周回ハリーと転生オリ主の珍道中   作:ポン酢醤油

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オリ主によるカウンセリング回。
 またの名を作者の性癖暴露回。

 やたらと腐っぽいけど腐ではありません。友情です。


約束と隠れ穴とサイン会

 

「僕は、ホグワーツの7年間を何度も繰り返している。そしてその全てでスネイプ先生を失っているんだ」

 

「…はぁ?」

 

ガタン、ゴトン、と規則正しく揺れるホグワーツ特急のコンパートメントの一室。俺はハリーの衝撃の告白に間抜けな声を出した。

俺の反応にハリーは俺の反応がさも心外だとでも言いたげな顔をする。

 

「いやいや、はぁ?じゃないよ。大体、君も似たようなものなじゃん?」

「いや、全然違うだろ」

 

共通点、人生繰り返してるとこだけだろ。いやまあ、確かに早々あることでは無いけどさ、でも、俺がしたのは異世界転生で、コイツのは人生のやり直しだ。どう考えてもかなりの違いがある。

てかなんでここでスネイプ先生の名前が出てくるの?もう訳わかんねぇんだが。

ハリーが小さくため息をつく。

 

「まあそれはどうでもいいや、それより今はホグワーツ特急が着いちゃう前に全部説明しちゃわないと。…本当に何から話そうかな。えっとね…」

 

そうしてハリーはしばらく考え込んだ後、再び口を開いた。

 

「…今言った通り、僕はホグワーツでの7年間を何度も繰り返している。毎回、ヴォルデモートを倒した後、気がつけばホグワーツからの手紙が届く日に戻っているんだ」

「それは…いわゆるループってやつか?」

「まあね」

 

 なかなかに信じがたい話だか、ひとまずハリーの話を飲み込む。ループか…数日単位ならともかく、年単位でそれが起こるのはなかなか大変そうだな。

 ていうかヴォルデモートは倒せてるんだな…まぁ、コイツが主人公なんだし、そりゃそうか。

 

「何度も繰り返してるって…具体的に何回くらいだ?」

「十回目からは数えてないけど…流石に二十回は超えてなかったと思うよ?…多分」

「…思ってたより多いな?」

 

 想像以上の数字に俺は顔を引き攣らせる。

 だって仮に二十回ループしていたとしてみろ。こいつは百四十年生きてるって事になるぞ。ジジイ通り越して仙人の域に入っている。…いやでも、魔法使いは比較的長生きなんだっけか。じゃあやっぱりジジイか?

 

「…今失礼なこと考えてたでしょ」

「別に?」

 

 ハリーはジトッとした目で俺を見てくる。その表情はどう見ても子供のものにしか見えない。コイツが元々幼い性格なのか、それともほとんどの時間をホグワーツで子供に囲まれて過ごしたから精神年齢が育たなかったのか…

 ハリーの顔をじっと見ながらそんな事を考えていれば彼は顔をムッとさせて俺を睨んだ。

 

「エル?聞いてるの?」

「聞いてる。…それで?」

「それでって…まあ、とりあえずこれが僕の魔法の腕前が高かったり、未来に起きる事を知っていた理由ってこと。百年以上生きてて尚且同じ7年間を繰り返してるんだから、納得でしょ?」

「ああ」

 

俺が頷くとハリーはニッコリと笑ってパチンと手を合わせた。

 

「で!ここからが本題なんだけど!」

「は?ここから?どう考えても今のループ云々が本題だったろ」

「なんでよ〜。まだスネイプ先生の話してないじゃん!」

「だからなんでここでその名前が出るんだ…」

 

 どうせ始めにちらっと言っていた話をするんだろう。ぶっちゃけ物騒な単語が聞こえていたのであまり聞きたく無かったが、ここまで来たんだ。全て聞いてしまうしかない。

 

 

  

それからハリーは長々とスネイプ先生の軌跡を語り始めた。ハリーの母親を愛していたこと。ヴォルデモートの下でダンブルドアのスパイをしていたこと。ハリーの事を命懸けで守っていたこと。最後はニワトコの杖の持ち主に間違えられてヴォルデモートに殺されたこと。

 

 ハリーは1時間はぶっ通しで話し続けた。正直こんなに目を輝かせて話すハリーの姿は初めて見た。

 そして長い長い講義を終えるとハリーは目を輝かせて俺に聞いてきた。

 

「どう?先生ってすごい人でしょ!」

「…そうだな。お前が先生を慕ってる理由はよく分かった」

 

確かにすごい人だ。並の精神力ではそんな事は出来ない。少なくとも俺には絶対無理だ。

 俺は心の中でかなり先生の事を見直した。今まで陰気臭いだの幸薄そうだの心の中で散々言っていたことを少し反省する。人は見かけによらないってマジなんだな。

そんな事を考えていると、ハリーは俺を見ながら口を開く。どうやらまだ話したい事があるらしい。

 

「それで、ここからはあんまり良い話じゃ無いんだけど…聞いてくれる?」

「…分かった。聞いてやるよ」

 

 ハリーは小さく「ありがと」と言った。なんだか、やたらと表情が暗くなった気がする。

 

