優しい先輩が切れるナイフになるまで   作:回忌

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色彩から跳ね飛ばされた男、メシド
残されたのは指揮官の不手際で死んでしまった部下の無念である

彼の心はまだ、燃えている


見捨てられた男「C1」

ふわり、と彼の体が浮く

その背後にはおぞましい、黒い点としか表現出来ないものが存在していた

私はそれを見てしまい足がすくんで動けなくなる

 

その中心に居る彼は四肢をだらりと垂らし、全く動かない

 

まるで死んでしまっているような…いや、死んでいてもおかしくないような状態

 

銃を向けたかった、しかし体が震えて動けない

逃げたかった、しかし足がすくんで逃げられない

 

そしてそれが、今まさに胎動し彼を飲み込もうと……

 

 

 

 

『ヴォエ!!!』

「ワァーッハ!!!」

 

 

 

 

……した瞬間、その黒点は汚い声のようなもの共に彼を吐き出した

地面に投げ出された彼から情けない悲鳴が響き渡る

 

「え?」

『コイツヤダ!小生ヤダァ!!!』

 

まるで子供のような事を叫ぶ黒点

そのままソレは胎動するように動き始め、そして一瞬で消えてしまった

 

 

……一瞬の、出来事だった

 

「……え?」

 

あまりの出来事に、脳が処理を拒否していた

今のはなんだった?何が起こったというのだろうか?

人智の超えた存在が目の前にいたのだろうか?

 

「お"...うぉぇえ…」

「!大丈夫かCOBRA1!!!」

 

そう思っていると地面に打ち付けれた彼から汚い声が漏れる

その声に正気を引き戻され私は素早く駆けつけた

確認してみればまだ息はある、怪我はあまり無いようだ

 

 

 

辺りを見渡す

 

 

 

 

 

 

辺りには三人の焼け爛れた死体が存在していた

 

「…ッ!HQHQ!こちらFOX1応答しろ!」

『こちらHQ!状況の報告をしてください!』

 

私は思わず吐きそうになるが、それを堪えて無線を繋ぐ

その声に答えて損壊の指揮官である連邦生徒会長が叫ぶように反応した

即座に現在の状態を通達する

 

「敵の自爆によりCOBRA小隊の3人がKIA…!一名重症!」

『なんということ…FOX小隊に損害は?』

「皆無事です!…それよりも医療者を……!」

『今すぐヘリを向かわせます、脱出地点にて待機!』

 

私はそれを聞いた後彼を担ぎあげる

彼は唸るような声を上げており、うなされているようである

意味の無い言葉をブツブツと呟いている

 

「れんらく、せんの欠乏…球根…うがった……」

『しっかりしろ!ランデブーポイントまで行くぞ!!』

 

私は彼を激励しながら、その場を立ち去る

この時かなり必死だったせいか周りに居る隊員に気付いていなかった

こんな隊長ですまない、許してくれ

 

 

 

 

 

カリカリと、万年筆の走る音が響く

その男はテーブルに備え付けてある電気を付け、書類を処理していた

時折悩むようにペン先をコツコツ、と打ち付けまた万年筆を走らせる

それを先程からずっと続けていたある時……ふとその指が止まる

 

コンコンコンコンと、正確に四回扉からノック音が響く

彼は少し溜息をつきながらも入室を促した

 

「開いているよ」

「失礼します」

 

ガチャリと戸を開けて入ってきたのは、頭にウサギの耳のような被り物をした女の子

装備を全く解いていない彼女は敬礼し彼の机の前に移動する

 

「本日、"教官"に質問があり入室しました」

「言ってみてくれ」

 

彼は書類を淡々と処理しながら彼女の話を聞いていた

 

…が、彼女の次の言葉に万年筆を止めることになる

 

 

 

「教官、貴方は昔"COBRA小隊"のリーダーだったそうですが……」

「……ふむ、どこでその話を聞いたのかな」

 

コトリ、と万年筆を置いて肘をついて彼女を見た

その優しげな顔の中にある鋭い視線に少し怯みながら彼女は質問に答える

 

「その、ユキノ先輩が話しているのを聞いて……」

「……ユキノか」

 

はぁ、とため息を付いて彼は立ち上がる

窓辺に置いてある服掛けにある黒いコートと帽子を撫でる

感傷に浸っていた彼ははぁ、とため息をついて彼女を見た

 

「それで、君は何の質問がその上である?

