ミレニアムムジカクテンセイシャ、または異物混入
剣と魔法があった時代、『風』『水』『火』『土』のクリスタルの力が世界そのものを支えた世界があった。
『風』のクリスタルが壊れた時、風が止み。
『水』のクリスタルが壊れた時、水は濁り。
『火』のクリスタルが壊れた時、エネルギーが取り出せなくなった。
『土』のクリスタルが壊れた時、大地は枯れ果てた。
クリスタルを破壊し、世界を支配しようと暗躍した"邪念"は4人の英雄の手により滅びた。
英雄が英雄への階段を駆け上がっている頃。
洞窟の奥底、滝の裏側で機能を停止した機械があった。
その機械は1,000年以上前のもの。ファンタジー物では、もはやお約束といっても過言ではない超古代文明。
空に町を浮かべて、空と海に対応した飛空艇を作り、ワープ装置を製作した超古代文明。
最終兵器『
ゲームの世界の中で余りにも長居しすぎたそれは、あるキッカケから"機械の体"から"情報の塊"へと変わり、ある少女の神秘として宿った。
☆
ここはミレニアムサイエンススクール。
キヴォトスの科学技術を担う「最先端」「最新鋭」を担う3大学園の1つ、ミレニアムサイエンススクール。
千年難題に立ち向かう学生兼研究者が集まる学園、歴史が浅いもののキヴォトスに影響力を持つ3つの学校の一角。
自治区内をモノレールが走り、自治区内で発電所やデータセンターのビルを持ち、最新工作機械を備えた実習センターなど先端科学のインフラが揃っている。
最新の環境の中で若き天才たちが日夜研究に力を入れている。
こんな科学技術の先端を走る学園に吸い込まれるように超古代文明の神秘を持つ少女が入学した。
ある日の夜。
数多の新入生を迎え入れたミレニアムサイエンススクールに大雨が降り雷鳴が空を轟かせた日。
この日、ミレニアムサイエンススクールに入学したての新1年生、音無イシュは自動販売機の横のベンチに座りこみ、膝を抱えていた。
自販機に背を預け窓を叩く雨を眺める。
雷鳴が轟く度にイシュは身を縮こませ、黒い空を不安げに見上げる。
黄色い円に、球体を上下半分に割り、上半分の膨らみに横線が2本、均等に配置された4本のドラゴンの鉤爪のようなものがついたヘイローも心なしか小さく見える。
高校生にもなって雷が怖いのか、スンと鼻を鳴らし、不安そうな瞳で当たっては流れていく雨粒を眺めていた。
時折響く雷鳴に体を震わせ、抱きしめた膝をさらに強く抱きしめて体を丸めていく。
その時、偶然通りかかったのは、藍色の髪をツインテールにした早瀬ユウカだった。
「ねえ、あなたどうしたの?大丈夫かしら?ってイシュ?」
「……ユウカ」
「ちょっと!泣いてるじゃない!どうしたの?」
「雷が……怖くって……」
「仕方ないわね。私の部屋に来る?」
「うん……ごめんなさい」
「いいのよ、明日も早いわ、早くいきましょう」
膝を抱えて鼻をスンスンさせ、潤んだ黄色の瞳でユウカを見上げてからユウカの腹に顔を埋めて、両手をユウカの腰に回して抱きしめた。
ユウカの手は自然とイシュの頭に手を伸ばすと優しく撫でていた。
あちこちでケンカを引き起こす腕白な少女でありながら、雷の夜に震える姿はギャップに溢れていた。
ユウカがイシュを抱きしめて気付いたのが、少女の体は震えていたところ。
「(震えるくらい雷が怖いのね……)」
口では文句を言っても、結局は相手のことを想い、世話を焼く。それを自然とできるのが早瀬ユウカ。
後にミレニアムの母と呼ばれる生徒、ユウカはオカン力を発揮し少女を抱きしめて眠りについた。
☆
イシュにとって雷の夜はいつも同じだった。
足元が崩れていきそうな不安感、そして必ず悪夢を見る。
悪夢は必ず男性1人に女性3人の4人組と相対し、雷の力を纏った、全員が刀剣や槍、ナイフといった旧時代の武器を振るわれる夢。
洞窟の先、滝の近くで徘徊する"自分"と意図して接触してくる旅人らしき4人組。彼らはそれぞれ、武器を携えていた。
不思議な歌を聞かせられて停止させられて雷の神秘で機能停止に追い詰められる夢。
特別に電圧が高い、
また意図して魔法のような雷の神秘を反射し、壊される夢。
たくさんの夢を見るが全ての夢に共通するのは全て『雷で自分が壊れる』夢だ。
イシュも夢だと分かっている。夢であると分かっているのにまるで自分がその場に"いた"と錯覚する夢。
雷の夜は『雷の神秘で自分が壊される夢』を想起させる。機械の体が壊される痛みを思い出す。
