周回ハリーと転生オリ主の珍道中   作:ポン酢醤油

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休息と個人授業

sideハリー

 

「やっぱりアレ、魔力暴走なんかじゃ無かったよねぇ…」

 

禁じられた森での鬼ごっこの数十分後、ルームメイトが寝静まった寝室の中、僕はベットに寝転びながら呟いた。

 

思い返すのは先程見た光景。

 

エルがトロールを倒した魔法の正体を突き止めたかった僕は、適当な理由をつけてエルを禁じられた森に連れ出し、わざとクィレルに見つかって追いかけられるように仕向けた。そうすることで擬似的にトロールに襲われたときのような命の危機を演出できると思ったから。一年間一緒にいて、エルがあの魔法を使ったのはトロールの一件のみだがら、魔法を使う条件は命の危機を感じたときでほぼ確定だし。

 

結果は思った通り。途中ちょっと邪魔は入ったものの、僕はバッチリエルの杖に集まる強大な魔力を目に焼き付けた。もしあれがそのまま放たれてたらクィレルなんて消し炭になってたんじゃないかな。

ある意味フィレンツェはクィレルの命の恩人ってわけだ。

 

「…それにしても、あの魔力量、尋常じゃなかったよねぇ…下手したら僕より上なんじゃ…」

 

 

僕はゴロゴロとベットの上を転がる。

 

「何なんだろうな、アレ…魔力暴走にしては魔力が増え過ぎで、精密すぎるし…ましてやオブスキュラスなわけないし…」

 

僕は頭を抱える。うーん、全然分かんないや。あの魔法の正体がわからない限り彼の利用方法もわからないというのに。

僕はしばらく考えたあとぶんぶんと頭を振る。

 

「ああもう!やめやめ!これ以上考えても絶対分かんないやこんな事!」

 

僕はため息をつく。

 

「まあいいや…どうせ明日はエルから離れないといけないんだし、必要の部屋でじっくり調べよう…あ、あとあの呪文も久しぶりに研究しようかな!」

 

この1年はエルに構ってばっかりでマトモにあの呪文の研究ができていなかったからね。いい加減本腰入れないと"今回"も間に合わなくなっちゃう。

 

「はぁ…今度こそ上手くいくといいなぁ…」

 

明日は忙しくなりそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

「あー、平和だな…」

 

 恐怖のユニコーン事件の翌日の昼下がり。俺は一人でホグワーツの中庭でぼけーっと他の生徒達を眺めていた。

一人で。そう、一人でだ。

 

「やっとあのストーカーから開放された…今日一日だけたけど」

 

 昨日交わした「明日一日は絶対に話しかけない」という約束をハリーはキチンと守ってくれた。そもそも話しかけてこないどころか朝から一度もアイツの姿を見かけない。授業にも出ていないし、一体どこで何をしているのやら。

 

そこまで考えて俺はぶんぶんとかぶりを振る。

せっかくストーカーから開放されてるんだ。今日一日くらいアイツの事を考えるのはよそう。

 

「へへへ…自由だぁ…」

 

今日だけは、執拗に話しかけられることも行く先々に先回りされている事も無い。常に人の目があるというのは想像以上に落ち着かないものなのだ。ましてや、昨日のような危険な出来事に巻き込まれる事もない。

 

「今日の授業も終わったことだし、何しようかなー。図書館でゆっくり本でも読むかぁ…?」

 

今は期末テスト前、本当はテスト勉強に打ち込むべきなんだろうが、どうしても俺はこの自由な時間をテスト勉強のために不意にはしたくなかった。

 

そうして束の間の自由な時間をどう有効活用するか、思いを馳せていたときだった。

 

「おい見ろよ、ハリーポッターの腰巾着が一人でいるぞ。明日は雪でも降るんじゃないか?」

「…腰巾着だぁ?」

 

不意に聞こえてきた聞き捨てならないワードに思わず振り向けば、そこには俺を見てせせら笑うマルフォイの姿があった。後ろにはやたらとデカい体の男の子二人を付き従わせている。確か…クラップとゴイルだっけ?

