ミレニアムムジカクテンセイシャ   作:二重アゴ

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相変わらず、まとめる能力はございませんが、よろしくお願い致します。
誤字報告ありがとうございます。


先生、ちょっとお時間頂戴(8)

公式おバカ2号、がんばる

 

校舎廊下。

C&Cの面々が集まっていた。

アスナ、カリン、アカネ、イシュ。

アスナの目は鋭く尖り、カリンはこの空気に困惑していて、アカネは困った顔をしている。

その中で纏う空気が違うのがイシュだ。

アスナの豊かな胸に顔を埋めて、両手はアスナの腰に手を回している。

久しぶりのアスナ成分を肺胞全てに行き渡らせて、次はカリン成分を摂取しに行く。

ネルの『テメーは何してんだ』の視線なんて感じないし、分からない。

 

「……ゲーム開発部、ねえ、知らねぇ部活だが、そいつらにしてやられた。そういうことだな?」

「……申し訳ありません。この依頼を受諾し、作戦を用意したのは私です」

 

シリアスな雰囲気の中、イシュはアカネの下で再びアカネ成分摂取に勤しむ。

申し訳ありません、アカネの言葉と顔だが、首から下はイシュを抱きしめて頭を撫でている。

 

「メイド部の名に、傷をつけてしまいました……」

「んなこたぁどうでもいい」

「えっ?」

「それに、あたしがここに戻ってきた時、リオから連絡が来た」

「依頼は撤回、無かったことに。だってよ。差押品保管庫に張り付いていたチビ助には連絡したんだがな」

「それは一体どうして……」

「あたしの知ったことかよ……案外、リオもヒマリも確かめたかったのしれねれなぁ」

「……何を?」

「新人を迎え入れた私たちの力を、でしょうか」

「逆だ、あの、アリスとかいう奴だろ。ま、その辺の事情なんざ知らねえ」

「依頼とは関係なくなっちまったが、アカネ、調べておいてくれ。それからチビ助、テメエも持ってる情報全部吐き出せ」

「何をお調べしましょう?」

「ゲーム開発部だ。そこのチビ助も含めて関係者全部だ」

「アリスのことなら一通り情報提供できるよ」

「いきなりどうして?リベンジですか?」

「その表現は癪だが……興味があってな。一通り情報が洗えたら、あいつ等んところ、行くぞ」

「はい、望むところです。今頃、彼女たちはメイド部に一泡吹かせたと喜んでいるところでしょう」

「ふふっ次にお会いする時は、どんな表情をしてくれるでしょうか」

「次こそ、ちゃんと任務したいなぁ」

 

フルメンバーのメイド部は動き出す。

イシュの情報提供もあり、それぞれが最も輝く戦い方で、牙を研ぐ。

 

 

ゲーム開発部。

ゲーム開発部の部員は明らかに落ち込んでいた。

漫画でいうところの『どよ~ん』とした背景を背負うユズ、才羽姉妹がいた。

 

「……こんなにも落ち込んだのは、『テイルズ・サガ・クロニクル』のプロトタイプをアップロードした時以来……」

「あ、あの、モモイ?」

「あっはっはははははは!!ふへへへへへ!もうお終いだー!」

「み、ミドリ?その、大丈夫ですか?」

「ごめんねアリスちゃん。今は何も話したくないの……」

「えーっと、ユズ?」

「怒り……、終末……、…………は灰燼と化し……」

「あ、あの、えっと……私はあまり理解できないのですが、もしかしてこの状況は、G.Bibleのせいですか?」

 

一同は黙り込んでしまう。おい、ユズ。

アリスだけは絶望に飲まれずに、ゲーム開発部の皆で一緒に過ごす未来だけを見つめていた。

 

「G.Bibleは、嘘は言っていないと思います」

「そ う い う 問 題 じ ゃ な い 」

「いっそのこと、G.Bibleの内容が嘘だって言ってくれたほうが、まだマシ!」

「うわああああああんん!終わった!私たちは廃部なんだ!もう、終わりなんだ!!!」

 