自分が4足で動き、火炎放射をして、吸収されて。
砲撃で相手の体力を削りながらカウンターで爆弾を投擲、
勝てそうな時は世界が反転し、負けると自身が機能停止をする。彼らは独自の"攻略法"でこちらを攻略してくる。勝つのは容易ではない。
また、旅人風の4人組のパーティーではなく、もっと多い人数と戦う時もあった。
時々ドラゴン?と戦い、空中戦をしている時もあったりするのだが、その時はどのように戦っても相打ちになり、一時的な機能停止に追い詰められる。
このような戦いが眠っている間続く。これ自体は精神面、肉体面でも決して良いことではない。
ないのだが、度胸をつける、戦闘経験を積むという意味ではそれなりに有用でもある。
イシュは自身を"ブラックマーケットやゲヘナで好き勝手に生きていけるほど強い"と自覚している。
戦闘に対しての躊躇をなくし、強者との戦闘を求めて自らケンカを売りに行く程度には戦闘を楽しんでいる。
戦えば戦うほど強くなっていっていると自覚がある。
キヴォトスには強者が多くいる。前線で戦うもの。前衛、後方で支援や攻撃をするもの、後衛。
彼女たちは多くの技術と経験を持ち、彼女たちと戦いそれらを自身のものとすることで更に強くなれる。
夢の中の彼らに勝つにはより多くの戦いを熟し、進化といわれるほど強くならなければならない。
イシュは『夢の彼ら』に勝つことが出来た時、悪夢は終わると信じている。
☆
音無イシュ。
一言でいうなら問題児だ。成績については平均より低いが補習には引っかからない程度の低空飛行。
身長140cm、体重XXkg、15歳、誕生日は12月6日、好きなことは洞窟と廃墟の探検、嫌いなものは雷。
中学時代から不良狩りでお小遣い稼ぎをして、キャスパリーグや後のジャブジャブヘルメット団の河駒風ラブなどとの交戦経験もある。
撤退戦でありながら剣先ツルギから何とか逃げ切ったこともあった。
当時は正義実現員会の委員長ではなかったツルギだが、深追いしてまで追う価値を見出せず、見逃されたのが真相なのだが。
強いヤツと戦うために他の自治区にも足を運び、状況次第では戦闘行動も起こす中々の問題児。
ミレニアム生全体での問題児については諸説あるが、1年生に限れば4人に収まる。
トラブルを起こしては捕縛命令が出る生粋のトラブルメーカー黒崎コユキ。
賭場の開帳、他の部活への襲撃の
グラフィティと称し壁などにスプレーで落書きをする小塗マキ。
最後の一人、音無イシュはというと、入学式の日の午後にはミレニアム最強の
問題児カルテットの一角のマキは所属している部活の先輩のチヒロママが保護者をしているが、コユキ、モモイ、イシュはユウカママが保護者にあたる。
☆
戦場となったミレニアム郊外はまるで戦場というより凄惨な爆心地といったところだった。視界に映る大半のもので無事な姿を確認できるものはなかった。
あらゆる施設が壊され、崩れかけた建物は大方破壊されており、大地には大穴が空き、亀裂が走っていた。
また崩れかけの建物でさえも大方均されていた。人の形で穴が空いた建物や煙が立ち込める郊外に降り立ったユウカとノアは、この光景をたった2人で引き起こした人物のことを思う。
1人はミレニアムの最大戦力、Cleaning&Clearing、略してC&Cのリーダーであり、『
もう1人は新入生。中学生の時にお小遣い稼ぎと称して不良狩りをしていた無名の生徒。
満身創痍のダブルオーの足元には気絶した生徒が倒れ込んでいる。足首を掴んだまま気絶しているところからみても勝利への執念は相当なものだったのだと想像に難しくない。
昼食を済ませたあとミレニアム郊外までネルを呼び出した。
イシュにとって強いヤツと戦うのは、『強くなって夢で勝つため』だ。強いヤツと戦うのが楽しい。それが理由だ。
約2日間、43時間前に時は遡る。体躯が小さな2人が向かい合う。
赤寄りの橙色の髪色のショートヘアーにトレードマークのスカジャンの下にミニスカのメイド服を着込んだ、ちょっと目付きが悪い生徒。ミレニアム最強の
対するのは音無イシュ。淡い水色のショートヘアーに白いシャツと水色のネクタイ。水色のラインがワンポイントの黒いスカート。オーバーサイズのアウターを着込んだ生徒。ミレニアムの生徒の標準的な制服。
小さい方の少女、イシュの周囲を飛び回る球体は"ロンカ"だ。
イシュが自身での手で作り上げた4機の砲台が飛び上がり、イシュの周囲を飛び回る。
