旧ブロリーを(比較的)温厚な性格にしたい!   作:伝説のスーパー

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この俺が失踪したなどと、その気になっていたお前らの姿はお笑いだったぜ。
遅れてすみませんでした。

あと、フリーザファンの人、本当に申し訳ない。


ふ っ き れ た

 「だああああああああああああああああああああああああああ!!!」

 

 側面にやたらクレーターが多い以外は何の変哲もない岩山にて、少女の声が轟いた。

 見れば、少女は顔に血管が浮き出る程力強く叫んでおり、金色に輝く髪は逆立ち、眩いオーラが吹き上がっている。

 少女―――ビーナスこと俺は全力で気を高めていた。

 

 俺は大口を開け、乙女が出してはいけない声で叫ぶ。喉が痛むが、かまわず力を込めて叫び続けた。

 それによって吹き上がった気は、雷雲を呼び、山を崩し、星を揺らした。そのせいか、星全体がゴゴゴゴゴゴ…と絶えず鳴っている。

  

 「はあああああああああああああああああああ!!!!!! …ァ…っ…だ、っああああああああああ!!! ウ゛ッ…ゲホッ、ゲホッ…!!!」

 「ビーナス、お前なんのつもりだ…?」

 「ゲホッ…ん゛ッう゛ん……兄さん」

 

 いつの間にか近くにいたブロリーが咎めるような目で俺を見た。

 彼があんな目をするなんて珍しい。そう感心していると、彼が強い口調で言ってきた。

 

 「何故超サイヤ人になっている? 死にたいのか?」

 「いや、むしろ死にたくないからなってる。それよりどうしたの?」

 「どうしただと…? お前父さんの言いつけを忘れたのか?」

 「もちろん。『この星にいる間は超サイヤ人になってはいけない。これを破れば金輪際飯抜き』」

 「なら何故だ」

 

 彼の鋭い目線が突き刺さる。だが俺はそれに動じない。何せ、彼は今素の状態だからだ。

 俺は余裕の表情を浮かべ、これからしようとしていることを話した。もちろん、彼に納得してもらえるように言い方を工夫しながら。

 

 「兄さん。私はこの星を破壊し尽くすことにした」

 「…」

 「私が思うに、この星、いや、フリーザ軍という立場は私たちを縛り付けている。好きに星を壊せず、殺せず、何よりも兄さんと戦えない。父さんだってずっと食堂で働かされてる。そうまでしてここにいる理由は何か。私なりに考えた結果、そんなものは無いことが分かった」

 「なら何故ここで気を高めていた? こんな星さっさと吹き飛ばしてしまえばいいものを」

 

 ブロリーの疑問に、俺は得意げな表情でチッチッと舌を鳴らし指を振った。彼の目頭に血管が浮き出たが、飛び掛かっては来なかった。

 

 「フリーザをここに誘き出すためだよ。私は気を高めて死ぬほど叫んで星を揺るがした。これだけ存在をアピールすれば嫌でも情報が届く。己が恐れていた超サイヤ人かもしれない奴が現れたってね。しかもそいつは前から問題を起こしていたサイヤ人。放ってはおけないだろうね」

 

 フリーザを誘き出した後は全力で彼をボコボコにするだけ。そして、可能であればパラガスの目の前でとどめを刺し、フリーザ軍が終わりを迎えたことをパラガスにアピールするのだ。そうすれば、彼も慎重になりすぎたと思い直すだろう。

 そのあとはパラガスの好きにすればいい。フリーザ軍を一人残らず殲滅するのもよし、残党を力で屈服させるのもよし。そして、その兵力で宇宙帝国を築くという野望を果たすのだ。

 

 まぁ、これは半分本音でもあるがただの建前だ。

 本当は怒りながら力んだだけで超サイヤ人2に覚醒出来るのか試すついでに、ブロリーを誘き出して彼と戦うためだ。

 俺たち伝説のサイヤ人は戦えば戦う程強くなっていく。それは単純な戦闘力だけの話では無く、次のステージへの覚醒も含むものだ。この特性を使って超サイヤ人2に覚醒出来ないかと思い立ったのだ。まぁ、ブロリーも伝説の超サイヤ人2に覚醒するリスクもあるわけだが。虎穴に入らずんば虎子を得ず、だ。仕方あるまい。

