普通にハマって遊んでる。
電子音が部屋に響く。
僕はうつろな目をしながらスマホを取りアラームを止めた。
「う…うぅーん…」
大きく背伸びをしながら体を起こす。
時間も特に問題なくいつもの起床時間、昨日は仕事で結構疲れたけど疲労は特に残ってないな。
着替えながら朝食の準備をし、鞄の中身も確認する。
本日も学校だ。
「おはよー」
「おはよう」
いつもの学友と挨拶を交わし席に着く、いつもと変わらない平和な日常だ。
すると廊下がやや騒がしくなりなんだなんだと視線を向けると様々な部活の面子に囲まれた一人の女子生徒がいた。
エレン・ジョー。
サメのシリオンでスカート後ろから伸びる巨大な鮫の尾ビレが特徴的な運動神経もいい女子生徒であり。しかもかなりの美少女だ。運動部も演劇部も彼女を勧誘しそして断られている。
なんだっけ、ドライかつ面倒くさがりで揉め事や無駄話が嫌いで世の一切はシンプルであるべきと考えている…とか前言ってたかな。
なんでこんなことを知っているかと言うと。
「ん、おはよ。ケイ」
「おはよう、エレン」
彼女とは友人関係だからである。
と言ってもたまに遊んだりする程度だけど。まぁそれでもエレンの交友関係だと珍しい方なのかな。
立場としては少し仲のいいクラスメイトと言ったところだ。
あぁそうだ、自己紹介が遅れてた。僕の名前は『ケイ・サクラ』基本的に一般的な男子生徒だよ。
まぁ……一般的と言えるかと言われたら言えないかもだけど。
学校も終えた後、遊びに行こうという友人の誘いをバイトがあるからと断って離れる。向かうはホロウの入り口、突如として世界に現れた万物を呑み込む異常な球状空間であり内部はエーテルと呼ばれる特殊な物質が存在し企業などはこの世界で日々しのぎを削っている。
そんなホロウの前で僕はスマホを開きインターノットを開く。
「今回のご依頼は~『ホロウ内に迷い込んだボンプの救助』。シンプルでわかりやすいね」
スマホを仕舞いながらホロウ内に入る。
「変身」
ホロウ内に入って何気なしにそう呟くと体に変化が起こる。
全身が黒い靄に包まれ緑の竜巻が周囲に吹き荒れた後。縦に赤い斬撃のようなエフェクトが入ると共に黒い霧が晴れ、装甲のようなものを身に纏った姿に変わっていた。
ベースは黒と緑、甲冑と言ったような雰囲気であり黒いマントのようなものが装着される。
左腰には同じような色合いの刀を差していた。
いつの間にか使えるようになっていたこの力、僕はこの力を過去の戦士と武器になぞらえて。
『ブジンソード』と呼んでいる。
「…フッ!」
それ違いざまにエーテリアスを両断する。
それにしても色合いがブジンソードと似ているなエーテリアス。緑と黒がベースだからそれのせいかもだけど。
以前何か似たような装甲を着た白髪の男? にエーテリアスと勘違いされて銃を乱射されたことがある。
まぁこの姿だと銃弾弾けるから何とかなったけど。
僕がやっていることはホロウレイダーだ。簡単に言うとホロウ内部を違法に探索している人物の総称である。調査員と迷ったんだけどあっちは色々と細かそうだしこの力に目覚めてからはこっちになることに決めた。
「…終わりか」
する必要はないけど僕は血振りのような動作をして刀を納刀した。
この鞘は研磨作業などのメンテナンスを超高速で行い、常に武刃の品質を維持する役割となっており刀の手入れとかが必要ないのがいい所。
敵を倒しながら向かうと目を回して座り込んでいるボンプがいた。ボンプって可愛いよね、うちの近所にも店員ボンプがいたし…そういえば新しい映画入ったかな。明日見に行こう。
そう思いながらボンプを運び出そうと手を伸ばすと。
ガキィンッ!
どこからか飛んできた何かに腕が弾かれた。
見ると白髪の少女がいた。あら服のカラーリング僕と同じだね、向けている目がエーテリアスを見る目と同じだけど。そのまま追撃されそうになったので刀を抜きその攻撃を防ぐ。中々の使い手、ただ一対一なら…!