このような状況になったのには理由がある。

2時間前、取り戻した『鏡』でパスワードを解いたマキが、G.Bible.exeをゲーム開発部の部室まで持ってきてくれた。

遅くなった理由は、『鏡』をセミナーに返すこととなり、このことでゴタゴタがあったようだった。

部長のヒマリは、最初から全部知っていたようで、『鏡』くらい、いくらでもあげてもいい。

だから、今後は、危ないことをあまりしないように。

と釘を刺されてしまった。だが、釘を刺されても、マキは嬉しそうで、部長が見守ってくれている実感を得ているからこそ、笑顔が眩しい。

 

「それでね、G.Bibleを開いていた時に、この、<Key>っていうフォルダーを見つけたの」

「なにこれ、ケイって読むのかな」

「……ケイ?」

「「キー」でしょ、お姉ちゃん、本当に高校受験合格したの?!」

「実は、これについては、何一つ分からなくって。ファイルは壊れてなさそうなんだけど……」

「私たちが知っている機械言語じゃ解読できない、信じられないような構成をしているの」

「G.Bibleの方はきちんと開けたんだけど、こっちはちょっと見ただけじゃ何も分かったの。この<Key>のこと、何か知ってる?」

「いや、私たちも全然……」

「……もしかして<Key>って……」

 

【あなたはAL-1Sですか?】

ミドリの脳裏に浮かぶのは、廃墟のコンピューターで、アリスに話しかけてきた、あの光景。

 

「ふうん?何かあったの?ま、とりあえず今はG.Bibleの方でしょ」

「<Key>についてはまた今度ね。時間があったら頑張って分析してみるよ」

「じゃ、確かに渡したよ。まったね~」

「マキちゃん、ありがとうね」

「次来る時は秘書を通してから来てね!私たちはTSC2で大ヒットしてるはずだからね!」

「あははっ!楽しみにしてるね!」

 

マキは去っていき、ゲーム開発部の手元にはG.Bibleがある。

モモイがG.Bibleをお披露目するために部員を集める。

モモイは、もしかして、を語り始める。

もし、ゲーム開発部が廃部になってしまったら。

ユズは寮に戻って、会いたくもない奴と会わなければならない。

アリスは、どうなるか分からない。シャーレで先生と一緒に過ごせると良いのだが、ゲーム開発部の皆と一緒にいられなくなる。

モモイの掛け声に合わせて、アリスがG.Bibleを起動した。

 

G.Bibleの世界へようこそ。

最高のゲームとは何か……この質問に対して、世界中で様々な答えが模索され続けてきました。

作品性、人気、売上、素晴らしいストーリーや爽快感、鳥肌の立つ演出など。

そういったもののが最高のゲームの「条件」として挙げられることは多いですが、

それらは全て、あくまで「真理」の枝葉に過ぎません。

最高のゲームを作る秘訣、それはたった一つです。

そしてこのG.Bibleには、その真理が秘められています。

 

最高のゲームを作るたった一つの真理、秘密の方法……

それを今こそ教えましょう。

 

……ゲームを愛しなさい

ゲームを愛しなさい

ゲームを愛しなさい

 

あなたがこのボタンを押したということは、ファイルが壊れた、もしくは何か問題があったのではないか、

何らかのエラーが生じたのでは……と疑っている状況なのでしょう。

しかし、エラーではありません。

残念ですが、これが結論です。

ゲームを愛しなさい!

