春、と言うにはすでに照り付ける太陽が激しい沖縄の砂浜。
ふれんず学園高校野球部監督にして女騎士フレン・E・ルスタリオは、バットを剣のごとく携えその人物を睥睨していた。
その人物とは、少年だ。黒髪の、少女と見紛うような容姿。ふれんず学園の制服の上に、ロープで簀巻きにされている。
「申し開きは?」
フレンの問いに少年――ましろは顔を上げフレンを見る。
フレンの姿――定例の砂浜での練習に備えた水着姿をみて
「Good!」
笑顔で言った。手が空いてたらサムズアップをしていたことだろう。
よし手打ちだ、とバットを振りかぶるフレンを
「監督、まったまった、シャレにならん」
止めるのは新入生のアンジュだ。止められたフレンは憤懣やるかたないといった様子で
「だって!だってこいつ、私の天使をあんないやらしい目で嘗め回すように見て……!」
「いや、こいつがそういう奴だってのはスカウト時点でわかってたことでしょ」
ましろはスカウト組だ。冬の間にフレン自身が見出して連れて来た。ましろがついてきた理由は、まあ、お察しである。
入部当初、外見から受けていた美少年という印象は、半日と経たず『女好き』に上書きされた。
まあ、それでも具体的な行為、行動に及ばないことから、大凡部員から受け入れられ、あるいはスルーされている。
具体的には
「監督。私もう練習に戻っていい?サラのコンバートの練習に付き合いたいし」
「サラやめましょう1回」
私の天使改め戌亥とこの言葉に、同担拒否勢のフレンは死にそうな顔で言う。
どうやら冷静になった、というか別の事案に意識を持ってかれたフレンをみて、どうやら許されたらしいましろはほっと一息。
そんな彼のロープを、同じ1年の奈羅花が解きながら
「ましろん。いい加減にしないと本当に処されるよ?」
「いや、仕方がなくない?みんな可愛いし」
まあ、否定はできない、と奈羅花は思う。
現状、3年先輩を除くと、男子は長尾とましろだけ。それもみんな美人ぞろい。かなり華やかな空間が出来上がりつつある。
「けど、真面目にやらないと……」
「そこは大丈夫。野球はマジでやるから」
そう言うましろの目に、嘘の色はなかった。
ましろはスカウト組だ。中学の頃から野球で成果を出してきている。それは才能によるものだけではなく、真面目な練習がもとになっているのは、このわずかな期間で理解できている。
自他ともに認められるエロガキではあるが、それ以外のところはまともな野球少年。それがましろなのだ。
「練習して頑張って勝とう!」
「うん。私、負けって言葉が世界で一番嫌い!」
そう言って新入生の二人は、練習の輪に入っていった。