ミレニアム最強の美甘ネル、新入生の音無イシュ。2人は向い合い、言葉を交わす。
「よう、あたしをこんなところにまで呼び出したのはあんたか?」
「うん。ミレニアム最強と戦ってみたかったから。ミレニアムの最強を知りたいから」
「殊勝なこった」
「美甘ネルは強い、って不良達が言ってた。だから確かめる」
「良い心がけだ。良いぜ、最初は譲ってやるよ。遊んでやっから簡単に気絶するんじゃねえぞ」
「うへへ、楽しみ。まさか新入生に負けるなんてこと、ないよねぇ!」
イシュは接近戦を想定して持ち込んだショットガンに実弾を込めて撃つ。
ネルは口角を上げ、楽しげに嗤った。
ネルの顔面目掛けてイシュが放った1発が戦いが始まった。
この戦いは御前の試合ではない。
初弾から受ける必要などない。ないのだが、1年の"クソガキ"相手に引いてやれるほどネルは"大人"でもない。
持ち前の機動力で足の動きだけで音もなく横にずれる。たったそれだけで、ショットガンの範囲から抜け出した。
お返しとばかりに、両手に持った、鎖で繋げたサブマシンガン、ネルの愛銃のツイン・ドラゴンを容赦なく撃ち込んでくる。
ネルによる挨拶代わりのサブマシンガンの掃射でも、イシュの耐久力を貫くのは難しい。
「へぇ、いいサンドバッグになりそうじゃねえか」
「ロンカ、砲撃支援を開始して」
イシュの声に反応した青白い光線が4機同時に放たれた。
まっすぐに伸びた4本の光線のうち、2本はネルの左右を走り、残りの2本はネルの数十センチ手前から大地に縦穴を開けながらネルに迫っていく。
人体など簡単に焼く光線はネルの衣服の一部を消し飛ばす。
「はっ!当たらねえ攻撃なんざ怖くもねえよ」
「いらっしゃい」
ネルは跳んでみた。誘われているくらい、ネルには分かる。
豊かな筋肉が軽い肉体を空へと押し上げる。膝を曲げ、少し力を込めて跳ねただけで、空中で宙返りができるくらいには飛べる。
ネルは空中でイシュの顔を眺めながら、サブマシンガンのトリガーに指をかけて、引く。
「ちったぁ暴れがいがあるじゃねぇか!」
イシュに降り注ぐのはサブマシンガンの雨あられ。サブマシンガンの実弾を浴びながらもイシュは薄く笑う。
当然とばかりにショットガンの銃口をネルに向けていた。
ドォォン、ドォォン
イシュのショットガンは自身の神秘を込めて撃ち込む。
発砲音に紛れてネルの舌打ちが聞こえてくるが、イシュは気にしない。
「当たらねえよ!オラオラオラオラ!」
ネルは着地し、足払いを仕掛けてくるが、イシュはバク宙でネルの足を躱す。
おまけとばかりにネルは銃弾をばら撒いていき、隙を見て弾を吐き出しきったマガジンを落とし、新たなマガジンを装填していく。
イシュも同じくショットガンに弾を込め、撃とうとするが、既にネルは目の前にいて……。
「逃げねえのは褒めてやるよ」
「うん、偉いでしょ」
ネルの心に激情が灯る。ネルの中で眠る破壊衝動が顔を覗かせようとしていた。
元々は乗り気じゃなかった呼び出しだが、新入りがミレニアム最強のネル相手に戦おうというのだ。心躍らないわけがない。
十把一絡げの不良たちよりも強く、戦えば満足できそうな相手。
ネルにとって"銃だけを使っている"内はじゃれ合いの範疇にある。
破壊衝動が顔を覗かせる時、遊びは遊びじゃなくなり、"じゃれあい"の範疇から外れようとしていく。
そんな楽しい"遊び"の中、ネルの足元に何かが転がってくる音がした。
足元を見れば、白い爆弾。イシュ特製のマスタードボムだ。
どおおおぉぉぉぉん
大地にクモの巣状のヒビと二メートル程の大穴を開ける爆弾はイシュ特製のもの。
イシュに目を向ければ、避けれるものなら避けてみろとばかりにニヤリと笑っていた。
爆発に巻き込まれたネルは先程よりも宙高く飛ぶが、空中で簡単に姿勢を整え、地面に2本の線を引き、止まる。
追撃を与えようと、煤にまみれたイシュはネル目掛けて走り出すが、ネルから銃弾が飛んでくる。
先ほどと同じく全部受けきろうとしたが、イシュの足が止まる。
「いったぁー」
「おらおらおらおらおらおらぁっ!!」
ゲーム的な表現をするのならば、今のネルは激昂のサブスキルが発動し、ネル特有の怒り状態となり、攻撃力が倍増している状態だ。
1.5倍から1.7倍に膨れ上がったネルの銃撃の威力に、ツイン・ドラゴンから吐き出される60発もの連射がイシュに突き刺さる。
撃ちながら身を翻し、スカートに引っ掛けたマガジンを差し込みリロード完了。更に撃つ神業を披露しながらも、ネルの顔は油断なくイシュの動きを観察している。