ㅤまさか人の苦い記憶を呼び起こしただけじゃ無いだろうな」

「い、いえ……経験豊富な貴方が事務仕事のみをこなしていことが……その、疑問で

ㅤ前線は兎も角、若い世代への訓練等はしないのですか?」

「…ふむ、そう来たか……」

 

彼女の質問に対して彼は空を見た

淡い月光を振りまく満月、今宵も美しいものだ

あの日もこのような空であったか?まぁどうでもいい事だが

 

「私が訓練をしたことは無い、これは間違いないことだ

ㅤでは逆に何故君達に私が訓練をしないか分かるか?」

「はっ?……、……いえ、分かりません」

 

想像も出来ない質問に彼女は答えられなかった

なぜなら、その理由が全くもって分からなかったからである

どうして彼が彼女達に訓練をしないのか?何故一度もしていないのか?

 

……全くもって答えられない

答えを出せなかった彼女に彼は笑いながら言う

 

 

「それは……君達に少しでも善人で居て貰う為だ」

「……え?」

 

呈された答えは、彼女にとって意味の分からないものだった

私たちに善人でいてもらうこと?どういうことだ?

 

「勘違いしないでほしいが私の訓練がキツイ訳じゃないぞミヤコ小隊長

ㅤ君でも、その隊員達でもSRTの者ならば耐えてしかるべきものだ

 

ㅤ……だからこそ、私は絶対に君達に私の訓練を受けさせない」

「…それは……なぜ……」

 

 

困惑する彼女を見て彼は笑う

ハッ、とまるで嘲笑するかのように

 

「さっきも言ったじゃないか、善人でいて貰う為にと

ㅤ……昔のSRTは今よりもタクティカルな組織だったからな

ㅤ連邦生徒会長の私兵になっている側面があって……個人の感情は不要だった」

 

昔を語るように、彼は続ける

 

「相手が正義じゃ無くても戦うことはあったね

ㅤそんなことが年に数回起こるわけだから、私は正義を迷った

ㅤ……正義とはここまで小さなモノだと思うくらいにね」

 

 

ため息

締め括るように彼は言葉を続ける

 

「続けて言うが、ミヤコ小隊長……君は善人を維持するんだぞ

ㅤ…私のような悪人になるなよ」

「……教官は十分、善人です。少なくとも、私から見れば」

 

自虐のように言う彼に対して彼女は言った

慰めるように、とまでは行かないものの自分の思っていることを言った

 

 

 

 

 

 

 

「……ははは、それは良かったね」

 

 

 

 

 

 

 

 

どうも、彼には届いていなかったようであるが

 

 

 

 

連邦生徒会

それはキヴォトスを束ねる中心的な組織

その中心地サンクトゥムタワーの中で二人の人物が顔を合わせていた

 

「初めまして、かな?先生さんよ」

「"え、あ……初めまして?"」

 

気さくに手を振る白いコートを着た男

方や灰色のスーツを着た大人だ

 

胸元のネクタイを引きながら彼は自己紹介をした

 

「俺は"防衛室長"の影印メシドだ、よろしくな」

「"私は最近キヴォトスにやってきた先生、だよ…よろしく!"」

 

先生は気さくに、彼のペースに合わせるように握手した

メシドは笑いながら手を伸ばした彼の手を取る

ゴツゴツとした鍛えられた手だと、先生は思った

外の世界でも、こんな人は居ただろうか……

 

「"にしても、男の生徒さんなんて居るんだね"」

 

そこで先生は思った事を口にした

ここに来るまで実は男性と1人もすれ違っていない

オートマタやパグと言った者は見たのだが人間の男は見ていないのである

 

それが先生にとって物珍しく見えたのである

 

「ん?あぁ、前の奴は諸事情あってな、居なくなった

ㅤ後俺はもう生徒じゃない、仕事でここにいるだけだよ」

 

彼は脈絡も無くそう答えた

文脈がまるでおかしい、というより求めていた答えでは無い

しかしそれよりも尚、先生は別に惹かれた言葉があった

 

「"前任者……?"」

「それは私が説明しましょう」

「"うひゃあ!?"」

 

疑問に思った先生横にリンが現れそう言う

突然の登場をビクリと方を震わせる先生

その情けない姿を少しメシドは笑った

 

「彼の前任者である不知火カヤはカイザーとの癒着が発覚し、今は牢屋です」

「んで、その後釜が俺な訳だ…ま、密告したのも俺だしなぁ」

「"へぇえ……"」

 

何やら泥臭い話のようだ、先生はそう思った

こう言った話に無理に入る必要は無いだろう

入ってもどうせ面倒事に絡みついてしまうだけである

 

「兎も角、奴は牢屋の中だ。

ㅤ馬鹿な奴だよ…カイザーとのクーデターを企ててたなんてな」

「えぇ、全くです」

「"えぇっ!?"」

 

ため息をついた二人、その事実に驚愕する先生

カイザーPMCってアビドスで散々やっていた奴じゃないか!?

