魔術師が最弱って言った奴ちょっと来い   作:ユウタロス

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第4話

 扉を蹴り飛ばすと言うダイナミック過ぎる玄関の開け方に、仁郎の背後のヴィオが唖然としているが、仁郎は気にせずに靴を脱いでズンズン家の中に入っていく。それを見たヴィオが、遅れてはいけないと慌てて自分も靴を脱ぎ、仁郎を追いかける。

 仁郎に付いて歩くヴィオは家の中をキョロキョロと見回すが、一見した所で特に珍しいモノが見つかることも無く。そのまま仁郎は奥の部屋の前で立ち止まると、ナチュラルに扉を開けて中に入る。

 

「お〜お〜、α、2αと、共に戦い抜いた最愛の伴侶を捨てて狐幼女に走ったロリペドロ野朗のヒロ君じゃないですか。今度は幼女から中学生に乗り換えたんですか〜?」

 

 その部屋に居た、ダラダラと炬燵に入ってミカンを食べている金髪の少女は、仁郎を見るなり開口一番でトンデモナイ発言をしだした。ヴィオは、少女の口にしたその内容にドン引きした表情で仁郎を見ているが、仁郎は全く気にせずにヴィオに説明を始める。

 

「この、のっけから妄言垂れ流してる雌が暗野幸音(あんの ゆきね)。俺等と同じ転生者で、第一世代だ」

「雌とはなんだ、このロリコン野朗!!」

 

 仁郎の言葉に、炬燵から飛び出た幸音と呼ばれた金髪の少女はムキー、と憤慨しながら腕をぐるぐる回しているが、仁郎に顔を掴まれているせいで全く届いていない。そのまま暫く腕をぐるぐる回し続けていたが、いい加減不毛だと悟ったか、あるいは疲れたか。よじよじと仁郎の手を伝って仁郎の頭によじ登る幸音。2人共に全く動揺していないあたり、何時もの事のようである。

 

「ロリコンじゃねえ、好きになった相手がロリだっただけだ。あと、太らないからって引き篭もって食っちゃ寝食っちゃ寝ばっかしてる奴を、俺は女とは認めねぇ。悔しかったら表に出ろやヒッキー?」

「ぐぬぬ……私のファーストキスを奪っておいて…」

「え゛!?」

 

 仁郎の言葉に悔しそうな顔をした幸音の発言に、自分の身体を両腕で掻き抱いて仁郎から距離を取るヴィオ。仁郎を見るその眼差しは、まるでこの世の最底辺の汚物を見るかの様に冷たかった。

 

「アレは『非常事態だからノーカン』だって互いに了承しただろうが。つーか、今だから言うけど俺だってファーストキスだったん「えっ、ホントに!?」本当だよチクショウメッ!」

 

 半ギレ気味の仁郎の言葉にかなり食い気味に反応する幸音。さっきまでの死んだ魚の様な目が嘘の様なキラキラと輝く瞳で仁郎を見ている。

 

「そっかそっか〜、仁郎もファーストキスだったか〜にゅふふふふ♪」

 

 仁郎に肩車されながらご機嫌な様子の幸音。それを見たヴィオは、ますます2人の関係が分からなくなって首を傾げている。そんなヴィオを尻目に、コタツに入った仁郎はミカンを剥き始める。幸音は仁郎の頭から降りると、いそいそと仁郎の膝上に座り込んでゴロゴロとくつろぎだす。

 

「どうしたヴィオ、コタツ入んないのか?」

 

 仁郎を警戒していたヴィオだが、冷静に考えれば仁郎が本当に幼女や少女に手を出す様な鬼畜ロリペド野朗なら、昨晩のあたりにとっくに美味しく戴かれている筈だろうと思い直して炬燵に入る。炬燵に入った途端に脱力しているあたり、例え身体が変わったとしても、日本人は炬燵の魔力には抗えないのだろう。

 

「……あの、お2人はどういう関係なんですか?」

 

 炬燵の上のミカンを仁郎が手に取り、幸音が一瞬で皮を剥き、2つに分け合うという無駄に洗練された無駄のない無駄なコンビネーションを見せる2人に、ヴィオが問い掛ける。

 

「ん〜? 別居夫婦」

「妄想乙。戦友兼相棒」

 

 噛み合っている様で、微妙に噛み合っていない2人の発言に益々首を傾げるヴィオ。そんな様子を見た仁郎が少しばかり補足する。

 

