にじさんじ甲子園2024   作:詞連

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ギラギラホスト高校1年秋・スカウト

 ソフィアは野球少女である。ポジションは捕手だが、キャチャーとしての能力より打撃力、特に打ってからの走り出しが良いという評判を受けている。

 彼女は今、中学3年生。周りが進路を決める中、彼女は11月の今になっても決めかねていた。

 進学先にもだがそれ以上に、野球を続けるかどうかという選択に迷っていた。

 彼女の所属した野球チームは今年、全国まで駒を進めた。ソフィア自身も出場し、活躍もした。名もそこそこ売れ、自分も含めチームメイト達もスカウトの声がかかっている。

 光栄なことだ、断るのはもったいない、と思う反面、ソフィアはこうも思っていた。

 

「もう、いいんじゃないかな?」

 

 全国という舞台に立ってソフィアは知った。自分は『ごくふつう』だということを。

 部活や学校といった狭い世界の中にあっては、ソフィアは抜きんでた存在だった。しかし全国大会という広い場に出た時、世間にはもっととんでもない化け物達が闊歩していることを知った。

 そこで戦い、十分実力を発揮し、一定の結果を得られた時、『ごくふつう』の少女であるソフィアは思ってしまったのだ。

 

 自分はよくやった。ここが自分のゴールで、もう十分だ。

 

 諦観と満足感。ソフィアの足は完全に止まっていた。

 気持ちは野球引退に完全に傾いている。決断しきれていないが、それは今までの惰性と、勿体ないという感情があるから。言い換えれば最早理由はそれだけであり、野球をすることへのモチベーション自体は完全に尽きていた。

 

「君、ウチこない?絶対輝けると思うんだ」

 

 ソフィア・ヴァレンタインが不破湊監督に出会ったのは、そんな11月の雨の日だった。

 

 

「じゃあねソフィ!春待ってるからね!」

 

 スカウトを終え、意気揚々と帰ろうとする不破。ソフィアの愛想笑いの下は、申し訳ない気持ちでいっぱいだった。

 

(いい感じの返事をしてしまった。そんなつもりはないのに)

 

 推しが強いのにそれを感じさせない話術によって、つい首を縦に振ってしまった。ホスト特有のトーク術という奴なんだろうか。

 

(後で正式にお断りの返事をしよう)

 

 そう思ったソフィアに

 

「あ、そだ」

 

 不破は振り返り

 

「今月末、練習試合あるから、ちょっと見に来ない?」

 

 

 2週間後、11月23日。

 ソフィアはギラギラホスト高校のグラウンドに来ていた。

 練習試合。相手は中堅、江州高校。ギラギラホスト高校から見て格上だ。

 試合内容は、下馬評通りだった。

 打力も、守備力も明らかに差があった。ギラホスは1年エース舞元の力投で抗うも、ポロポロと失点を重ねる。攻撃においては6回に3点の反撃をするも、次の回には3点を取り返される。

 結果は10-3で8回コールド。惨敗といっていいだろう。だがソフィアはその試合から目が離せなかった。彼らがあまりに輝いていたからだ。

 どれだけ離されても諦めない。わずかにでもチャンスがあるなら全力でそれを獲りに行く。キラキラ、ではない。ギラギラだ。炎のような勝利への渇望がその奥に見えた。

 そしてその炎は、少女の消えていた心に火を灯した。

 

「野球、したいな」

 

 

 

 春、ソフィア・ヴァレンタインはギラギラホスト高校の門をくぐることになる。

 そこで彼女は、ギラギラホスト高校のかけがえのない戦力になると同時に、書類のミスで入ってしまったホスト科にて『ホスト科始まって以来の女誑し』の称号を得ることとなるのだが、それはまた別の話である。

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