「終わった……」
辺りを見渡す
どこにも敵影は無く、このEAGLE1が最後であったことを示している
どうやらその命と引換にアイツらを逃がしたようである
なかなかやる、戦闘力があるからこそのゴリ押しである……死んだけど
「にしても……SRTの悪夢、か」
二つ名が増えたな、と俺は鼻で笑いながら言った
唯一の難点はそれがどう聞いても悪い意味にしか思えないところである
名前が増えるというのも悪くない気持ちではあるが……
まぁそんなことはどうでもいいか
それよりも
「ユメはどこにいった?」
辺りを見渡してみるが居ない
そりゃそうか、ここは廃墟から少し離れた砂漠だ
そこに居る方がおかしいものだろう
そう思いながら廃墟に戻る
戦闘で疲れはしていたものの、それ程問題では無い
廃墟に戻ってみれば横たわっているユメが見えた
「ユメ!」
即座に駆け寄り、肩を揺さぶる
見たところ外傷は腹部以外無い…これと言った異常は無い
耳を彼女の口元に近づけてみる
……息を吸う音が聞こえる、ちゃんと生きているようだ
「……というより」
寝てるだけ、か?
よくよく見直してみるとその顔はすやすやと寝ているようにも見える
腹パンされて子を失ったというのに脳天気なものである
そう思いながら彼女を背負う
「う……ん……」
「お、起きたか?」
背中でユメが唸るような声を上げる
それを聞いて俺は声をかけるが「うへへへ」という声しか返ってこない
なんでコイツこんな声出せるんだ…?腹パンされたばっかりなのに
というか起きてないのかよなんなんだお前
夢見の良さそうなユメを見て自分が重く見すぎたかとため息をつく
どうも彼女関係になると性格が荒くなる気がする
なんとも面倒な話だ、俺なんだけどさ
イオンライフルをスリングし、砂漠を歩く
やっぱりジープくらいは持ってくるべきだったかもしれない
そう思いながら歩いていた
「…ん?」
ふと何かの音が聞こえて俺は顔を上げる
するとそこにはSRTのヘリが居たのである
すかさず攻撃態勢に移行しようとするが様子がおかしいことに気付く
着陸している、砂漠に
聞こえた音はどうやらローターが回っている音のようだ
パイロットが乗っているようだがこちらには気付いていない
しきりに何かを弄くっている……多分砂嵐で無線が通ってないのだ
好都合である
静かに俺はヘリに接近し、乗り込む
奴がこちらに気づいていないようで助かった
ユメを後部座席に座らせてシートベルトを締めさせる
さて
「グッモーニン?」
『……!?』
気さくな様子でコックピットに顔を出す
パイロットは俺の登場に思わず2度見をしていた
可愛らしいが、それもここまでである
ナイフを抜いてその喉元に突き刺す
俺を呪いそうな目で見ていたが、やがてバタリと倒れてしまう
刃に付いた血を拭って鞘にナイフに仕舞ってパイロットの死体を外に投げる
いい感じに環境の肥やしになるだろう、じゃなきゃ砂と同化するのみだ
ヘッドセットにアダプタを繋げる
すると、目元にHUDがホログラムのように表示される
これ本当に便利である、とても助かるものだ
…で
「えーと……パイロットトレーニングはどんなんだったかねぇ…」
ヘリの操縦なんて久しぶりだ
乗り物は普通車から戦車まで動かしてきた、とはいえ大体である
専門的なことまでは覚えてない……
ぶつくさと文句を呟きながらスイッチをカチカチ入れる
記憶が正しければこれでいいはずである
「よし、飛ぶぞ……!」
操縦桿を動かす
するとふわりと機体が浮き上がり、どんどん地面から離れて行く
久々に感じたGの感覚はかなり新鮮なものだ
最近は久々に感じる物が多い
そんなことを思いながらアビドス高等学校に戻るのだった
〇
時間は進んで一週間後
連邦生徒会
それはサンクトゥスタワーに組織を置く生徒会
キヴォトスの全てを制しているとも過言であり、それらを制御する連邦生徒会長は素晴らしいものである
しかし、この会議室に居る者達の顔には全くもって煌びやかなものは無い
それどころか深刻そうな顔が大体である
そんな重苦しい空気の中、連邦生徒会長が口を開ける
「今回集まってもらってありがとうございます」
開口一番に言われるのはここに集まったことの感謝
というのもある事により膨大な量の仕事が出来てしまったので皆時間が無いのである
特に行政と防衛、なんでやろなぁ
