銀河立超チャイカ高校は、全宇宙から技術の粋を集めて作られたハイテク高校だ。
日本の岩手とオーストラリアのポートキャンベル沖から延ばされた2本のワイヤーによって支えられたV字振り子型機動エレベーターの先に校舎はあり、地上との行き来はワイヤー内に組み込まれた真空チューブ列車を用いる。
そんな未来的超技術によって運用される超チャイカ高校の野球部員たちは今、
「腰がいてぇえっ!」
4月の末、晴天の下、岩手の片田舎で草むしりに励んでいた。
「兄上、なんで私達、地上で肉体労働してるんですか?」
「それはな、賢妹。宇宙に野球場出来るようなスペースがないからだ」
汗を流しながら肩で息をする白皙の少女、リゼに、腰を押さえながらチャイカは返す。
場所は機動エレベーターの乗降口の近くにある運動場だ。超チャイカ高校の運動部の練習場の多くはここに集まっている。
青草に浸食された野球場もその一部だ。ゴールデンウィーク前。暦の上ではまだ春だが、日差しの強さだけは八月に匹敵する。そんな中で野球部の面々はグラウンドを整備していた。
「去年まで野球部、ろくに活動してなかったみたいですからねえ。ハイ監督、リゼ様」
と冷えたペットボトルを渡してくるのはマネージャーの瀬戸だ。チャイカは受け取って煽る。腰に手を当てながらグラウンドを見渡す。
春から機会を見て整備しているグラウンドは練習をする分には申し分ない程度にはなっているが、それでも勢いを増す雑草たちの侵略の魔の手は、日々の気温に比例して苛烈さを増している。
「侵略するのは俺達だ!植物などに負けてたまるか!」
とのチャイカ監督の号令の下、監督本人を筆頭に部員の殆どが草刈り鎌を片手に格闘中。
「ぇあ~」
とはいえ、やはり日差しが強い。1年の夜見は早速ばて気味。またしゃがみこんだ状態での作業は腰に来るものであり、早速3年の前田がダウン。
ベンチで1年の加賀美から
「ここですか!?先輩!?ここがいいんですか!?」
とマッサージを受けている。
そろそろ作業も限界か、と思ったところで、クラクションの音がした。
見れば田舎のランボルギーニこと軽トラが走ってくる。乗っているのは、なんと1年の石神だ。助手席には葉加瀬もいる。
「石神さん、未成年じゃ……」
「問題ないぞ、リゼ!ここは私有地だ!」
「チャイカ監督~みんな~!農薬持ってきたよー」
葉加瀬の言葉に、部員の表情が明るく輝く。
「冬雪天才!予算降りたの!?」
「自作」
「え、大丈夫、それ?」
「なんだっていい!この邪魔な雑草共を駆逐できるならなあっ!」
チャイカが言いながら農薬の詰まったポリタンクと散布機を、部員達と共に降ろしながらいう。
「いいかお前ら!この草共を侵略したら次の目標は高校野球界だ!この!銀河立超チャイカ高校の!野球による侵略をなあ!」
気炎を上げるチャイカ。それに従い声を挙げる野球部員達。
そんな光景を、少し離れていた所で見ていた、新聞部と掛け持ちのヒスイが、パシャリと一枚写真に撮った。
なお後日、新聞部が記事にした野球部の活動内容が教員の目に留まり、違法な農薬の使用が発覚。チャイカ監督はこってり怒られ、除草は人力継続となるのであった。
ガチャにこそ恵まれなかったが、がんばってほしい