなんか出そうな雰囲気だ。まぁ、実際ゴーストはホグワーツに普通にいるんだけどな。

俺は前を歩くハリーに問いかける。ちなみに透明マントは「歩きにくいから」という理由で城を出た時点でしまっている。

 

「なぁ、ほんとにこんな所まで他の生徒が来るのか?わざわざ動物にちょっかいをかけに?夜中に?」

 

どう考えてもそうは思えない。

そんな理由のためだけに校則違反を犯してここまで来るのは流石にどうかしている。

俺はハリーを疑いの目で見る。まさか全部こいつの冗談だったんじゃ…

 

ハリーが不意に立ち止まった。

 

「見て」

 

ハリーは俺の問いかけには答えずに、静かに前方を指さした。

見るとそこには馬のような動物が立っていた。

 

「ユニコーンだよ」

「あれが?」

 

確かによく見れば角のようなものを生やしている。

初めて見たな…想像の百倍綺麗だ。

いや、今はそんな事どうでもいいんだ。

俺ジトッとハリーを睨む。

 

「で?わざわざ生徒があれにいたずらしに来るって?冗談も休み休み言えよ」

「うん?まぁそりゃ生徒は来ないだろうね。」

「は!?やっぱお前ウソついて…!」

「まあまあ、見ててよ」

 

ハリーは懐から何かを取り出した。

 

「…何だそれ」

「ん?フライパンとお玉。厨房から借りてきたんだ」

「は?そんなもん何のために…」

 

俺が首を傾げた瞬間、ハリーはいきなりフライパンにお玉を打ち付け、鳴らし始めた。ついでに大声で叫び始める。

 

カーンカーンカーンカーン!

 

「みんなぁー!!!逃げてー!!!」

「は?」

 

え、なにしてんのこいつ?

 

バサバサバサッ!

周りの鳥達が一斉に飛び立つ。

突如森の中に鳴り響いたけたたましい金属音に、目の間のユニコーンを含めた周りの動物達は我先にと逃げ出す。

 

「悪いやつが来るよー!!!逃げてー!!!」

「いや、うるさいうるさい!止めろ!おい!止めろって!」

 

まじで耳がおかしくなりそうだ。

俺はハリーの腕を掴むと、無理やりフライパンを叩くのを止めさせた。

 

「ちょっと〜止めないでよ…」

「いや、お前さ、マジで何考えてるの?」

 

もはやこいつに恐怖すら感じ始めた。今の絵図完全に不審者通り越して狂人だったぞ。

 

「それにさ、生徒のいたずら云々は冗談なんだろ?何でユニコーンを逃がす必要があるんだよ!?」

 

もうツッコミどころが多すぎて処理しきれない。

しかしハリーは俺の言葉に首をコテンと傾げるとこともなげに言った。

 

「…?ユニコーンが"いたずら"されてるのは本当だよ?」

「は?でもお前他の生徒は来ないって…」

「僕、いたずらしてるのが生徒だとは一言も言ってないよ?」

「は?」

 

その瞬間、どこからかずるずるとすべるような音が聞こえてきた。

 

「隠れて!」

「は?ちょ、」

 

ハリーは俺を茂みの中に引っ張り込む。

 

「何だこの音」

「いいから静かに!」

 

おかしい、周りの動物はみんなさっきの騒動で遠くに逃げたはずだ。…じゃあ今音を立てているのは?

 

暗がりの中から音の主が姿を表す。出てきたのは動物では無かった。人だ。フードを被った人物が、ずるずるとローブの端を引きずって暗がりから姿を表した。

俺は茂みから息を潜めてその様子を伺う。あれは明らかにホグワーツの生徒ではない。

小声でハリーに問いかける。

 

「誰だ?あれ」

「さっきから言ってるでしょ?"いたずら"の主犯だよ」

「…本当にいたのか」

 

いたずらなんて言うからてっきり生徒が来るもんだと…

 

俺の横でハリーが身じろぎする。

 

「まあとりあえず、ユニコーンは逃がせたから後は見つからないように退散…」

 

パキン、と一歩下がったハリーの足が枝を踏んだ。

 

「あ」

「は?」

 

フードの人物がこちらを振り向く。

いやいやいや、そんなベタな展開ありかよ!?