 結局これが一番効率がいいのである。

 そうやって強くなり、戦闘で彼を満足させ、彼の情を維持する。そうすれば彼は俺を殺そうとしないだろう。

 

 「成程な…。だがメシ抜きになるぞ。いいのか? …いや待て。まさか、そのためにメシ作りの練習をしていたのか!?」

 「……もちろん」

 「な、なんて奴だ…!」

 

 全然そんなつもりは無かったが、ブロリーが驚いてくれたのでそういうことにしておこう。

 

 「だが料理が作れるからと言って、味が良いというわけではないはずだ。メシが質素になってもいいのか?」

 「ふふふ、実はね兄さん。私は父さんと遜色ない料理スキルを身に着けているんだ」

 「何ィ…!?」

 

 ブロリーは再度驚いてくれた。思ったのだが、ブロリーは飯と戦いのことになると感情が豊かになるタイプなのだろうか。

 彼が俺と戦ってくれるまであともう一押しだろう。パラガスの飯抜き宣言を恐れる必要は無いということを伝えるのだ。

 

 「よければ兄さんの分も作ろうか? 味は保証するよ」

 「フンッ! 誰がお前の作ったメシなんか食うか」

 「まぁ、兄さんはもう私の料理を食べてるんだけどね」

 「なっ、何時の間に…!?」

 「星々を流浪してる時とか、任務の時とかにね。その様子だと気付いてなかったみたいだけど」

 「バカな!?」

 

 驚愕。ブロリーの心情はそれに尽きるだろう。知らない間に嫌いな奴の手料理を食べていたのだ、驚かないわけが無い。

 というか、目の前でパラガスの手伝いをしていたのだから、普通俺の作った料理の存在に気付くだろう。俺が捌いた食材たちは全て廃棄されていたとでも思っていたのだろうか。

 まぁ、人は一度でも思い込むとごく当たり前なことに気付けないものだ。当初は違和感すら感じなかったのに、いざ振り返って見ると己を疑うレベルの鈍感さを発揮している。そんな経験を誰もがしたことがあるはずだ。多分それだろう。

 

 「さぁ、兄さん。変身して。サイヤ人らしく、思いっきり暴れよう?」

 「ぬぅ……」

 

 ブロリーは葛藤からか唸り声をあげた。

 それはパラガスの約束を破ることに対する忌避感かもしれないし、私の料理を食べて生きたくないからかもしれない。

 彼は単純なようで複雑な心の持ち主だ。彼の心で揺れ動く天秤がどちらに傾くかは彼にしか分からない。

 

 「…」

 「…」

 

 沈黙が俺たちの間を支配する。

 

 「…」

 「…」

 「…」

 「…」

 「…」

 「…」

 

 「………そんなに悩む?」 

 「黙れ」

 

 口をつぐむ。

 俺としては先にフリーザが来ても良い心持なので、今すぐ彼と戦うことに拘りは無い。しかし、このまま彼の葛藤を眺めているのも退屈だ。

 この時間を何に使うべきかと考えていると、覚えのある気がこちらに向かって接近してきているのを感じた。そのスピードはかなり早く、その者はかなり焦っていることが分かった。

 俺は彼がここに着いたと同時に軽く挨拶をした。

 

 「やっ、父さん」

 「ビーナス!! 何のつもりだ!?」

 

 パラガスは息も絶え絶えな様子で問い詰めてきた。

 彼は酷く汗を掻いている。その汗は疲れからか、焦りからか。何にせよ、彼は先ほどまで食堂の厨房にいたせいかエプロン姿のままであった。

 肩で息をする彼に向けて、俺は彼の問いに答えた。

 

 「フリーザを倒すつもりだよ。そのためにこうして存在をアピールしてるんだ」

 「やめろ! 今はその時ではない! 闇雲に行動するのは危険が伴う、もっと情報を集めてからでも…!!」 

 「臆病者はついてこなk……いや違う。父さんは一体何を恐れているの? まさか私たちがフリーザに負けるとでも?」

 「い、いや、そういうわけじゃないんだが……」

 

 そう言ってパラガスは言葉を濁した。俺は彼のそんな態度が不思議で仕方がない。一体何を恐れているのだろうか。

 彼の言葉をそのまま信じるのなら、彼は俺たちがフリーザに負けるとは思っていないようだ。それならば不安は無いはず。それなのに何故…?