「ロンカ、砲撃支援して」
再び4機から光線が放たれ、弾丸そのものを消し飛ばしていくが全てを消し去ることはできない。
銃弾の痛みがイシュを襲うが、悪夢のせいで痛みには慣れている。
一歩歩けば半歩引く。そんな膠着した戦闘の中、イシュの手には白い爆弾が握られていた。
机上の空論ともいうが、ゲーム的な相性でいうならば、ネルとイシュの相性は最悪で最高だ。
ネルは貫通攻撃を得意として、軽装備だ。対するイシュは爆発攻撃を得意として、弾力装甲だ。
軽装備であるが故に爆発の攻撃に弱く、貫通攻撃は弾力装甲の弱点ではない。
つまり、イシュの攻撃はネルにとっての弱点で、ネルの攻撃はイシュにとって弱点ではない。
白い爆弾、マスタードボムで倒れなかったヤツはほとんどいなかった。
それだけ強力な爆弾なのだが、まだネルは倒れていないし、身のこなしからも微塵も衰えが見られない。
ケロリとしているネルを視界にいれるとイシュはニヤリと笑う。
ネルとイシュの距離は約10メートルほどだろうか。
互いに一足の距離、瞬き1つで詰められる距離。
イシュはマスタードボムをネルに放り投げて、ネルに近づいていくと自ら撃って爆発させる。
爆発は大きなもので、爆発音でイシュの足音を消し、砂煙でイシュの動向を隠す。
その間にイシュは動き出し、ネル目掛けて移動を開始する。渦巻く砂煙を目にしたネルは目の端に映った砂煙の違和感に反応し銃弾をお見舞いする。
が、そこにはイシュの姿はなく。
「こっち」
ドン、ガチャン、ドン
廃ビルを蹴り、空にいた。
1発撃って、リロード。そしてもう一発撃ったのちの青白い光線が四本走り、廃ビルが膾切りになった。
文字通り切れた廃ビルが崩れ、破片がネルに降り注ごうとしていた。
「はっ、そんなものかよ?」
「わーお。素敵。さ、続きしよ?これで終わりじゃないでしょ?」
顔を汚し、額から血を垂らしながらネルは口角を上げる。
そんな顔を見て、イシュもまだまだ笑う。
「ったりめーだろ。この程度で気絶してりゃ最強なんて名乗れねーよ」
「えへへ。まだまだ遊べるね」
「ああ、そろそろ"遊び"は終わらせても良いかもなぁ!」
そんなイシュの顔や体も小さな弾痕が残っている。
ショットガンに弾を込め、ネルに向ける。その前にネルのツイン・ドラゴンが火を吹く。
撃ちながら近づいてくるネルにイシュは躊躇なく発砲するが、ネルの足は止まらない。
それからネルの足がイシュの胴体に伸びてきた。
「うっそぉ!」
「はっ!ウキウキしてくるぜ!」
イシュの腹に響く衝撃。体内で爆弾が爆発したかのような違和感と不快感。
更に蹴りの勢いに任せてツイン・ドラゴンの鎖がイシュの首に掛かり、ネルの手でグイ、と体が引き寄せられる。
イシュの顔面に突き刺さるネルの両足。
歪んだ鼻から血を垂れ流し、更には激昂状態のままツイン・ドラゴンの60連発を受ける。
ネルの体捌きは流水のように美しかった。
これまでに積み上げた経験から根本的な体の使い方が違っていた。ネルは更に腕を引き、蹴りがイシュの腹に突き刺さる。
思わずくの字に折れるイシュの体、下がった頭に膝が突き刺さる。
「……くっ、はっ……」
「へぇ、やるじゃねえか」
イシュはネルの美しい体捌きと動きを学習し、乾いたスポンジのように技術を少しずつ吸収していく。
吸収して、実戦でもって最適化を図る。
「お返し」
振り上げのアッパーがネルに突き刺さる。
拳は確かな感触を返してくる。軽く浮き上がるネルの体。
イシュの経験不足から来る1発に力を込めた一撃。後の隙を考えない一撃。
「バーカ」
インファイトで接近した二人、地面に這うツイン・ドラゴンの鎖。
ネルがワンステップ分下がるだけでイシュは文字通り足元を掬われる。
決めるべき時に最高の一撃を入れる。それができなかったイシュは、このように経験不足を晒すこととなった。
地面に転がされたイシュ、マガジンを交換したネルのツイン・ドラゴンが火を吹く。
イシュが、これまでで出会った中での圧倒的強者の中では剣先ツルギに続いて2人目の相手。こんな相手にどのようにして勝つか。
ツルギに続いて勝ち筋が思い浮かばない相手。
イシュの頭は身近な強者の強さを体感し、新しい発見も多くある実りの多い日になりそうだと表情が綻ぶ。
転がって態勢を整え、ショットガンを構える。
「まだまだやろう。まだ足りない」
「おう、付き合ってやんよ」
ドォン、ドォン、ドォン、ドォン
