独物語~ゆきのフォックス~   作:フリューゲル

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ご覧いただき、ありがとうございます。

なんとかゆきのフォックス 其之肆を投稿することができました。
今回は俺ガイルのキャラクターのみでお送りいたします。

クロスオーバーなのに話が全然クロスしなのには、ご容赦下さい。
後程、しっかりとクロスします。

それではご覧下さい。


ゆきのフォックス 其之肆

 阿良々木先輩の依頼に対して、俺たちの取り組み方は、各々で調べるということだった。由比ヶ浜の交友関係は広いが、雪乃下の所属している国際教養科までには届かないため、雪乃下が単独で調べる必要が出てきた。

 

 

 俺については、ほ、ほらあれだよ。由比ヶ浜は友達が多い分主観的に物事をみてしまうから、主観的によるデータの偏りを防ぐために行動する、みたいな。やはり主観と客観、両者合わせて分析しないと。そもそも二人が同じクラスだから、母集団に対して、対象者の偏りが反映されてないから、学年の傾向を果たして限密の調査することが難しい。よって正しい結論に結びつかないというか……。

 

 

 閑話休題。

 

 

 この方針について、誰も異論がでることはなく、すんなりと決まった。俺も雪ノ下も、単独で動くことには慣れているし、さっきの話は冗談だとしても、幅広く調べることは必要だ。由比ヶ浜はこのやり方については反対をするかとおもったが、しなかった。ただその案が雪ノ下の口から出て来たときに、本当に少しだけ、泣きそうな表情をしただけだった。雪ノ下は、由比ヶ浜がそんな顔をしたことを知らない。雪ノ下は提案するときに、俺と由比ヶ浜の間の空間を見て話していたから、表情までは把握していないだろう。

 

 

 本当に効率がいいのは、三人の適材適所で調べる領域を分担することだ。結局三人ばらばらに動いても、結果的に分担することにはなるのだろが、それでも得られる結果は、最良よりも遙かに劣るだろう。最初から区分を分けると、範囲を指定せずに闇雲に調べるのでは効率が段違いだ。しかし、俺たちはそれを理解しながら、この方法を選択した。俺たちは互いのことを理解していない。だからこそ、最良のやり方は、最も非効率なのだ。

 

 

―――――――

 

 

 何事も最初が大事とよく言われる。その通り世の中は初めてのものに、やたらと価値を付けたがる。初詣、初鰹、初牛、初婚。……なんか最後だけ生々しくなってしまった。つまり初めてやることには、次回以降よりも何倍も価値があるということだ。「私、初めてだから……」なんて、女子から恥ずかしそうに言われたら、人類の半数が喜ぶのもの具体例の一つだ。

 

 

 だからこそ、俺が初めて告白をしたことも、今となっては貴重な甘酸っぱい思い出として、語ることができるだろう。いや、やっぱ無理だ。今軽く思い出しただけでも、吐き気がする。

 

 

 話が逸れた。つまり今回の調査にしても、俺がいる二年F組を最初にすれば、他の何件かよりもよっぽど価値があることになる。別に他のクラスに行くのが、面倒くさい訳ではない。

 

 

  ということで授業の合間の休み時間。俺はいつものように机に突っ伏していた。いつもと違うのは、目を醒まして、周りの会話を聞いていることだ。自らの視覚を封じて、聴覚を発達させる、まるで「るろうに剣心」の宇水さんになった気分だ。

 

 

  由比ヶ浜は、変なおまじないが流行っていないかを、それとなく聞いて回ると言っていたが、俺のアプローチは違う。俺は人間関係に注目する。それまで仲の良いグループが喧嘩しているだとか、どこか距離を取っているとか、陰口を積極的に言っているだとか、そういう事例が多すぎるかどうかをまず確認する。その後、その現象が意図的であるかどうかを調べたほうが合理的だ。

 

 

 耳を澄ませていても、特にそれらしい会話は聞こえてこない。聞こえてくるのは、「カントリーロード」だけだった。これは俺の脳内から流れてきている……。

 

 

 まぁそもそも、現状で問題が発生している訳ではないしな。ないものは見つからないということだ。

 

 

 

 「ヒッキー。ちゃんと調べてる?」

 

 

 

 授業を挟み、次の休み時間の同じようにしていると、後方から声をかけられる。

 

 

 五分くらい目を閉じていたせいか、やたら日の光が眩しい。目を細めながら振り返ると、由比ヶ浜の顔が近くにあり、目が合う。

 

 

 「ちょっ!ヒ、ヒッキー。ち、近い……」

  

 

 

 「お、おぅ……、悪い」

 

 

 

 由比ヶ浜は頬を赤らめながら、俺から距離を取る。ちなみに俺の心臓はバクバクだった。女子とこんなに顔が近くになったのは、戸塚以来だ。……どこかおかしい気がするが、何も思い当たらない。

 

 

