ミレニアムムジカクテンセイシャ   作:二重アゴ

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先生、ちょっとお時間頂戴(4)

公式おバカ、エンジニア部に行く

 

エンジニア部。

「マイスター」と呼ばれる機械製作と修理の天才達が所属し、特にハード面で極めて優秀な生徒集団だ。

ミレニアム生の武器の製作や改造、メンテナンスを一手に引き受けており、更には機械の保守・点検も引き受けている。

部長はミレニアムのジャケットを肩にかけ、薄紫の髪と同色の瞳を持つ白石ウタハ。

部員はシャツのボタンとスカートのチャックをルーズに着崩す金髪赤眼のドスケベ、豊海コトリ。エンジニア部のピクシ◯百科事典ではセンシティブ扱いされているぞ。

もう一人は麗しい網タイツで生足を隠し、黒いキャミソールと黒いブーツを履く黒髪の犬耳少女猫塚ヒビキ。

エンジニア部を訪れた才羽姉妹とアリス、ついでにイシュ。出迎えたのは部長であるウタハだ。

モモイから説明をされ、大方の事情を察したのか、ウタハは快く部室内にある武器を持っていって良いと言ってくれた。

アリスの目は一瞬で宇宙戦艦搭載用のレールガン、光の剣:スーパーノヴァに目を惹かれていた。

基本重量が140kgを超え、光学照準器やバッテリーなどを装備したうえで砲撃すると瞬間的な反動は200kgを超える。

個人で携帯する域を超えている重量物。持てるならやってみろ、というよりも、持とうとするアリスの心配が強く出ている。

 

「ぐううううううう」

「……も、持ち上がりました!!見てください!」

「うっそぉ……負けた?!悔しいぃぃぃぃ!!!」

 

イシュが僅かに持ち上げるだけしか出来なかった光の剣:スーパーノヴァに手を伸ばし、持ち上げようとしたアリス。

流石に140kgはアリスでも簡単に持ち上がらないようだが、歯を食いしばれば、それはアリスの手に収まる。

エンジニア部の面々も開いた口が塞がらない。

 

「……これは、驚いたな」

「……嘘、信じられない……」

「これがBボタンでしょうか」

「ちょっと待って……っ!」

「――光よ!!!!」

「あっ……」

 

光が天井を貫き、陽光がエンジニア部の部室を照らす。

あっ……(察し)

天井に穴が空いた部室に嘆くコトリだが、ウタハの鶴の一声で下半期の部費の70%を費やした光の剣:スーパーノヴァは、無事アリスの手に渡ることになった。

とはいっても、大量の予算を費やして制作した光の剣:スーパーノヴァだが、簡単に譲れるかといえばそうではない。

 

「さて、ヒビキ。以前に処分要請を受けたドローンとロボット全機出してくれるかい」

「分かった」

 

ウタハはテキパキと指示を出し、"試練"を与える。

集まったドローンとロボットは軽く30体を超える中、ウタハは"試練"だよ、といい、様子を見守る。

インドアな部活の癖に意外と戦える才羽姉妹の手腕と光の剣:スーパーノヴァを操るアリスの手によって簡単に破壊された。

簡単に譲れない、とばかりにコトリも飛び出していったが、勢いに乗った才羽姉妹とアリスの連携に、コトリのミニガンすら歯が立たなかった。3対1ではさすがに分が悪い。

双子特有の阿吽の呼吸にアリスの高威力の砲撃に目を回したコトリは「悔しいけど結果がすべてです」と涙目で床に崩れ落ちるコトリ。

本当に使いこなしたアリスにヒビキは優しい表情で、使い方を教えていた。

 

「あっそうだ。"ターゲッティング"のメンテナンスと"ロンカ"のメンテナンスお願い」

「わかったよ。見せてごらん」

「ねえウタハ。"ロンカ"を自律進化兵器にしたいんだけど、どうすればいいかな」

 

4つすべてが半円上のポッドに収まった"ロンカ"と、ハードな使い方をされている"ターゲッティング"に語りかけるイシュ。

頼りになる相棒と可愛い球体を撫でくり回す姿はまるで子どものようだ。

 

「法整備や倫理観は無視をすると、まず6つの段階に分かれるだろうね。その上で私達ミレニアムは5段階目の域に入る見込みだよ」

 

ウタハは一つずつ指を立てて説明していく。

まず、第1段階はターゲット認識後に自動追尾・攻撃。ただし、障害物には対応できない。

それから第2段階は機械学習によるターゲット識別精度の向上。ただ、誤作動リスクはまだ残る。

第3段階目は第3段階になると、強化学習で行動パターンを最適化。目標の達成手段も柔軟に選べる。

おバカなイシュでもニュアンスから伝わるように言葉を選んで説明していくウタハ。

そんなウタハの顔を見上げるイシュは「ほえ~」といった顔。君ほんとにミレニアム生?

