俺の個性?別に大したことねえよ   作:カバー

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映画観てきました。
いや〜デボラお姉様とお嬢様めっちゃ好きでした。
多分そのうち登場させます。


融解 その2

 

 

 

アーティカの二振りの短刀がイレイザー・ヘッドの捕縛布を切り裂き、バラバラに布切れが辺りに飛び散る。堪らずイレイザー・ヘッドは距離を取らんと後ろに跳び引くが、アーティカの身体能力の前では無駄な足掻きだ。瞬時に『珠音』の切先がイレイザー・ヘッドの首筋へと迫る。

 

「サセン!!」

 

瞬間、エクトプラズムの無数の分身達がアーティカを取り囲む。その隙にイレイザーヘッドはまた安全な距離を確保する。その瞬間、アーティカを取り囲んでいた5体のエクトプラズムの分身体はアーティカに打ちのめされ消滅した。

そしてエクトプラズムとイレイザー・ヘッドは固まって迎撃体制を取る。戦闘開始から実に3分。その間ひたすらこの展開が続いていた。

 

アーティカの勝利条件はこの二人の抹殺だが、ヒーロー達の勝利条件は違う。彼らは、群れなのだ。

 

 

**********************

 

アーティカ視点

 

こいつら、俺を倒す気がないな?

エクトプラズムの『分身』で攻め立てるのかと思えば、不利と見た途端に消極的になりやがって。

…時間さえかければ問題なくこの二人は処理できる。だがそれじゃあ意味がねえ。

こいつら、"増援"を待ってる。

耳郎ちゃんは気絶させられて少なくとも今は使い物にならない。

…ここで時間を浪費するのは不味い。

一番厄介なオールマイトはAFOが抑えているとはいえ、ここは都会の大豪邸だ。こいつらも俺と会敵する前に、他のヒーロー事務所に通報ぐらいしてるだろう。

…JPビルボード10位圏内のトップヒーローが複数人来たらゲームオーバーだ。

 

忍者ヒーロー『エッジショット』に、拘束技最強格の『ベストジーニスト』、速すぎる男『ホークス』、個人的に俺が抱きたいと思っているクールビューティ『リューキュウ』、腐れ縁だが仕事では容赦しない『ミルコ』、お子様に人気の洗濯ヒーロー『ウォッシュ』はまあいいか…。

一番厄介なのが不動のNo2『エンデヴァー』が来る展開だ。もし仮に他のトップヒーローとエンデヴァーが揃えば詰みだ。

 

ヒーローは戦ってくる限り無尽蔵に応援にやってくる。なんせ今はヒーロー飽和社会だ。

俺ならトップヒーロー相手でも一対一なら勝ち筋はいくらでもあるが、そんな甘い状況にはならないだろう。

 

つまり俺は一秒でも早く目の前のゴミ二人を掃除しなきゃならないわけだが…。

面倒くせェ。崩すのにここは敵らしく人質でも使うか。

そう俺は判断すると、即座にヒーロー二人を無視して元の部屋へと駆ける。狙いは気絶して伸びているこの八百万邸の主。

 

俺の意図を察したのか、プロヒーロー二人が守りの構えを捨てて死に物狂いで止めにくる。

…バカだな。だがそれがヒーローだよな。守る対象を見捨てられないよなァ!!

 

俺は部屋に入ると見させかけた寸前に正反対に方向転換し、本気の速度でイレイザーヘッドの懐へと入る。まず最優先で『抹消』は消す!

 

「しまっ…!」

 

「釣れてくれて助かるぜ!ヒーロー!」

 

 

俺は笑みを口元に乗せて煽りながらイレイザーヘッドの両腕の腱を『珠音』と『青虎』で一瞬で切断する。…これで捕縛布はもう無い!

エクトプラズムも反応がワンテンポ遅れた!

 

「死ねェ!!!」

 

そのまま『珠音』で邪魔な『抹消』の目も切り裂く。そしてトドメに渾身の蹴りを腹に叩き込む。イレイザー・ヘッドはそのまま廊下の端まで吹っ飛んで動かなくなった。

 

「オノレ…!ダガコノ隙ガ命取リダ!!」

 

そうエクトプラズムは叫ぶと、口から膨大な量の煙を放出する。それはみるみると巨大な人影を形作り、階下を突き破って巨大なエクトプラズムの分身を作り出した。

 

『強制収容 ジャイアントバイツ!!!』

 

分身の巨大な口が開かれ、俺を飲み込まんと迫り来る。禍々しいフェイスマスクに、この様相だ。まるでこいつ(ヴィラン)みてェな容貌だな。

だが。

 

「冷静さを欠いたな。…こっちの方がやりやすい。」

 

俺は即座に巨大な分身の口を前方に跳んで躱して、巨大な人形の顔面へと着地する。そして瞬時にエクトプラズムの前面へと移動した。

 

「巨大な分身より数で攻められた方が面倒だったぜ。あばよ、ヒーロー。」

 

