俺の個性?別に大したことねえよ   作:カバー

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八百万の母親の個性と名前は独自設定です。
個性は遺伝の要素が強いのでこんな感じかな〜と推測して設定しました。


悪意と善意の成長

 

 

 

アーティカ視点

 

 

 

黒霧のワープゲートから落下すると、いつもの自室のベッドの上だった。ふかふかの高級寝具の柔らかな感触が全身を包むものの、内臓を蝕む熱さと痛みは消えない。

 

「ぐっ…っそ。モロに内臓焼きやがって。俺じゃなかったら死んでたぞ…?」

 

オールマイト以外のヒーローは歯牙にもかけないと半ば軽んじていたのは事実。そのツケを払わされたな。死柄木の坊主のために、出来うる限り壊す対象は残しておこうとヒーローは壊さないように意識していた。…だが最後は素で危なかった。プロミネンスを喰らっても死にはしなかったろうが、意識は飛んでただろう。

まあ唯一潰したかった『抹消』持ちのイレイザーヘッドは潰せたからまだ良かったが。

 

そう苦々しく自分を省みながら上半身を起こして、ベッド脇のテーブルに用意していた医療箱を開いた。その中から紫色に光っている液体の入った無骨な注射器を取り出し、腕を消毒液付きのガーゼで擦ってから血管に突き刺した。

 

「…ふぅ…。」

 

これはドクター特製の回復剤だ。並の人間なら耐えきれないレベルの興奮剤etcの劇物だが、俺にはよく効く。

 

長く息を吐いてベッドに横になる。すると、ドタドタと凄い音を立てて俺の部屋の前まで走ってくる影があった。俺の愛しの女、耳郎ちゃんだ。

俺の姿を見ると、三白眼の目に涙を浮かべて、そっと優しく俺に抱きついた。

そして震える手で俺の腕を掴みながら弱々しく呟いた。その瞳には、怒りと困惑、そして強い動揺が滲んでいた。

 

「良かった…本当によかった…アーティカさんになにかあったらウチ…一人ぼっちになっちゃう…。」

 

その姿はまるで母親に縋る子供のようだった。…その涙目の上目遣いの少女に、俺はゾクゾクする快感を抑えることができなかった。つい先日までヒーローを目指していた、眩しくも輝かしい将来を約束されていた少女。突発的な敵の襲来にも果敢に立ち向かった少女。

恵まれていた先進国の輝かしい才能。

それがどうだ。震えながら俺にしがみつき、幼児のように依存している少女。小ぶりな胸を俺に密着させ、スレンダーで小柄な肉体を今俺は全身で堪能している。

…この征服感と高揚感、俺の中の飢えが少し満たされた気さえする。

俺はそっと優しく耳郎ちゃんを抱きしめると、ショートカットの繊細な毛並みの髪を優しく撫でながら呟いた。

 

「大丈夫だよ、私は何処にもいかないからね。…愛してるよ、耳郎ちゃん。」

 

耳郎ちゃんは少し俺の豊満な胸に顔を埋めて泣いていたが、やがておずおずと顔を離した。

 

「や…ごめんなさい。ハズいね。こんなに取り乱して…。アーティカさん怪我してんのに…。」

 

そうやって手を離して立ちあがろうとする耳郎ちゃんの肩を引き寄せて、数分間柔らかな唇を奪って、小さな口内を堪能した。

唇を離すと、耳郎ちゃんは力なくへたりとベッドの上に座り込んで、ジト目でこちらを見つめて、顔を赤くして呟いた。

 

「何度言っても急ですからもう慣れたっちゃ慣れましたけど…。好きな人からのキスなんですから、もうちょっと情緒というか…その…何というか…。」

 

その照れ顔がまた可愛らしくて、今度は十分近く唇を奪ったのだった。咳き込みながらも耳郎ちゃんは、満更でもなさそうにしていた。

そんな耳郎ちゃんの顎を指の腹でくすぐりながら俺は問いかける。

 

「八百万母娘は?どうしてる?」

 

「んっ…取り敢えず縛って地下二階の訓練場に放ってます。二人とも気絶させてるんで暫くは大丈夫だと思いますけど…。」

 

俺は耳郎ちゃんの顎を指の腹で撫で回して可愛がりながら穏やかに言葉を返す。

 