そんなイシュの顔を見て、説明を続けるウタハ。

第4段階では、状況判断のアルゴリズムが向上。複数の敵を同時に認識して、戦況に応じた優先順位で攻撃が可能になる。でも、判断速度はまだ遅い。

第5段階では深層学習で、ターゲットの行動パターンを完全に解析。行動予測だけじゃなく、相手の心理まで読み取るレベル。反応速度も限界まで最適化される。まだ未知数の部分が多く、完全自律型AIの領域に踏み込んでいるから、制御が難しくなる。

第6段階では、自己学習と適応進化を繰り返し、相手の動きに完璧に対応する。しかも、戦闘パターンを蓄積して次の戦いに活かす。"学ぶ"ことで限界すら超える。

 

「簡単にまとめるとこんなところかな。君の"ロンカ"は君の指示にだけ従い動くのだろう?段階で言えば、4.5段階から5段階になるね。さて、君の銃を見ようか」

「……先は長いねー。ね、"ロンカ"。最近動けてなくて暇だったよね?次出番がある時は思いっきり暴れようね」

 

"ロンカ"を羽根先で優しく撫でるように撫で回す。4機の可愛い球体たちに話しかけていく。

当然"ロンカ"は何も反応を返さない。

相棒である"ターゲッティング"にもメンテナンスの時間ですよー、と先輩にも使わないユルユルの敬語で話しかける。

 

「君はいつも、こうやって話しかけているのかい?」

「そうだよ。私が作ったんだもん。それに"ターゲッティング"は私の相棒だから」

「良いことだね。うん?結構ハードに使ったようだね。交換するには少し早いけど、いずれ交換しないといけない部品が多いよ」

「うーん、交換で!次にいつ来られるか分かんないしねー」

 

イシュの"神秘"で、イシュと"ロンカ"はつながっているため、指示出しをするだけで"ロンカ"は動ける。

更にその先に進むには、それ以上の方法が必要だ。だがそれは、ただのミレニアム生で居られないし、総力戦ボスへと変貌する階段だ。

イシュと話しながらも、ウタハはアリスを観察していた。

ウタハレベルのマイスターしか分からないアリスの違和感。

1tを超えるであろう握力、発射時にもブレない体幹、肌全体に傷一つない肉体、いや機体。

すぐ横の後輩は確かに肉体強度は高いし、鍛えられた末の体幹を有しているが、傷が治るのには程度にもよるが時間を要する肉体だ。

 

「(アリス……君は一体……)」

 

ウタハの思考と手は別の動きをしており、イシュの"ターゲッティング"の交換部品は次々と交換されていく。

銃身を拭けば、鈍色の輝きを取り戻し、イシュに手渡せば、戦闘用の動きで問題が無いかを確かめていく。

体に染み込ませたリロードの動作、懐に潜り込まれた時の対策で銃床を叩き込む動作。

より実戦に寄せた銃の取り扱いと相手を打ち負かすための戦いの動き。

 

「ありがとう、あとで慣らしに行ってくるね!」

 

両手でエンジニア部の皆に手を振り、イシュはエンジニア部の部室を出ていった。

 

 

イシュと別れたゲーム開発部の面々は部室に戻り、早速ゲームを始めていた。

油断しているのか、それとも慢心からか。

『部員を増やして』『ミレニアムプライスで結果を出す』のはどこにいったの……?