 

「まずい!逃げて!!!」

「お前マジでふざけんなよ!?」

 

ハリーの声で俺達は茂みから飛び出すと一目散に走り出す。

 

次の瞬間、後ろからおびただしい数の呪いが飛んでくる。何なのかは分からないが、当たったらやばいことだけは分かる。

ハリーが後ろに向かって杖を向ける。

 

「プロテゴ!」

 

ハリーの呪文によって飛んできた呪いのいくつかは防がれるが、追手の手は一向に緩む様子が無い。

 

「エルも!ぼさっとしてないで何か反撃してよ!」

「はぁ!?俺!?」

 

 ハリーに言われて俺は驚愕の声を上げる。

 

「無理に決まってんだろ!攻撃魔法なんて使えねぇよ!」

「何でもいいから!早く!」

「〜っ!わあったよ!」

 

 俺はやけになって杖を後ろに向ける。

もちろん呪文は一つも思い浮かばない。

それでも何故か、バチバチと辺りの空気が震え、杖先に光が集中する。

 

「っ…!」

 

横からハリーの息を呑む音が聞こえる。

 

しかし、杖から閃光が発射されようとしたその時、どこからか蹄の音が聞こえてきた。

次の瞬間、追手に何者かが突進をかました。

 

「は?」

 

突進を食らった追手はそのまま何処かに退散していった。

 

助かった…のか?

そう思った瞬間杖に集まった光が霧散する。

 

乱入者は俺とハリーの前に立つと、優しく声をかけた。

 

「怪我は無いかい?」

「あ、はい…」

 

乱入者は馬と人間を合体させたような姿をしていた。

あ、でも俺このフォルム見たことあるぞ。ケンタウロスだろ。

 

俺は初めて見るケンタウロスをまじまじと見つめる。

横でハリーが言った。

 

「助かったよ…君は?」

「私はフィレンツェだ」

 

フィレンツェは前足を曲げて体を低くした。

 

「乗りなさい、一刻も早くここから離れたほうがいい。」

 

ハリーが躊躇いなくフィレンツェの背に乗る。

俺がハリーの後ろに乗ると、フィレンツェは走り出した。

 

おお、すげぇ揺れるな。乗馬とか始めてだけどこんな感じなんだな。

 

視界を横切っていく木々を眺めながら、俺はハリーに尋ねた。

 

「それにしてもあのヤバそうな奴、誰だったんだ?」

「んー?一応ヴォルデモート…かな」

「ヴォルデモート?誰だそれ」

 

初めて聞く人物の名前に俺はハリーの方を見る。

 

「あれ?エル知らないのか。えっとほら、「例のあの人」とか聞いたことあるでしょ。」

 

キョトンとした顔でハリーに言われ、俺は記憶を辿る。「例のあの人」…それなら魔法史の教科書で見たことあるな。確かハリーが小さい頃にぶっ倒したんだっけ。

流石主人公って思ったのをよく覚えてる。

 

「あぁ…それなら聞いたことあるな…なんかやばい魔法使いだろ。………まさか」

「うん、あいつがそうだよ。」

「はぁっ!?」

 

まじかよっ!?死んだんじゃ無かったのか!?

思わず素っ頓狂な声をあげると、ハリーは人差し指を口に当てた。

 

「しっ、静かに、まだ近くにいるかもしれないんだから。」

「あぁ…悪い。…てかそんなやばいやつがいるなんて聞いてねぇぞ?お前、いたずらを止めに行くだけって…」

「だから僕達アイツのいたずらを止めたんだよ?ちょっとユニコーンを殺して血を啜るいたずら。」

「いたずらの域超えてんだろそれ!」

 

もうわけが分からない。

そもそも何でこいつはそんなことまで知ってるんだ。

それでも、一つだけ分かることがある。

 

「さてはお前騙したな?」

 