腹に響く発砲音、イシュが持つショットガンの散弾がネルに刺さる。
ロンカの砲撃支援という名の光線で更にネルを追い詰めようとするが、ネルはアクロバティックな動きで全てを躱していく。
イシュはというと、ショットガンに神秘を込めて神秘弾として、ネルに撃つ。
お互いに口の端から血を垂れ流し、吐き出したツバには血と歯が混じっている。
美甘ネルは逆境の中でこそ強い。元々の強さが他の生徒とは頭1つ以上違う。土台が違う。C&Cのリーダーとして、勝利の象徴として培ってきた経験が違う。
経験の数だけ増える引き出し。それだけネルとイシュの引き出しの数は違う。
後に超高層ビルから落下しながら戦うなど、強さも根性も常軌を逸している。
ネルはイシュの土俵で戦い続けた。これまでの経験を駆使し、ダブルオーの名を胸に、誇りを掲げて。後に靭帯が切れ、10Gという極めて不利な状況であっても戦闘を継続することから「強さ」を伺い知れる。
イシュは食らいついているが、ネルにはこのバカな跳ねっ返りの1年生との戦いを楽しむ余裕がある。
ネルとイシュの差は大きい。数多の戦闘経験と戦闘経験が齎す余裕、それが大きな差だ。
イシュが投げてくる爆弾、普段は不良たちをキレイな放物線を描き吹き飛ばし、簡単にアスファルトを捲り上げ、地面に大穴を開けるマスタードボムを連投されても、爆発地点を予測し、極めて正確な射撃で爆弾そのものの位置を変え、時には誘爆させて。
時にはわざと当たって見せて急激に加速してみたり。
イシュはネルの行動一つひとつに振り回されていたが、フィジカルと負けん気で食らいついて見せている。
血を流しながら唇を歪ませて凶笑を浮かべながらもイシュに接近戦を仕掛けてくる様は一介の生徒とは違うのであった。
お互いの距離が5メートルほどの近接戦を何度も経て、神経を擦り減らし、肉体と銃を酷使していく。互いの血と肉の感触を覚えるくらいに肉弾戦と銃撃戦を交えた戦い。
イシュは何度か鎖に絡み取られて空を飛び、3階建て相当の建物に頭から突き刺さり体がめり込んでいく。
イシュは立ち上がるときに建物だったものを更に低くし、体から血を吐き出しながら表情は薄くとも楽しそうに笑った。
ほんの少し、牛歩のようにゆっくりだが、イシュはネルの技術を吸収していっている。
美甘ネルというキヴォトス最強の一角。相手に不足はない。何も考えずに、自らの全てをぶつけられる相手。イシュにとってこれほど喜ばしいことがあるだろうか。
もはや精神が肉体を凌駕して、体を動かしている状態であろうとも、身体を、神秘を最後の一滴まで振り絞って戦う。
「もっと、もっと。もっとあそぼ」
「おう、跳ねっ返りのクソガキを躾けるのはあたしの仕事じゃねえが。続けるんだろ?」
「もちろん。勝負はこれからだから」
「気に入ったぜ、クソガキ。名前は?」
「音無イシュ。ミレニアムの新入生でネルを超える生徒」
「イシュか。もう知ってるだろうがあたしは美甘ネル、ミレニアム最強だ。お前、C&Cに入れよ」
「考えておく。他の部活も見たい」
「自己紹介も終わったことだし、互いに弾切れ。後はわかるよな?」
「うん、もうこれしかない」
イシュは廃車のシートベルトを引き抜き、お互いの足首に巻いて殴り合うことを提案した。
気力だけで身体を動かしているイシュに対し、ネルは流血をしながらも、まだまだ笑う余裕すらある。
ネルは再び唇を引き上げ了承。ネルから余裕を読み取ったイシュはムッとしたのか、悔しそうに唇を突き出す。
弾丸が切れてからはシートベルトで互いの足首を固定し一方が気絶するまでお互い殴り合うデスマッチに発展した。
全身が腫れ上がり、赤い打撲痕や青あざで溢れかえり、治りかけていた傷が再び開き血だらけに。
顔は腫れ上がっており歯は折れたり欠けたり、鼻は何度も折れ曲がり、満足に目も開けやしない。
それでも2人は笑い続けて殴り合っていた。
殴り合いを始めて3時間ほど経っただろうか。とうとうイシュの意識が途切れそうになっていた。
ただでさえ気力だけで肉体を動かしていたのに、重い一撃を何度も貰い、何度も重い一撃をプレゼントした。
「はぁっ!!!」
イシュの意識が飛びそうになった時、気付けの大声を上げてネルに殴りかかろうとする、が。
足元が覚束ないままに放とうとしたパンチは血で滑り踏ん張りが効かず。
線香花火の散り際のような鮮やかな光が一瞬灯り、イシュの身体から揺れる。
イシュは膝から崩れ落ちて、黄色のヘイローが消えてイシュは気絶した。