「賢いな…それでいい。『創造』持ちなら縛ってても脱出する可能性が高いからね。…よし。なら行くか。」

 

俺はほくそ笑んでベッドから立ち上がって、新たな俺の女達を躾けるために耳郎ちゃんを連れて地下二階へと向かった。

 

 

**********************

 

地下二階の訓練場のコンクリの壁に、二人の美女と美少女の母と娘が気絶してもたれかかっている。

八百万のガキはテレビで観た雄英体育祭の時には髪を結んでいたが、今は母親の方と同じく髪を下ろした姿で気絶している。

…にしても二人とも立派なもんを持ってるな。

八百万のガキはこれで15…15歳?おっぱいでけ〜…。発育の暴力だなこれは。それでいて鍛えて腹は引き締まっているのが分かる。まさにボンキュッボンだ。

母親の方は若干娘と比べてたおやかな体つきである。腹は少し緩んでいるが、それが逆にセレブの上品な人妻といった雰囲気を醸し出している。

 

俺はエンデヴァーに殴られたのも帳消しになれるぐらい上機嫌で気絶する二人の前へと歩き、しゃがみ込んで二人の頬を叩いた。

 

「おい…おい。起きろ。」

 

「…ぅん……ッ!!ひっ…!!」

 

八百万のガキは、薄らと目を開けると、俺の顔を見てか細い悲鳴をあげた。恐怖で目を見開き、ガチガチと震えている。

…だいぶ精神的にキてるな。

八百万の母親の方も同様だが、流石に大人だけあって自分より娘の方が大事らしい。震えながらも必死に俺に問いかけてきた。

 

「な、何が目的なのですか…!身代金ですか!?まさか百をそこの…耳郎さんと同じように敵に…!むぐっ…!?」

 

俺はそのまま喋り続けようとする八百万の母親の口をそっと左手で塞ぎ、右手の人差し指を立てて口の前で微笑みながら静かにとジェスチャーをした。

 

「…俺は別に君達に酷いことをしたいわけじゃないんだ。」

 

そう朗らかに緊張をほぐす様に、二人に優しく話しかける。

 

「ただ、耳郎ちゃんの様に俺の大事な人になって欲しいんだ。…俺は貧困国の生まれで、5歳の時にテロで母親を失ってね。父はもともと俺達を捨ててたし、一人で傭兵の道を生きてきた。」

 

「寂しいんだよ。だから一緒にいて欲しいのさ。…そうしてくれれば、俺は君たちの願いを何でも叶えよう。…安心してくれ、お二人とも。」

 

「…アーティカさん。」

耳郎ちゃんが大事な人と呼ばれたことに嬉しそうに反応した。…可愛いな。

 

俺はそう甘く微笑んで二人の頬をそっと撫でる。…恐怖で縛られた後の安堵。最初の揺さぶりはこれが一番効く。

八百万の母親の視線が若干ぐらつく。

だが俯いて震えていた八百万のガキは、意を決した様に涙目でこちらを睨んで叫んだ。

 

「何が…何が酷いことをしたくないですの!?お父様を執拗に痛めつけて…!!私たちを無理やりここまで連れてきて…!」

 

「み、身の上話が本当なら同情しますが、だからといって罪を犯していい理由にはなりませんわ!貴女のお母様だってきっとこんな事…!」

 

「あ?」

 

瞬間、気がつけば俺は八百万のガキの頭を掴んでいた。恐怖に震えて八百万のガキはぱくぱくと魚の様に口を開いては閉じている。

…いけないな。俺は慌てて八百万のガキの頭をそっと離して答えた。

 

「…悪ィな。ただ、君が悪いんだぞ。」

 

「二度と俺の前で、"まだ"俺の女でもないくせに母を分かった様に喋るなよ。殺すぞ。」

 

その怒気が伝わったのか、二人は無言で押し黙って震え始めた。…うーん。少し追い詰めすぎたかな。耳郎ちゃんのように『どっちを殺すゲーム』をさせようかとも思ったが、これ以上追い込んだら壊れてしまうかもしれない。

地道にいこう。まだ6月の初めだ。

俺は立ち上がると、淡々と言い聞かせた。

 

「先に言っておくけど、もし仮に君か母親が、『創造』の個性で電話を作って外部への連絡を試みたり、その他反抗的と思われる態度を取ったと俺が判断したら、母親か君の腕をへし折る。」

 