 

なんにせよ、面倒な奴に声かけられちまったな。 

マルフォイは俺達と顔を合わせるなり必ずちょっかいをかけてくるのだ。…いや、どちらかというとハリー目当てだな。特急でも初めて会ったときもハリーに興味を示してたし。多分こいつは気になる人をイジメるタイプなんだろう。

まぁだからこそ正直、俺単体にも声をかけてくるのは意外だった。

 

「マルフォイじゃないか、こんな所で何してるんだよ。テスト勉強はしなくていいのか?」

「僕達はこれから図書室に勉強しに行くんだ。そもそも、それお前が言うのか?」

 

俺の言葉にマルフォイはすかさずツッコミを入れてきた。

確かに、俺が言えたことでは無かったか。

マルフォイは鼻をフンと鳴らす。

 

「どうやらお前たちには試験に備えようという気持ちはこれっぽっちも無いようだな。ポッターに至っては授業にすら出ていない。」

「俺は今日は休息日って決めてるんだよ。ハリーは…よく分かんねぇけど。…ていうか俺とハリーを『お前達』でまとめるのやめてくれない?なんかニコイチみたいで嫌なんだが」

 

俺がそう言うとマルフォイは、は?という顔をする。

 

「今更何言ってるんだ。お前とポッターはこの1年いつも一緒に行動してただろ」

 

いや、それ一方的にハリーが俺にくっついてるからそう見えるだけ…

 

そう言いかけて俺は黙る。ここでハリーからのストーカー被害を話してどうする。マルフォイのことだ。明日にはスリザリン中にその話が広まっているに違いない。

それは困る。「アイツ、ハリーポッターにストーカーされてるらしいぜ!」なんて後ろ指さされるのは流石に嫌すぎる。

 

結局俺は苦笑いで言った。

 

「いや、なんというか…今ケンカ中?だからさ。あんまりアイツと一緒にされたくないというか…」

 

もちろんそんな事実は無い。むしろこれが本当ならどれだけ良かったことか

しかもこの話をするのはコイツが初めてではない。朝食や授業で俺とハリーが一緒にいないことを訝しがったグリフィンドールの連中にも同じ事を話している。

同じ事を何度も言うのもいい加減うんざりしてきた。

 

するとマルフォイは俺の言葉を聞いて何故か勝ち誇ったような顔をした。

 

「ハッ!ケンカ!?お前たちが!?」

 

うーん、多分「ポッターと仲良くなるチャンス!」とか思ってるんだろうな。

ならもっと素直にアプローチしたほうがいいぞ。今の方法は突っかかっているようにしか見えない。

 

「…ああ、なんならお前が変わりにハリーの友達になってくれよ。ハリーもお前と仲良くなりたいらしいし」

 

実際これは事実だと思ってる。あいつはいつもマルフォイのかなりしつこいちょっかいにも嫌な顔一つせずニコニコと対応しているし、前にからかわれた時なんて「素直じゃないんだから〜かわいいなぁ〜」なんて言っていた。

正直ちょっと引いた。

 

しかマルフォイは俺の提案を嘲るように鼻で笑った。

 

「僕とポッターが?冗談も休み休み言え。死んでもごめんだね」

「いや、でもお前ホグワーツ特急でアイツと友達になろうとしてなかったか?」

 

するとマルフォイはむきになって俺に言い返してきた。

 

「あれはまだポッターがどの寮になるか分からなかったからだ!グリフィンドールになると知っていたらあんな事はしなかったさ!」

 

めんどくせぇなこいつ。

俺は投げやりにマルフォイに言ってやる。

 

「友達になりたいなら素直にそう言えばいいだろ…せっかくハリーが仲良くしようとしてくれてるんだからさ、お前も恥ずかしがらずに向き合ってみれば?」

 

するとマルフォイは顔を真っ赤にして大声で言った。

 

「お、お前、僕を愚弄するのも程々にしとけよ!僕を誰だと思ってるんだ!?」

 

 

マルフォイの大声にチラホラと周りの視線が俺達に集まる。

 

「いや、愚弄も何もホントの事言っただけ…」

「黙れ!この低級魔法族め!」

 

そう言うとマルフォイは杖を取り出し、俺に突きつけてきた。

…いや、こんな人目につく所でそんな事したらダメだろ。シンプルに校則違反を不特定多数に目撃されることになるが?

 

俺はそのことをやんわりと指摘しようとする。

 

「マルフォイ、多分だけど今杖出すのはまずい…」

「うるさい!これ以上僕に意見するな!」

 

だがマルフォイは完全に頭に血が登っているのか、俺の意見は一蹴された。

 

マルフォイは周りの視線に気が付いていないのか、俺に杖を向けたままギリギリとこちらを睨んでいる。

ひょっとしたら杖を向けられても全く動じない俺にも苛ついているのかもしれない。

 

まあしかし、真っ昼間の中庭でこんな事をやっていれば自ずと人の目を集める。

テスト期間なのに生徒が勉強もせず集まっていれば。当然…

 

その時、マルフォイの後ろに音もなくぬっと黒い影が表れた。

 