「さっきも言ったけど、僕はヴォルデモートを倒したら、何故かホグワーツからの手紙が届く日に戻っていた」

「ああ」

「だから決めたんだ。なんとしても今度は前の世界で死んじゃった人達を、何よりも先生を助けるって」

「…」

 

 俺は何も言えなかった。たった一人、小さな体でそんな覚悟をするなんて、どれだけ大変な事なのだろうか。どれだけ心細かっただろうか。

 それにコイツはさっき言った。『全ての世界でスネイプ先生を失った』と。

 

ハリーは俺の表情を見て俺が考えている事を察したのか、困ったような弱々しい笑みを浮かべて言った。

 

「ダメだったんだ」

「…」

「一応先生以外の人達はみんな助けることが出来たんだけどね、先生だけは、一番助けたかった人だけは助けることが出来なかった」

 

 ここで何か気の利いた一言でもかけてやれたら良かったんだろうが、俺にはどうしてもそれが出来なかった。一体全体どうやってその時のコイツの気持ちを理解すればいいんだ。手に入れた希望が目の前で消えた時、きっとコイツは俺の想像よりもずっとずっと深く絶望したのだろう。

 

 ハリーは話し続ける。

 

「それでもその後ヴォルデモートを倒して…気が付いたらまたホグワーツからの手紙が届く日に戻っていた。

だからもう一度やり直した。だけどダメだった。先生を助けることは出来なかったんだ。

その後も何回もやり直せたから、何回も挑戦してみた。

だけど何度やっても結果は同じ。ヴォルデモートを倒したときに先生が生きていることは一度も無かった。」

「…」

「おかしいよね。先生に降りかかる危険は全て跳ね除けたつもりだったのに、それでもいつも死んじゃうんだ。」

「裏切り、同士討ち、スパイの露見、破れぬ誓い…ありとあらゆる人がありとあらゆる方法で先生を殺した」

「誰も信じられなかった。誰にも相談できなかった。だからずっと一人で先生を守る方法を模索していた」

 

 それを聞いて俺は得心する。ああそうか、だから俺に話すのか。俺はこの世界の情勢にも、イデオロギーにも一切関係ない、完全なる部外者だったから。

 

 ハリーは今までに見たことが無いほど暗い表情をしていた。俺は初めて見たコイツの闇に何も言えずにいた。いや、初めてなんかじゃない。この一年間、俺はその片鱗を何度も見てきた。なのに俺は頑なにそれを見ないふりしてきたんだ。

  

「エル、聞いて」

「…ああ」

 

 思い詰めた、とびきり暗い顔で告げられた声に俺は一瞬の躊躇いの後に答えた。頭の片隅でこれを聞いてしまったら、もう戻れないと警鐘が鳴るが、どうにもできなかった。

 だって、こんな縋るような目で見られて尚突き放すことが出来るほど、俺はコイツに関わらない覚悟を決められていなかったのだから。

 

 ハリーの指が小刻みに震える。ハリーは何かを言いかけて、躊躇うように口を閉じることを数回繰り返したが、やがて目を伏せてポツポツと話し始めた。

 

「…今の一つ前の世界で、もう絶対誰にも殺されないようにって先生を閉じ込めたんだ。誰も知らない場所に、誰にも見つからないように」

「それ、は」

 

 かろうじて出した声は震えていた。

 結末など聞かなくても分かっている。コイツはさっきその答えを自分で言ったじゃないか。

ハリーは見ていてかわいそうになるほど体を震わせていた。それでも彼は困ったような笑みのまま、俺の方を見て、結末を告げた。

 

「そしたら先生、自分で死んじゃった」

 

 俺はこれ以上ハリーの顔を見ていられずに、思わず視線を下に向ける。

 なんて残酷な話だろうか。先生を殺すありとあらゆる人の中にはその本人も含まれていたなんて。何度失敗しても諦めずに挑戦し続けた先に待っていたのがこんな結果。よく心が折れなかったものだ。

 

何も言えないでいると、ハリーは乾いた笑みと共に自虐的な言葉を放った。 

 

「僕が先生を殺したんだよ」

「そ、それは違うだろ!」

 

 反射的に顔を上げてその言葉を否定した俺だったが、その瞬間目に飛び飛んで来た光景に言葉を失った。

 ハリーが泣いていた。今まであんなに飄々として、めったに笑みを絶やさなかったハリーが嗚咽を漏らし、泣いていた。

 ハリーの目に浮かんだ涙がみるみるうちに溢れ、次々と彼の頬を伝っていく。俺はその光景を呆然と見ていた。

 

俺はずっと心の何処かでハリーの事を雲の上の存在のように思っていた。未来を知り、膨大な知識と底知れない実力を持ち、どんな出来事も完璧に対処し、何処か達観したような視点を持つハリーを自分とは全く別物の存在だと考えていた。彼の気持ちを考えようともしなかった。

 だけど俺は今気がついた。その裏には途方もない努力と孤独と絶望が隠れていたんだ。

 コイツも人間だったんだ。

 