 彼の目を見てみると、その眼には恐怖が宿っていた。その恐怖はまるで、どうしようもない災害の魔の手が己に伸びてきたらという、絶対的な存在に対する恐怖を連想させるものだった。魔の手から必死に逃れようと抗う弱者が、彼の内側に立っていた。

 そう、その眼だ。その恐怖の宿った眼には何が映っているのか。

 俺はそれを打ち倒したい。そんな思いを込め、俺は彼の眼に何が映っているのか注視した。

 

 そこには俺たちが映っていた。

 

 ああ、そうか。

 彼にとって俺たちはいつ己を殺めるかも分からない獣、否、災害なのだ。

 彼は俺たちがフリーザを倒した後を恐れているのだろう。興奮冷めやらぬ様子で星々を破壊しまわるか、それとも兄妹で死ぬまで殺し合いを続けるか、その両方か。どうなろうと彼にとっては命の危機に他ならないのだ。

 

 なるほど、彼はずっと探していたのだろう。俺たちの手を使わずにフリーザを殺める方法を。

 まぁ、前に聞かされた洗脳装置の話を考えると、結局はブロリーを武器として扱う方法に落ち着いたようだが。

 彼のことだ。ブロリーが操られたことに俺が激昂した時に備えて、俺の分の洗脳装置も用意していてもおかしくは無い。原作にあった1人用のポッドもそうだが、彼は計画そのものはガバガバなのに非常事態に対する措置はしっかりと用意する。

 だが、俺に兄妹揃って傀儡になる趣味は無い。

 

 「先に言っておくけど、父さんに危害を加えるつもりはないよ。私はただ、父さんの野望を叶えてあげたいだけ。いやまぁ、兄さんに殺されたくないっていうのもあるけどね。それ以外にも…一応あるけど、まぁ、悪意があるわけじゃない」

 

 実兄のMAD化は悪じゃないはず。

 

 「…悪意があるかないかの問題じゃない。お前らが少し暴れるだけで俺にとっては絶体絶命なのだ」

 「大丈夫。バリアを張るなりなんなりして父さんを守るよ」

 「だからそういう問題じゃ―――」

 

 突如として、黄色い光が俺とパラガスを照らした。

 その光の発生源は非常に近く、見てみると、苛立った様子のブロリーが超サイヤ人になっていた。

 彼は今にも溜息を吐きそうな様子で言った。

 

 「俺の前でごちゃごちゃうるせぇよ! お前らが何と言おうと俺は俺の好きにやる…」

 

 そう言うと、ブロリーは苛立った表情から一転して己の暴力性を曝け出した野蛮な形相に顔を歪め、溢れんばかりの気を高めると同時に空まで響くような叫び声を上げた。

 

 「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」

 「おお!? おおう!? や、やめろブロリー!! それ以上気を高めるなぁ!!」

 

 パラガスが慌てて制止しようと手を伸ばすが、今の彼の手には制御装置が握られていない。例えあったとしても、ブロリーの洗脳装置が取り付けられていないので彼の行動が無意味に終わることに変わりはない。

 

 「やめろブロリー!! 落ち着けェ!!」

 

 パラガスは必死に叫ぶが、結局のところブロリーの耳に届くことは無かった。

 やがて、ブロリーのサイヤ人としての本能が剥きだしになり、それと同時に彼の気が爆発し世界が何十にも移り変わるかのような衝撃が走った。風が舞い、雲がはじけ飛ぶ。

 次に目にしたブロリーの姿は筋肉モリモリマッチョマンの形態であった。

 

 理性無き白目が俺を睨みつけてくる。

 俺は好戦的に笑い、すぐさまパラガスにバリアを提供した。

 

 「じゃ、そういうことで」

 「待て待て待てッ――――!!」

 