俺はエクトプラズムの顎を蹴り上げる。その勢いでエクトプラズムは屋根へと頭から突き刺さり、動かなくなった。

 

「ったく。ざっと4分弱か?随分手間取っちまった。」

 

ご丁寧に耳郎ちゃんや八百万家の面々は巻き込まないように巨大化したらしい。おかげで回収が楽になる。

俺は廊下に倒れている耳郎ちゃんを担いで、無線イヤホンで即座に指示を出した。

さっさと帰還しよう。…美人母娘の躾が楽しみだ。久しぶりの上物な二人だ。スタイルも容姿も、おまけに個性まで申し分ない。耳郎ちゃんも可愛いし大好きだが、エロさで言えば断然こっちだろう。

 

「黒霧、『抹消』は排除した。ゲート頼む。…骸骨頭。プロヒーローが来た。もう連絡網切る意味もねェ。任務終了だ、お疲れさん。」

 

『了解しました。すぐに。』

 

そう俺に言葉を返すと、黒霧のモヤがすぐに俺の眼前に現れた。…本当に良い個性だ。流石にAFOが調整した死体なだけはあるな。

 

『じゃあ俺はさっさと退散するぞ。報酬は口座に入れておいてくれ。』

 

そう骸骨頭からも連絡が来る。そしてすぐに切れた。…順調だな。俺は現れた黒霧のワープの中に気絶した耳郎ちゃんをまず放り込む。そして部屋の中へと入った。すると、美人な八百万母娘の蹲っていた部屋の隅が、不自然な鉄製のバリケードで守られていた。

 

「はっ。ガキの浅知恵かよ。」

 

俺は無造作にその鉄製のバリケードを素手で引き剥がす。即席のものだけあって脆い。数枚捲ると、震えながら八百万のガキが生成した鉄パイプで殴りかかってきた。

 

「やああああああァ!!!!」

 

…おっそ。俺は呆れながら鉄パイプを片手で軽く受け止めると、八百万のガキの手を捻り上げた。そして耳元で低く呟いた。

 

「あんまりつまんねェ真似すると父親が死ぬぞ。」

 

「………ッ!?う、…うう…。」

 

その一言で戦意喪失したのか、八百万のガキは体を恐怖で震わせて抵抗しなくなった。俺はそんな八百万のガキをお姫様抱っこして、同じように隅で震えていた、八百万のガキそっくりの母親に命令した。

 

「ついて来い。さっさとしろ。」

 

八百万のガキの母親も、震えながらも娘を思ってか立ち上がった。黒霧が廊下から部屋へと入ってくる。そして感心したように呟いた。

 

「…これで目標達成ですね。死柄木弔も喜ぶでしょう。」

 

「どうかな。爆豪ってガキを余計拐いづらくなったぜ?…というか話は後だ。さっさとこの二人送ってくれ。時間がない。」

 

「そうですね。直ちに。」

 

黒霧は、家族を人質に取られ、恐怖で震えてただこちらを引き攣った顔で見つめるだけの母娘二人を飲み込んで、俺のアジトへと転送した。…さて、それじゃ帰って早速お愉しみといくか。

 

「んじゃ、俺も帰ると…ッ!?」

 

 

 

瞬間、寒気が全身を覆う。先程までのプロヒーロー二人とは比較にならないプレッシャー。第六感が叫んでいる。…強敵が迫ってくる。すぐ側にまで!

窓から凄まじい程の眩い炎熱の光が部屋に差し込む。俺は咄嗟に叫んだ。

 

「黒霧ィ!ワープで回避!急げェ!」

 

黒霧も現状を把握したのか即座にワープで離脱する。次の瞬間、この部屋の全てを灼熱の炎が焼き尽くした。

俺は咄嗟に反対側の窓から外へと転がり出る。

…ひとまず目標はクリア。黒霧も上手く回避できたようだ。…後は俺が逃げ切れば俺の勝ち。だが果たして…

 

「…ワープは逃げたか。まあいい。貴様を焼いてアジトの場所を吐かせる。」

 

全身に炎を纏った紺色のコスチュームに身を包んだ燃えるような赤毛のその男は、刺すような瞳で言葉を続ける。

 

「投降するならさっさとしろ。五体満足で捕まりたければな。」

 

参ったな。考えていた最悪のパターンが現実になった。…いや、まだ"最悪"ではない。他の実力派ヒーローの姿はない。つまり単独。

ここで戦うという選択肢はない。エンデヴァー相手に無傷で勝てるわけがないし、確実に長引いて他のヒーローが加勢にくる。それが最悪のパターン。

 

つまり俺の勝利条件は、こいつを振り切って逃げ切るか、黒霧のワープゲートを開く隙を作ること。

そう判断した瞬間、俺は全速力で屋敷の庭園へと駆け込んで、一気に跳躍。屋敷を出る。

…背後から灼熱が迫り来る。足元から炎を爆速で噴射して空中でホバリングしてんのか…!器用だなァ!

