時々ボソッと本音で愚痴る隣のアーリャさん   作:妄言a〜

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時々ロシア語でボソッと本音を愚痴る隣のアーリャさん

 

 

私立征嶺学園

 

 過去、政財界で活躍する卒業生を多く輩出してきた、日本トップレベルの偏差値を誇る中高大一貫校である。その歴史は古く、かつては貴族や華族の子女も多く通っていたという、由緒正しき名門校である。

 そんな伝統ある学び舎に向かい、並木道を歩く生徒達。

 友人やクラスメートとおしゃべりをしながら賑やかに校舎に向かって歩く彼らだったが、一人の女子生徒が校門を潜って姿を現した途端、その場の空気が変わった。

 彼女を目にした者はみな、一様に驚きと感嘆を露わにし、その姿を目で追った。

 

「うわぁ、何あの子?すっごいキレー」

 

「あんた知らないの?この前の入学式で、新入生代表で挨拶してたじゃないあのマリヤさんの妹さんよ」

 

「あの時は遠目だったから、すごい、近くで見ると、まるで妖精みたい」

 

そう囁かれながら美しい銀髪を靡かせ威圧的とも捉えられるような表情で歩く、整いすぎた表情や、日本人と違う目鼻立ちのくっきりとした顔の輪郭、元々無表情で歩いているのもあるが、顔が整っているせいでどことなく不機嫌なように感じてしまう。

 

周りの生徒たちもコソコソと遠巻きに見ては内緒話のように彼女の事を話題にはしているがまるで1本のラインが引いてあり、そこから先には入っては行けないように感じているのか誰も話しかけはしない

 

「君が九条さんかな?」

 

「えぇ、そうですけれど」

 

そんな時1人の男が話しかける、日本人にしたは目鼻立ちははっきりしていて、染めている茶髪も似合っていて。美少年と言って差し支えないだろう。

けれど話しかけられた九条は特に表情の変化はなくあっさりと目の前の男を見つめる

 

「もし良かったら僕と食事にでも行かないかい?」

 

「いえ、結構です」

 

「そうか、それじゃあせめて連絡先でも」

 

「いいえ、嫌です」

 

「そ、、、、そうかい…」

 

あっさりと断ると、特に興味もなかったのか一瞥するまもなくさっさと行ってしまう。

 

教室に着くと必要な物を取り出し机に座り、授業の準備を行い、それが終わると改めて隣の席に目を向ける

 

「はぁ、久世くんそろそろホームルーム始まるわよ?」

 

「んぅ、、?あぁ、アーリャかおはよう」

 

声をかけられるとゆっくりと頭を起き上がり、挨拶を返す、眠たそうに欠伸をし気だるそうに肘をついて改めてアーリャの方を見る

 

「まったく、学校は寝る場所じゃなくて勉学に励む場所よ?」

 

「そうは言ってもなぁ?昨日深夜までアニメみてたから眠くて、眠くて」

 

本当に眠いのだろう、喋っている途中で大きな欠伸をして目尻の涙を指で払う。

そんな久世に呆れたような顔で溜息をつき

 

【я тоже хочу спать】

 

「な、なんて?」

 

「全くだらしがないって言ったのよ、録画してあとで見るとかやりようはいくらでもあるでしょうに」

 

「何を言ってるんだいアーリャさん、1オタクとしてはやはりリアタイで見てこそアニメ制作者や原作者、はたまたその作品に関わった全ての方々に対するせめてもの礼儀だろう?」

 

「あら、なら私たちのために時間を割いて授業をしてくれる教師にも礼儀を払ったらどう?」

 

「そ、、それは…ほら?あの人たちも仕事だし?」

 

「アニメに関わってる方々も仕事でしょ」

 

「ぐ、そ、それにしてもアーリャは相変わらずしっかりしてるな?眠たーいとかだるいとかないのか?」

 

言葉につまり、真っ当な正論で殴られてしまえば勝負は一瞬でついてしまうため、あからさまに話題を変えてこれ以上の死体蹴りを避けるための華麗な回避。

相変わらずジト目で見つめていたがこれ以上言っても無駄と思ったのかまたため息をひとつして、

 

【私だってだるいわよ】

 

「えぇ〜、とぉ、、今なんて?」

 

「当たり前でしょって言ってるの、親にお金を払ってもらってる以上生半可なことは出来ないわ」

 

「…………さいですか」

 

(いや本音ダダ漏れですけどアーリャさん!!)