 パラガスの悲鳴に似た叫びなど何処吹く風かのように、ブロリーが容赦なく飛び掛かって来て拳を突き出してくる。

 俺はそれを受け流し、カウンターとして彼の鳩尾を突き、蹴りを放って吹き飛ばした。

 追撃を仕掛けるべく俺は素早く接近する。その間にブロリーは体勢を立て直しており、はち切れんばかりのエネルギーが込められた気弾を放ってきた。

 俺はそれをスレスレなところで避けながら速度を上げ、瞬く間に彼と肉薄する。

 ブロリーは目を見開いていた。それは、俺が自身の顔に両手をかざすというぱっと見間抜けなポーズを取っていたからだろう。

 しかし侮ることなかれ。これは原作で数多の強敵を出し抜いて来た強力な技の構えである。

 

 「太陽拳!!」

 「―――っ!?」

 

 俺から太陽が如き眩い光が発せられる。その光は常人ならば失明し、その光のショックで気絶してしまう程の強いものだ。

 伝説の超サイヤ人のブロリーだろうと目で見て情報を得る生物である。持ち前の頑丈さやタフさのおかげで失明までいかないものの、一時的に視力は失われ、脳にダメージが入ったことにより平衡感覚を狂わされるだろう。

 そうしてブロリーが怯んでいる間に、俺は拳を叩き込もうとする。彼も負けじと拳を突き出した。

 拳と拳が衝突し、空間が波打つほどの衝撃が走った。

 

 骨が軋む音がした。腕が酷く痺れる。

 ブロリーに然程ダメージは無い。戦闘力に差があるのだから当然である。

 

 「この程度か?」

 

 彼が面白くなさそうに言う。

 

 「まさか」

 

 俺は強気に笑った。歯を剝き出しにした獰猛な笑みだ。

 頬に一滴の汗が垂れる。俺はそれを拭い、彼を睨みつけながら言葉を続けた。

 

 「超サイヤ人は怒りによって覚醒する。私は穏やかだから、今まで大きな怒りを感じたことが無かった。だけど…」

 

 そこで言葉を区切り、長く息を吸う。そして、胸の内にある感情を乗せるように重く息を吐いた。

 

 「いますっごくイラついてる」

 

 ここ最近、俺はストレスが溜まっていた。

 いつものブロリーはもちろんのこと、ベジータしかりパラガスしかり、厄介事が次から次へと自分に降りかかってきている。

 元を辿れば、原作準拠を望みながらもブロリーのMAD化やベジータの強化という原作改変を行っている俺の矛盾のせいなのだろう。

 だが、俺は傲慢だ。どちらもしたい。しかし、必ずどちらかは切り捨てなければならない。そんな当たり前のことに悩み苦しみ、逆恨みの心さえも俺の中にあった。

 

 どうしてブロリーはこうも我儘なのか。もう少し利口だったらどれほど良いことか。

 どうしてベジータは諦めずに何度も突っかかってくるのか。そのおかげで彼は強くなってしまった。

 どうしてパラガスは洗脳なんて手段を取ろうとしたのか。そんなことせずとも、大抵のことはやってあげるのに。

 

 そんな”どうして”を考えていると、次第に苦悩が怒りへと変わっていった。

 

 「いつもいつも、やれ戦いがつまらんだの、やれ今度こそお前を殺してやるだの、やれ言うとおりにしろだの好き勝手言って。こっちの事情も少しは考えてほしい…!!」

 「は? それこそお前の勝手だろ」

 「…そうだけど!!」

 

 ブロリーの言葉は正論だ。

 しかし、人間と言うのは正論を言われるとイラつくのである。特に怒りを露わにしている時は自分が怒っている理由を否定されたようでさらにイラつく。

 

 「うがああああああああああ!!!」

 

 俺はブロリーに飛び掛かり、彼の手のひらを握りしめ全力を以って押していく。狙うは背後の岩盤だ。彼もまた抵抗するように押してきた。俺の背後にもいつの間にか岩盤があった。