「昨日も言ったけどさ、α大戦と2α大戦あったでしょ? その時に幸音と一緒に戦ったんだよ。キス云々はその時にね」

「って言うかさ、この娘誰? 見た目からして転生者なのは分かりきってるんだけど」

 

 ヴィオの方を見ながら首を傾げる幸音。勢いのまま話していたせいで、未だに自己紹介をしていなかった事に気付いたヴィオは慌てて幸音の方に向き直る。

 

「あ、すいません。私はヴィオ・ダークネスです。えっと、四鈴さん風に言うと第3世代です。昨日、別の転生者に襲われた所を四鈴さんに助けてもらったんです」

「んでまあ、家政婦代わりに家に置いてやる事になってな。今後は花が」

「え、何でよ? いや、ありがたいけどさ?」

「なんでって、お前禄に家事出来ないだろうが。花がいる時はいいとして、居ない時どうすんだよ。つーかお前、昨日の夜何食った?」

「ミカン」

 

 ちゃぶ台の上のミカンを片手にドヤ顔をする幸音。仁郎は、そんな幸音をもの凄く可哀想な人を見る目で見つめると、ヴィオの方に顔を向ける。

 

「まあ、ご覧の通りのダメ人間でな。普段はもう一人の同居人の高知 花(たかち はな)って言う娘が家事やってるんだけど、その娘が居ないとこのザマなんだよ」

 

 そう言うと仁郎はヴィオの肩をポンと叩く。ヴィオとしても、掃除対象の家が女性なのは気が楽なので甘んじて受け入れている。そこに(一応)家主である幸音の承諾が入っていないあたり、この家における幸音のヒエラルキーがよく分かる。やがて、仁郎は幸音を膝上から降ろして立ち上がる。

 

「要事も済んだし、そろそろお暇するか。四鈴仁郎はクールに去るぜ」

「え〜? もう帰っちゃうの〜? 今日は泊まってきなよ〜! 私、久しぶりにヒロのご飯食べた〜い!」

「今九重が家に居るから駄目」

 

 幸音が泊まっていくように言うが、現在は九重を預かっているのでそんな事は出来ない。その為に、キッパリと断ったのだが。

 

「またか! またあの狐幼女なのか!? 私の何がそんなに不満なんだ!? どっちも似たような体型だろうが!! 将来性か!?」

 

 九重の事を口にした瞬間、幸音がブチ切れる。豪快に炬燵をちゃぶ台返しすると、仁郎の足にしがみついてギャーギャーと喚き始めた。ヴィオが慌てて炬燵とミカンをトランスで髪を操ってキャッチしている中、仁郎は足の幸音を引き剥がそうと躍起になっている。だが、膂力は幸音の方が遥かに強いらしく、全く離れない。しばらくすると、今度はメソメソと泣き始める幸音。

 

「ひっく……ぐす……久しぶりに会ったのに……いつも九重の事ばっかり……」

「あ〜も〜、分かった分かった! お前も家に泊まって良いよ、それで良いだろ!?」

「……うん……」

 

 流石に本気で泣かれると堪えるのか、仁郎が妥協案を提示した所、ようやく幸音が泣き止んだ。すっかり蚊帳の外になったヴィオは炬燵とミカンを抱えてオロオロしていたが、幸音が泣き止んだのを見て、ホッとしている。

 

「ハァ…しゃあないなぁ、もう……ヴィオは先に家帰っててくんない? 道は分かるでしょ?」

「あ、ハイ、大丈夫です!」

「うん、じゃあ頼むよ。はいコレ家の鍵「あ、大丈夫ですよ、鍵なら持ってますから!」…え? なんで持ってんの?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「トランスで鍵穴探って作りました!!」

 

 まるで獲物を捕まえてきた犬の様なドヤ顔で金色の鍵を見せるヴィオ。シッポが生えていたら千切れんばかりに左右に振っている事だろう。仁郎と幸音のドン引きの表情には全く気が付いていない。

 

「……ヴィオちゃん、後で私にも一本鍵を「出禁にされたいか?」ヴィオちゃん、勝手に人の家の鍵を偽造したら駄目でしょう!」

「……あ! あ、あわわわわ……ど、どうしましょう!?」

 