 

先程からボソボソとロシア語で呟いているのだが、アーリャ自体それが誰かに伝わっているとは思っていないため少し大胆にも見える方法で本音がポロッとこぼれてしまう

 

(さっきも私も眠いって、思いっきり言ってたじゃん、というかあれか?もしかしてアーリャも徹夜したのか?)

 

「アーリャさん昨日夜もしかして寝れてないのか?」

 

「?何よ突然、しっかり睡眠を取ったに決まってるでしょ、しっかり寝ないと次の日辛いじゃない」

 

(だ、だよなぁ〜あの真面目なアーリャがそんなことする訳)

 

【昨日4時まで推しの配信見ながらゲームしてたから眠いに決まってるでしょ何言ってんの】

 

(ぁ、全然夜更かししてるは、ふかしすぎて焼き芋できちゃうわこれ)

 

突然の暴露に意味のわからない独り言を脳内で呟いてしまう

 

「え〜っと今なんて?」

 

「久世くんじゃないんだからって言ったのよ?」

 

「うるせっ」

 

どう考えても4時まで夜更かししてるのでアーリャと久世は同類、なんなら明らかに久世より遅い時間まで起きているため飛び越えてしまっているが、久世には内容が理解できないと思っているのか小馬鹿にしたような表情で笑いかけてくるロシアン美女

 

(全部…分かってんだよなぁ)

 

久世はどこか遠い目をしながらチャイムが鳴るのを待った。

 

授業が始まると黒板にチョークで書き込む音と、生徒たちがシャーペンでノートに文字を書く音だけが静かな教室に存在する。

そんな中一応授業を受けようと机の中を探すがいくら探しても化学の教科書は出てこない。

 

「わりぃアーリャ教科書忘れちゃったから見せてくんない?」

 

「はぁ〜まったく、仕方ないわね」

 

「さんきゅ〜」

 

ため息をついて不服そうにしつつも教科書を見せてくれるらしい、久世はそのまま机をくっ付けて寄せられた教科書に目を通す。

 

【クマ誤魔化せないかもだからあんま近寄らないでよ】

 

(んっ?)

 

「どしたのアーリャ?」

 

「いいえ何でも、私が教科書を貸したんだから居眠りなんて許さないって言ったのよ」

 

「分かってるって、気をつけるから」

 

(クマ?なんの事だ?)

 

【軽くメイクで誤魔化しても距離近いとバレるかも】

 

(メイク?誤魔化す?はっは〜さては徹夜のせいでクマが酷くてそれがバレないか心配なんだな?可愛い所あるじゃんアーリャ)

 

そう考えながら軽くアーリャの顔を見つめるとぷいっとそっぽ向き、誤魔化すようにノートに視線を向ける、

その顔が軽く赤らんで居たような気がする

 

(ぇ、何その反応…めちゃくちゃ可愛い、乙女過ぎないか?)

 

今顔赤かったとか何とか言って確かめてみたいのは山々だが教科書を貸して貰っているので流石に授業を真面目に受けないのはダメだと思い、特に深追いせずに教科書に目を向ける。

 

【かっこいい】

 

(んっ!?)