そう思ったのがよくなったのか彼女の背後から飛来する弾丸。後方に跳び剣戟から離れながら銃弾を刀で弾く。着地し、確認すると三人に増えていた。
一人は先ほどの少女、そして白髪の…知能構造体か?
そしてピンク髪のチューブトップとホットパンツのなんかもう凄い美女。武器はあのトランクケースか?
銃に刀に…うーん。逃げようかな。
「エーテリアス…?」
「にしてはなんか違う感じはするけどなぁー?」
「とにかく救助する予定のボンプに手を出そうとしてたのは事実よ! とっちめてやるんだから!」
救助対象が同じ? ダブルブッキング?
このスーツなら戦えるとは思うけど下手に他のホロウレイダーと揉め事はあんまり起こしたくない。
…と、言うわけで。
僕は身を翻して逃げることにした。
「あぁっ!? 逃げられ…ってはやっ!」
「…もう見えない」
「あー! もうボンプは見つけたしいいわね!」
【依頼人、ダブルブッキングしていたようだが】
【申し訳ない、どうやら妻が別の人に依頼をしていたようで…】
【そうか、変なことじゃないなら構わない。今回の依頼料は不要だ】
【構わないのかい? せめて少しだけでも…】
【依頼自体は失敗だからな。また何かあればそれでいい】
そう打ち込んでスマホを仕舞う。依頼料は貰わないことにしたけどちょっとカッコつけすぎたかなぁ。
まぁお金には困ってないからいいけど。
「…ねぇ」
「…ん? あれ? どうかした?」
「いや、何か。上の空だったし」
しまった。エレンと会話してたのについぼーっとしてしまった。疲れが残っているのかな。
そんなけだるそうな顔をしているエレンの前に箱を取り出す。
「…? これなに?」
「カップケーキ、この前食べたいって言ってたでしょ?」
箱を開けると程よい大きさのカップケーキがいくつか見える。
この前二つだけ作ってきて欲しいと言ったエレンにあげようとしたら横から来たモナに搔っ攫われてエレンが結構不機嫌になっていたため今回は強奪されてもいいように多めに作っていた。
お菓子を作るのは結構好き、そもそも一人暮らしだから料理はそこそこ出来るのだ。外食もたまにするけど料理した方が好きな料理作れるからね。
「んあー」
「え、あの。エレンさん」
「あー」
机にだらーんと体を預けたまま口を開けて、まるで餌を待つ雛鳥のようにエレンが僕の手ずからカップケーキを食べさせてもらおうと待っている。エレンの鋭いギザ歯がよく見えた。
僕はマフィンカップを剥がしながら剝いたものをエレンの口に持っていく、本当にめんどくさがりだなぁ…。
「んっ」
結構な大きさの一口である。それにしても本当に日頃からエネルギー不足なんだねぇ…でも結構食べているのにそのスタイルを維持できるのは凄いよね。
むぐむぐと咀嚼するエレンを見ながらそう思う。そしてそのままごくんと飲み込んだ。
「…美味しい」
「それはよかった、残りは自分で食べなよ?」
残りをエレンの手に持たせてウェットティッシュで手を拭く。
エレンはめんどくさそうな顔をしながらもちゃんと受け取ってくれた。
僕はエレンに定期的にお菓子や料理を振舞っている、どうやら彼女はかなり燃費が悪いらしくよく飴を舐めていて僕が料理を持っていくと特に表情は変わらないけど美味しいと食べてくれるので喜んでくれているとは思う。他の人にも好評だから別に僕やエレンが味音痴って訳ではないと思うし。
「あーまたケイが何か持ってきてる! エレン頂戴!」
「だめ」
エレンはカップケーキが入った箱を胸に抱き込んで死守する。
いつもの三人がエレンを取り囲むがエレンは離す気はないようで僕は少し笑いながらエレンのとは違う小さめのカップケーキを三つ取り出す。
「モナ、ルビー、凛。ちゃんと君たちの分もあるから取っちゃだめだよ」
『わーい!』
三人は僕の手からカップケーキを掻っ攫うとすぐに食べ始めた。
美味しいって食べてもらえるのはいいよね。なんでかエレン少し不満そうな顔してるけど。
このお話は僕が新エリー都で日常と非日常を行き来するお話である
エレンとリナはいるけどライカンがいない…。
テープがもっと欲しいよ