 それに気が付いた瞬間俺の中でハリーに対する罪悪感と、憐れみの感情が芽生えた。

 こんな絶望のギリギリの淵にぶら下がっているようなやつを放っておきたく無かった。出来る事ならコイツを助けてやりたくなった。

 

 …でも、手を貸しても結局上手くいかなかったら?こんなに俺に頼って、期待してきていたハリーは俺の事をどう思うだろうが。

 

 きっと『前』の人達みたいに…

 

俺の中で一つの記憶が浮かび上がった。それは、この世界に来てから忘れるように努めていた苦苦しい記憶。

 

 そこまで考えて強制的に思考を打ち切る。今そんなトラウマを思い出してもなんの意味も無い。

 

 それよりも今はぐずぐずと泣きじゃくっているハリーを落ち着かせる事が先決だ。

 俺はハリーにかける言葉を選びながら、ゆっくりと話し始める。

 

「…ハリー、お前が殺したわけじゃねぇよ。お前は先生を守ろうとしただけだったんだろ?」

「ぐすっ…うっ、うん…」

 

 ハリーはしゃくり上げながらも、コクリと頷く。その姿は、どう見ても見た目通りの子供にしか見えない。

 

「ましてやお前に殺意があったわけでも、直接手を下した訳でも無い。何より、先生が死ぬかも知れないなんてこれっぽっちも思わなかったんだろ?」

「うん…」

 

 俺は単純な事に、このときにはもうすっかりコイツに同情してしまっていて、コイツが抱えている闇を少しでも取り除いてやりたくなっていた。

 ハリーが有罪か、無罪か、そんな事を考える意味は無くなっていた。だから俺はハリーの目を見て、ただコイツを慰める言葉を言った。

 

「お前のせいじゃない。不幸な事故だったんだよ」

 

 ハリーの見開かれた目が俺を見た。その表情は、みるみるうちに何かを堪えるように歪んでいく。

俺はその様子をじっと見ていた。コイツはきっとこの想いをこの一年間ずっと溜め込んでいたんだ。なのに俺はそれを自分の都合だけで見て見ぬふりしていた。そう思うととてつもなく申し訳ない気持ちになり、気が付くとその感情が口をついて出ていた。

 

「…悪かった。もっと早くに聞いてやるべきだったな」

 

その瞬間ハリーは堰を切ったように涙を溢れさせ、俺にしがみついてきた。

 

「ゔぇぇん…エルぅ…」

「…悪かった、本当に。俺ってマジで最低な人間だよ」

 しがみついて泣き声を上げるハリーをどうしていいか分からず、結局雑に頭をわしゃわしゃと撫でてみる。

 俺は初めてハリーを突き放さなかった。

 

 

 

 それからハリーは十分ほど泣き続けた後、ようやく落ち着きを取り戻した。

 目を赤く腫らしたハリーがローブの袖でぐしぐしと涙を拭いながら俺に言った。

 

「ごめん。こんなつもりじゃ無かったんだけど、話し始めた途端、一気にいろんな感情が出てきちゃって……」

「気にすんなよ。百年溜め込んた分が一気に出たんだろ。」

「エルって意外と優しい所あるんだね。さっき頭撫でてくれたし」

「…流石の俺もあの状態のお前を突き放すほどクズじゃねぇよ」

 

 目の前で泣くハリーにテンパって思わず取った行動が今更恥ずかしくなり、俺は彼から視線をそらす。

 その後しばらく沈黙が続いたが、ふとハリーが言った。

 

「ねぇ、エル。僕からも質問していい?」

「何だよ?」

「そもそもエルは何でそんなに僕のことを避けてたの?初めは最初会った時にいきなり杖を突きつけたから警戒されてるのかなって思ってたんだけど、流石に拒絶されすぎじゃないかなぁって思ってさ」

「…『生き残った男の子』の面倒事に巻き込まれたく無かったんだよ。派手なことも危ないこともしたく無くてさ」

 

 これは一つの事実だ。前世で社会の荒波に揉まれた俺は確かに安らかな生活を求めていた。…まあそれも今考えるとちょっと度が過ぎたかもしれないと思う。

 

 俺が答えるとハリーはずいっとこちらに顔を近づけてくる。

 

「他には?」

「他って…別にこれだけだが?」

「本当に理由それだけ?何か隠してない?」

 

 じっとこちらを見つめてくるハリーと目を合わせられず、俺は再び彼から視線をそらす。

 始めに会った時もそうだが、コイツは人の心でも読めるのだろうか。…まぁ百年生きてる魔法使いなんだから、何でもアリか。

 

「…別に。マジでそれだけだよ」

「そっか、じゃあ話したくなったらいつでも話してよ。君が僕の話を聞いてくれた分、僕も聞いてあげるから」

「…ああ」

 

 コイツいくら何でもお人好しすぎないか。普通1年間も拒絶されまくったら俺の事嫌いにならないのか?