 

今なにか聞こえた気がして全力で首を隣に向けたいのを何とかこらえて聞こえないふりをする。

 

(い、今なんか言わなかったか?聞き間違いじゃなきゃ、かっこいいとか何とか)

 

【横顔かっこいい】

 

(んっぐぅぅ)

 

全然聞き間違えでも何でもなかった、背中にびっしょりと嫌な汗をかいてしまい、これが春にしては気温が高く教室が少し暑いためか、それとも隣からの熱烈な視線と共に放たれる破壊力抜群の一撃のせいなのかは定かでは無い、はやる気持ちを抑えてゆっくりと隣を見る

 

「え、えっと、なんて言ったの今?」

 

「べ、別に?真面目に授業受けるの似合わないって言ったのよ」

 

「俺だってたまには真面目にやるぞ!?」

 

隣を見ると青い瞳がじっと久世を見つめていたが、目を向けるとぷいっとバツが悪そうに目線を逸らしていつものように毒を吐く。

 

「それより授業に集中しなさいよ」

 

「わ、分かってるって」

 

誰のせいで集中出来ないと思ってるんだコノヤロウ。

そう言いたいのを何とかこらえてまた視線を教科書に向ける

 

【ぜんっぜん気づいてな〜い♪】

 

(気づいてるし、分かってるわ!!人が言い返せないのをいいことに好き勝手言いやがって!)

 

羞恥なのか怒りなのかよく分からない感情をシャーペンを持つことで何とか抑える。

そこからは授業らしい静かで退屈な時間が過ぎていく。

先程のような爆弾なんてそうそう飛んでくるものでもなく、飛んできても困るが飛んでこないのであればもはや授業など子守唄にしか聞こえず、教師が教科書の内容を声に出す度にこっくり、こっくりと頭が揺れてしまい視界がぶれる

 

(いかんいかん、やればできる子政近君1度決めたことは何となくクリアするのが俺だ)

 

必死になって睡魔と戦い何か暇を潰せる物はないかと辺りをキョロキョロ見渡すとやはり視線は隣に向いてしまう

 

「んぅ……」

 

(アーリャさん!?)

 

姿勢よく真面目に授業を聞いていたと思っていた優等生が、こっくりこっくりと物凄い勢いで舟を漕ぎ始めていた。

まさにバタフライ並みのスピードで漕ぎながらも意地なのかなんなのか姿勢だけはピンッと正しく1本の棒が背中にあるかのように美しい座り姿を披露している

 

が、

 

むしろそれがさらに不安定でオールの速度を加速させている

 

「あ、アーリャさん?おーい」

 

「んぅ?んっぅ……」

 

キョロキョロ辺りを見渡し、周りがこちらに注目していないのを確認、その後隣で夢の世界に羽ばたこうとしているクラスメイトを内緒で起こすために行動を始める。

小声で声をかけながら、これは肩を叩いてあげた方が良いんだろうか?、いやでも女子に触るのは、とチキンを発動させていると軽く声を掛けるだけで良かったらしく、少しうるさそうにしながらも目をゆっくりと開けて当たりを見渡す

 

「ん………ん〜??ぁ…」

 

「そ、そのえっと…おはようアーリャ」

 

「ッ!?!?!?!?」

 

目が合い半開きでふわふわしていた視線ががっちりと久世に固定されると、目を見開き頬をみるみるうちに真っ赤に染め上げていくと声にならない声(小声)を上げそっぽを向く

 

【ェ!?ぇ!!?見られた!?見られたの私!?嘘、ど、どーしようどうにかしないと、どうしたら!?ぁ、、、や、やらないと、も、目撃者は消さないと】

 

(アーリャさん!?何怖いことブツブツ呟いてんの!?俺もしかして消される?嘘だろ!?クラスメイトの寝顔みただけで消されんの!?

でも大変可愛かったですありがとうございました!!)