 

ミドリが調べてみると、ファイルの損傷や修正跡も見受けられない。ファイルサイズは勿論、データ構成も問題ない。

つまり、本当に、これで、G.Bibleは終わりなのだ。

才羽姉妹は、まるで悪い夢に魘されて目覚めた後のような、絶望の顔。ユズは現実逃避にロッカーの中に籠もってしまう。

アリスを除く、ゲーム開発部の面々がやる気を失っているだけで、アリスは希望を失っていなかった。

アリスは語り始める。

初めて触ったゲーム、テイルズ・サガ・クロニクルは、仲間と一緒に新しい世界を旅する感覚は、アリスに夢を見る感覚を教えた。

待望のエンディングに近づけば近づくほど、夢から醒めるまでのタイムリミットを実感し、物語が終わってしまうという事実。

こんなにも楽しいのだから、夢から醒めなければ良いのに、と。

アリスの話を聞いたユズは立ち上がる。

 

「……やろう」

 

ユズは夢を語る。

テイルズ・サガ・クロニクルは残念ながら、酷評され、クソゲーランキングにランクインしてしまった。

だが、アリスがゲーム開発部を訪ねて、面白いと言ってくれて、1人だけで思い描いていた夢が叶った。

だから、欲張りかもしれないけれど、心が通じ合う仲間でゲームを作りたい、そんな夢を追いかけ続けたい。

辿々しく語るも、ユズの顔は真剣だった。

 

「……うん!よし!ミレニアムプライスまで、あとどれくらい時間が残ってる?」

「お姉ちゃん……!」

「6日と4時間38分です!」

「それだけあれば十分!さあ、ゲーム開発部一同!テイルズ・サガ・クロニクル2の開発を始めるよっ!」

「「「うん!!」」」

 

ゲーム開発部は、受付終了直前、4秒まで粘り続け、テイルズ・サガ・クロニクル2を製作した。

3日後の結果発表までは、ゲーム開発部の部室にいられる。

3日というのは長いから、ウェブ版のテイルズ・サガ・クロニクル2をアップロードするのはどうかな、とモモイが提案した。

理由は非常に単純なもので、結果発表の3日は待てないし、ユーザーの反応を見たい。ただそれだけだ。

テイルズ・サガ・クロニクル2は、ミレニアムプライスに出品するだけのために作ったゲームではない。

ゲーム開発部の部活動の製作物として、成果の一つとして、発表するつもりだ。

低評価がなんだ、批判コメントがなんだ。私たちはベストを尽くしたんだ、と胸を張り、堂々と語るモモイ。

彼女の語り口から、それだけ作品に熱を込めたのだと、無言で語るものだった。

またユズも、ゲームは、遊んでくれる人、見てくれる人があって、初めて完成するものだと語り、アップロードに賛成する。

1人だけ、消極的反対であろうミドリは、ユズの『ゲームを完成させたい』という言葉に心打たれたのか、笑顔だ。

それに、前作のように批判コメントが殺到し、低評価であろうとも、今度は受け止められる、と控えめな笑顔で告げた。

普段から一歩引いた視線でゲーム開発部を見る時が多いミドリであろうとも、ここまで言われてしまえば、ミドリも腹を括るしかない。

 

「アップして2~3時間は何もないだろうから、その間は休憩ってことで!」

「あれ、アリスちゃん、どうしたの?」

「待機します」

「ダウンロードが始まって、実際にプレイするまで、何も無いと思うけど」

「わ、私も待機する……!」

「私もドキドキで眠れないよ」

「言い出しっぺの私も今更ながら緊張してきた!」

 

結局ゲーム開発部は全員、休めない。

どんどんダウンロード数が増えていき、次第にコメント数も増えていく。

ダウンロード数が2000を超える頃には、ポータルサイトにテイルズ・サガ・クロニクル2の記事が掲載されるほどの話題作となっている。

増え続けるダウンロード数、書き込みが増え続けるコメント。

ゲーム開発部の心拍数は乱高下を続けて、何もしていないのに疲れていた。

 

 

バゴォォン!