 そこで俺はふと思った。

 …そもそもコイツ、なんで一年間も俺に付き纏ってきたんだ?コイツのスネイプ先生を助けるって目的は分かったが、それが何故俺へのストーキングに繋がるのかが分からない。

 俺とした事が、1番聞きたかったことを聞くのを忘れていた。

 俺はチラリとハリーの方を向く。

 

「なぁ」

「何?」

「お前、そもそも何で俺に付き纏ってたわけ?」

「え、急に話変わるじゃん」

「そういえば聞いてなかったなと思ってな。それに、もうすぐ特急も駅に着きそうだし、聞きたいことはさっさと聞いちまわないといけないだろ?」

 

 そう言って俺は車窓の外を見る。

 俺達を乗せたホグワーツ特急はとっくに野原やら牧場やらがある田舎地帯を抜け、ロンドンの中を走っていた。

 

「あれ、もうこんな所まで来ちゃったんだ。じゃあ確かに急がないとね」

 

 ハリーは窓の外を見て驚いたような顔をすると、彼は、別にそこまで深い理由は無かったんだけど。と前置きしてから言った。

 

「君が今までの周回で見たこと無い生徒だったから、だね」

「…それだけか?」

「うん。君みたいなイレギュラーを巻き込んだら、ひょっとしたら何か起こるかもしれないって思って。」

「は?俺この一年間そんな賭けみたいな理由でお前にストーキングされてたわけ?」 

「うん…まあ…あの時はあんな形で先生が死んじゃった直後だったから正直僕も途方に暮れてて…何か少しでも可能性があればそれに縋りたい気持ちだったっていうか…」

「…」

 

 それを言われると何もツッコめない。…てかそんなに俺に縋られても、期待されても困るんだか。

 

「…それで?この一年間俺を巻き込みまくって何かを収穫はあったのか?」

 

 ため息混じりにそう言うとハリーは今までに見たことが無い俊敏さで俺の言葉に反応した。

 

「何言ってるの!?あったに決まってるじゃん!」

「え、マジ?いつ?」

 

 そんな事あったか?

ハリーは信じられないと言った顔で俺を見る。

 

「エル…本気で言ってる!?君、死の呪文を跳ね返したんだよ!?」

「死の呪文…?ああ、クィレルが使ってたやつか」

「そうだよ!僕あの時言ったよね!?『死の呪文は魔法じゃ防げない』って!でも君はやったんだ!」

「そ、そうか」

 

 ハリーはついさっきまで号泣してたのがウソかのように目をギラギラさせて俺に詰め寄る。正直、怖い。

 

「実は僕、ずっと死の呪文を無効化する魔法の研究をしてるんだ!それさえ完成すれば先生を助けられる確率がぐんと上がる筈なんだ!なんだかんだで先生の1番の死因、死の呪文だったから!」

「そう…なのか」

 

 死の呪文ってそんなヤバイ呪文だったのか。そりゃクィレルもそればっかり過信するわ。

 

 ハリーはガシッと俺の手を握ると熱意のこもった目で俺を見上げてきた。

  

「そこでお願いなんだけど!君のあの魔法を研究させて欲しいんだ!きっと、呪文開発の手がかりになるはずだから!」

「おっ、おお…」

 

 俺は完全にハリーの勢いに押されていた。 

なるほど、俺はハリーのニーズに見事にダイレクトアタックしたわけだ。

 

「てか、研究するっつったって俺もあの魔法が何なのか全然分かってねぇんだよな…クィレルの時なんか、絶対暴走してたし。俺、マジでアイツ殺すつもり無かったもん」

「じゃあ制御方法一緒に考えてあげるよ!大丈夫僕に任せて!コレでも呪文の知識はダンブルドアにも負けない自信があるんだ!」

「…マジ?」

 

 正直俺はクィレルを過失致死した後だいぶあの魔法の扱いに困っていた。発動条件も威力も謎なんじゃ、たまったもんじゃない。それをなんとか出来るなら願ったり叶ったりだ。

 それに、さっきのコイツの話を聞いて、手を貸してやりたいって思ったのもある。あまり大層な事に巻き込まれても上手く立ち回れる自信は無かったのでどうしたものかと思っていたが、こういった形で力になるのも、アリかもしれない。

 

 俺は手を握ったまま不安そうにこちらを見上げるハリーに頷く。

 

「いいぜ。好きに調べろよ」

「ホントに!?いいの!?」 

 

 ハリーの顔がパッと輝く。俺はちょっと新鮮な気持ちでそれを見ていた。包み隠さない純粋な喜びの表情。この一年、コイツのこんな表情は見たことが無かった。

 この笑顔といい、さっきの泣き顔といい、俺は今になって初めて本当のハリーポッターの素顔を見た気がした。

 

 ホグワーツ特急にキングス・クロス駅への到着を告げる放送が流れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 気付けば俺は知らない机に座っていた。当たりを見回すと周りには同じような机がずらりと並んでいるだけで誰もいない。

 途方に暮れて座っている机の上を見てみれば、そこには1台のパソコンと、一冊の手帳があった。

 パソコンのスイッチを押してみたが電源が入らなかったので、俺は手帳を手に取る。パラパラとページを捲ればそこにはカレンダーにやたらと見覚えのある文字でプレゼンや会議の予定、色々な会社の名前が書いてあった。どうやらこれはどこかの会社の営業マンのスケジュール帳のようだ。

 そのままなんとはなしにページを捲っていると、スケジュールはある日付のメモを最後に終わっていた。

 

