TSしたら口数少ないイケメン親友に歪んだ溺愛?されてます   作:エイジアモン

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26.親友と恋人気分のパフェ

 

 ピザとサラダを食べさせ合いながら綺麗に平らげ、一緒にアイスティーを飲んだ後、次に来るパフェまでの時間を待っていた。

 

 今のオレたちは他人から見たら恋人同士にしか見えないだろう。

 それにオレにはハルがもう演技してないように見える、仮に演技だとしてもこのまま恋人の振りを続けて貰い、親友で恋人という状態に慣れてもらおうと思う。

 

 ハルは食べ終わり、落ち着いているようだった。

 

「次はパフェだっけ、俺甘いの好きだから楽しみだな~」

 

「ああ、オレも楽しみだ」

 

 そう応えつつ、テーブルの上で出されていたハルの手の甲にオレの手を重ねた。

 

 ハルは一瞬の驚きの反応と、オレの目を見た後、微笑みながら応えた。

 

「どうしたんだよ、急に」

 

「いや、ただ、何となく触れたくなって」

 

「そっか……なんかあれだな、キリの手ってあったかいよな。俺よりデカいし、なんかこう……包んでくれそうな感じだ。 ――って! 何言ってんだろな、俺……」

 

「別に変じゃない。 オレの方がデカいからな、いくらでもハルを包んでやる」

 

 そう言って両手でハルの手を包んだ。

 オレの両手にすっぽりと収まり、いかにハルの手が小さいかが分かる。

 そして、それでもやはり、ハルの手は逃げなかった。

 

 信じられない事だ、あれほど手を繋ぐ事すら嫌がっていたハルとこうして触れ合えるなんて。

 

「ほんとデケェな……。俺の手見えないじゃん」

 

「手が小さいからな」

 

 ハルはオレの手をじっと見て、そして恐る恐る、探るようにこう言った。

 

「……なあ、やっぱ好きな人とは触れ合いたいもの、なんだよな?」

 

「他はどうか知らんが、オレはそうだ。ハルはどうなんだ?」

 

「俺もまあ……そうかな……」

 

 ハルはそう応えて、オレの手の上に、もう片方の手を重ねてきた。

 このタイミングでそれをするという事は、どういう意味か分かってるのだろうか。

 

「ハル! お前もしかして――」

 

 思わず余計な事を口走った。

 何も言わず、受け止めていれば良かったものを。

 

 ハルはオレの言葉に反応し、我に返ったようにハッとして、慌てて両手を引っ込めた。

 

「あ!? い、いやいや!! ほら、あれだよ!! 恋人の振りだから!! な!! 勘違いすんなよ!!」

 

 ――ああ、やってしまった。

 せっかくここまで上手く行っていたと思ったのに。

 ここまで上手くいきすぎてしまったから気が緩んでいたのだろうか。

 

「……そんな露骨にがっかりするなよ。 元々そういう話だったろ。――ったく、しょうがない、ほら、手、握ってやるから」

 

 そんなに、分かるほどに顔に出ていたのだろうか。

 全く自分が情けない。

 でもそれはそれとして、厚意には甘えるけども。……これ、好意だったりしないかな。

 

 差し出された手を恋人繋ぎで繋ぐと、ハルは一瞬驚いた後、残った方の手で顎に肘をつき、呆れたようにこぼした。

 

「ほんと……しょうがないやつだな」

 

 そんな空気の中、手だけはしっかり繋いで、デザートのパフェを待った。

 

◇◆◇

 

「お待たせしました。カップルいちごグランデパフェになります」

 

 出されたそれは、グランデというだけあって中々のボリュームだった。

 大きなパフェのカップに、プリンとスポンジと生クリームが何層にも重なっていて、その至る所にいちごが散りばめられ、さらにいちごのソースがかけられていて、如何にも甘酸っぱい、若いカップルのようなパフェに見えた。

 

 今のハルなら1人では無理だと思える量だ。

 いや、甘い物は別腹だというし、意外といけるかも知れない。

 

「ハル、これ1人でいけそうか?」

 

「いや無理だろ」

 