 

「さてと。廃部の危機も去ったことだしゲームしますか。アリス、レイドに行こ!」

「はい!」

「気を緩めるの早くない?!ユウカには部活の要件を満たしたって連絡をしたの?」

「アリス、ブレスの予備動作だよ。危ない!したよ。今日の午後アリスの資格審査に来るって」

「資格検査って何!?初めて聞いたよ!その資格審査に部の存続が関わっているのにゲームしてていいの?!」

「心配しすぎだって。アリスの準備は完璧なんだし」

 

自信満々のモモイに自己紹介を促されたアリスだが。

何でもドワーフ族の槍騎士で、武器はガンランスの火竜の牙。

幼い頃魔族の襲撃に遭い、家族を失い、単身で燃え盛る鉱山に乗り込んだとのことだ。

 

「それゲームのアバターの設定でしょ?!自分自身の自己紹介してよ」

「理解しました!」

 

アリスの口から語られるのは最近入学したばかりの転入生であること。

今は授業に参加できなくても、部活動には入れるので、ゲーム開発部に入部したこと、タンク兼光属性アタッカー。

 

「結構それっぽいね」

「タンク兼光属性アタッカーじゃなくてプログラマーね」

 

胸を張り、自信満々に語るアリスだが、笑顔を見せていたミドリが「タンク兼光属性アタッカー」と聞いた途端、心配そうな顔つきになった。

ミドリの心配は尤もだ。

セミナーの役員としてのユウカは優しさと厳しさを兼ね備えたお姉さんだ。

しっかりした優しいお姉さんであっても、その頭脳は優秀で小手先の舌戦ではユウカの追求を躱せないし、下手なことを言えばそこを突破口として利用してくる。

各部活と予算を取り合う会計とはそのような仕事だ、と言わんばかりの舌戦を繰り出してきてタジタジになるだろう。

 

 

「……あり得ないわ。ゲーム開発部に新人が入ったなんてあり得ない」

「事実だよ!」

 

午後になり、ユウカがヌッと音を出しながらゲーム開発部の部室を訪れた。

入部したアリスを見たユウカは、アリスを見ていた。

ユウカ曰く、ミレニアムの生徒はだいたい把握しているのだが、アリスのような可愛い子のことを知らなかったなんて、ちょっと信じられない。

特殊な嗜好(ロリコン)を匂わせる発言から、才羽姉妹がユウカから一歩距離を置き、アリスはハテナマークを浮かべていた。

 

「とにかく!4人揃ったんだからゲーム開発部は存続でしょ!?」

「そうね。本当にアリスちゃんが自分の意思でゲーム開発部の扉を叩いたら、の話だったらね」

 

明らかにビクリと震えるモモイに訝しむユウカ。

ユウカの立場からすると当然だろう。ミレニアム生の大部分の生徒の顔を把握している自分すら知らない転校生が廃部寸前の部活に入って廃部を回避する。

偶然にしてはあまりにも"出来すぎている"。

今日来たのがユウカだったのがゲーム開発部の最大の幸運だ。もし完全記憶能力を持つノアが来ていたら、『転入生の連絡は来ていません。アリスちゃん、貴方は誰ですか?』の一言で計画は崩壊する可能性があった。

 

「本当はね、部員の加入を申告してくれるだけで良かったのだけど、部活の運営規則が少し変わって、そうはいかなくなったの」

「そういうことだからアリスちゃんには少し取り調べ……、じゃなくて、少しお話しましょうか」

「はい……」

「じゃあ質問を始めるわね」

 

ユウカがアリスと向かい合い、真っ先に思ったのは、『綺麗な顔してる』だった。

瑞々しい肌にシミ一つ無い顔、水面のように美しい碧眼に身長を超える黒髪。

ユウカから様々な質問が投げかけられる。

 

「アリスちゃん、ゲーム開発部に脅されて仕方がなくこの場にいるのなら、左目で瞬きをして」

「……?」

「ちょっ……!何その質問!始めっから疑ってるじゃん!」

 

モモイがアリスの学生証をアピールし、ユウカも生徒名簿にアリスの名があることを確認する。

が、ユウカはそんなにも簡単に騙される女性ではない。先生相手でも本当にそう?