七月三十一日 十時 〇△商事

 

「〇△商事…」

 

 なんだか聞いたことがある会社だ。一体何処で聞いたんだろうか。

 俺が記憶の中からその名前を探していると、不意に後ろから声を掛けられる。

 

「お、〇〇、今から営業か?」

「へっ!?」

 

 〇〇とは俺の前世での名前だ。ほぼ1年ぶりに呼ばれたその名前に俺は驚いて振り返る。

 そこにはスーツを着たちょっと小太りな、いかにも部長クラスといった中年のサラリーマンが立っていた。

 

「今日は〇△商事だったか。アソコは世界的な大企業だからな。くれぐれも失敗するんじゃないぞ。ま、お前なら大丈夫だろうがな!」

「あ…えっと…」

 

 その瞬間、俺の脳裏に記憶が蘇る。

 どうして今まで忘れていたんだ。ここは前世での俺の会社だ。そしてこの人は俺の元上司じゃないか。

 俺は手元のスケジュール帳に視線を落とす。そう、やたらと見覚えのあったこの文字は俺の字だ。このスケジュール帳は、俺の物だったんだ。

 そしてここに書いてある〇△商事は、俺が仕事で…

 

 否応無しに呼吸が早まり、次から次へと嫌な記憶が蘇る。今すぐここから逃げ出したい。

 

 そんな俺の背中を元上司は強く叩いた。 

 

「期待してるぞ。〇〇君!」

 

 首筋を冷たい汗が流れた。

 

 

 

 ハッとして俺は目を開けた。視界に温かい色味の天井が映る。ああそうだ。ここは魔法界での俺の家だ。今はホグワーツの夏季休暇中でここに帰ってきてるんだった。俺はため息をついて身を起こす。

 

「…またこの夢かよ」

 

 ホグワーツ特急でハリーと話してからというもの、時々この夢を見るようになった。くだらない前世での夢だ。もうあそこに帰る事は無いというのに、俺は未だにあの時の事が忘れられないらしい。

 

「クソッ…絶対ハリーの影響だ…」

 

 寝起き早々ブルーな気持ちで頭を抱えていると、母親にドアをノックされた。どうやら俺の友達から手紙が来ているらしい。

 

「…ハリーか?」

 

 ちょうど今考えていた人物を思い浮かべながら手紙を受け取り、差出人を見てみると、なんとそこにはロンの名前があった。

 別にロンから手紙が来たこと自体は意外では無い。俺はホグワーツ特急で会った時からそこそこロンと仲が良かったし、その仲はハロウィンのトロール事件以降更に深まっていた。チェスとかアイツに教えてもらったし。

俺は友達として、なかなかロンを気に入っていた。なんかアイツって、弟みたいで可愛いんだよな。ハリーも同じ事言ってたけど。

 

 手紙を開封してみると、そこには帰りのホグワーツ特急でロンとハーマイオニーの二人で俺とハリーを探しても何処にもいなかった事。その結果帰りはハーマイオニーの勉強に一人で付き合わされる羽目になった事をちょっと怒ってる旨、それと家に泊まりに来るように誘う旨が書かれていた。

 

 ああ…そういえばハリーの奴、コンパートメントにガッチガチに人避けの魔法かけてたな。ロンとハーマイオニー、探してくれてたのか。ちょっと申し訳無い事しちまったな。

 

俺はロンに謝罪と、宿泊の承諾をするために手紙を書き始めた。 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やあエル!来てくれて嬉しいよ!…ホグワーツ特急での事はまだちょっと許して無いけど。君達本当に、何処にいたの?」

「はは…普通にその辺のコンパートメントに居たんだけどな…次からは絶対に一緒に乗るからさ、許してくれよ!」

 

 ロンの家に着くと、彼は始めは俺を歓迎してくれたが、すぐにジトッとした目で問い詰められ、俺は苦笑しながら弁解するしか無かった。

 

 そうやって俺とロンが話していると、不意に誰かがロンの肩に手を置いた。

ロンの右側からひょっこりと彼の双子の兄の内一人が出て来た。ちなみに双子の判別は俺にはつけられないのでこの人がフレッドなのかジョージなのかは分からない。

 

「おいおいロン、グリフィンドールの得点王相手に失礼じゃないか」

 

 続けてロンの左側から双子のもう片方が顔を出す。

 

「そうだそうだ。寮杯に貢献された得点王はウチで丁重にもてなさければ。いたずらグッズ大放出だ!」

 

 そう言って彼等はバカでかいクラッカーを派手に鳴らした。爆発音と共にウィーズリー家の玄関先で派手な紙吹雪と閃光な炸裂した。

 思いがけない派手なお出迎えに俺は思わず笑みを零す。

 

「へへ、熱烈な歓迎嬉しいぜ。でも『いたずらグッズ大放出』は勘弁してくれ…命が幾つあっても足りないからな。えっと…フレッド?」 

「残念!俺はジョージだ!」

「ああ、悪い。ジョージ」

 

チッ、二分の一だからいけると思ったんだけどな。

するとフレッドはそんな俺を見て愉快そうに笑った。

  

