鬼殺隊は異常者の集まり(ガチ)   作:バケギツネ

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必ず戻す 人間(?)に

 

 

 鱗滝という人物を訪ねて、狭霧山を目指す竈門一家。辺りが暗くなり始めた頃、彼らはその隣山まで差し掛かっていた。

 

『狭霧山に行くなら、この山は越えなくちゃいけないけど...そんな一軒家、背負って行くのかい?危ないよ。』

 

『十分気をつけます!ありがとうございました!!』

 

 途中で出会い、至極真っ当な心配をしてくれた女性にお礼を言って、山小屋を担いだ炭治郎は先を急ぐ。

 

『人が“行方知れず”になったりしてるからね!迷わないようにね〜!』

 

『はい、本当にありがとうございました〜!!』

 

 

 そのまま進み続けていると、空の色が完全な黒へと変わり始める。既に月が出ていて風も冷たくなっていた。

 

『よいしょっと!』

 

 炭治郎は背負っていた山小屋を静かにその場へ下ろすと、自らもその中に入っていった。

 

『今日はこの辺りで、休憩しよう。続きは明日、日が昇ってからだ。皆、ゆっくり休んでくれ!』

 

『『『『『『うぅ〜!...zzzzz』』』』』』

 

 6人が眠りについたのを見届けた炭治郎は、周囲を警戒して山小屋の見回りを始める。

 

 生まれつき頑丈な竈門一家が、狼や熊如きに遅れをとるなどとは、炭治郎も思っていない。

 

 ちなみにだが、昔から炭治郎の姿を見た動物は尻尾を撒いて逃げ出す事が多かった。たまに自らの力量を見誤った未熟者が彼に戦いを挑み、竈門家の晩ごはんに一品を加えたりする事もあったが。

 

 話は戻る。炭治郎は警戒していたのは、

 

『っ!血の匂い!!』

 

 嗅覚に覚えのある炭治郎は、それを敏感に察知する。

 

 灯りの漏れている近くのお堂から、幸せを壊す生臭い香りが漂っていた。

 

『まさかっ....!』

 

 炭治郎はすぐさまお堂に駆け寄って、その襖を開ける。

 

『あぁん?ここは俺の狩場だ。邪魔すんな!!』

 

 そこにいたのは、人ならざる怪物。

 

 一体の人喰い鬼が、お堂の主と思われる三人家族にその爪を突き立てていた。父親と母親は脳を抉られ、まだ身体の小さな息子に至ってはその心臓を抉り出されている。

 

『酷い。何てことを...!』

 

『ん、待て。お前人間か。人間だなぁ!!』

 

 一方、来訪者の正体に気づいた鬼は、すぐさま炭治郎に飛び掛かり、アッパーを喰らってお堂の天井にめり込んだ。

 

『ん、待て。お前ホントに人間か?人間のはずだよなぁ!?』

 

 恐ろしく疾いテンポ感で無力化された鬼に対し、炭治郎は必死で頭を巡らせていた。

 

 目の前にいるやたらとイケボな鬼の匂いは、家族を襲った犯人のそれとは違う。どうやら人喰い鬼は沢山いるらしい。

 

『トドメを刺しておかないと、コイツはまた人を襲う!なら、俺のやるべき事は』

 

 金剛石よりも硬いその頭で、炭治郎は次にやるべき事を考えた。彼の拳ならば、一撃で鬼の身体をポップコーンのように爆散させる事が可能だろう。

 

 しかし、もしそれで鬼が死ななかったら。その答えを知る術は今の炭治郎にはない。

 

 彼は優しすぎたのだ。

 

 その心は鬼にすら同情を抱き、相手を無駄に苦しませるかもしれない行為を躊躇させる。

 

『俺は......』

 

 炭治郎がモタモタと考えているうちに、お堂は徐々に元の明るさを取り戻す。夜が明けて、太陽の光が差し込んできたのだ。

 

『おい、嘘だろ!?日の光が....ぎゃああああああああ!!!』

 

 屋根から突き出ていた頭部に日光の直撃を受けて、人喰い鬼はジタバタともがきながらその身を焼かれる。程なくしてその身体は、ボロボロになって崩れ落ちた。

 

『日に当たっただけであんな...禰豆子達が嫌がるわけだ....!』

 

 初めての敵の死に様に呆気にとられていた炭治郎だったが、やがて冷静さを取り戻す。彼は鎮痛な面持ちで、鬼によって殺された3人家族の元へと歩んでいった。

 

 炭治郎の中で、その光景に昨晩の惨劇が、血だらけになった家族達の姿が重なる。

 

『すみませんでした。俺はいつだってそうだ、遅すぎる。もっと早く、ここへ来れていれば...』

 

 その場に膝をついた炭治郎は自らを責めながら、彼らの冥福を祈って手を合わせた。

 

 それと同時に、倒れていた3人家族は立ち上がる。

 

『いえ、私達が助かったのは、貴方が来てくれたお陰です!』

『本当にありがとございました!なんてお礼を言っていいか!』

『でっかいお兄ちゃん、強いんだね!!』

 

 彼らは口々に礼を述べていた。

 

『皆さん!?傷が酷いから動かない方が...特にキミ!心臓がまろび出てるから、急いで医者に...』

 

 どう考えても致命傷の3人を心配する炭治郎だが、それとは対照的に彼らの態度は落ち着いたものだった。

 

『ああ、平気ですよ。さっきまでは死んだふりをしていたんです。』

『それに私たちの一族は、少し身体が特殊なんですよ。』

『生まれつき、脳と心臓が8つあるんだ!だから、一つくらい無くなっても大丈夫!』

 

『8つも!?それは凄い!!』

 

 彼らが本当にピンピンしている事を知り、張り詰めていた炭治郎に安堵の気持ちが溢れ出す。

 

『とにかく良かった。皆さんが無事で本当によかったです...!!』

 

 炭治郎の中で、3人の姿に再び自分の家族が重なった。笑顔で寄り添い合う彼らを見て、炭治郎は改めて、自らが取り戻すべきものの尊さを噛み締める。

 

『そうだ!俺、家族の元へと戻らないと!皆さん、お元気で!』

 

 3人へと手を振りながら炭治郎は急ぐ。自らを待つ家族の元へと。

 

 

 




【大正コソコソ噂話】

 実は、お堂の側までやって来ていた鱗滝さん。完全に出るタイミングを見失っている。
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