 葉山たちの方に顔を向けると、葉山がサッカー部のマネージャーと話しているとこだった。こういう時に三浦がどこにもいないのが、少し怖い。おそらく真面目な話をしているから、配慮をして席を外していると信じたい。由比ヶ浜は、この間を見計らってこちらに来たのだろう。

 

 

 

 「さっきからずっと、突っ伏しているだけじゃん!」

 

 

 

 「何を言うか、俺くらいになると一を知り、十を知ることなんて、朝飯前だ。だからこそ、一を一生懸命調べているんだよ」

 

 

 

 「だったら十を知って、百を知ってよ!」

 

 

 

 由比ヶ浜にうまく返されてしまった。普段こういうやり取りでは、俺が丸め込むことが多いため、割と新鮮な気持ちになる。

 

 

 

 「中二とか、ヒッキーしか相手にできないんだから、ヒッキーか聞きにいってよ」

 

 

 

 「材木座かぁー。あいつも友達いねぇしな」

 

 

 

 高校二年生にも関わらず、由比ヶ浜に中二と呼ばれている人物とは材木座である。

 

 

 名前だけ見ると、第一次産業に引き取られそうな名前をしているが、実態はただのオタクであり、中二病だ。「私は総てを愛している」とか宣って、何百万の戦死者を率い、破壊の慕情を振りまきながら、万物を灰燼にする、みたいな物語が大好きなのである。やだ、かっこいい……。これはどちらかというと、厨二病と書くほうが近いな。

 

 

 

 「でも阿良々木先輩って、思ったより怖くなかったね」

 

 

 

 「お前、あの人のこと知ってるのか?」

 

 

 

 「結構有名だよ、阿良々木先輩。授業さぼったり、テストも欠席したりしてるんだって。それで時々生傷とかが付いてたこともあるから、不良じゃないかって」

 

 

 

 あの人そんなことしていたのか。意外と危ないことしているんだな。しかし不良なんて言葉も、なかなか聞かないな。どっちかっていうと、今はチャラ男だし。汎用型戸部、みたいな感じで。

 

 

 

 「『不動の寡黙』って言われているらしいよ」

 

 

 

 あの人、そんな二つ名があるのかよ。

 

 

 

「だから、どこかとの抗争の解決とか、そういうのを想像しちゃった」

 

 

 

 「それは漫画の読みすぎだ」

 

 

 

 「ヒ、ヒッキーに言われたくないなぁ。小町ちゃんが、ヒッキーが日曜の朝からプリキュア見るのをやめさせたいって言ってたよ」

 

 

 

 「バカお前、プリキュアはいいんだよ。誰だってプリキュアを見て育つ訳だ。教育の教科書と言ってもいい。だからこそ、俺はその教科書をいつまでも大切にして、常に宝物として眺めているんだよ」

 

 

 

 「ごめん、ヒッキー、まじキモい」

 

 

 

 どうにかして、由比ヶ浜にプリキュアの良さを刷り込もうかと考えていると、由比ヶ浜が「じゃあ、また部活でね」と言ってくる。どうやら葉山の用事が済んだらしい、どこに居たのか全く分からなかった三浦が、いつの間にか葉山の近くにいる。あいつ忍者かよ。

 

 

 

 由比ヶ浜が去っていった後も、突っ伏して会話を聞いていたが、特に有益な情報は得られなかった。

 

 

 

―――――――

 

 

 そんな事を続けて二日、昼休みに、余所のクラス近くの会話も盗み聞きをしていたが、特に変な噂は流れていなかった。悪口なら多少は聞いたが、意図的なものではなく、仲良しグループの中の一人がいなくなった時に、

 

 

 

 「あいつ、うざくね」

 

 

 

 という類のものだった。つくづくぼっちでよかったと思う。 

 

 

 放課後、奉仕部の部室へ行くと誰もいなかった。どうやら俺が一番早く着いたらしい。といっても由比ヶ浜は掃除当番だったので、俺よりも遅いのは当然だ。おそらく雪ノ下も同様の理由だろう。

 

 

 ところが、由比ヶ浜が来て幾ばくかしても、雪ノ下は来ない。由比ヶ浜が雪ノ下にメールで連絡を取ると、

 

 

 

 『ごめんなさい。今日は体調不良で学校を休んでいるの』

 

 

 

 という返事が来た。

 

 

 

 「どうしよう。ゆきのんの家にお見舞い行ったほうがいいかな?」

 

 

 

 「やめとけ、あいつは自分の弱っている所を見られるのが嫌なタイプだからな。明日には学校に来るだろう」

 

 

 

 そう言って、いつもの様に読書用の本を開いて、どっかりと構える。由比ヶ浜は多少納得いかない顔をしたものの、雪ノ下に返信をするといった後、携帯をずっといじっていた。

 

 

 ところが雪ノ下は次の日も休み、そして二日後の金曜日も学校を休んだのだった。

 

 

 




ゆきのフォックス 其之肆でした。

小ネタを挟むのが楽しくて、ついつい小ネタが多くなって
しまいました。

次回の更新は、少し遅れると思います。

では、また次回。

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