「ハハハ!冗談さ!フレッドで合ってるよ!」

「………」

 

 決めた、今度からこの双子は区別しないで呼ぶことにしよう。

 

 そうして玄関先で話していると中からややふっくらしたおばさんが出てきた。

 おばさんはフレッドとジョージを見ると目を吊り上げる。

 

「フレッド!ジョージ!またお客にいたずらしたでしょう!家中に爆発音が響いてきたわよ!」

「やあママ!これはいたずらじゃなくて熱烈な歓迎だよ!」

「そうそう!流石の僕らもグリフィンドールの得点王にクソ爆弾を投げつけたりなんかしないよ!」

 

 そう言うと彼等はおばさんから逃げるように素早く家の中に入っていった。

 

「フレッド!ジョージ!待ちなさい!…まったく…」

 

 おばさんはやれやれといった顔で双子が去った方を見ていたが、俺が見ているのに気が付くとすぐに笑顔でこっちを向いた。

 

「ああ!ウチのいたずら息子がごめんなさいね!ええと…貴方がエルね!ロンから話は沢山聞いてるの!来てくれて嬉しいわ!」

「あ、どうも、エル・トライアンです…」

「私はモリーよ!どうぞ、狭い家だけど、ゆっくりしていってね!」

 

 モリーさんはなかなか元気な人のようだ。まあ、この家はなかなか子供が多いと聞いたし、それをまとめるにはコレくらい勢いが必要なのだろう。

 

 俺はモリーに着いて家に入ろうとしたが、そこでロンが着いて来ていない事に気が付いた。そもそもロンはさっきから随分静かだ。

 

「ロン?どうしたんだ?」

 

 不思議に思って振り向けば、ロンは不快そうな顔で耳を押さえていた。

 

「いや…ごめん…さっきのクラッカーの音で耳が…キーンって…」

「ええ…大丈夫かよ…」

 

 そういえばあのクラッカー、ロンの耳元で炸裂してたな…

 

「大丈夫…いつものことだから、すぐ直るよ…」

「…大変だな。お前も」

 

 どうしたものか。とりあえずロンを連れて家の中に入ってしまおうか。そう思った時、玄関から誰かの声がした。

 

「ロン?何処にいるの?君のママが呼んでるよーってあれ?」

「あ?」

 

 俺は声の主の方を振り向き、そこにいた人物に驚く。

 

「あれ、エルじゃん!今来たの!?」

「…ハリー、お前、来てたのかよ…」

 

 ハリーポッターが嬉しそうな顔でこっちを見ていた。

そりゃそうか…ロンが俺誘ってハリー誘わない訳無いもんな…

 

 

 

 

 

 

 ウィーズリー家に来てからあっという間に一週間が経った。結論から言うとここでの生活はめちゃくちゃ快適だった。あと人も物もめちゃくちゃで面白かった。

 

 そしてここでもハリーは相変わらずで、持ち前のフリーダムさを発揮してウィーズリー家にこれでもかと言うほど馴染んでいた。モリーさんの家事をよく手伝っていて、食材や食器の位置まで把握していた。ここはお前の実家か?

 

そしてこの生活で一番驚いた事は、ハリーが完璧にフレッドとジョージの双子を区別出来ていたことだ。

 双子は「きっとハリーはウチのママよりも僕らの事を知ってるんだ!」と言っていた。

 あながち間違いではなさそうなのが怖い。

 

… 何か俺のハリーの話ばっかりしてるな。

 

 まあいいや。それで今は何をしてるのかって言うと、学校から届いた手紙をみんなで読んでいる。

新しい教科書のリストが書いたやつな。

 

 手紙を読んだロンが俺に言った。

 

「すごいね、今年のDADAの教科書、ロックハートの本だらけだよ」

「ああ、えげつないな。そもそもタイトルからしてこれ、教科書じゃなくね?絶対小説だろ」

 

 双子のどちらかがウームと唸る。

 

「きっと、今年のDADAの教授は相当なロックハートファンなんだな」

 

 するとハリーが何故か真顔で言う。

 

「もしかしたらその教授、ロックハート本人かもしれないよ?」

「まあハリー!面白い冗談言うのね!」

 

 そう言いながらハリーの背をバシバシ叩くのはモリーさんだ。この一週間キッチン周りの手伝いをしまくっていたハリーはすっかり彼女のお気に入りになっていた。

 

 俺はロンに質問する。

 

「なぁロン、そもそもロックハートって誰なんだ?」

「ママみたいな魔女に人気の小説家さ。なんでもすごい勲章とかをいっぱい持ってるんだって」

「へぇ…人気って事はイケメンなのか」

「気になるなら後でママに聞いてみなよ。きっと雑誌の切り抜きを嬉々として見せてくれるよ」

「いや、遠慮しとく」

 

 俺はげんなりして身を引く。別にイケメンにも男にも興味は全く無い。

 

 その後、俺達は水曜日にダイアゴン横丁に買い物に行くことになった。ハーマイオニーとも合流する事になっているらしい。

 

 

 

 