突然の耳をつんざく、腹に響く重低音の後、ゲーム開発部の部室の窓を容易く突き破り、壁のコンクリートの一部を破片と変えた。

『鏡』を取りに行った夜に聞いた、対物スナイパーライフルの弾着音が、ゲーム開発部の心臓を叩いた。

 

「お姉ちゃん!13.97mm砲!カリン先輩の!」

「ひゃっ」

「遠距離攻撃を確認、部室正面に対し11時の方角、距離、約1km!」

「反撃を開始します」

「ダメ、アリス。一旦出よう。今は先生もいるし、巻き添えになっちゃう!それにこのまま戦うと私たちの部室が壊れちゃう!」

「そ、外にセミナーの人も……!前回の報復かな」

「ひぃ、また来る!」

"落ち着いて"

「アリス!私とユズで前に出る!だから先生をお願い!」

「行くよ!」

 

旧校舎まで逃げ込んできたゲーム開発部。

そんな彼女たちを追っていって、C&Cに随時位置情報を提供し続けていたのはイシュだった。

イシュ自身、先の初任務では、何も出来なかったから、この任務では何かを成したい。だが、任されたのは追跡し続けることだった。

隠密行動に自信がない、というわけではない。

野良猫相手に気配を悟られないように日々訓練を重ねているのだ。

ただし、勝率は今のところ0%だが。

勝負に勝った野良猫には、水とおやつを進呈して、矛を収めてもらっている。

 

ゲーム開発部の一挙一動を追うのは非常に簡単だ。

非武装の男性の先生を連れているグループ、そのグループの面々の中で一番背が高いアリスでも152cmだ。男性の先生は嫌でも目立つ。

自然と誘導された末に逃げ込んだ旧校舎では、肩で息をしながら、辛うじて逃げ切ったゲーム開発部の姿があった。

 

「なんとか逃げ切った?」

「……これから、どうしよっか」

「もう、ミレニアムプライスへの出品は終わってるんだから、結果が出るまでこのまま逃げ続けようよ」

「逃げ切れると思ってんのか?」

 

SMGの掃射でターゲットとなったミドリは倒れてしまう。

乱入者はミレニアム最強のネルだった。

 

「なるほどな、通りでいい判断だと思ったぜ」

 

ゲーム開発部を指揮したのも、差押品保管庫の襲撃の際も、イシュの誘導の一部を回避したのも、全ては先生の手際だ。

調査に動いたアカネの報告からも、その手際の良さが引き立っている。

 

「『先生』、噂は嘘じゃなかったみてえだな」

「あはは!ネル顔真っ赤だー」

 

ネルに対し、身長の話をする人物がいるだなんて、新鮮だと微笑むアカネ。

部活らしい活動が、楽しくて仕方がないイシュは、C&Cの面々と行動するのが楽しいのか、明らかにゴキゲンだ。

 

「そこのデケェ武器を背負っているアンタ」

「アリスのことですか?」

「ああ、そうだ。C&Cに一発入れてくれたそうじゃねえか。ちっとツラ貸せよ」

「あ、アリスは知っています。ジャンプしてみろよ、からのカツアゲパターンです」

「ちびメイド様のカツアゲスチル回収です」

「ふっざけんなこの野郎!!誰がちびメイド様だぁ?!ぶっ殺されてぇのか?!」

「あははーネル顔真っ赤!」

「ひぃ……!」

「イシュ!てめぇはさっきから、どの立場で能書き垂れてんだ?!あぁん?!」

「ネルこわーい!」

 

頭をガシガシと掻いて、イラつきを吐き出すように1度ため息を付く。

 

「誤解をしているかもしれねぇから一応言っておくが、別にC&Cに一発食らわせた分の復讐じゃねえ」

「あちこちに怪しい部分はあったが、こっちは正当な依頼の中での出来事だった」

「そっちはそっちで、あたしらを相手に目標を達成しただけだ」

「別に恨みがあるわけじゃねえが……チビ助の話も聞いてたらよ。俄然、興味が湧いてきてな」

「興味?」

「確認、って言ったら良いのかもしれねえが……ちょっくら相手してもらおうか」

「イシュちゃん、ドサクサに紛れてリーダーと戦おうとしたらダメですよ」

「えー」

「あたしと戦って勝てたら、このまま引き下がってやるよ」

「私もネルとアリスと遊びたい」

「だぁー!!うっせえなチビ助!おい、アカネ、コイツ捕まえておけ!」

「はい。イシュちゃん、こっちですよ」

 