明らかにビクリと震える才羽姉妹に、何かあると思うのは当然で、取り調べは再開される。

取り調べとはいっても簡単なもので、ゲーム開発部の門戸を叩いたきっかけを聞こうとしていた。

 

「魔王城ドラキュラをやりたくなって、ゲーム開発部を知りました」

 

モモイがアリスを睨んでいて、アリスが困った顔をしているのを見たユウカがモモイを注意する。

ユウカの頭にある疑惑が消えることはない。モモイが睨んだことによって逆に疑惑が大きくなる。

このミレニアムサイエンススクールには、ヴェリタスを始めとするハッキングなど朝飯前の生徒が数多く存在する。

だからアリスという生徒が在籍しているように操作された可能性がある"今の"生徒名簿はあてにしていない。

ユウカの質問に固唾をのんで見守る才羽姉妹に眉と目尻を下げ、辿々しく答えるアリスにモモイがヤジをとばそうとしていた。

 

「でもここはゲーム開発部で、レトロゲームをする部活じゃないでしょ。つまりあなたもゲーム作りに参加するのよね?何を担当するの?」

「タンク兼光属性アタッカー……じゃなくてプログラマーです」

「プログラマーは大変ってよく聞くけれど」

 

相変わらず困り顔のアリスに、ユウカは質問を投げていく。

ユウカ自身は意識していないものの、アリスの困り顔から変なプレッシャーを与えているのかしらなんて思いつつも口を開き、言葉を続ける。

 

「はい、大変です。たまに過労から意識を失ったりします」

「な、なんですって!?」

「それでもアリスは大丈夫です」

「いや、大丈夫じゃないでしょ。きちんと休みなさいよ」

「宿屋で休むか、聖堂でお金を払えば仲間たちと一緒に回復出来ます!」

「そんなわけないでしょ!?」

「そんなはずがない?常識ですよ。もしかして『英雄神話』や『聖槍伝説』をご存じないのですか?『神ゲー』なのでオススメですよ!」

 

ユウカとアリスのやり取りを見守っていた才羽姉妹は開いた口が塞がらない。

「すべてが終わった……」とモモイの口からポツリと漏れた。

"ゲームの世界に入り浸りすぎている"や"ちょっと変わってる"だけでは言い訳にもならないほどの問答から、才羽姉妹は口から魂がはみ出ていた。

 

「少しの間、話してみて分かったわ。アリスちゃんは少し変わったところはあるけれど、ミレニアムじゃあ今更よね」

 

ミレニアムの問題児は一年生だけでモモイを始めとした4人組がいる。

更に他学年を含めれば更に人数は膨れ上がるし、部活まで挙げればもっと膨れ上がる。

それに、と間を置く。ちょっと怪しいところはあるけれど、と前置きをする。

 

「ゲームが好きで、特に新しい世界を冒険したりするゲームや、仲間と一緒に何かをやり遂げるストーリーが好きなのは伝わってきたわ」

 

口から魂が抜け出ていた才羽姉妹の顔が、ユウカの言葉を聞いて徐々に目の色に光が宿ってくる。

この世の終わりから一転、翌日から急遽一週間丸々休みと変わった時のように顔に喜色が宿る。

 

「そんなあなたがゲーム開発部の部員として、何らおかしな所は無いわ」

「えっ」

「ということは……?」

「ええ、規定人数を満たしているので、ゲーム開発部の存続を承認します」

「「やったぁ!!」」

 

喜色あふれる笑顔で、引き続き部室を使用できることも確認し、喜びにあふれる才羽姉妹。

そんな中でユウカが才羽姉妹の喜びに水をさした。

 

「今学期までは、ね」

「「えっ?」」

「あら、知らなかった?今は部活の規定人数と、成果を証明しないといけないの。最近変わったばかりの規定だから猶予はあるけどね」

「でも、その猶予期間は今月末まで。だから今月中に結果を出さないと部員が何人いようとも廃部になるのよ」

「嘘だ!ありえないよそんなこと!」

「嘘じゃないわよ。この間の全体部長会議でちゃんと説明した内容なの。でも、あなた達の部長のユズは参加していなかったけれど」

「つまり、あなた達の責任ね」

 

アリスの正体を始めとして、ツッコミどころ満載なゲーム開発部だが、ユウカなりにゲーム開発部を気にかけていた。

ユウカの手に掛かれば、廃部からの部室から本日即日退去させることもできた。それでも即日退去にせず、猶予をもたせたのは、ゲーム開発部に対する期待が込められていた。

 