 水曜日の朝、俺達は早起きしてダイアゴン横丁に出向いた。ここに来る時に使ったブルーパウダー?ってやつはあんまり…好きにはなれなかった。

 

 横丁でハーマイオニーとも合流し、皆で楽しく喋りながら買い物は順調に進んでいた。

 

 しかし、最後に新しいDADAの教科書を買いに本屋に行く下りになると、あからさまにハリーは顔を渋くさせた。

 

「…ハリー、なんだその顔」

「別に…ちょっとこの先に憂鬱な出来事が待っているだけ…」

「そのセリフだけ聞くと占い師みたいだな。…何があるんだ?」

「見れば分かるよ…」

 

 書店に着くとそこにはえげつない人だかりが出来ていた。俺は何事かと見せに掲げられた横断幕を見上げる。

 

「ギルデロイ・ロックハート…サイン会?」

 

 そう呟く俺の隣でハーマイオニーが黄色い声を上げた。

 

「本物の彼に会えるわ!」

 

 成る程、やたらと今日はハーマイオニーの機嫌が良いと思ったが、さてはこのサイン会が目当てだったのか。

 そしてハーマイオニーのテンションと反比例するようにハリーの顔はどんどん不機嫌そうになっていく。

 もはや人でも殺しそうな形相だ。

 

店の中に入るとそこには長い長い行列と、沢山の新聞記者が店の奥に向けてカメラを構えていた。ただの作家のサイン会にしては人気すぎやしないか?ロックハートと言うのはそれほどすごい人なのだろうか。

 

 俺はチラリと人の隙間からロックハートの姿をチラ見する。そこには、ウェーブがかかった金髪の、いかにも『イケメンです!』と言った男がサインをしながら笑顔を振りまいていた。なるほど、ありゃ人気出るわ。なんでハリーがこんなに嫌そうな顔してるのかは分からないが。

 

 その時、ふとロックハートが顔を上げた、そしてよりにもよってハリーに気が付いた。

 

「もしや貴方は…ハリーポッター!?」

 

 ハリーの眉間にシワが刻まれる。すごいぞハリー、今のお前の顔、細目で見たらほぼスネイプ先生だぞ。

 

 ロックハートの声に反応し、人垣がモーゼの如く割れる。ロックハートはズカズカとこちらまで歩いて来ると、ハリーの腕を掴んでそのままカメラの前まで引っ張って言った。スゲェや、ハリーの顔が目に入らないのかね。今やスネイプ先生超えの表情してるぞ。アイツ。

 

 俺の隣でロンが「ハリーって、ロックハートのアンチなの?」と青い顔で囁いてきた。俺にもよくわからないので「そうじゃね?」と返しておいた。

 

それにしてもアイツ、こうなることが分かってたなら何で何も対処しなかったんだろうか。幾らでも避けようはあっただろうに

 

「ハリー君!記念に握手をしましょう!一緒に写れば大見出し間違い無しですよ!」

 

 ロックハートはNEOスネイプ先生状態のハリーに笑顔で話しかけた。ハリーは渋々と言った風に彼に手を差し出しかけたが、不意にハッとした顔になると、そしてこれまたスネイプ超えのあくどい笑みを浮かべながらロックハートに何やら囁いた。

 ロックハートの表情が輝く。何を話したんだろうか。

 次の瞬間、二人は手でハートを作り出した。ここで俺はハリーの考えがさっぱり分からなくなった。

ロンも俺の横で困惑気味の表情をしている。

 

 そしてそのまま二人のラブラブショットが激写されようとした瞬間、ハリーの手が素早くサムズアップに変わった。

 

 群衆の困惑する声と、双子の爆笑が聞こえてきた。

 

「片想いポーズ…」

 

 俺は思わず呟く。そう、今をときめくJKのアレだ。ネットか何かで見たことがある。何故ハリーがアレを知っているのかは分からないが、まあそこは深く考えたら負けだ。

 

 シャッターを切る新聞記者もそれぞれ困惑の表示を浮かべているが、NEOスネイプの圧に押されて誰も言い出せないでいる。そして当のロックハートはカメラに笑顔を向けるのに夢中で何も気が付いていない。

 

 結局そのまま撮影会は幕を閉じた。

 あと新しいDADAの教授はマジでロックハートらしい。まあ、この前のハリーの発言で何となくそんな気はしていたが、俺は実物のロックハートを見てげんなりする。こんな奴が教師…大丈夫かホグワーツ。

 

「えへへ~スッキリした〜!」

 

 ロックハートから貰った本の山を抱え、ハリーはホクホク顔で帰ってきた。そしてそのまま「これあげるね!」と言って本の山をロンの妹のジニーの大鍋の中に入れる。ジニーは顔を赤らめて小さな声でお礼を言った。

 ジニーよ、悪いことは言わないから、ソイツだけは止めといたほうがいいと思うぞ。

 ちょっと倫理観擦り切れてるし、何よりスネイプ先生にゾッコンだからな。

 

 ハーマイオニーがハリーに「彼に失礼よ!」と怒る横で双子が「流石ハリー!」と彼の背を叩く。

 

 ロンとそのやり取りを眺めていると何処からか聞き覚えのある声が乱入してきた。

 