アカネのストールに絡め取られて、アカネの胸の置台となったイシュが、ぶつくさ文句を垂れる。

だが戦闘の気配が高まるにつれて、目は開いていき、瞳から光が失われていく。

 

「お互いを理解するにはこれが一番手っ取り早いからな。どうだ。難しい話じゃねえだろ?」

「分かりました」

「おっやる気満々とは分かってるじゃねえか」

「一騎打ちイベント戦闘……のようなものですね、理解しました」

「今なんつった?」

 

アリスの口から語られるのは、『鏡』を手に入れるという目標があったから、全力戦闘はしなかった。

だが、今は違う。

アリスの目の色が変わる。美しい青から、僅かに鋭く、光の剣:スーパーノヴァを握る手に力が籠もる。

 

「魔力充填100%」

「ちっ!これは……!」

「光よ!!!」

 

光が満ちた。光とほぼ同時に追いかけてくるのは爆発音。

仮にも最先端科学を誇る学園の校舎の壁を容易く消し飛ばす威力、推して知るべし。

アスナさん、それに当たってケロリとしながら指先一つ動かせないと呻いていたのはあなたですよ。

アカネもカリンも態度に出しているか、出していないかの違いはあれど、脅威の威力に驚いている。

おおっ、と目を輝かせるのはイシュだけで、自身の"ロンカ"の砲撃とどちらが高威力なのかを検証している。

モモイもミドリも、凄い威力、と口をあんぐりさせて驚いている。

 

「……やったか?」

「アリスちゃん!そのセリフは言っちゃダメだって!」

"まだだよ"

 

爆発音に舞う黒い煙の中、アリスにSMGの掃射が当たる。

C&Cは、視界を封じられても戦えるのは、既にカリンが証明している。

C&Cの最強、否、ミレニアム最強のネルが、視界が見えない程度で戦えないなんて、あり得ない。

 

「確かに、並大抵の威力じゃねえ。が、ただそれだけだな」

 

黒い煙が晴れると、ネルが無傷で立っていた。

アリスは再びチャージを試みるが、ネルにとっては遅すぎる。

本気よりも幾段も速度を落とした上でのインファイト。アリスの腹に突き刺さるネルの銃撃。

鎖を使っていない時点で、まだ遊びの範疇だ。

 

「確かに威力はすげえよ。だが引き金を引いた後、発射までにコンマ数秒はかかる」

「その上、強すぎる火力のせいで、相手にある程度の距離まで踏み込まれると撃てねえ」

 

ネルの横顔は生き生きとしていた。

両手で操るサブマシンガンから吐き出される弾は、アリスに吸い込まれていく。

 

「てめえも巻き込まれちまうからなぁ!」

 

そうして、この間合いであたしに勝てるやつは、いねえと語るネルの顔は自信に満ち溢れている。

ネルの間合いで戦えるのは、キヴォトス各地に存在する最強格、そしてイシュだろう。

それぞれが、それぞれの方法で、ネルの間合いで戦える。

 

「思った以上にガッカリだぜ。この程度で、あいつらがやられるとは到底思えねぇ」

 

アリスは光の剣:スーパーノヴァ本体を盾にしてネルの銃撃を凌いでいる。

ネルの銃捌きの隙をついて、アリスは光の剣:スーパーノヴァをぶん回した!

 

「近接戦の判断としちゃあ悪くねえ判断だ。……けどな相変わらず、この距離ではあたしの方が圧倒的に有利だ」

「てめぇは発射しようにも、照準を合わせたくても合わせられねぇ」

「照準は必要ありません!いきます!」

 

ここでネルが、砲撃を使うイシュとの交戦経験が生きてくる。引くのでは無く、前に出る。

かつてのイシュは地上で、薙ぎ払った。

だが、ここは地上では無く、旧校舎の上階。

 

「てめぇ、まさか!」

 

光と爆発音が交錯し、校舎に穴を開ける光の剣:スーパーノヴァから撃ち出された光は、床を容易く破壊する。

 