「Mr.マルフォイ、何をしている」

「ス、スネイプ先生!?」

 

そら、ホグワーツ教師の御出ましだ。

スネイプ先生の登場と共に周りに集まっていた生徒達はサーッと蜘蛛の子を散らすように何処かに去っていった。

後には俺とマルフォイと、ヤツの取り巻きだけが残る。

 

スネイプ先生はめちゃくちゃ不機嫌そうな顔で俺達に言う。

 

「君たちはテスト勉強もせず、こんな所で何をしているのかね」

 

うわー、先生怒ってるな…どうせならもうちょっと温厚な先生に来てほしかった。

…まあ、誰か来てくれただけでも良しとするか。誰も来ないよりマシだ。

 

 マルフォイが慌てて杖をしまいながらスネイプ先生に弁明する。

 

「こ、コイツが僕の事を侮辱したんです!それで、えっと、頭に来て…」

「なるほど。だが、授業以外で人に杖を向けるのは校則違反だ。以後気をつけるように」

「はい…」

「こんな事をやっている暇があるなら勉学に励みたまえ。お前の父君を失望させるような真似はするんじゃない」

「わ、分かりました…」

「もう行け、これからは真面目に勉学に取り組め」

「は、はい…」

 

そう言うとマルフォイは取り巻きと共にすごすごと何処かに去っていった。多分さっき言っていた通り、図書館に向かったのだろう。

 

そこで俺はハッと気が付く。スネイプ先生、マルフォイのこと減点してなくね?いやまぁ、今に始まった話じゃないんだが。

………いやでも減点しろよ!何校則違反を無かったことにしているんだよ!このスリザリン贔屓!!!

 

スネイプ先生はマルフォイの後ろ姿から目を話すと、俺の方を向いた。

 

「さて、トライアン」

「あ、はい」

 

声を掛けられ、咄嗟にスネイプ先生の方を向く。何気にスネイプ先生とこんなに近くで、二人きりで話すのは今回が始めてだ。

せっかくなので俺は先生を観察してみる。ひょっとしたらハリーが先生に夢中になるような隠された魅力が、何処かにあるかもしれないと思ったからだ。

先生の顔をさり気なく観察する。うーん、何度見ても普通の顔だ。ハリーは一体この人の何処に魅力を感じたんだ…。見た目じゃないなら…中身?

次の瞬間、先生の真っ黒な瞳と目が合う。この人マジで何から何まで黒いな。なんて思っていたら、その目の端が意地悪気に歪められた。

 

「な、なんですか」

「いや?マルフォイによればお前は彼を侮辱したようじゃないか。」

「いや、俺は侮辱したというか寧ろされた方…」

「フン、どうだかな」

 

クソ、コイツ何言っても話通じねぇ…!

スネイプ先生はニヤニヤした笑みを浮かべながら俺に言った。

  

「他人を侮辱するのは極めて卑怯な行動だ。よってグリフィンドールは10点減点」

 

その言葉を理解するのに数秒かかった。

減点…げんて…ん?

 

「…はあああああぁぁ!?」

 

思わず口から出た声にスネイプ先生は眉を上げて俺を見る。

 

「なにか問題でも?」

「…いや、おかしいでしょ!なんで校則違反したマルフォイはお咎め無しで、俺だけ減点されるんですか!」

「教師の采配に口答えするな。グリフィンドールもう5点減点だ」

「ぐぅっ…!」

 

理不尽…!なんたる理不尽…!

 

せめてもの抵抗にスネイプ先生を睨みつけようとしたが、俺は彼の意地悪な笑みを見て、ハッとする。 

コイツ…気付いてやがる…!

マルフォイの証言が嘘だったことも、どっちかと言うと俺が被害者だって事も、気づいてやってやがる…!

 

クソッ!この陰険教師め!

一瞬でもコイツの性善説を疑った俺がバカだった。

この1年この人がグリフィンドール(特にハリー)から理不尽な減点をする様を散々見てきたというのに。

 

そのまましばらくスネイプ先生を睨んでいた俺だったが、やがて諦めて彼から目を逸らした。

よく考えれば、この貴重な休息日に俺は一体何をしているんだ。こんな事で時間をムダにしている場合じゃ無かった。

 

「すんません、以後気をつけます…じゃあ俺はこれで」

 

馬鹿らしくなってきた俺はサッサとこの性悪教師の前から立ち去ろうとする。

 

「…待て、トライアン」

「え、なんですか」

 

しかし先生はそんな俺を引き止めた。何だ、まだいびり足りないのか。

 