結局イシュは自分の土俵の上に立っていたネルに勝てなかった。イシュはネルの足に手を伸ばして足首を掴んだが、抵抗はこれまでだった。
ネルは立ったままでヘイローは未だ煌めきを放っている。
戦闘時間は約2日間、厳密には43時間と18分。ネルとイシュは戦い続けた末に勝負は決した。
「あたしの勝ちだ。中々根性あるじゃねえか、イシュ。って聞こえてないか。たまにはこういうのも悪くねえ。ああ、本当に良い気分だ」
その後ネルからユウカママが属する部活であるセミナーとC&Cに連絡が入り、大慌てでユウカとノアを同伴したC&Cの面々がヘリに乗って郊外跡にやってきた。
顔面がボコボコのネルと気絶したイシュを回収してミレニアムに戻る。
イシュが3日後に目覚めた後待っていたのは怒り顔のユウカと無表情のノアであった。
この事件はミレニアムの新しいおバカ伝説としてミレニアムの歴史に刻まれることとはなかったが、後の聴取の記録からごく一部のセミナー所属生徒だけが知ることとなる。
好き勝手に振る舞う後輩たちが毎日引き起こす問題にユウカママとチヒロママは呆れたり怒ったり。関係各所に頭を下げに行ったり。
ママ達はお疲れ気味である。
チヒロママが所属する部活はヴェリタス。非公式の部活で、ホワイトハッカー集団を標榜する部活であり、セミナー、いわゆる生徒会とは反目の関係にあたる。非公式の部活のため、チヒロが営業で部費を稼いでいるため多忙の身だ。
対するユウカはセミナーの会計、チヒロはヴェリタスの副部長という立場がある身であるからこそ、多忙であるためカフェで愚痴る時間すらなかった。
崩しても崩しても積み上がってくる問題児たちの問題行動だが、ママ達はそんな可愛い後輩で問題児たちにも寛容であった。
☆
ぶかぶかのオーバーサイズのミレニアムサイエンスハイスクールを羽織るように着る生徒が一人、校舎内を探検するようにゆっくりと歩いていた。
淡い水色のショートヘアの髪に黄色の瞳、黄色のヘイローを持つ少女の名は。
「イシュ、ここにいたのね。連邦生徒会まで付き合いなさい」
「ユウカ……どうしたの?」
「近頃の騒動、あなただって知っているでしょう? その理由を連邦生徒会長に問いただしにいくのよ!」
イシュと呼ばれた少女を呼び止めたのは学校で生徒会に相当する部活、セミナーの会計の早瀬ユウカ。またはオカン。或いは問題児たちのママ。
連邦生徒会長の失踪の噂と各自治区における犯罪率の急激な上昇、違法武器の流通量の急上昇。
イシュはよくわかっていた。
イシュは趣味で洞窟や廃墟の探検をするが、以前と比べて不良の姿をよく見かけるようになった。
廃墟の方面にはあまり数はいないが、東丈山方面の洞窟に向かう道中では良く見かける。
彼女たちを捕まえてヴァルキューレに差し出してお小遣い稼ぎもできてイシュにとっては美味しい相手なのだが、趣味の廃墟と洞窟探検の時間が減るのでさもありなん。
ヘルメット団のような不良自体はどこにでもいるものだが、連邦生徒会長の失踪の噂とほぼ同時に湧き出てきたのだ。
イシュのごく僅かな思案顔。ユウカはミレニアムで立場がある役員だ。例え本人に戦闘能力があるといっても万が一があってはいけない。護衛をつけるのは当然だ。
と、イシュは自分を納得させて合法的にお小遣い稼ぎが出来そうな場所に向かう決意をする。
「うん、分かった。車を出すからタワーの入口で待ってて」
「あ、あまり飛ばさないでよね」
「うん、分かった」
ミレニアムタワー、セミナーをはじめとしたミレニアムの主要な部活や委員会が入っている巨大なタワーだ。
それだけにセキュリティも厳重であるのだが、ミレニアム生のイシュにとって正規の手段で出入りできる施設の一つだ。
それから数分してからだろうか。売店の裏に停めていたイシュの愛車がミレニアムタワーの入口に到着した。
プッシュボタンを押し、エンジンを起こす。エンジンに火が灯り、腹に響くマフラー音。
イシュの趣味なのかキヴォトスでは流通が少ないスポーツカーだ。
助手席側の窓が開き、イシュがユウカに声を掛ける。
「おまたせ、ユウカ。いこ」
「相変わらずの音ね。いい?くれぐれも飛ばさないでよ」
「善処する」
燃費が悪く、うるさい車。合理性のない、ユウカが所有しようと思わない車だ。
だがイシュにとってはハイパワー、高排気の車でなければ山道や廃墟までの悪路を踏破できない。
それに新素材開発部とエンジニア部の合同で防弾防爆仕様をはじめとしたカスタムが施されている。