 今気が付いた様なヴィオに思わず溜め息を吐く仁郎。アワアワと狼狽えているヴィオをジロリと睨み付け、若干語気を強めて言い放つ。

 

「…まあ、取り敢えず今日は何も見てない事にしとくよ。次は無いよ?」

「ご、ごめんなさい……」

 

 仁郎に忠告されたヴィオは肩を落としながらトボトボ仁郎の自宅へ歩いて行った。そうしてヴィオが去ってから少し経ったところで、幸音が真剣な表情で仁郎に問いかけた。

 

「それで、どんな奴なのよ? ヴィオちゃん襲った転生者って」

「見た目ミスのブスで紅椿装備。多分ライダー」

「あー、逆恨みのパターンね…場所は?」

「京都のどっか。手伝ってくれる?」

「当然。ココ(京都)で好き勝手する様なアホは―――ブチ殺してやりましょう」

 

 先程の腑抜けた笑顔とは比べるべくも無い、凄絶な笑みを浮かべる幸音。その瞳は妖しく黒と金に輝いている。

 

「落ち着け幸音、昂り過ぎだぞ」

「あ、ゴメン。それじゃ、早速狩りにいきましょうか」

「ん、オッケー」

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

「ハァ、ハァ、ハァ……!」

 

 高速で森の中に飛び込んだ紅い影――紅椿。朱漆の様な深い紅色に金色の蒔絵で手脚を飾っていた絢爛な機体は、見るも無惨な有り様となっていた。右脚の装甲は粉々に砕け、腰部装甲も罅だらけ、背部のバインダーは中程から断ち斬られ、機体の至る所から火花とスパークが散っている。

 

「クソッ! クソクソクソクソクソッ! 何なのよ、あのバケモノは!? 有り得ない、有り得ない!! なんでハイパーセンサーに映らないのよ!?」

 

 悪態をつきながらも身を低くしながら、必死に高速で逃げ続けている。だが、そこから数百メートルも移動した地点で突然機体が停止。全く動かなくなる。

 

「!? な、何!? 何なのよ!? 動きなさいよ、この不良品がッ!!」

「全く、チョロチョロチョロチョロ逃げ回って…手間かけさせないでくれないかしら?」

「ひっ!?」

 

 足元からの声。見れば、自分の影からヌルリと金髪の少女―――幸音が這い出して来る。その光景を目の当たりにしたライダーはひたすらガムシャラに身体を動かすが、紅椿は一向に動かない。

 

「ハイハイ、無駄な抵抗すんな。IS如きじゃ、ヒロの糸は切れないわよ」

「いやああああああッ!! た、助け、助けて!! なんで、なんで!? なんでアタシがこんな目にぃぃぃイィ!?」

 

 幸音が右手に光の剣を生み出し、振り上げると、ライダーは錯乱して喚き出す。だが幸音はその言葉に一切取り合わず、こう言い放つ。

 

ココ(京都)じゃなかったら見逃したんだけど…運が悪かったわね?」

 

 『運が悪かった』たったそれだけの事で殺されるなど冗談ではない。ライダーはそう叫ぼうとしたが、その時にはもう、頭は首に繋がっておらず。コヒュッという空気の漏れる音と共にライダーの意識は消え失せた。 

 

 幸音は頭の無くなったライダーの骸から待機状態になった紅椿をもぎ取ると、右手の剣を振り回し、ライダーの骸を完全に消し飛ばした。

 

「あ、終わった?」

「うん」

「そっか…じゃあ、帰ろっか」

「りょ〜かい。所で、コレ(紅椿)どうしようか?」

 

 数分後にやって来た仁郎に、回収した紅椿を見せる。仁郎はソレを見て少し考えた後、使えるのならば高速飛行が出来ない幸音に使う様に言う。幸音はソレを聞いて本当に貰って良いのかと考え込むが、仁郎は全く構わないと言い放つ。無論、コレには理由がある。仁郎は男なのでISは使用できないのだ。彼がライダーだったら話は別だったのだろうが、生憎、仁郎はキャスターである。試しに起動しようとしてみたが、やはり動かなかった。

 

 それに、と仁郎は続ける。

 

「ぶっちゃけ自分で飛んだほうが速い」

 

 そんな訳で紅椿は幸音が引きとる事になったのであった。

 

 

 




転生者NO.7:暗野 幸音
クラス:???
真名:???
特典:???
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