少々うんざりして振り返ると、スネイプ先生は予想に反して苦虫を噛み潰したようなような顔で俺を見ていた。どうやら説教を続けるつもりでは無いようだ。

 

先生は一瞬の逡巡の後、口を開いた。

 

「…その、今日はポッターと一緒ではないのかね」

「…へ?」

「…いや、ポッターは今日の授業に出ていなかったからな。いつも奴とベッタリのお前なら理由を知っているかと思ってだな」

 

予想外の質問に俺は目を丸くする。

これはどういうことだろうか。あんなにハリーを嫌っている筈のスネイプ先生が、彼を気にする素振りを見せるなんて。

 

そんな気持ちが顔に出ていたのか、先生は俺を見て眉根にシワを寄せた。

 

「勘違いするな。吾輩はただポッターが勉学を怠っていないか確かめているだけだ。それ以上の意味は無い」

「ああ、そうなんですね」

 

なるほど、ただそれだけの事か。きっと万が一ハリーが授業をサボっていたら減点するつもりなんだな。

納得した俺は先生に正直に答えた。

 

「俺もハリーがどうしているのか知りませんよ。サボりなんじゃ無いですかね?」

「ほう…?知らないのか…この一年あんなにポッターと行動を共にしていたお前が…?」

 

またか。俺は少々うんざりする。この人然り、さっきのマルフォイ然り、どうして周りの人々は俺とハリーが仲が良いなどと思っているのだろうか。一方的にハリーが話しているだけだ。もっとよく見ろ。

 

心の中でため息をつきながら今日何度目かのカバーストーリを話そうとして、俺はハッと気がつく。

待てよ、よく考えればこの人は先生だ。ハリーもいない今、彼のストーカー被害を相談するのも一つの手なのでは無いだろうか?

 

俺は静かに葛藤する。

 

だが、本当にこの先生に話して大丈夫だろうか。どうせならもっと別の先生の方が…

いやしかし、この先生も俺と同じくハリーポッターのストーカー被害者(推定)だし、何よりハリーの事を何故か毛嫌いしている(確定)。

ある意味一番の適任なのでは…?

 

「トライアン、なぜ黙っているんだ」

 

スネイプ先生が訝しげに言う。

 

俺は先生を見上げ、意を決してこの1年ずっと抱えていた悩みを打ち明けてみることにした。

 

「それが、実は…」

 

 

 

 

 

俺の深刻な顔から不穏な気配を察した先生はやや面倒くさそうな顔をしながらも、誰かに聞かれる可能性を考慮したのか、俺を先生の自室に入れてくれた。

 

結果として俺の決死の告発は、驚くほどあっさりスネイプ先生に受け入れられた。

先生曰く、「いかにも『ポッター』がやりそうなことだ。」とのことだった。

やたらと『ポッター』の部分を強調させていたのは気になるが、どちらにせよそんな事を言うということはやはり、先生もハリーにストーカー紛いの事をされた事があるのだろうか。

 

「お前の主張を纏めると、ポッターの奴はホグワーツ特急で出会ってから、なぜかこの1年間ずっとお前に付き纏っているということだな」

「はい…」

 

スネイプ先生の確認に頷くと、彼は肺の息が全て出るのでは無いかと思うほどの盛大なため息をついた。

 

「ポッターめ…そんな所まで父親に似るとは…いやしかし、トライアンはリリーと違って男だ、まさかとは思うが…」

 

おまけに頭を抱えてブツブツと小声で何やら呟いている。その尋常ではない様子に、この人も見えない所でハリーに苦労させられてるのかなぁと俺は思った。

 

しばらくそうしていた先生だったが、やがて再び俺の方を向くと、尋ねた。

 

「…ほんとうに原因に心当たりは無いのか?」

「…無いですね」

 

どう考えても原因は俺の異世界云々にあるのだろうが、流石にその事を話すのは憚れるので、俺はスネイプ先生にかぶりをふった。

そもそも俺にとって理由はどうでもよいのだ。とにかく今すぐ、アイツのストーカー行為をやめさせたい。俺はその一心でここにいる。

また昨日のような事があれば、命がいくつあっても足りないからな。

 

しばらく沈黙が続いたかと思うと、先生は再びため息をついた後、俺に問いかけた。

 

「しかし…そんなにポッターが嫌ならなぜもっと嫌がらないのかね。いくら彼のつきまといが激しいとはいえ、本気で離れようとしたら、あそこまで四六時中一緒にいることにはならないと思うのだが…」

「充分嫌がってますよ。よく俺がハリーに『こっち来んなー』とか言ってるのは先生も知ってるでしょう?」

 