「じゃあ、飛ばすね。ちゃんと捕まっててね」
「飛ばすなって言ってるでしょ!」
ベース車両としてのスペックが6速MTに2,000CCの排気量に加え308馬力にターボを搭載しており、最高時速は240kmに達するモンスターマシンだ。
カスタムは当然エンジン周りにも手が加えられており、とんでもないマシンスペックを誇る。
数十分車とドライバーに振り回されたのだろう。
普段から表情の変化が薄いイシュだが、ホクホク顔をしているのがグロッキーながらもユウカには読み取れた。
「ありがとうイシュ、あなたはどうする? 車で待っていてもいいのよ」
「……行く」
☆
駐車した時間の分だけ遅くなり、遅れながらユウカの後を追いレセプションルームにたどり着いたイシュ。
白いノースリーブに白いスカート、黒いタイツにブルーのネクタイに白いコート。全体的に白をイメージさせる服装の、めちゃくちゃ偉い首席行政官である七神リンさんと大人の男性が1人。
ミレニアムから早瀬ユウカ、トリニティ総合学園の風紀委員に相当する正義実現委員会所属を示す黒いセーラー服に黒い羽の羽川ハスミさん、ゲヘナ学園の風紀委員で赤いタイツが目を引く火宮チナツさんが七神さんに詰め寄っているところに遭遇した。
頭から片羽が生えている守月スズミさんもお嬢様っぽいしグレーのセーラー服からトリニティの人だろう。
ここキヴォトスでは大雑把に、天使の羽がある生徒やお嬢様っぽい生徒はだいたいトリニティ総合学園の生徒、悪魔の角や翼や尻尾がある生徒で自分勝手な行動をするのがゲヘナ学園の生徒と判別する風潮がある。
ミレニアムは白衣だったり、メイド服だったり。一部の例外はあるけれど、オーバーサイズのアウターが目印だ。どこかに『7n』を崩したような意匠がある。
今の流行りはアウターを着崩すこと。
「はえー……」
美人さんばっかり。美人って怒っても美人さんなのに怖いんだなぁと。
皆から少し離れたところで聞き耳を立てながら、イシュはしたり顔でふんふんと頷く。連邦生徒会長が行方不明になって、サンクトゥムタワーの最終管理者がいなくなって連邦生徒会は行政制御権を失っている。
認証を迂回できるのは連邦生徒会長が特別に指名した男性で、彼が先生と。
背が高くて穏やかで優しげな雰囲気のイケメンな先生だけどうん、便利屋先生がイメージに近いかな。
ユウカは……我先にと挨拶してた。ほうほう……これはこれは……ユウカも隅に置けないですなぁ。
連邦捜査部シャーレの顧問、学校の縛り関係なくどこの学校の生徒でも加入させられて、各学園で制約なしに戦闘行為も可能とはとんでもない組織だ。
部活なんてものじゃない。組織だ。もし先生がキヴォトスに対し反旗を翻せば。考えたくはないけれど。
話の流れだと、私達はみんなでシャーレの部室がある外郭地区を目指すらしい。
☆
所変わってD.U外郭地区・シャーレの部室付近。
銃声やら戦車の砲がハーモニーを奏でている。とりあえずついてきたイシュだが、戦場の音にワクワクを隠しきれていない。お小遣いの音が聞こえてくる。
「何なのよー!私はミレニアムじゃそれなりの扱いを受けてるのに!」
「うん、ここの不良は活きが良い。ユウカ、お小遣い稼ぎしよ」
ユウカが悲しみの咆哮を上げ、イシュの目が僅かに輝きが増した。
イシュはユウカの袖を引っ張り、赤タイツお姉さんこと火宮チナツさんが諌め、黒い羽のセクシーお姉さんの羽川ハスミさんが全体をまとめていく。
最優先は先生を守ること、建物の奪還はその次。
こういうことに慣れているんだろうなぁ、とハスミさんを見つめて。
大人っぽくてモデルのようなスタイルのハスミさんを嫉妬の混じった瞳でぼんやりと見つめていたイシュだが、ここで先生が声をあげた。
「えっ先生が戦術指揮をされるんですか?まぁ……先生ですし……」
ユウカもチナツさんもハスミさんも先生のいうことには従うんだね。じゃあ私も従おっと。
ユウカの舎弟ならユウカが言うことを聞く人のいうことは聞いておかないといけない。
前方に不良が15人ほどかな?自己紹介のタイミングなかったし、今でいいかな。
「私は音無イシュ、ミレニアムの1年で前衛担当兼ユウカの舎弟してる。よろしく」
「うちの後輩よ。フラフラしてたから連れてきたの。それから舎弟じゃないでしょ!」
"みんなよろしくね。じゃあ、行こうか。"
「「「「はい」」」」
不良たち15人は特に語ることもなく、儚く散っていってしまった。
