他にもいろいろ書きたいチームはあれど、とりあえずはここで一区切り。
あとは、育成期間のエピローグと言うか、本戦のプロローグ的なのを1本書いておしまいの予定。
7月2日早朝。にじさんじ高校のグラウンドに二人。社築と椎名唯華だ。
野球キャップをかぶったユニフォーム姿の社と、キャップもかぶってない椎名が、ベンチから誰もいない朝のグラウンドを眺めていた。
今日は、夏の県大会の第一回戦。3年目、最後の夏だ。
「ついに来た、って感じやねぇ」
「だな」
思い出すのは、泥だらけの、公式戦未勝の3年間だ。
「先輩達には世話になりっぱなしだったな」
「技術書まぁじで助かった~」
「新入生も、こんな一勝もしてないような部活に良く入ってくれたよな」
「今年はほぼ留学生でマジびびったよねぇ」
「だからってマネージャーしてた四季凪を『お前が新入生だぁ』はねえよ」
「だって眼鏡かけてるし英語いけそうやったし」
「眼鏡にどんな信頼してんだ。まあ、結果的に才能が腐るほどあって、薄かった投手陣が補強されたのは良かったけど」
「名将の慧眼って奴よぉ」
「三下監督が何言ってんだ」
社の軽口に、椎名の言葉が帰ってこなかった。
社が隣に目を向ける。椎名の表情は見えない。長い前髪が、俯き加減の彼女の顔を隠している。
「ごめん、なんか、公式戦勝たせてあげられなくて」
次の瞬間、社が何かを言おうとしたのを遮るように、
「明日で最後だから、最後まで付き合ってよ」
彼女が笑って言う。
見知った彼女の、この三年間見たことないような、綺麗な笑顔。作られた笑顔。
その顔に――
「何言ってんだお前」
「わっぷ」
――社は、自分がかぶっていたキャップを被せた。
「それに明日で最後、じゃねーだろ。明日が始まりじゃねえか」
「……」
「あー、それと!謝るんじゃねえ!らしくないっていうか、お前の個性が無くなるだろうが!」
「……」
「というか、何だその、そういうの!もっといつもらしく……」
「……くっさ」
「……あ?」
「ナニコレくっさ。加齢臭?」
「かえせぇっ!」
ブチ切れながらキャップを引っぺがす社。
キャップの下から現れたのは、
「やしきずの対応に愛を感じたね。やっぱ真実の愛はやししぃにあるんだよぉ」
いつもの、ムカつく笑顔。
「やししぃはないです」
それに対して勤めて社は冷たい声音で返す。
いつものやり取り。いつものパターン。いつもこうやって戦ってきた。公式試合は逃したが勝利も得てきた。
そして、仲間も得てきた。
「あ、やししぃだ」
「まとめて呼ばないで欲しいんですけどぉ!?」
背後からかけられた声に、キレ気味に社が振り向いた。
そこにいたのはマネージャーの先斗寧と、野球部のメンバー達だった。
「なんだ、おめぇら早えじゃん」
そういうのは、2年のレンに抱えられたでびでびでびるだ。
社は肩を竦めて
「一応キャプテンと監督だからな。遅刻したらまずいから、こいつを迎えに行って早めにつれて来てたんだよ」
「やっぱりヤシシィでしょ、コレ?」
でびを抱えたレンゾットのコメントに対し、顔を引きつらつつ社は沈黙する。何を言っても泥沼だと思ったからだ。
ギャーギャーと、全くバラバラで癖の強いにじさんじ高校野球部メンバー。
これが3年間の成果、ではない。ついに必要なカードが集まったのだ。ここからなのだ。
バスが来る。行先は市立球場。天気は晴れ。今日は野球日和だ。
さあ、楽しもう。椎名は叫んだ。
「ぃぃ野球の時間だぁぁぁぁぁぁぁっ!」
こうして、にじさんじ高校の快進撃は始まった。
実は筆者の地元が秋田だったので超応援してた