「いい気分だろうな、ポッター?ちょっと本屋に行くだけでこの歓迎とは」

「あ!ドラコ!君も来てたの!?やっほー!」

 

 ドラコの嫌味を物ともせず、ハリーはまるで偶然友達に会ったかのように笑顔で彼に手を振ってみせた。ドラコはハリーの反応に虚を突かれたように目を見開く。まさか嫌味を全スルーされるとは思ってもみなかったようだ。

 

 しかしハリーの代わりにロンがドラコに反発した。

 

「何だよマルフォイ!別にハリーが好き好んでやった訳じゃないんだぞ!」

「おやおや、ウィーズリー、まさか君がこんな所にいるなんて。今年の教科書は君たちにとって随分高いだろうに。これで一ヶ月は黄みの両親は飲まず食わずだね?」

「なんだと!?」

 

 ロンが顔を真っ赤にしてドラコに詰め寄る。なんか…この光景一年前にも見たぞ。

 

「まあまあドラコ、その辺にしなよ」

「ロン、こんな事でいちいち怒ってたらキリがないぞ?」

 

 仕方無いので俺とハリーはそれぞれマルフォイとロンを引き離しにかかる。

 しかしそうしている内に、それぞれの父親(アーサとルシウスという名前らしい)が騒ぎを聞きつけてコチラへ来てしまった。

 そして何故か…父親同士で口論を始め、殴り合いを始めた。いやなんで?

 

 店の中は突然始まった乱闘に騒然となった。偶然通りかかったハグリッドが止めなければ多分明日の新聞の一面はハリーとロックハートの片想いポーズでは無くおっさん同士の殴り合いが飾っていたかもしれない。…いや、流石に無いか。

 

 ルシウスは床に落ちたジニーの本を彼女の大鍋に放り込むと、そのままドラコを引き連れて去っていった。…何だったんだ。

 俺はうんざりしてハリーの方を見る。

 

「ハリー、一体何なんだあのオッサ…」

 

 そこで俺は言いかけた言葉を止める。俺は見てしまった。皆がアーサーの怪我に気を取られる中、ハリーがキョロキョロと辺りを見回した後、躊躇なくジニーの大鍋に手を突っ込み、黒いノートのようなものを盗む所を。

 どうしよう、窃盗の現場を目撃してしまった。

 警察に通報するにしても魔法界での通報方法が分からない。

 仕方なく制服警官でも歩いていないかと周りを見回していると、ハリーに声を掛けられた。

 

「エル?何してるの?」

「いや…泥棒を見つけたから警察に通報しようと思って…」

「え!?泥棒っ!?どこどこ!?」

「お前だよバカ!」

 

 自分のことを棚に上げて泥棒を探し始めるハリーに思わずツッコむ。

 

「え!?もしかしてコレのこと言ってる?」

「他に何があるんだよ。堂々と盗りやがって…」

 

 黒いノートをヒラヒラとさせるハリーに俺はため息をつく。

 

「エル、ホグワーツ特急で僕の話聞いたんだからさ、大体分かるでしょ。コレは僕の目的の為に必要な物なんだよ」

「いや、まあそれは薄々分かってたけどさ、もうちょっと他に手に入れる方法あっただろ。盗るって…」

「もう!それくらい大目に見てよ!コレが一番確実な方法がなんだから!」

 

 そしてハリーはシーと口に指を当てて、言った。

 

「とにかく、ナイショにしててね?」

「…はぁ、分かったよ」

 

 どうもホグワーツ特急でハリーの話を聞いてから、俺はコイツを強く止められなくなっていた。

 コイツの境遇に情が湧いちまったんだろうな…

 そんな事を考えながら俺はぼんやりとホグワーツ二年目の生活に思いを馳せた。

 どうやら今年もコイツに色々と巻き込まれる事になりそうだ。

 





ハリー「強制イベント、チャーミングスマイル賞との撮影会です。
御存知の通り彼は忘却術で他人の功績を奪ってそれを自伝にするという天性のクズです。
しかし彼との撮影会を回避してしまうと、マルフォイ家が僕達に気が付かずに行ってしまうので、ルシウスがジニーへ分霊箱を押し付けるイベントも無くなってしまいます。
そうなるとガバです。大ガバです。ルシウスはジニー以外のランダムな誰かに分霊箱を渡してしまうので今年一年は分霊箱探しに奔走する必要が出てきてしまいます。
だからここでチャーミングスマイル賞と写真を撮る必要があったんですね(一敗)

あっ、そうだ!せっかくなのでいたずらもしちゃいましょう。方法は簡単。チャーミングスマイル賞にこっそり『せっかくだから二人でハートマーク作りましょう!絶対映えますよ!』と囁くだけ。
するとチャーミングスマイル賞はまんまと提案に乗ってくるので、まずは屈辱に耐えながら二人でハートマークを作ります。そして…ここ!シャッターが切られる直前に手をグッドマークにしましょう。片想いポーズの完成です。
大丈夫大丈夫、チャーミングスマイル賞はアホなので絶対に気が付きません。彼が全てを知るのはイギリス中に予言者新聞が配達された後になるでしょう。」
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