そう思った先生の顔を見てメシドは察したようである

はぁ、とため息をついて彼も話す

 

「あぁそうだ、アビドスで散々やってたヤツだよ」

「"……連邦生徒会もその話は知ってたの?"」

「いや、防衛室長としてだ。彼処は面倒な奴だからな……」

 

彼はまた、ため息をついて言った

そこには様々な大人から影響を受ける防衛室長としての苦労が見えた

ハハハ……と笑いながら先生と連邦生徒会の二人はたわいのない会話をしていた

 

 

 

 

「……最近は面倒事が多かったな」

「えぇ、そうですね」

 

ザーザーと雨の降る音

カツカツと歩く音が廊下に響き渡る

二人の人物が連邦生徒会長室に向かって進んでいたのである

 

 

他の誰でもない、七神リンと影印メシドである

 

 

「数日前に別世界の者達が攻め込んで来るとは思わなかったよ」

「全くもってそうですよ……本当に」

 

ため息をつくリン、乾いた笑いを漏らすメシド

そこから先日の話が開花していく

 

「まさか先生が全裸で走ってくるとは思わなかった」

「…すぐに上着を差し出したところは尊敬出来ましたよ、メシド防衛室長」

「そりゃ、ありがたいってこった」

 

たわいもない会話がどんどん進んでいく

しょうもない会話だったり、重要な会話だったり……

そんな会話をしながら連邦生徒会長室に入る

いつ見てもデカイ部屋である、机と椅子しかないのか…

 

そう思いながら二人は中心にまでたどり着く

 

 

 

目の前で立ち止まったメシドに対してリンは問う

 

「…それで、話とは?」

「簡単な話だよ連邦生徒会長代行」

「…?──────────!?」

 

 

遠くから腹に響くような音が響く

キヴォトスで日常を送るリンにはそれがなんなのかすぐに分かった

 

 

…爆発だ、このサンクトゥ厶タワーで爆発が起きているのだ

 

 

それに続くように散発とした銃声が響く

今まさにサンクトゥムタワーは襲撃を受けているのである

 

「一体これは!?」

 

リンは驚愕した様子で爆発した方向を見るが、メシドは意に介していない

どうでも良い、というより起きるべきして起きたというような顔をしている

リンがスリングしているハンドガンを手に取ろうとした瞬間、連邦生徒会長室に誰かがなだれ込んだ

 

 

 

 

その姿はまさに特殊部隊

しかし今は解体されたSRTのものとは全くもって違う姿

全体的に暗く、まるで組織の暗部のような……

 

しかし、何故今そんな人物が……

 

そこでリンは目を見開いてメシドの方に振り向く

 

 

 

 

 

そこには、銃口があった

 

薄く笑うメシドを見てリンは歯噛みする

 

「まさか……!」

「ちょっと寝ててくれよ、リン」

 

 

 

 

ハンドガンとは思えない、凄まじい音と共に彼女の意識は潰えた

 

 

 

『サンクトゥムタワーはたった今占拠した』

 

 

街の中心、ビルに埋め込まれた大型の液晶に大きく人の顔が映る

その後ろには何人もの隊員らしき人物が並んでいるのが見える

 

彼は困惑している人々をよそに話を続ける

 

『24時間以内に我々を排除出来なければ全ての発電施設、水道システム……及びその他全てを破壊する』

 

 

その言葉に、人々は驚愕しザワザワと騒ぎ立てる

しかしその中のたった1人は険しい顔で彼を見ていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『止めたければ、サンクトゥムタワーを取り返すんだな先生

 

 

 

ㅤ……少し前のカイザーの阿呆たちとは我々は違うぞ?』

 

 

 




影印メシド(クーデター)

「お前の流儀に従う気は無い、プレイヤー」



愛銃:SACRIFICE(FA-MAS)
サブ:M500

元SRT、元防衛室長、現テロリスト
連邦生徒会の白い制服を脱ぎ捨て、かつてのCOBRA小隊の衣装に身を包んでいる
無能な連邦生徒会長によって死んでしまった戦友の仇を取るために先生を待った

目的は、連邦生徒会長が遺した遺物であるシッテムの箱の破壊

先生がそれに頼っていることは知っている、だからこそ壊す
この世に存在する連邦生徒会長の痕跡を全て消すためにクーデターを起こした



COBRA小隊隊員達

秘密裏に引き込まれた者達
ブラックマーケットの光る原石だった不良や、そこらの学校から引き抜かれた者達
少なからず連邦生徒会に文句があるものたちやメシドに惹かれた者達で構成されている

メシド自身による訓練実施により一人一人が無視できない存在になっている


武器はカスタムMP5、カスタムSPAS12等の銃器を使用
どれもこれも特殊部隊向けにカスタムされており一人一人に合わせてカスタムが施されている

居る要素に入れよ

  • 晴らせコラ!
  • 色彩の先導者
  • アビドス編
  • 色彩「コイツやだ!小生やだ!」
  • 全部書いて♡かけ(豹変)
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