「ようやく来たか、ハンク」
「少しゴタゴタがあって遅れた」
依頼にあった集合場所に訪れる
ブラックマーケットの薄汚い小屋のような場所に入る
そこにはそこらにいるロボットの大人だった
見飽きた依頼主だ、と言っても見飽きたというのはどいつもこいつも同じような顔をしているからだが
「要件は分かっているな」
「例の箱、護送だろう?分かってる」
依頼内容はとあるものの護送
まず指定した地点に行き輸送人と顔合わせをする
そこから届け先まで護送するといった感じだった筈だ
とある物の詳細については伝えられていない
「理解が早くて助かる」
「傭兵業界じゃ周知の事実だ」
こんなことをするより連邦生徒会を襲った方が何倍も稼げる気がする
機密金庫だったかなんだったか、一度襲って破壊した時は清々したものである
勿論その時はアビドスの人間でも無かったから高校の名前に傷が付くことも無い
「それじゃ、ぱぱっと終わらせてくれ…こいつは前金だ」
「太っ腹だな」
依頼主はアタッシュケースを取り出すと中身を確認させてくる
そこには依頼額以上の札束が詰まっていた
…こんなに前金を出してくるとはなんとも太っ腹である、珍しい
あっても2、3回くらいだったかな?
そう思いながら目星程度だがどのくらいあるか見てみる
あの厚さだと…あれくらいか
それでいてこの数だから…
ざっと見積って1000万クレジットくらいだろうか
借金返済の足しにはなるだろう
全然減らないがまぁ、無いよりかマシである
パタリとアタッシュケースを閉じて依頼主の目を見る
「確認した」
「うむ、いい結果を期待している」
アタッシュケースを受け取るとそのまま俺はそこを後にした
これ以上その場にいる必要も無いし、この金を借金返済に当てなければならない
そう思いながらそこを立ち去ったのだった
さて、俺はセーフハウスに戻り装備を整理した
SFガンだけでは手札不足が否めないのでFALやVector9等の銃器も持っていく
勿論グレネード類も忘れない、忘れてなるものか
ここで思ったことがあるだろう?
『なんでテメーそんな重装備なんや?と』
簡単に言ってしまえばこの仕事が「騙して悪いが」形式のものであるからである
たまーに、本当に偶にこういった依頼が舞い込む
因みにそこの判断基準は前金かそうでないかである
前金が依頼額より大きいのはおかしい、普通ありえない
何か特殊な事情があって前金を払う…というのは大体ろくでもないことだ
護衛任務、やけに高い前金、怪しい依頼主
もうスリーアウトである、野球なら出禁もいい所
因みにこういった依頼を俺は2、3回しか受けたことがない
最初は素直に騙されてしまったが流石に俺も学習しない訳では無い
あっつい砂漠をサバイバル技術で乗り越え、会社ごと潰してやった
カイザーの子会社だったのを俺はよく覚えている
さて、今回はどんな相手が来るかな?
俺の最高記録は戦車大隊だ、ありゃとても楽しめた
後相手をぶちのめしたら会社も潰そう、ユメたちも連れて
〇
「…ククク、怪しみもせずにこの任務を受けるとは」
メシドが去った部屋の中、男は笑う
彼はカイザー子飼いの会社にて社長をしている人物である
今の彼のモニターには素晴らしい程悪い顔をしている顔面が表示されていた
彼の後ろから銃をもった2人のオートマタが現れる
「良かったのですか?あのまま逃がして」
「良いとも、ここで殺せないよりは確実に殺せる時に殺した方がいい」
オートマタの質問に対して社長はニタリと笑いながら言った
彼はメシドを始末できると、本気で思っているようである
「依頼額は多大、そして前金はそれよりも大きいと来た!
相手が油断しないわけないだろうガハハ勝ったな!!!」
「風呂は用意してあります」
豪快に笑いながら彼は通信端末を手に取った
そしてとある番号を入力する
ツーコールの後、相手が電話に出た
『はい、こちら"C&C"…お掃除なら承っております』
「掃除を頼みたい、メイド」
…彼は全く下調べをしていなかった
自分が雇った護衛がどのような人物であるか
どの程度の強さがあるか、神秘の量は…
…これに限っては、この男のミスであった
〇
「…大丈夫なの?」
「大丈夫だ、だから離れろバカ」
時間は進んで夜、満月が空に浮かんでいる時間帯
メシドはユメに粘着されていた、文字通り、粘着されていた
「心配だよ、私は君が帰ってこないんじゃないかって」
「そんなことは起こりえないから安心しろって」
メシドは何度もユメを慰める
しかし彼女はそんなメシドの言葉を受けても心配せずには居られなかった
なぜなら、ユメにとって彼は己の全てともいえる存在だったからだ
「…死んじゃったら、元も子もないんだよ?」
「そんなこと言わ────────」
ユメが儚げな笑顔で言った
メシドがそれを否定しようとするが、彼女の所作を見て言葉が詰まる
同時に、有り得ないとも思った
…ユメは、自身のお腹をさすっていた
まるで、そこに命が宿っているかのように
「…一体…いつか、ら…」
声がかすれているのが自分でもわかった
理解したくない事だった、少なくとも、メシドは理解したくなかった
「…昨日、検査薬使ってみたらね」
「… 。」
絶句
俺は言葉にならない声を声帯から鳴らしていた
完全に乙女の顔をしたユメは懐から例の検査薬を取り出した
受け取る必要もなく、彼女は見せてくれた
そこにはもう疑うまでもない綺麗な線があった
(…ガハッ)
一瞬目眩がした
それを何とか気合いで乗り切り首をブンブン振る
そしてそれ以上に…
「尚更お前を連れてけねぇよ!?」
「…大丈夫、キヴォトス人は丈夫で…その中でも私はかなり硬いし」
「そういう問題じゃあ…」
ニコニコと笑顔で彼女は言った
しかしメシドからすればそういう問題では無い
彼女の持っている武器柄近接戦闘が多い
もしそこで神秘を込められた蹴りを腹部に受けられたらどうするのか?
…まず俺がソイツをぶっ殺す
「…ねぇ、お願い」
彼女は、頭を下げた
深く…まるで自分が悪いかのように
…悪いのは俺だと言うのに
「……、……分かった」
「やったぁ!これでどこにも行かないね!」
かなり間を置いて俺は答えた
もう仕方なかった、逃げ道も良い訳もクソも無かった
それを聞いてユメは嬉しそうに盾を回し始めた
「ただし、無理はするなよ…頼むから」
「分かってるよ!それくらぁーい!」
ふんすと鼻を鳴らすユメを不安げに見る
しかし彼女は俺の様子を見てないようで「役に立てるぅ〜」ととても楽しそうにしている
…なんか、…良かったな…うん