この1年俺はずっとハリーへの拒絶を続けていた。それにもかかわらず、何故か周りの人々は俺とハリーの仲を信じて疑わないのだ。そのことを俺はずっと不思議に思っていた。

しかしスネイプ先生はそんな俺の疑問をズバッと切ってのけた。

 

「確かにそれはよく見るが、結局そう言いながらお前達が離れた事なんて無かっただろう。もし本当に嫌なら実際に離れるだろうから、あれはただのお前の言葉の綾だと思っていたのだが…」

 

俺は愕然とする。なんてこった。まさか周りにはそんなふうに思われていたなんて。

 

「そ、そりゃ俺だってハリーから離れようとは努力してますよ?だけど何故かアイツ、俺の行く先々に先回りしているんです」

 

必死に言うとスネイプ先生は訝しげな顔で俺を見る。そりゃそうだろう。この複雑すぎる構造をしたホグワーツで特定の人物の先回りをするなど並大抵の事ではない。

 

「先回りだと?一体どうやってそんな事」

「どうやらアイツ、学校中の近道やら隠し通路やらを知っているみたいで…」

 

それを聞いた途端先生は、は?という顔をした。

 

「1年生の時点で学校の構造を把握するなんて出来るわけ無いだろう。教職の者ですら知らない部屋や通路が多くあるというのに」

「それが何故かアイツには出来てるんですよ!そもそもアイツの力量がおかしい事、先生も知ってるでしょう!」

 

すると先生はむ、と口の端を曲げる。

 

「確かに、ポッターの魔法薬学の成績は目を見張る物があるが、それとこれとは別ではないか…?」

「う、まあ、そうですけど…」

 

というかやっはこの人、ハリーの実力は認めてるんだな。そういうとこは公平になったほうがいいと思うんだが…

そんな言葉をぐっと心の中に留め、俺は懇願するように先生の顔を覗き込む。

 

「とにかく、なんとかなりませんか!?出来ることならもうアイツの顔も見たくないんです!」

「うむ、しかしな…」

 

スネイプ先生は珍しく困った顔で考え込んでいたが、やがて盛大なため息をついた後、俺をを見た。

 

「ポッターのことだ。奴は恐らく吾輩が何を言っても耳を貸さないに決まっている」

 

やけに確信めいた様子は少々疑問だが、大方その内容には俺も賛同するので、俺はコクリと頷いてみせる。

 

「校則違反でもない個人間の問題に教職員がむやみに手を出す事も出来ない。だが、この問題を放置して何かあれば吾輩の寝覚めが悪い」

「…そうですよね」

 

どうやら直接的な解決は難しそうだ。予想はしていたものの、俺は肩を落とす。

てか、『何か』ってなんだ。この人は一体どんな事態を想像しているんだ。

 

「ひとまず吾輩がしてやれる事は…そうだな、非常時に使える呪文を指導することくらいだろうな」

「呪文…ですか」

「どうする、今ならちょうど吾輩の手も空いている」

 

呪文とはずいぶん荒々しい手に出たものだ。だが確かに俺は攻撃呪文の類を一つも身に着けていない。なぜこの人がハリー相手に非常時の想定をしているのかは謎だが、どちらにせよ教えてもらっておいて損は無いだろう。

 

「…よろしくお願いします」

 

俺は先生に呪文を教えてもらうことにした。

 

「そうか、ならばさっさと立って杖を構えろ」

 

そう言うと先生は立ち上がったので、俺も立ち上がる。

 

「それで…なんの呪文を教えてもらえるんですか?」

 

俺がそう聞くとスネイプ先生はふと動きを止めると、むぅ、とその場で考え込んだ。

どうやら俺に何を教えるかは決めていなかったらしい。

 

「ポッターはなまじ魔法の腕前だけはあるようだから、トライアンの魔法などすぐに対処されてしまうだろうな…ならばいっそのこと奴が知らない魔法で不意をつくほかあるまいか…」

 

なんかめちゃくちゃ失礼なこと言われてる気がするが、俺よりハリーの実力の方が上なのは事実なので黙っておく。

 

先生はそのままブツブツと呟きながらあれこれ考えていたようだか、やがて何か思いついたのか、ハッと顔をあげる。

 

「な…なにかいい案が浮かんだんですか?」

 

そう尋ねた俺を先生が振り向く。

先生の表情を見て俺は顔を引きつらせる。

こ…こやつ…めちゃくちゃ悪い顔してやがる…

 

「『ポッター』にちょうどぴったりな呪文を思いついた」

「な…なんですか?」

 

身構えながら聞くと、先生は口の端を上げながら言った。

 

「レビコーパス、だ」

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