武人狸、新エリー都に現れる   作:黒巛清流

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二話と三話のサブタイを交換しました。
こっちの方があってるなと思ったので。


日曜日のノラネコ

「…ねぇ。日曜空いてる?」

 

ある日、学校が終わった頃。エレンにそう話しかけられた。

スケジュールを確認する、特に何もなく映画とかでも探そうかなと思うぐらいだったし。

 

「特に予定はないよ」

「…じゃあどっかいかない?」

 

エレンからの休日のお誘いである。これは珍しい。

基本的にエレンは流されるだけという「へー」「ふー」「そう」「わかった」って感じで会話を簡潔に済ませる気質がある。彼女が自ら何かを予定するのは珍しいから少し驚いてしまって。エレンが少し不安そうな顔になる。

 

「…いや?」

「違うよ、ちょっと驚いちゃって。どこに行こうか?」

「…じゃあ」

 

そんなこんなでルミナスクエアをブラブラしようと具体的な計画は決めずに別れた。

 

 


 

 

…やば、口元にやけてなかったかな。あたし。

いつものあたしのように出来たのかな、平常心のままいられたのかな。

 

ケイとの…モナ、ルビー、凛もいない…二人っきりのお出かけ(デ…おでかけ)

ケイと別れて物陰に入る。ふと口元に手を当てた、明らかに口角が上がっている。思わず口元を手で隠す。機嫌の良さが口元に出ている。にやにやが抑えられない。

 

「…治さないと…日曜までには」

 

土曜はバイト詰め込んで日曜は絶対休みにしてもらう。

たまの休みだ、二人っきりでたっぷり満喫してやる。

 

その(いつかなりたい)関係を言語化するのは…まだ勇気が出ない。

 

 

 

 

 

ルミナモール前のモニュメント、無理やり早い時間を集合時間にした。

その集合時間の10分前に到着するように向かいながら髪や服を確認する。制服やメイド服以外、久し振りに着たかもしれない。

天気予報も午後も晴れだし…。今日はとことん…。

…やばい、心臓のバクバクが止まらない。遊びに行くなんて初めてじゃないのに。

 

そして到着するとすでにケイはいた。

何度も見たことあるはずなのにケイの私服はいつ見ても新鮮に感じる。

 

「ごめん、待った?」

「ううん、大丈夫だよ」

 

そこは「今来たところだよ」と言ってほしかったがケイはそういうの考えない素直なタイプだし…。

とりあえず目の前のルミナモールに行こう。

 

 

「見てみてエレン、このぬいぐるみエレンに似てない?」

 

ケイが取り出したのはサメの着ぐるみを着たけだるげそうな女の子のぬいぐるみ。

確かに若干似てるかもしれない。すると私はあるぬいぐるみを見つけた。

 

「じゃあケイはこっちだね」

 

そう言って私は持ち上げたのはぽわぽわした表情をしたたぬきの着ぐるみを着た男の子のぬいぐるみ。

人のことを弄んだりこんなぽわぽわした表情がケイにぴったりだ。

 

「えーそうかなぁ?」

 

…見てたら本当にケイに見えてきた。買っちゃおうかな。

するとケイがサメの子をカゴに入れる。

 

「…買うの?」

「うん、見てたら可愛いと思ってきたし部屋に飾っちゃおうかなって」

「……じゃあ、私も買おう」

 

本当にたぬきだよ、ケイ。

 

 

「歩き疲れたね。カフェにでも行こうか」

「分かった」

 

ルミナススクエアのカフェの二階席に座る。

ここのは六分街と違って席が広いからいい、ケイは味はあっちの方がいいとか言ってたけど。

 

「何にする?」

「…ムギラテ(濃いめ)」

「じゃあ僕は紅茶ラテ(濃いめ)にしようかなぁ」

 

前はムーンロック(濃いめ)を飲んでたっけ、それならあたしは普通のが好きかな。

ケイって結構濃いめが好きなんだね。ここってサンドイッチとかの軽食もあるし昼食もここで済ませようかな。するとケイがメニューの軽食を見せてくる。

 

「お昼もここで済ませようか。僕はホットサンドにしようかな」

「…じゃあ私は普通のサンドイッチで」

 

 

 

…あっという間に時間が経った。

ルミナモールでサメのぬいぐるみを見たり喫茶店でお茶したり何の目的もなくその辺をブラブラしたり。

そんなことをしたらもう日が暮れそうになっている。嘘でしょ、まだ2時間も経ってない気分なんだけど。

 

「もう遅くなっちゃった。エレンと一緒だと時間の流れが速く感じちゃうね」

「…そだね」

 

ケイって本当に何もなしにこういうことを言うよね。なんかイライラ(・ラ・ラ)してきた。

本当にさぁ…そんなんだから学校でも裏で色々言われちゃうんだよ? あたしが学校でどれだけ睨み利かせているか分かってるの?

みんなも多分あたしと同じこと思ってるだろうし。

あんまり軽率にそういうこと言わない方がいいよ…? 襲われちゃうよ、本当に。

深呼吸をして心を落ち着ける。この後は別れてまた明日学校で、それでいい。

 

「あのs」

「あ、そうだ。エレン、まだ時間ある?」

「…? あるけど」

「だったらさ。よかったら夕飯食べに来ない? 実は材料買い過ぎちゃって」

 

…もうこれって合意ってことにならない?

据え膳どころかこれもう口元にあーんってされてない?

歯を砕きそうなほど奥歯を噛みながら冷静に答える。

 

「いいなら行くけど」

「よかったぁ、知り合いから野菜をいっぱいもらったんだけど自分だけじゃ消費しきれなくてね。カレーにしてみたんだけど…」

 

そんな風に楽しそうに話すケイの姿に頬が緩む。

うん、まだ。ゆっくりで…いい。まだ時間はあるんだし。

人の多くなってきた地下鉄に向かいながら私はそう思った。

 

「人多くなってきたし危ないから手でも繋ぐ? あ、部屋余ってるしよかったら泊っていく?」

 

やっぱりもう襲おうかな。

あたしサメだし狩るよ。もう

 




ちょっと短いけどキリがよかったのでここまで。
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