優しい先輩が切れるナイフになるまで   作:回忌

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揺れるジープにて

「して、借金についての話をしようか」

 

自身に付いた砂を払いながらメシドは言った

舌打ちを隠すことも無くしながらホシノは肘をつきながらメシドの話を聞いていた

 

あの後戦闘して、普通にホシノが負けた

今日こそは勝たんと鬼気迫る戦い方ではあるがまだまだ青い戦い方だ

何度も模擬戦をしてきた俺の敵では無い、模擬戦の奴よりは強いが

 

「こうしてメシドが真面目に会議するのもいつぶりかなー」

「お前は俺が転校生ということを忘れたようだな」

 

ユメがしみじみと言った様子で腕を組んだ

今にもいかにもありそうな過去を思い出しそうたが、待ったをかける

ユメと過ごしたのは三年に上がった直後の半年も無い月日だ、ロクな思い出は無い

 

…あいや、階段で思わず滑って大メロン触ったとか、間違えてユメが全裸の更衣室に入っ────────

 

 

「あっぶえ!?」

 

2人から撃たれた

脳天に9mmパラ弾とスラグ弾をぶち込められそうになった…

とても危なかった、こいつら殺す気かよ!?

 

「俺が何したってんだよ!?」

「「なんか良からぬことを考えてそうだった」」

「あんまりなんじゃねぇのかお前ら!?」

 

理由のない暴力がメシドを襲う

なんだよ良からぬこと考えてそうだったって、意味がわからねぇよ!?

 

「あんたらイカれてるぜ…ホンマ」

 

メシドはそう言いながら懐から紙を取り出した

茶色の紙切れである、言ってしまえば燃えるゴミ

 

「なんですかその燃えるゴミ」

 

ホシノは明らか不機嫌な様子を隠さずに言った

俺に負けてかなり機嫌が宜しくない、全くこのガキンチョがHAHAHA

 

「何を隠そう…宝の地図だ!!!」

「あ〜〜!!それ私が見つけたヤツだよぉ!」

 

ニヤリと笑って赤いバツ印が書かれた地図を広げる

ユメがぷりぷり起こった様子で俺を指さしてきた

 

「はて?俺は生徒会長室の棚にあったのを見つけただけなんだがなぁ〜〜?」

「このドロボー!!!」

 

ユメが叫びながらポカポカ殴ってくる

まぁもちろんユメ程度の攻撃じゃあんま痛くな…イタイタイタヤメテヤメテッ!

徐々に強くなっていくユメのポカポカラッシュを受け流し、地図を机の上に広げる

 

「調べてみるにここから10数キロ離れた所だと思われる」

「アビドスにはもう資源なんてないですよ、馬鹿ですか貴方」

「辛辣すぎて泣けるぜ…話最後まで聞こうな」

 

当たり前のように罵倒されるメシドは少し辛くて泣いた

その涙をわざとらしく拭って話を続ける

 

「調べてみたが、ここは調査が進んでいない…まぁ、希望があるってこった」

「…そうですか」

「と、言うわけでな」

 

俺は立ち上がると窓辺に歩み寄り、既に用意しておいたジープを指さす

そして地図を見つけた時からずっと言いたかった言葉を俺は言い放つ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前ら!宝探しだァッッッ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「風が気持ちいい〜」

 

ユメが浅葱色の長髪を揺らしながら言う

その横には不服そうな顔をしたホシノがショットガンを抱きしめるように抱え、ちょこんと座っていた

 

俺ことメシドはジープのハンドルを握り、メーターの横に貼り付けた地図に向けて向かっていた

勿論この地図は昔のものなので幾らか更新された地図も持ってきている

砂の影響は思いの外凄まじい物で、いくつかの物を除けば大体宝の地図と現在の地図は違うものになっていた

 

「今のうちにその冷たさを感じとくことだな」

「降りたくないよ〜」

 

後ろで間伸びする声に対してメシドは言った

一応このジープにはちゃんと冷水や氷に食料に飯等色々載せている

パンクしても替えがあるので何とかなるし、飯もある

俺には古巣で叩き込まれたサバイバル技術があるので万一があっても大丈夫だろう

 

「にしても、本当にどこもかしこも砂ばかりだ」

 

ここまでアビドスの外まで来たのも初めてかも知れない

最初の遭難しかけた時さえあの場所はアビドスの一辺だと聞かされて驚愕した

ここに巨大なオアシスがあったのも信じられないし、未だに人が生きていると言うのも信じられない

大半の土地がアビドスの物では無いということに対して違和感があるものの、気にすることでは無い

 

「というかメシド先輩、毎回思うんですが免許持っているんですか?」

「前にも言ってた気がするなそれ…」

 

ギアを4から5に変えたところで後ろからホシノが声をかけてきた

ミラーでチラリと見ながら俺はボヤく

ヘルメット団をボコボコにする時にたまたまジープに乗った時にも聞いた気がする

 

…まぁ、いいか

 

「だぁーれも気にしゃねぇよ、というかこのキヴォトスでまともに免許取ってるやついるのか?」

「…それもそうですね」

 

キヴォトスで真面目に免許を取りました、という話は聞いたことがない

前職のおかげで免許を取ることはあったもののそれは公的機関として手本を示すためとかそういうあれだった

ただまぁ特殊な物を動かすこともあったのでそれに関してはありがたいが

 

「で、持ってるんですか?」

「ほら、そいつに入ってるハズだ」

 

俺は財布を投げ渡す

ホシノはそれを受け取り中身を確認する

 

「あ、ほんとだ」

 

ミラー越しに彼女が免許証を持っているが見える

どうやって取ったか覚えていないが、ゲロ道を死ぬ程走ったのは覚えている

その道と同じほどゲボを吐いたがそれは仲間も同じであった

あのクソ教官今度あったらぶち殺してやる…

 

「ぷぷ…冴えない顔してますね…ふふ」

「悪いか冴えない顔してて」

 

ホシノの笑い声が聞こえた

ミラー越しにも見えるが俺の冴えない顔がくっきりと見える

あの時は死ぬ気で頑張っていた頃なので…あの写真の時は確か死ぬ程疲れた後に撮った奴かな

 

「いえ…普段あまり見ないので…ふふふ」

「まだお前らがそこまでの重荷じゃないってこった」

 

実際こいつらはあの時に比べりゃァ屁でもない

 

死に物狂いで何かをしようとしていた、成そうとしていたあの頃に比べれば

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『大尉!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ぱいっ?先輩!?」

「…はっ」

 

俺はホシノの呼びかける声で俺はふけっていた脳内から脱出する

ハンドルを握り直し、悪いとホシノに謝った

 

「いえ…それより、どうしてこれ所属校が削られているんですか?」

 

ホシノはミラーに見えるように免許証を指さした

俺の冴えない顔の写真の横に所属校が書かれている欄がある

 

しかし、そこにはあるべき所属校の名前が無い

乱雑に削り取りているのである

 

「さぁ?俺も分からんな」

「なんで分からないんですか!?」

 

とぼけた様子で俺は言う、勿論納得できないホシノが叫びながら言った

まぁ仕方ないよな、本人が分からないとか意味がわからんよな

 

「本当に知らんのだよホシノ君

 俺も最初は死ぬ程驚いたけどな、うん

 

 

 

 …お前も、いつか分かるさ」

「なんですかそれ…」

 

…お前に、その時が来ないことを祈るがね

 

俺は彼女に聞こえないくらいの声で呟きながらアクセルを踏み込んだ

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