「肉体損傷率48%、撤退を希望します」

"私が背負う"

 

先生がアリスを担ぎ、才羽姉妹も先生に合わせて撤退する。

瓦礫の中に埋まったネルにC&Cはカリン以外誰も心配などしていない。

むしろ、術中にハマったネルに驚いている。

 

「ねえねえリーダー、どうする?」

「……、……、いや、いい。追撃は無しだ。一通り暴れて、スッキリしたからな」

「目標は概ね達成した。リオがゲーム開発部に興味を持つ理由も分かった」

 

暴れるのが大きな目標なんじゃないのー?と口を挟もうとしたイシュ。

口を挟む前に先生が気になるんじゃないのか、と囃し立てられて、顔を真っ赤に染めるネルに笑みを向けた。

 

「……思いっきり暴れたら腹減ったな。ラーメンでも食いに行こうぜ」

「良いですね」

「行く行くー」

「賛成賛成~!」

「そういえばリーダーは成長期だった」

 

意外と毒を吐くカリン、顔を真っ赤にして、C&Cはラーメン屋さんへと移動を開始する。

 

ラーメン屋になだれ込む成長期のメイド服の集団は、明らかに周囲の視線を集めていた。

それぞれが好きなものを注文し、隙あらばおかずを奪い合う。そんな当たり前の光景。

 

「ねえねえ、みんな。一つ伝えておきたいことがあるんだー」

 

イシュが口を開く。

この場にいるC&全員に共有されたのは、キヴォトスの三大校をはじめとする、各自地区内にいる強者一覧。

それぞれの経歴を簡単に洗ったものが添えられている。

トリニティ総合学園、ティーパーティー(生徒会)所属の聖園ミカ

同じくトリニティ総合学園、正義実現委員会(風紀委員会)所属の剣先ツルギ

ミレニアムサイエンススクール、C&C(風紀委員会?)所属の美甘ネル

アビドス高等学校、小鳥遊ホシノ

ゲヘナ学園、風紀委員会の委員長、空崎ヒナ

代表的なメンバーは、既に挙げられている通り。

七囚人を含め、最強・準最強格として語る生徒たちの、斜めに撮られた写真も添えられている。

全員の全ての情報が揃っているわけではない。抜けこそあるものの、ある程度の情報は抑えられている。

それぞれの情報の提供元は、各校に散るスパイの教育を受けたC&Cの部員だ。

聖園ミカと小鳥遊ホシノを除けば、だいたい1度は噂を聞いたことがある名前ばかり。

なお、小鳥遊ホシノには目的がバレた。乙女の尊厳を著しく損なったらしく、もう二度とごめんだという泣きの弁明が届いている。

 

「で、こいつらは?」

「強い奴ら。戦いに行く。」

「まあ……」

「止めはしない。たまには帰ってこい」

「えー行っちゃうのー?」

「迷惑かけるけど、ごめん。通信くれたら全速力で戻って来るから」

「しゃあねえな、行くからには、勝ってこい」

「あの。見送る雰囲気になってるけど、すぐに行くわけじゃないよ?」

「後は、別に添付してるアリウス、見つけたら教えて」

 

 

ゲーム開発部部室

モモイがアリスにメイド服を見せびらかした。

ネルとの戦いがトラウマになっているのか、アリスはひぃっと声を上げて離れる。モモイは思わず笑った。

 

「もう、お姉ちゃん!アリスちゃん怯えてるじゃん!アリスちゃん大丈夫?」

「あ、アリス。しばらくメイド服は見たくありません!」

「体の方は全部治ったけど、心の方はまだちょっと掛かりそうだね」

「あの、セミナーに行ってきて、建物を壊したことについて聞いてきたんだけど、部活中の事故として処理して貰えたよ」

 

ユズが『C&Cで処理済み』と報告して、部費の心配をしていたモモイは、ほっと胸をなで下ろす。

 

「それと、ネル先輩から伝言……。また会おうって……」

 