チナツさんの活躍が悲しいほどになかったのが、良いことなのか悪いことなのかわからないが、ユウカとイシュが前衛に出て更には後詰めのハスミは先生の指揮のもと鮮やかな手際で不良たちに鉛玉をプレゼントしていく。
スズミさんの閃光弾も職人技だった。
生徒たちの警告虚しく先生は一人でサンクトゥムタワーに入っていった。
周囲の警戒をしていたイシュに狐面の少女が目に入った。
「ワカモ」
「……あなたは?」
「ミレニアムの音無イシュ、」
イシュは糸が切れたマリオネットのように瞬きすら止まりワカモを見つめる。
自然と口は開いていく。
――ワカモなら大丈夫、少し思い込みが激しいけれど、いい子だから。
「ワカモ、先生を助けてほしい。ワカモほど立場に縛られず、自由で、優秀で、先生を守れる生徒は存在しない。あなたは本当の意味で先生を支えられる数少ない生徒の一人。
先生はトリニティとゲヘナ絡みで何れ死の淵を彷徨うことになる。だから、お願い」
「根拠はありますの?根拠がない以上、戯言と判断いたしますわ」
「エデン条約。トリニティの古聖堂で行われる調印式。古聖堂はアリウスにより襲撃される。巡航ミサイルまで用意してるはず」
「話になりませんわね。私はこれで失礼いたしますわ」
「またね、ワカモ。今度は着物を着て見せてほしいな」
「……それでは」
気づけばワカモは姿を消していた。
ぱちくりとしたのち、イシュは目を擦り周囲を見るが、ワカモの姿はどこにもなかったし気配もしない。
イシュは、ワカモクラスの実力者なら本気で隠れようと思えば見つけられないだろうと考え再び愛機を伴い先生の護衛をしていた生徒たちの元へと戻っていく。
戦いなら分からないけどね?
サンクトゥムタワーの前に戻れば先生も含めて皆が集合していて、別れの挨拶をしており、もう解散しそうな空気だ。
イシュは聞きたいことがあった。
「あの、羽川さん。どうしたら羽川さんみたいに大人っぽく、スタイルがよくなれるの?」
「よく眠り、よく食べて、よく学ぶことです」
「わかった!ありがとう」
「お役に立てて何よりです」
ハスミの色気のある大人っぽい微笑みに対し、イシュの笑みは体躯と合わせて幼い子供のようで見る者に微笑ましさを与える。
背が高く、女性的なプロポーションに恵まれているハスミ。イシュは、『これが!トリニティの淑女!!』なのだと感嘆する。やっぱりトリカスとは違うのだとわかる。
大人に憧れる子どものように、イシュの瞳はキラキラと輝き、いっぱい食べるぞ!と息巻いていた。
じゃあこの場はお開き、といったところでイシュは先生と二人っきりになった瞬間に口を開いた。
「ねえ、先生。シッテムの箱の中の女の子だあれ?」
"なにか見えるの?"
「うん。小さな女の子。穴が空いた教室に、机と椅子が並んでいて……海?」
"……"
「えーと、我々は望む、7つの嘆きを、我々は覚えている、ジェリコの古則を?」
"えーと、ジェリコの古則だっけ? それはなに?"
「わかんない。シッテムの箱を見ていると頭の中に浮かんできたの」
シッテムの箱の持ち主は先生であり、生体認証を済ませたのでイシュの言葉には反応しないが、先生には大きな疑問が尾を引く一幕。
イシュは先生とタブレットに向かって手を振り、タブレットの中の女の子は驚いたようで先生に「どうしましょう先生!」と困り顔を見せていた。
「イシュー!帰るわよー!」
「はーい!じゃあ先生、シッテムの箱の中の子もバイバイ。ミレニアムに来たらいっぱいお話しようね」
"気をつけて帰ってね"
「うん、ありがとー」
"不思議な子だったね"
『はい、イシュさんはどうしてシッテムの箱の名前と私が分かったのでしょうか』
"先生だったりするのかな"
『まさか!先生は先生だけですよ!』
"だよね、さ、サンクトゥムタワーに戻ろうか"
『はいっ!』
アンケートの結果、別衣装が同数だったため決選投票です
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制服
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水着
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バニー
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結果が見たい方向け