この親子が共に『創造』の個性を持っているのは把握済みだ。八百万美神に、八百万百。

…黒霧のワープで位置が分かっていないとはいえ、アジトの位置を生成した発信機か何かで把握しないとも限らない。なら簡単だ。

まず従順にする前に、抵抗する気力をへし折る。

 

「次は足だ。その次は…そうだねえ。昔どっかの国のゲームで、骨を一本ずつ折って、助けてくれと懇願するのがいつ"殺してくれ"に変わるかを賭けるゲームがあったらしいんだけど。」

 

「やってみようか?」

 

俺が笑顔でそう問いかけると、恐怖で二人とも声も出ない様だった。そして俺は八百万のガキの頭を撫でながら言葉を続ける。

 

「…二時間に一回は俺か耳郎ちゃんが様子を見に来るからね。その時に『創造』の生成物があったら、骨折りゲーム開始だ。」

 

「じゃあ、また明日ね。…1日に一回はご飯と水をあげるよ。…俺の女になる決心がついたら、そう言ってね。」

 

 

俺は耳郎ちゃんを連れて地下一階の居住スペースへと戻る。…八百万母娘の様子は監視カメラで常時観察中だ。

『創造』には脂質を使う。食事を与える量を制限すれば日が経つほど苦しくなる。その間に、俺の女一号に働いてもらおうかな。

俺はシックな黒色のカバーの自分のスマホを取り出して、電話をかける。数コールして、電話が繋がった。

 

「よお、俺だ。…なんだ。あのテレビ中継観てたのか。元気さ。腹は多少痛むがな。それで、至急頼みたいことがあるんだが…。」

 

俺は裏で活動するに当たって、最近ほど派手ではないものの、俺の愛しの女であり駒であるメンバーはそれなりに集めてきた。

…その活動中で、二度死を覚悟したことがある。

一度目は無論、全盛期のオールマイトの一撃を貰ったとき。

そして二度目は…公安の手先であるあの女ヒーローに、狙撃で肩を撃ち抜かれた時。

 

「レディ・ナガンの活動記録が欲しい。…無理じゃねえだろ。お前公安じゃねえか。え?最重要機密?…まあ、うん。頑張れ。んじゃ、いつものポストで受け渡しで頼むわ。」

 

俺はそう伝えて電話を切る。…この国を裏活動で治安維持する組織、公安。当然俺が一番警戒しているのは奴らだ。

…だからまあ、当然だよな?

躾けた女を紛れ込ませて、動きを読もうとすることぐらい。

そう電話し終わると、耳郎ちゃんが問いかけてきた。

 

 

「…なんかウチの時とはやり口が違うスね。どうする気なんですか?」

 

「ん?ああいう真面目ちゃんに一番効くのはな。」

 

俺はその瞬間を思い浮かべてニヤリと笑いながら答えた。

 

「自分の信じる社会の正義ってやつを粉々に打ち砕くことなんだよ。」

 

さて。八百万の母娘の方は、まずガキを堕とそう。少ししたら母親と娘で隔離するかな。…母親ってのは、娘を大事に思うものな。

…それは俺が一番よく知っている。

その次は、エンデヴァーだ。俺に傷をつけた分の仕返しは、入念にしてやらねえとな…。

 

 

**********************

 

 

 

デパート経営等の事業展開で知られる、八百万グループの邸宅への敵襲撃は、センセーショナルな事件として瞬く間に世間に報じられた。

一人残された八百万家の家長への身代金要求などの連絡は未だなく、耳郎響香誘拐事件の犯人と同一犯のことから、同じく敵への"洗脳"が目的と思われる。

この一件に対して雄英高校の敷地外で起こった事件であることから、賛否両論だった生徒保護のための全寮制の先見の明が評価され、世論は少しずつだが変化しつつあった。

 

そんな中で、雄英高校教師陣は耳郎響香誘拐の際と同様に、警察の塚内警部と合同で、緊急の会議を行なっていた。

…一人の席が、空いてしまったが。

 

重い空気の中、根津校長が重い口を開いた。

 

「…病院から連絡があったよ。相澤くん、命に支障はないそうだ。ただ…眼球に、後遺症が残るだろうと。プロヒーローとしての活動は…もう…。」

 

瞬間、サングラスとトサカの様に逆だった金髪のプレゼント・マイクは、いつもの陽気さが感じられないほど怒気の籠った顔で机に拳を叩きつけた。

 