 

ボソボソとロシア語で恐ろしいことを口走り目をぐるぐる回転させているアーリャと童貞男子ここぞとばかりにしっかりと寝顔を脳内フォルダに保存している謎の罪悪感で両者共に感情の大渋滞が発生する。

 

「あ、あのあれだぞ?でも大丈夫だから、めちゃくちゃ可愛くてお得なもの見れたって思ってるから全然、そのむしろ、ありがとうございました眼福ですって感じだから!」

 

何とか誤魔化そうととりあえず言葉をかけたは言いものの脳内で考えていたアホな思考が反映されてしまいガッツリ戦犯かまして言い訳ではなくただの供述になってしまう

 

「あ、あっそぉ…そんなに、見てたんだ私の…こと」

 

「え?いやいや!?違うからちょっと見てみたら…ってだけだから!」

 

何かがクリティカルヒットしたのか分からないが、ピクっと肩を震わせるとゆっくり久世の方を見てボソボソ蚊の鳴くようなしゃべり、割とガン見していたのは事実だが照れ隠しで大袈裟に否定する

 

「こら久世!静かにしなさい、ちゃんと授業を聞いてたのか〜?試しにここを答えてみろ」

 

「え?は、はい!」

 

思いのほかボリュームが大きなかったのか教師に注意されてしまい、問題を解くように言われてしまう。

慌てて立ち上がると黒板を見て内容を確認したは良いものの、化学の内容なんてこれっぽっちも脳内に入っている訳もなく、意味もなく脳みそは回転して空回りを繰り返している

 

「え、えっとぉ〜」

 

「はぁ」

 

(アーリャさん!!ありがとう!)

 

その様子を見てられなかったのか教科書をシャーペンで指さし、答えを教えてくれる。

それに感謝しつつ

 

「答えは②の銅ッ!!」

 

「違う」

 

「ッ!?」

 

「まったく、授業は真面目に聞きなさい、代わりに九条答えられるか?」

 

「はい、⑧のニッケルです」

 

「正解だ、久世授業は聞いておけよ?」

 

「はい……」

 

意気消沈のまま席に座り、隣のアーリャを睨みつける

 

「おい!答え教えてくれたんじゃないのかよ!!」

 

「あら?私そんなことしてないわよ?」

 

「刺してた場所が明らかに②だったろうが!」

 

「なんの事かしら?全く分からないわ、それより声のボリュームを落とさないとまた当てられちゃうわよ?」

 

「ぐぅぅ…このやろぉ…」

 

【怒った顔可愛い】

 

(ふっぐぅ!?)

 

「い、今なんて?」

 

「ばーかって言ったのよ」

 

(嘘つけよ!なんだ可愛いって、それ褒め言葉じゃないだろ!)

 

意地悪い笑みを浮かべて何を言ってるのか分からない〜と誤魔化して、久世が拗ねると愛おしそうな笑みを浮かべて笑うアーリャ、その顔に見惚れてしまい視線を誤魔化すことで何とか抵抗する

 

【あーあ拗ねちゃった】

 

(別に拗ねてねーよ)

 

【でも私の初めてを奪ったんだから当たり前よね】

 

(はじっ!?)

 

もう絶対に起こしてやらんと心に固く誓い、何を言われてももう隣を見てやるもんかと固い決意を固めたものの、爆弾投下のせいでまた隣に首が動きそうになるのを必死に止める

 

(初めて!初めて家族以外に寝顔を見られたって意味ですよね!?そーですよねアーリャさん!)

 

ロシア語だから良かったもののこれが日本語で周りに聞こえるように言われてしまえば周りはもちろんなんなら久世本人ですら勘違いをおこしてしまいそうになるのを必死にこらえる。

 

「ちょっと」

 

「なんだよ」

 

「拗ねてないでこっち向きなさいよ」

 

「別に拗ねてッ!?」

 

「起こしてくれてありがと」

 

「お、おぅ…」

 

拗ねてると思われるのは心外なため振り向いて勘違いをただそうとした瞬間ドアップでアーリャの顔が映り思考は停止、そこから繰り出される純粋なデレ完全に打ちのめされ

 

(そこはロシア語じゃないのかよ)

 

本日の勝者

 

アリサ・ミハイロヴナ・九条

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