 

ヒーローと敵の、命懸けの鬼ごっこが、始まった。

 

 

**********************

アーティカ視点

 

 

「イグナイテッド…アロー…!!!」

 

俺の頬を灼熱の槍が掠って地面に突き刺さる。…こいつ本当に俺生かして捕らえる気あるのか?半分殺す気なんじゃねェか?

そう思いながらも俺は街中を走り抜ける。…最初は路地裏に逃げ込もうとした。だが俺が逃げ込もうとする路地裏には、常にヒーローが先回していた。…質自体はエンデヴァーと比べれば雲泥の差だ。だがその雑魚どもを蹴散らす間はエンデヴァーに背中を晒さなければならない。

 

「一撃でも貰ったらそれなりのダメージだからなァ…!!」

 

流石に『ヘルフレイム』と言われるだけはある。小技の一つ一つがそこらのヒーローの必殺技並みだ。

だがそれ以上にこの街中の様子…一般市民が居ない。それに高所のビル群にいつの間にか追い込まれている。…いるな。狙撃手。警察だろう。数カ所から常にこちらを牽制している。

 

「…ちっ。」

 

今もビルの屋上からの狙撃の銃弾を短刀で弾きながら忌々しく俺は呻いた。

俺を殺すためじゃねェ。ワープの隙を与えないための布陣だ。路地裏にも行かせず、市民を人質にもさせず、ひたすらに追い込むための。

 

…この数分間で、ここまで読んで俺を追い詰め始めたのか。…エンデヴァー…!!

 

エンデヴァーは空中をホバリングしながらも、灼熱の一撃を常に浴びせてくる。正直逃げながら躱し続けるのも中々に疲れる。だが。

 

「それは悪手じゃないか…?知ってるぞ。お前は長時間戦闘"だけ"は得意じゃない。身に熱が籠るから…!」

 

ヒーローの弱点。それは"個性"を世間の目に晒していること。つまり自分の個性を相手が分からぬまま押し付けるという勝ち筋が一つ消えているのだ。当然欠点も見えてくる。

まあその状態で並の敵を寄せ付けないのがトップヒーローなのだが。

その最たる例が全盛期のオールマイトだろう。

…個性の詳細は不明だが、超パワーというのは理解できる。というか弱点がない。

 

俺はビルの側面を熱で溶かしながら踏みつけてこちらを追いかけてくるエンデヴァーを睨みつつ観察する。

 

…だいぶ熱が籠ってるな。エンデヴァーの明確な弱点。その膨大すぎる熱量に、体が耐えられないこと。故に戦闘の後はサイドキックにより消火され、熱を冷ます。

その姿は俺だってよく知っている。

…俺が見た限り、あと大技一発で限界といったところか。

 

「お前が限界を迎えれば…その隙に邪魔な雑魚ヒーローどもを蹴散らして逃げて終わりだ。」

 

そう小声で呟いて俺は走り続ける。…だが、その瞬間は不意に訪れた。

俺を挟んで立ち並ぶビル群の屋上から、狼煙のような煙が複数上がる。そして、けたたましいサイレン音が街中に鳴り始めた。

 

ウウウウウウウウ…

 

「…あ?」

 

瞬間、熱気が全身を包む。背後から、烈火の竜巻が俺を燃やし尽くさんと迫っていた。

 

 

**********************

 

 

人質の保護から指定凶悪敵、アーティカの確保及びアジトの特定へと即座に設定目標を切り替えたエンデヴァーは、その為に予め計画していたプランBへと切り替えて敵を確実に追い込んでいた。

 

『エンデヴァー!マジェスティックとシンリンカムイ現地入りしました!…セメントスも目標地点で待機中です!』

 

その自身のサイドキックのバーニンからの連絡を受けて、エンデヴァーは淡々とアーティカの背中に向けて灼熱の炎を飛ばしながら指示を出した。

 

「よし。俺はこれから5分間冷却に入る。その間を二人にフォローさせろ。決して逃すなよ。…冷却前に予定通りアレをやる。」

 

『了解!エンデヴァー!!』

 

そう通話し終わると、バーニンを始めとしたビル群の屋上に待機していたサイドキック達が、次々とその狼煙を上げた。

 

 

狼煙を確認したエンデヴァーは地面へと降り立った。その身から凄まじい灼熱の炎を噴出し、大気をも巻き込んで巨大な炎を生成し始める。

 

『FLAME ON!!ブチ上げろ掃滅の烽火!!!』

 

サイドキック達がその合図を一斉に叫んだ。

 

「業火燎原 ヘルファイアストーム!!!」

 

ビル街の気流を利用した、緻密な個性運用と圧倒的な火力の芸術的組み合わせ。

それによって生み出された街路を舐め尽くすように疾走する巨大な火災旋風は、凄まじい速度でアーティカを、冷却中のエンデヴァーの代わりに追いかける。

ヒーロー達の包囲網は、最終局面を迎えつつあった。

 

 

 

 

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