やっと物語シリーズのキャラクターを増やすことができました!
……あともう二人くらいは出したいな。
それでは、ご覧ください。
春休みに、阿良々木先輩は美しい吸血鬼に襲われてしまったそうだ。襲われたと言っても、取って食われた訳ではなく、阿良々木先輩自身も吸血鬼になってしまったらしい。その春休み、身の毛がよだつ体験を何度もし、何度も死んでは生き返るという地獄を経験して、なんとか人間に戻ることができたそうだ。
「だからと言って、完全な人間に戻れたわけじゃない。僕は吸血鬼もどきの人間だし、美しい鬼は今はもう、見る影もなくなってしまっている」
その美しき鬼の成れの果てが、現在阿良々木先輩の影に住んでいる幼女、忍野忍だという。
―――――――
「忍……、まだ昼間だってのに、どうして出てきたんだ?」
「ロリキャラが、全く出ていないことに気付いての。このままだと、お前様のモチベーションが下がると思って、ロリ成分を補給するために儂が出てきたのじゃ」
「二言目から、僕の評判を著しく落とすようなことを、言うんじゃねぇ!」
「そういえば、元ツンデレ娘の『二言目』という曲は大変良かったの」
「それには全面的に同意したい所だが、全く関係ない話をするな」
「今気付いたんじゃが……。元ツンデレ娘というと、何故か元モーニング娘と近い字面を感じさせると思わんかの?」
「お前はもう帰れ!」
吸血鬼の割りに、随分と俗っぽいな……。しかも、思いっきり太陽の光を浴びてるし。まぁ今時の吸血鬼は大体弱点を克服しているしな。
「何この子? 超可愛いー。阿良々木先輩、この子抱いてもいいですか?」
「残念じゃが、儂の肋骨は、我が主様のものじゃ。安易に触らせることはできんの」
由比ヶ浜は阿良々木先輩を、不審そうに見つめている。いつの間にか、由比ヶ浜の手は、携帯電話を手に握りしめていた。一体どこに掛けるつもりだろうか? まぁ警察だろう。
「い、いや。違うんだこれは。僕は忍の肋骨を、ギロみたいに弾いたりはしていない」
語るに落ちていた。あまりにも変態過ぎて、由比ヶ浜が口を閉じるのを忘れている。
「と、ところで、狐憑きとは、どんな怪異なんだ?」
あからさまに話をすり替えたが、俺も由比ヶ浜も何も言わない。この話題を掘り下げたら、もっとエグいエピソードが出てきてそうで怖かった。
「お前様……。まぁ良い。そもそも儂が出てきたのも、この件を説明するためじゃしの」
そうだった。幼女が出てきて混乱してしまったが、そもそも雪ノ下の件で、阿良々木先輩に相談をしたのだった。まさか雑談から話が進まないとは思ってもみなかった。
「読んで字の如く、狐の取り憑かれることじゃ。だがの、狐に憑依されると一言で言っても、色々あっての」
「それって、お前が吸血鬼の中でも、希少種みたいなものか?」
「少し違うわい。そもそも、江戸の頃は狐憑きとは、精神病の一種とされておっての。真面目な人間が、急に自堕落になったり、暴力的になったりすると、狐が憑いたから変になったと、理由をつけてたのじゃ」
「それは、障り猫の様な話か? 実はそいつの本性だったオチの」
「障り猫とは違うの。狐憑きの場合、本当に憑かれていたことが多いの。狐自体が意思を持つと思われていたからどうかは、分からんが」
どこか安心する。あの人懐っこさが、雪ノ下の本性だとしたら、キャラが崩壊するどころじゃないぞ。
そこで吸血鬼幼女は、咳払いを一つする。
「そして、先にも話したが、怪異の狐にも種類がある。どんな動物も善と悪の性質を持つようにの。東の国では、狐も稲荷信仰に稲荷大明神として、祭り上げられておる一方で。西の国では妖孤として、畏れられていたそうじゃの」
そういえば、おかしくなった雪ノ下は神様と自分で言っていた。
「そこの腐った男が言っていたじゃろ。別の女が、夢の中で白い狐に追われていたと。白狐といっての、稲荷信仰では幸福の象徴となして、崇められておる。おそらく、そいつが憑いたんじゃな。だから物の怪の類ではない、安心せい」