「集めてもらった理由は他でもない……元SRT隊員にして現アビドス生、"影印メシド"のことです」
彼女はハキハキと喋りながら言う
その顔にはどこか影が入っているようにも見える
「まず、情報のすり合わせをしたいと思います」
彼女はピコリとホログラムを映し出す
そこにはメシドがSRT隊員だった頃の身分証が映し出されていた
情報隠蔽のためか目元は黒く塗りつぶされ、他にも機密的な物は塗りつぶされている
防衛長……カヤが立ち上がり、資料を読み上げる
「影印メシド18歳、所属小隊はCOBRA小隊
実力ではSRTでも上位でありよくEAGLE小隊と模擬戦をしていました」
淡々と資料を読み上げる
冷静なように見えるが、よく見れば資料を持つ手は震えている
「任務も99%完遂、残りの1%は…例の事件です」
「……例の事件とやらを教えて欲しいのですが」
カヤは震えた声で言う
完遂率99%、そして尚失敗した唯一の例が"アレ"である
ほぼ例外のようなものなので言ってしまえば完遂率は100%を誇る小隊だ
尚SRTに完遂率100%と言われるのはCOBRA小隊とEAGLE小隊のみである
で、例の事件を知らない行政官七神リンは手を挙げて質問した
「それは…」
「それは私から説明しましょう、知っているのはカヤと私、関係者のみなので」
カヤが例の事件を説明しようとした時、連邦生徒会長が割り込む
そしてリンに対して事件のことを簡単に喋った
「カイザーインダストリーズは知っていますね?
そこで怪しげな動きがあったのでCOBRA小隊とFOX小隊を行かせたのです、私の指揮でね」
「連邦生徒会長が直接…!?」
連邦生徒会長の私兵的な側面があるので割と当たり前と言っちゃ当たり前である
それでも基本的に個々の兵士が判断して行動する為連邦生徒会長自ら指揮することは珍しいのである
特に指揮無しでもかなりの成功率を誇る小隊達の指揮を執るのは
「まぁ新人研修で、少し不安なのもありましたが……
……それでカイザーにて横着がありまして、兵器の横流しがされていたのです」
「カイザーの武器ですか?」
「いいえ、ヘイローを破壊する武器です」
ヘイローを破壊する武器、その言葉にリンは息を飲む
キヴォトスの住民はヘイローを持ち常人以上の耐久力を持っている
そのせいで犯罪率が素晴らしいことになっているのだが、そんな犯罪であろうとも殺人事件は無い
死ににくいキヴォトス人は、何よりも死を恐れ禁忌としているのだから
「して、それを防ぐ為に小隊を送ってのですがね…
ターゲットによる最後の抵抗でCOBRA小隊は壊滅
唯一の生き残りであるメシドは発狂しSRTを脱走しました」
「…それが、例の事件」
恐ろしいことである
今までニュースでも見ていないので恐らく揉み消したのだろう
割とシャレにならないことをしているのだから当たり前でもあるが……
鼻のいいパパラッチ共に嗅ぎつけられたらどう面白おかしく改変されるものか
「そして、彼は今現在…いや、世紀最大の犯罪者です」
「一体何をしたんですか…?」
彼女はひらりと手をかざす
するとまた別のホログラムが浮かび上がる
EAGLE小隊とWOLF小隊、そしてFOX小隊のものである
各隊員の顔写真がホログラムとして浮かび上がっているのだ
やがて、八名の隊員達のホログラムが真っ赤に染まる
「単刀直入に言います、彼はこの小隊をほぼ壊滅に追い込みました
……直球的に言うと、大虐殺です」
「…本当ですか?」
一瞬、リンは空中に投げ出されたかのような感覚を覚えた
何か信じられない事で頭を殴られたような、頭が理解を拒むような…
しかし直ぐに正気を取り戻し、質問する
それは事実なのか、本当に真実なのか
出来れば真実であって欲しくなかった
しかし、現実はその気持ちを裏切る
「えぇ、そうです……信じられないなら死体でも見ますか?」
「丁重にお断りしておきます」
今見たら発狂しそうだ
死体なんて見るもんじゃない、特にこのキヴォトスでは
動悸を抑え、息を整えながらリンは言う
「ならば、影印メシドは…」
「えぇ、そうです彼は……」
彼女の言葉に対して、連邦生徒会長は言った
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アロナァ「天敵!イレギュラー!死ね!」
メシド「お前が死ねボケナス」