「……山田くん。」

 

その隣の席の過激な服装の18禁ヒーロー、ミッドナイトは震えるプレゼント・マイクの肩を悲痛な顔で撫でた。

 

「…なよ。ふざけんなよ!!クソ!!何であいつがこんな目に遭わなくちゃいけねェんだよ!?」

 

その悲痛な叫びに、場の全員が沈黙する。塚内警部は、無表情気味の彼にしては珍しく、目を伏せて淡々と言葉を述べた。

 

「…申し訳ありません。黒霧というワープゲートで逃げた以上、まだアーティカの潜伏地は判明しておらず…。」

 

その言葉に、ガスマスクで表情が読み取れないが、悔しさを滲ませた口調でスナイプが呟いた。

 

「…成果は無しか。歯痒いな。厄介すぎるぞ、ワープは…。」

 

肩を怒りで震わせていたプレゼント・マイクは、やがて絞り出すかの様に低い声で、押し黙って俯いているもう一人の教師に問いかけた。

 

「…あの場には、本来もう一人居たはずだよな。」

 

「なあ!?平和の象徴さんよ!?相澤が死にかけてる間、あんた何してたんだ!?半身浴にでも興じてたか!?」

 

「やめろマイク!!…悔しいのはみんな一緒だ。」

 

筋肉質なB組担任のブラドキングが、叫んだプレゼント・マイクを嗜めた。腕を組み、悔しさで震えている。その姿を見て、マイクも押し黙った。

オールマイトは下を向いてポツポツと言葉を返した。彼にしては酷く珍しい、弱々しい姿だった。

 

「…………すまない。(ヴィラン)の罠にかかり、無様にも分断されてしまった。」

 

「相澤くんの怪我は、全て私の責任「オールマイト!」

 

その自嘲めいた言葉を、根津校長が制した。

そして覇気のある口調で言った。

 

「前にも言ったろう。それは悪い癖だよ。全てを一人で背負い込もうとしないでくれ…。ただね。」

 

「知っていることがあれば全て私達に話して欲しい。今の我々には、とにかく情報が欲しい。」

 

「君は、黒幕に心当たりがあるんじゃないか?」

 

根津校長は、鋭く言葉を続ける。その目には、生徒を守るという覚悟の炎が灯っていた。オールマイトは暫く沈黙して躊躇っていたが、やがて淡々と言葉を返した。

 

「…言えません。奴の正体を知れば、皆も危険に…。」

 

その瞬間、プレゼント・マイクが立ち上がってオールマイトの襟を掴んで叫んだ。

 

「だから何だってんだ!?俺達はダチと守るべき生徒を奪われてんだよ!」

 

「危険!?んなもん上等だね!そんなもん背負う覚悟、俺達全員持ってんだよ!!」

 

その場の教師であるプロヒーロー全員が、プレゼント・マイクの言葉に賛同するかの様にオールマイトを見つめた。

その光景を見て、塚内警部はため息をついてオールマイトに諭した。

 

「…もう話すべきじゃないか?アーティカについてこちらでも調べたら、あの男の影が浮かんだ。どのみち、いずれ相対することになるだろう。」

 

「塚内くん……………。分かった。そうだね。」

 

「なら話そう。私の奴との因縁…"AFO(オールフォーワン)"についての話を。」

 

その数日後、雄英高校は生徒の全寮制の導入を正式に発表した。生徒達の両親達の間で、雄英への不信感よりも敵への危機感の方が勝ったこと、そして世間の敵への危機意識の変化が後押しした形だ。

加えて生徒だけではなく、保護者も雄英校内の宿泊施設に住み込むことが可能となった。

さらに根津校長の、『崩壊』の個性に対するプランも進行しつつあった。

雄英高校は痛みを伴いながらも生まれ変わろうとしていた。

 

そしてまた…

 

 

「黒霧。これ映ってんのか?」

 

「ええ。問題ありません、死柄木弔。」

 

ある短い動画が、ネットの海へと解き放たれた。その悪意の塊は、やがて世間に潜む小さな悪意達を纏め上げ、巨大な勢いを生み出していく。

 

「あー…社会のゴミども。俺が敵連合のリーダー、死柄木弔だ。」

 

悪意もまた、進化する。

 

 

 

 

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