「ねえモモイ、あなた言ったわよね。ミレニアムプライスでびっくりするくらいの成果を出してみせるって」

「そ、それはそうだけど……」

「新しい仲間も増えたんだし、前作よりももっと面白いゲームを作れるんでしょ?期待しているわよ」

 

ゲーム好きな仲間で集まり、新しいゲームを作り出す。

新たなゲームを作り出すのは非常に困難で苦しいものだ。方向性、ゲーム性、それらすべてが同じ方向を向いていないといけない。

何かと"燃えやすい"部活であるのが難点だが。

一年生だけで頑張る部活は少なくは無いが、これだけ尻に火が付いた状態で更に発破を掛けたかったのか。

ユウカは悠々と部室を出ていった。

 

「行っちゃった……まだゲーム開発部の危機が過ぎ去ったわけじゃないんだよね」

「でもこんなのは詐欺だよ!謀略だよ!」

「……私が会議に参加できなかったせいで……」

「ユズちゃんのせいじゃないよ。こんな時はお姉ちゃんが代わりに出る話だったんだから」

「アイテムドロップ率2倍キャンペーン中だから仕方なかったの」

「やっぱりお姉ちゃんのせいじゃん!」

「……とにかく、私達がやるべきことは一つ、だね」

「そうだね」

「ミレニアムプライスで受賞できるようなすごい作品を作る」

 

あの廃墟に行くのは嫌だと駄々をこねるモモイ、その時ユズが小さな声で「責任を取らないと」と言えば、聞こえたミドリがユズに振り向き、「大丈夫なの?無理しなくても良いんだよ」というが、ユズの意志は固かった。

半年間外に出ず、授業はインターネット受講だけで済ませていたユズ。そんなユズの決意を変えることは容易では無い。

 

「私は、ひとりじゃないから。それに……この部室も私だけもものじゃないから……」

「ユズちゃん……」

「ユズ……」

「パンパカパーン!ユズがパーティーに加わりました!」

「……うん!やるしかないね!行こうよ!」

「アリスちゃんも武器用意して!行こう!」

「今度こそG.Bibleを手に入れるよ!ゲーム開発部の未来は私達で決めるんだよ!」

「「おー!」」

 

控えめなユズの掛け声は才羽姉妹とアリスの掛け声にかき消されてしまったが、ゲーム開発部の士気は最高潮に達していた。

 

 

また別の場所では、懐からデバイスを取り出したイシュがゲーム開発部の会話から動きを察知していた。

廃墟の調査と、ゲーム開発部と先生の護衛も兼ねての同行だろう。

それに、アリスに対するカウンター。もし、何らかの事故などで敵対することになっても、イシュならアリスを戦闘不能の状態までできる。

手元のデバイスを操作してリオ会長へ連絡をいれる。

 

「何かしら」

「廃墟に行くからAMAS付けて」

「分かったわ」

「ねえリオ会長、最近、何か焦ってない?」

「どうしてかしら」

「アリスを、AL-1Sを見つけてから焦ってるように思うの。もしかして”名もなき神々の王女"に関係あること?」

「まだ言えないわ。今は推測でしかないもの。確信に変わったらあなたにも教えるわ」

「はーい」

 

通信が途切れてから、リオは思案に浸る。

アリスは、AL-1Sは、名もなき神々の王女は、キヴォトスを滅ぼせる存在。

名もなき司祭達が作り上げた戦闘兵器。

 

「……キヴォトスも、ミレニアムも私が守るわ。例え、私自身を犠牲にしても……!」

「リオ様……根を詰め過ぎているように思えます。お休みください」

 

心の奥底で何かが悲鳴をあげている。自身の心の悲鳴にすら蓋をして。見えない痛みに気付かないフリをして。

一人の生徒を犠牲にすることでキヴォトスの平和、ひいてはミレニアムの生徒たちの安寧を天秤にかけるのならば、リオ自身の犠牲すらも厭わない。

思考の海に沈む少女は、リオ会長の背後に控えるメイドにすら知られることなく、瞳に暗く淀んだ光を纏っていく。

 




ここまで拙作をお読みいただきありがとうございます。
技術面についてはAI先輩に相談しました。調べはしましたが、未プレイの14要素も含めてご指摘等がございましたらよろしくお願いいたします。
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