お隣さんちの異世界人   作:わー

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第3話

「貴方ですね! 小林さんの周りをうろつく男は!」

「あ、女の方がいいっすか?」

 

 にゅっと。毛利の胸部が急に少し、ほんの少し膨らみ、髪は少し伸び、股間からは男の象徴たるタワーが喪失した。

 

「貴方、本当に人間なんですか?」

「失礼っすね。俺は正真正銘人間っすよ」

「その姿でその口調だと違和感がすごいですね……」

 

 白髪赤目貧乳長身異世界人オタク美女、なお俺っ娘であり平常時は男性である。属性が盛られすぎている。近年の設定ぐちゃぐちゃ異世界ラノベに登場するヒロインですら、ここまでのキメラは中々お目にかかれない。

 

「性転換の魔術、人間の技術でも使えるんですね」

「意外となんとかなるもんですよ。俺以外に使える人、見たことないっすけど」

「……まあ、大体理解しました。ちなみに、貴方はどうしてこちらの世界に?」

「暇だったからすね」

 

 それ以外に特に理由はない。普通に職もあったし、金も持っていたし、周りとの関係が悪いわけでもなかった。

 ただ単に、暇であったのだ。なので、"そうだ、京都に行こう"的なノリでこちらの世界に遊びに来て、気に入って、そのまま定住した。おかげで向こうでは今尚てんやわんやしている。

 

「……一応言っておきますけど、小林さんに危害を加えようものなら」

「あー、ないない。あの人が居なくなったらうちの部署が終わるんで」

「貴方もあそこで働いているんですか。……と言うより、本当に大丈夫なんですその会社?」

「じゃないっすね。トールさん、小林先輩の顔色が悪くなったら無理矢理にでも休ませたほうがいいっすよ」

 

 じゃなきゃそう遠くない未来に過労死しそう、と。何気なくそう呟く毛利に戦々恐々とするトール。

 異世界出身、身体精神共に強度ではこの世界の人間を遥かに上回る彼ですら、仕事は激務であると認識している。なら、小林は尚更だ。

 

「私の尻尾を食べてもらえれば、疲労なんて一発で吹き飛ぶのに……」

「やー、あれはこっちの人にゃ厳しいでしょ」

「味は意外と悪くないんですよ?」

「そう言う問題じゃないんすよね。要はビジュアルっすよビジュアル」

 

 目の前に正体不明のゲテモノをお出しされて、"味は美味しいから!"と付け加えられても、果たして何人の人間がそれを口にするのか。

 そう言った趣向を持つ人間であればむしろ嬉々とするのかもしれないが、小林はそうではない。というかむしろ保守的思考の持ち主であるため、ゲテモノを食べるようなことはまずしない。

 

「何か方法は……」

「なんかに紛れ込ませるってのは? ホラ、子供にピーマン食わせる為にハンバーグの中に入れる的なアレで」

「うーん。でも、騙し討ちのようなことはあまりしたくないんですよね」

「なるほど。……ならいっそ寝てる時に口の中に突っ込んでみるとか」

「却下です」

 

 うーんうーんと頭を使う二人。終末帝の娘と、異世界出身の魔術師。地球人類基準で叡智を持つとも言える二人がどれだけ考えても、納得のいく答えには至らなかった。恐るべし小林、恐るべしトールの尻尾。

 

 

 

 

☆♪☆♪

 

 

 

 

「うげ」

「…………モーリスか?」

「お、お久っす、ファフニールさん」

「ふむ…………」

 

 モーリス改め毛利とファフニールは、異世界にいた頃から多少の関わりがあった。というか、モーリスの呪術知識の源はこの人──このドラゴンである。

 別に敵対関係にあったわけではないし、実力を認められてなんとやら、と言うわけでもない。戦えば毛利は5秒ぐらいで死ぬ。いや、ファフニール相手に5秒粘れるだけ人間の中では相当な上澄なのだが。

 

「滝谷から聞いたが、貴様はオタクらしいな」

「あ、はい。そうっすけど……もしかしてファフニールさんも?」

「ああ」

 

 現代に染まったファフニール。日夜オンゲのレア掘りに精を出し、コミケの際には呪い全集を出版する立派なオタクである。

 ちなみに生活費は滝谷と折半である。どこから稼いできているのかは誰も知らない。というか知りたくない。

 

「滝谷はザンギョウだと聞いているが、貴様は違うのか」

「ああ、はい。俺はそのプロジェクト関わってないんで」

「ふむ……」

 

 顎に手を当てて悩む素振りを見せるファフニール。正直、毛利からすれば早く帰りたい。

 

 トールやルコアが彼と普通に会話できるのは、単に対抗できるほどの実力を有しているから。小林や滝谷はこいつのヤバさを知らないから。

 敵対即呪殺、侵入即呪殺、何もしていなくてもとりあえず呪殺。命を救われた恩があるとはいえ、この龍の恐ろしさは身近にいた自分が一番知っている。

 

「……このゲームに見覚えはあるか」

「ん? あ、それならやってるっすよ俺」

「そうか。なら話は早い。今日は徹夜で周回を行う、お前も付き合え」

「え"、俺明日も仕事……いやなんもないっす。喜んでおつきあいさせていただきます、はい」

 

 反論しようとした毛利にファフニールが一睨み。逆らえるわけもなく、敢えなく撃沈した。

 

「無論、無償でとは言わん。……これをやろう」

「これは?」

「俺がコミケで出した本だ。あらゆる呪いについて、詳しく記載されている」

「……ん、おお、マジかこれ。……え、これ売れたんすか?」

「……いや」

 

 内心ほっとした。これが世に広まっては、世界のバランスが壊れてしまう。

 正直、某死神のノートなんかより何倍もまずい。ファフニール直伝ということもあり、なんの知識もない素人でも、これを読めば気になるあの子を即座に射止めることができてしまうだろう。

 

「……今度のコミケの時は、俺も手伝いますんで」

「そうか」

 

 なんとかしてこの龍を止めなければ、と。そう固く心に誓った毛利であった。




可変式 これ性転換タグいるんかな
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