「でも、ゆきのんは今、困ってるよ?」
由比ヶ浜が尋ねる。雪ノ下は現在進行形で問題を抱えている。福をもたらすならば、困るなんてことにはならない。あと腐った男って……、海老名さんが喜びそうな名前だな。
「もう少し待っとれ。ただ神様となった狐が、若い娘に憑いたという寓話も存在する。その場合は、願いを叶える代わりに、稲荷祠の修繕や、供え物をしていうことをしたいたそうだの」
まぁ、ある種の神託じゃ――吸血鬼はそう続ける。
なら、雪ノ下は何を祈り、何を要求されていたのだろう。あいつが神に祈るほどの願いなんて、俺には全く想像できない。
「では、どうして陽乃さんは、性格を奪われたんですか? 雪ノ下に憑いたなら、陽乃さんは関係ないじゃないですか」
見た目は幼女だが、五百年ほど生きているらしいので、タメ口でいいか迷ったが、敬語で話しかける。
「そんなのは簡単じゃろう。その憑かれた奴が、奪うことを祈ったからじゃ」
そうだ、誰かが望んだのだから、結果として陽乃さんに被害が及んだ。そしてそれが、引き起こすとすれば、今のところ雪ノ下だ。しかし、そのことがにわかに信じられない。他人の足を引っ張るなんて、あいつが最も嫌悪していたはずだ。
「それで忍。狐耳を治すには、一体どうしたらいいか分かるか?」
「狐の要求をのんで、達成すればよかろう。さすれば、狐からどこかに行ってくれるぞ。儂の『心渡』で斬るのも手じゃが、……前者のほうが安全じゃろう」
まぁ、実際狐にあって見んと、これ以上は分からんの――そう言って吸血鬼幼女は、あくびをしながら、阿良々木先輩の影に戻っていった。
「悪いが、雪ノ下さんの所に連れて行ってもらってもいいか?」
呆然としている俺と由比ヶ浜に対して、阿良々木先輩はすぐにこちらに、確認を取ってきた。臥煙さんが言っていた通り、場数を踏んでいるせいか、行動が淀みない。
由比ヶ浜は口を閉ざしたまま、うつむいている。どう反応すればいいか分からない、といった所だろう。
要求をのむということは、雪ノ下の願いが叶うということだ。つまりそれは、陽乃さんの外面が奪われたままになることだ。それはきっと、まちがっているだろう。
―――――――
雪ノ下のマンションの大体の位置を確認すると、阿良々木先輩は、こちらに向いて尋ねる。
「もう一人だけ、外部アドバイザーみたいな形で、連れて行きたい奴がいるんだがいいか?」
どうやら連れて行きたい人は、以前怪異に行き遭ったらしく、多少精神面で雪ノ下の力になれるかもしれないらしい。
由比ヶ浜がそのことに賛成したので、一応雪ノ下に確認を取ると、意外にも許可が下りた。
その人の家は、学校を挟んで雪ノ下のマンションと正反対にあるらしく、俺たちは校門でその人の到着を待っていた。
「私を呼び出すなんて、いい度胸ね、阿良々木君。一体どうしてくれようかしら?」
いくらかすると、阿良々木先輩に、針のように鋭い声が掛けられる。
声の主に目を向けると、ショートカットの美人が天地魔闘の構えをしていた。すげぇシュールだ……。
その人は、レディースの白いシャツに、鮮やかなカーディガンを羽織り、ベージュのスカート履いているという、大人っぽい格好だった。
美人ではあるが、何よりこの人、スタイルが素晴らしい。スカートの長さは膝上くらいなのだが、ストッキングに包まれた足と腰の位置が、足の長さを際だたせる。ふくらはぎしか見られないが、それでも適度に引き締まっているその足は、俺の目を引きつけて離さない。
胸にしても、特別巨乳ではないが、身体全体のバランスで考えると、もっとも美しく見えるんじゃないかという位、ちょうどいいおっぱいだった。人間何事もバランスが大事だと、おっぱいに教えられるとは、人生というのは分からない。