"いたずら"なんて真っ赤な嘘だ。実際はユニコーン殺しの闇の帝王。

何のためかは分からないが、俺はまんまとそんなヤバイ奴の目前に突き出されたのだ。

ハリーは俺の言葉に少しだけバツの悪そうな顔をした。

 

「それは謝るよ、ごめんね。でもね、それでも僕は君にアイツの存在を知っていて欲しかったんだ」 

「は?それってどういう。」

 

そのとき、フィレンツェが不意に立ち止まった。

見れば、いつの間にか俺達は禁じられた森の入口まで来ていた。

フィレンツェが再び身を屈めたので、俺達は降りる。

 

「ここまで来れば大丈夫だろう…行きなさい」

「ありがとう!本当に助かったよ!」

 

ハリーが笑顔でフィレンツェに言う。

フィレンツェはそんなハリーを目を細めて見た。

 

「ハリーポッター…あなたが現れてから惑星はとても奇妙な動きするようになった…こんな事は始めてだ」

「そうなんだ?」

「あなたが何をしようとしているか私には分からない…ただし、これだけは忠告しておく。」

 

フィレンツェはちらりと俺を見ながら意味深な事を言った。

 

「一つの星を追うために他の星を利用してはいけない。さもなければ恐ろしい結末を迎える事になるだろう」

「…よく分からないけど、覚えておくよ」

 

ハリーはにっこりと笑うとそう言った。

フィレンツェはしばらくそんなハリーをじっと見つめていたが、やがて禁じられた森へと走り去っていった。

 

 

 

寮へ戻る間、俺とハリーはずっと黙り込んでいた。先程のフィレンツェの言葉など、気になる事は沢山あったが、俺はあえて聞かずにいた。もうこれ以上変なことに巻き込まれるのは嫌だった。

 

ハリーはフィレンツェと話してからずっと黙りこくっていたが、俺達が寮の談話室についた頃、やっと口を開いた。

 

「その…騙したことは謝るよ。ごめんね?」

「もういい、そもそも疑いもせずお前に着いていった俺がバカだったんだよ」

 

俺は盛大なため息をつく。

始めは断っても、少し押されれば引き受けてしまう。これは前世からの俺の悪い癖だ。

 

ハリーは俺の言葉を聞くと顔を明るくさせた。

 

「じゃあ、許してくれるってこと?」

「…そうしないとお前、俺が許すまで今まで以上にしつこく付き纏って来そうだからな」

「えへへ〜、良く分かってるじゃん!」

 

ニヨニヨと笑うハリーに俺は少しイラッとした。

このまま無条件にこいつを許すのは癪だ。

俺はこいつに少し意地悪な質問をすることにした。

 

「お前さ、さっき親の敵に合ったばかりなのになんでそんなヘラヘラしてられるんだ?」

 

そう、ヴォルデモートはハリーの両親を殺した張本人だ。親の敵に会ってなおいつも通りの様子のハリーが俺には理解できなかった。

するとハリーは小さく首を傾げた。

 

「そりゃ本当は今すぐにでも森に戻ってアイツをブチのめしたいよ?」

「そうなのか?」

 

とてもそうには見えないが…

するとハリーは笑みを浮かべた。それは今まで見たことが無いような壮絶な笑みだった。

 

「でもね、今はまだアイツを倒すことは不可能なんだ。来たるべき時まで待たないと。」

「来たるべき時…?」

「そう、僕には僕の作戦があるんだ。」

 

ハリーはそう言うと俺にウインクしてみせた。

 

「聞きたい?」

「…いや、いい」

 

俺は間髪入れずにそれを断った。

 

しまった、少し踏み込み過ぎた。俺は一瞬垣間見た、コイツの底知れない闇から目を背ける。

俺は強引に話を切り上げ、ハリーに背を向ける。

 

「…疲れたから俺はもう寝るぞ。あと、明日1日話しかけないって約束、ちゃんと守れよ?」

「分かってるよ!」

 

ハリーの返事を聞きながら俺は男子寮へと続く階段を登る。

 

「はぁ…」

 

これだからハリーポッターなんかと絡みたくなかったんだ。

 

 

 

 

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