 あっさり。

 

「確かに甘いのは好きだけど、この量は無理。むしろキリこそ1人でもいけるだろ」

 

「甘いのは嫌いじゃないが……なんとかいけるか」

 

「だよな、それなら安心だ。さ、食おうぜ」

 

 心無しかいちごパフェを目の前に嬉しそうに見えるハル。

 繋いでない方の手は既にパフェ用のスプーンを握っていて準備万端のようだ。

 

「良いぞ、あーん」

 

「え、まだやるの」

 

「当たり前だ、ほらほら、あーん」

 

「しょうがねえな、だけど俺からな」

 

 そう言って特大パフェのてっぺんから大きないちごを(すく)い、自分の口に運んだ。

 

「あ!! それ食うか!?」

 

 パフェのてっぺんにあるいちごは丸々一個そのままで、他のいちごの様にカットされてない。

 だからパフェのいちごの中で一際(ひときわ)の特別感があり、人によっては最後まで取っておくような代物だ。

 だがハルはそれを何の断りもなく、一番始めにそれを食べた。

 言うなればいちごのショートケーキの上にあるいちごみたいなもんだ。

 これは許されない。

 

 ハルはいちごを頬張り、もぐもぐと咀嚼し飲み込んだ。

 

「いちごうめー」

 

「いやハル、それは駄目だろ、そのいちごは後までとっとくべきものだ。それを勝手に食べて」

 

 そう文句を言うとハルは平然とした顔で、反論した。

 

「え~、キリは愛する人にいちご一つも好きにさせてあげないんですか~? そんな心の狭い恋人と手を繋ぐの嫌だな~」

 

 ――くっ。

 痛いところを()いてくるじゃないか。

 それに手を繋ぐ事を人質のように扱うなんて、卑怯者め!!

 

 ……だがまあ、冷静になれ。

 たかがいちご一つ、良く考えれば大した事じゃない。

 うん、寛大な心で許そう。うん。ハルが満足ならそれで良いじゃないか。

 

「――良く考えたらハルがそうしたいならそれで良いか、別に問題があるわけじゃないしな、うん。ハル、すまん、騒ぎすぎた」

 

 そう言うとハルは、ふふ~ん、という擬音が聞こえそうな尊大な態度でこう言った。

 

「いやいや、俺も言い過ぎた。 お詫びにこっちの大きいいちごをキリにやるよ」

 

 くうう……だが良し。

 可愛いから良し。許す。

 それにこういうのはただのじゃれ合いみたいなものだ。

 お互い本気で言ってるわけじゃない。

 そう、別にいちごの食べ方なんてどうでもいいんだ。今そう決まった。

 

 ハルはそう言ってパフェ上段に埋まっているいちごを掬おうとスプーンを挿し、いちごを掘り出そうとした。

 すると縦長で大きなカップのバランスが崩れ、傾いた。

 

「あ!! っと」

 

 まだ手が空いているオレがカップを支え、事なきを得る。

 

「支え手が必要だな」

 

 と言うと、ハルがジト目で返した。

 

「つうか、この手を離せば良いのでは?」

 

 ハルはそう言って恋人繋ぎしている手を上下に動かした。

 断固拒否する。

 店を出るまで、せめて席を立つまではこのままでいたい。

 

「オレにこの手を離せというのか」

 

「……どっかで聞いたようなセリフだなそれ。なんのセリフだよ」

 

「オレもよく知らん。 それにオレが支えてれば問題は無いだろう。ほら早くくれ」

 

 そう言って口を開けた。

 

「しょうがねえな。はい、あーん」

 

「あーん」

 

 いちごを食べさせてもらう。

 美味い。生クリームが付いてさらに甘みがまし、いちごの酸味が加わって見事な甘酸っぱさだ。

 

「美味い」

 

「だよな!」

 

 ハルは嬉しそうにスプーンでパフェを掬い、自分の口へと運んだ。

 その表情を見ているだけでも甘く、美味しいのが伝わってくる。幸せそうでオレも嬉しい。

 