カーディガンで身体のラインが隠れているから、正確には分からないが、それでも足の肉付きを見ていると、綺麗なくびれがあることを容易に想像させる。天地魔闘の構えにしても、シュールではあるが、女子でこれほど様になっているのも、この人のスタイルの良さを証明する一つの証拠だろう。
「ヒッキー、見とれすぎ」
由比ヶ浜が、頬を膨らませながらこっちを見ている。こらこら。子供みたいなことをするんじゃない。というか何で俺、こんなに細かく描写をしているのだろう……。まるで変態みたいだ。
「あれ、羽川さんは? ねぇ阿良々木君、私は羽川さんが居ると聞いたからこそ、神原とイチャつくことを、断腸の思いで延期させて、ここまで足を運んだのよ」
「僕は一言も、羽川が来るとは言ってねぇよ」
「えっ、本当なの、阿良々木君? 私、羽川さんに来ると思って、いつも阿良々木君に会う時の、二倍以上おしゃれしてきたのよ」
「傷つくことを言わないでくれ……」
「だから今日はこれでもう……、あら?」
そこでその人の視線が、由比ヶ浜に止まる。そして早歩きで、由比ヶ浜に近づいた。
「私は戦場々原ひたぎと言うわ。あなたの名前を教えて頂いてもいいかしら?」
由比ヶ浜が一歩後ずさり、どこか怯えているように見える。まぁ美人が近づいてきたら、そりゃ怯える。俺だったら逃げるレベル。
「ゆ、由比ヶ浜結衣です」
「そう……、とても良いお胸ね」
「ふぇっ!」
「違ったわ。とっても良いお名前ね」
あの人絶対間違えて無かったぞ。由比ヶ浜の胸をガン見してたし。というか、今も視線を一切離していない。
由比ヶ浜はなにを隠しているのか分からないが、手で服の上から、胸を隠している。服を着ていてもこの動作は、どこかエロさを感じさせるなと頭の片隅で思う。
「阿良々木君、私とってもやる気が出たわ。なんでも言って頂戴。阿良々木君が死にかける位までなら、何でもやるわ」
「何でお前、恋人の僕よりも可愛い女子をみる方がやる気が出るんだよ!」
もしかしたらと思っていたが、やはり、この二人は付き合っていたのか……。リア充爆発しろ!
「やっぱりお二人は、付き合っているんですね!」
由比ヶ浜は、さっきセクハラを受けたこと、一切気にする様子で、目を輝かせている。いいのか、それで。戦場々原先輩、お前の胸見てるとき、目が真剣だったんだぞ。
「いいことを聞いたわね。後学の為に私と阿良々木君のこと、何でも聞いてもいいわよ。一から十まで答えてあげる」
「じゃあ、じゃあ! お二人はどういう形で付き合ったんですか?」
「それを説明するには、私たちの出会いを説明する必要があるわ。確か……、階段で滑って落ちそうになった私を、阿良々木君が受け止めてくれたのよね」
「うわぁ! ロマンチックですね!」
「そのお礼に私は、阿良々木君の口内をホッチキスで綴じてあげたわ」
「うわぁ……、猟奇的だ……」
ロマンチックの欠片もなかった。阿良々木先輩は自分の事が語られるのが嫌なのか、そっぽを向いて恥ずかしそうにしている。普通に傷害事件がこの二人の間で起きていたのに、恥ずかしいで済むのだろうか……?
「おい、戦場々原。その話はいいから、とっとと本題に入るぞ」
「む、分かったわ。私と阿良々木君が、初めてベロチューした時の話をすればいいんでしょう」
「誰が恋バナの本題に入れと言った!」
流石に冗談はここまでなのか、阿良々木先輩も戦場々原先輩も、茶化すことなく雪ノ下の事情について話す。流石に以心伝心というか、冗談と本気の線引きが、はっきりしている。
「分かったわ。では、雪ノ下さんのお家に行きましょうか」
戦場々原先輩の一言で、この四人で、雪ノ下のマンションに行くことが決定した。
なぜか戦場々原先輩を先頭に進んでいるのは、突っ込んでもいいのだろうか?
ご覧いただき、ありがとうございます。
ガハラさんと忍は、物語シリーズの中でも特に好きなので、
本筋に絡められて凄く嬉しいです。
怪異の話をやっとできた……。
それでは、また次回。