ネルの姿を思い出したのか、ユズは思わず青い顔になる。またアリスも小さく悲鳴を上げた。

ユズのマネをして、ロッカーに入り込んだアリス。

 

「それより、始まったね」

 

彼女たちが視線を寄せるのは、ミレニアムプライスの中継だ。

司会のコトリが、セミナーの方針の変更からか、成果を求めるせいで史上最多の応募数になった、と語る。

3桁の応募数から賞を得られるのはたった7作品のみ。

コトリはテンション高く受賞した7作品を読み上げていくが、テイルズ・サガ・クロニクル2の名は出ない。

部の存続が掛かっている中で、才羽姉妹の心拍数は乱高下し始め、アリスは祈っている。

1位の発表はCMの後!という、引きを作りながらも、コトリは進行していく。

 

「第1位は新素材研究……」

 

ユズは悲しげに顔を伏せる。

どうせ立ち退かなければならないのなら、の思いから、耐えきれず、発砲するモモイ。

廃部の2文字がゲーム開発部の頭によぎり、部室の空気は暗く淀んだものへと変化する。

 

でも、彼女たちは皆、成長した。

 

寮に戻ることにしたユズは一歩踏み出す勇気を。

クソゲーランキング1位を返上できたと胸を張るモモイは、より前向きに。

以前より、より深く友を強く想うようになったミドリ。

シャーレに引き取られることになりそうなアリスだが、モモイもミドリもアリスを離してくれそうにない。

暗く淀んだ空気は、別離の悲しさを帯びていく。

 

ノックの音。

 

「ユズ、モモイ、ミドリ、アリスちゃん!おめでとう!」

 

この空気を変える清涼剤であるユウカが、入ってきて真っ先に伝えた言葉に部室の時間は止まった。

 

「「「えっ……?」」」

「えっ?何この反応」

「結果、見てなかったの?」

 

モモイが結果発表前にディスプレイを撃ち抜いたからか、ゲーム開発部は誰も最後まで結果発表を見ていなかった。

テイルズ・サガ・クロニクル2が特別賞を受賞したから、ユウカは中継を見ながら走ってきたのだ。

マキもゲーム開発部の部室に飛び込んできて、ネットの反応を教えてくれる。

そう、彼女たちは成し遂げたのだ。

3時間前にアップロードしたテイルズ・サガ・クロニクル2はダウンロード数7705回を記録し、コメントは1372個。

ミレニアムプライス発表後は、1時間でダウンロード数は1万を超えた。コメントも500個追加され、その中でも否定的・疑惑のコメントが242個。

肯定的・期待のコメントが191個ついている。

かつてのクソゲーランキング1位とはなんだったのか。飛躍ではなく、飛翔レベルのことをしたのだ。

 

「廃部にならないんだよね?」

「ええ、そうよ。だけど、来学期までは部室も存続よ」

 

そ、それから、と言いにくそうに切り出すユウカ。

すこしモジモジしながら、僅かに顔を赤くして。

 

「ゲーム機をガラクタっていってごめんなさい。あなたたちのおかげで思い出したの」

「小さい頃に遊んでいた、いろんなゲームのこと。新しい世界を旅する楽しさを感じられたわ」

 

ありがとう、また部室の延長申請や部費の受取と言った処理は必要だから、落ち着いたらまた来てね、と言い、ユウカは去っていく。

 

「じゃあ……」

「私たち……離れ離れに……」

「やったぁぁぁぁぁぁ!!」

 

ミレニアムプライス特別賞を受賞したゲーム開発部は、部活の存続が決定し、皆、離れ離れにならずに済んだ。

喜びもつかの間、新たな騒動が巻き起ころうとしていた。

 

【データ復旧率90%】

……異常な外部干渉があります。

……異常な外部干渉があります。

【Divi:Sion】

 




お読み頂きありがとうございます。
一旦パヴァーヌ一章は一区切りです。
次は幕間を挟みながら、2章に移ります。
七囚人とアリウス巻き込まれて可哀想。

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