 その後もお互い片手は恋人繋ぎで、オレがカップを支え、ハルが掬って食べて食べさせる至福の時間が続いた。

 ハルはもう間接キスになっている事は気にもしていないようだった。

 同じスプーンで食べるという間接キスでも上位ランクの行為でも気にした風もなく、それはそれで寂しいものだ。

 

 後半へと差し掛かり、スポンジやらプリンやらのゾーンに入った。

 この頃にはハルの勢いは大分削がれ、オレに三口運び、ハルは一口くらいにまでなっていた。

 

「そろそろキツイか?」

 

「あー、うん、ちょっとね。まだいけるけど、最後まで行くには抑えないと無理だな」

 

「別に無理しなくても良いんだぞ」

 

「どうせなら最後まで一緒に食べたいじゃん」

 

「――そうだな」

 

 嬉しい言葉だ。

 だけどそれがどっちの感情からきてるのかは気になる、責任感か、それとも。

 

「よし。これが最後だ」

 

 順調に食べ進み、最後のひと掬い。

 残るはほぼ液体状の残骸。

 

「ハルにやるよ。オレはこの残りを飲むから」

 

「なるほど。じゃあ遠慮無く」

 

 ハルがスプーンを口に運ぶのとほぼ同時に、オレはカップを持ち上げ、残りを飲んだ。

 カップを置き、ハルはスプーンをカップの中に戻し、一呼吸。

 

「あ~、美味しかった。な?」

 

「ああ、今まで食ったパフェで一番だったな」

 

「言われてみればそうかも? あんまりカフェでパフェとか食べないし、小学生の時以来だけど」

 

「これからはいくらでも付き合うぞ」

 

「え~、今日みたいに食べさせ合う前提だろそれ。 ……ったくしょうがねえなあ、……まあ、考えとく」

 

 おや、これは……想定外。

 許可も出たことだし、遠慮せずにまた誘おう。

 

「どうする? もうちょっとゆっくりしていくか」

 

「いや、もう出よう。結構時間経ってるし」

 

 時計を見ると店に来た時間からゆうに1時間以上経過していて、気付けば周りの客もガラリと変わっていて、どれだけ長居していたのかを物語っていた。

 しょうがない、もっと長居していたいけど、出るとするか。

 

「そうだな、出るか」

 

「ん。――あー、ちょっとまって」

 

「どうした?」

 

 ハルは席を立とうとして、座り直した。

 

「手、もう離すぞ」

 

 名残惜しいが仕方がない、オレは手を緩め、ハルは手を離した。

 すると、ハルはレシートを手に取り、オレが何かを言う前に戻した。

 そして、財布からお金を取り出し、そのままになっているオレの手に握らせた。

 

「お母さんがこうしろってさ。 あれだ、男を立てるってやつらしい。今どきやんないと思うけどな」

 

 驚いた。

 ここの食費はオレが出すつもりだった。

 レジ前で奢るやら割り勘やら、オレとハルで多少の言い合いはあるだろうけど、そこは強引にでも。そんなつもりだったのに。

 それがこうされてしまっては、何も言えない。

 流石はハルのおばさんだ。

 

「キリの事だ、「オレが出す」って言うつもりだっただろ? さ、行こうか」

 

「全部お見通しだな。でも助かる、ありがとう」

 

 席を立ち、会計を済ませて店を出た。

 

◇◆◇

 

 オレたちはその後、ゲーセンに行ったり、本屋に寄ったりして帰路についた。

 

 いつものようにハルを家まで送り、玄関で別れる。

 

「また明日、待ってるから」

 

「ああ、じゃあ明日」

 

 楽しい時間が終わってしまった。

 今日でどれくらいハルに影響を与えられたのだろうか。

 少しでもオレと同じように親友でありながら異性として好きになって欲しいものだけど。

 

 結局店を出てから手を繋ごうと話した時「もう恋人の振りは終わったろ」と言われてしまった。

 中々に厳しい。

 でもパフェは誘って良いと行ってたからちょっとは前進したかも知れない。

 

 とりあえず、次から一緒に出掛ける時はパフェは必須だな。

 ……はぁ、先は長そうだ。

 

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