 いつもならこの押し相撲の勝敗は考えるまでもなくブロリーの圧勝で終わる。しかし、今は何故か、彼の力が弱く感じた。

 最初は手加減をしているのかと思ったが、彼の余裕だった表情が強張っている。

 体調が悪いのか、なんて場違いな考えが過ぎった瞬間、視界の端でスパークが走っているのが見えた。

 俺はその正体を察し、歓喜の笑みを浮かべた。

 俺はすぐさま体の底から溢れ出てくるパワーをこれでもかと腕に乗せた。するとブロリーは次第に押され始め、彼の抵抗空しくとてつもないスピードで岩盤にめり込んでいった。そして至近距離で気弾をぶっぱなし、岩盤ごとブロリーを吹き飛ばした。

 舞い上がる粉塵を前にしながら、俺はスパークが絶えず走る自分を見て自虐的に笑った。

 

 「なんだ。深く考える必要なかったじゃん」 

 

 次のステージに進むために必要だったのは、あれこれ頭を動かすことではなく、やけくそに行動することだったのだ。

 さすがサイヤ人だ、と思っていると粉塵が晴れていきブロリーの姿が見えてきた。

 彼は獲物を見つけた獣のように獰猛に笑っていた。

 

 「フフフ、そうこなくっちゃ面白くない…!!」

 「さぁ、第二ラウンドだ」

 

 

 その星は絶えず揺れていた。

 その原因となったのは2人のサイヤ人の兄妹喧嘩である。互いに拳を打ち付けるたび、放った気弾が爆ぜるたびに規格外の衝撃が走る。

 目にも留まらぬスピードで飛び回り、これまた高速で殴り合うその様を、完璧に瞳に映せる者はこの星にはいない。

 この星に住む人々は、時折飛来してくる気弾から一生懸命逃げ惑うか、数えきれないほど打ち付けられる空間の歪みをただただ遠目で眺めることしかできないのだ。

 

 戦いの衝撃で山々が砂のように崩れていくのを見て、ある者はふとベジータへと目を向けた。

 ブロリーとビーナスを止められるのはこの星で三番目に強いベジータしかいない。いつもボコボコにやられているが、それでも他の有象無象が仕掛けるよりも時間が稼げるのではないかと思ったのだ。

 それに、ベジータは2人をライバル視している。戦いにハブられたと感じて激昂してもおかしくは無い。

 しかし、ベジータは呆然としていた。そして次の瞬間、彼は膝から崩れ落ちてしまった。

 

 「で、伝説の……超サイヤ人…!」

 

 今日この瞬間、彼は生まれ初めて超えようのない”壁”というものを知った(ヘタレた)

 

 「ふっ、無様だな。ベジータ」

 

 そんなベジータを嘲笑う声が彼の耳に入った。ベジータは初めての挫折に気力を失っていたためか怒りを露わにすることなく、幽霊のようにゆらりと声のする方へ首を向けた。

 そこには薄いバリアを纏ったパラガスが立っていた。

 ベジータは立ち上がり、何処か弱弱しさを孕みながらもパラガスをキッと睨んだ。

 

 「パラガス、何しにきやがった…!」

 「そう睨むな。ただ避難しに来ただけだ。ブロリーたちが暴れだした以上、この星ももってあと数時間の命だからな」

 

 そこまで言うと、パラガスは最後に溜息を一つ吐いた。

 彼は避難することに不満を感じているわけではない。そんなものはこれまでの生活でとっくに慣れている。

 問題は、彼が立てた計画が狂ってしまったということだ。

 彼にとってビーナスが先に暴れだすのは想定外の出来事であった。これまで喧嘩することは多々あれど、その全てはブロリーが発端であり、ビーナスは常に受けの体勢だった。

 しかし、今回はビーナスが問題を起こしている。彼女が暴れだすのはせいぜいブロリーが操られたときくらいだろうと思い込んでいたパラガスにとって面を食らう事態だ。

 一体何が彼女をそうさせたのかと記憶を探るが、確信に至るものが見つからない。

 

 (いや、これは今考える問題じゃないな。ビーナスのバリアがあるとはいえ安全ではないし、とにかく今は避難だぁ!)

 

 思考を切り替え、パラガスはあらかじめ用意しておいた1人用のポッドがある場所へと向かった。

 その道中、フリーザ軍基地からいくつかの宇宙船が飛び立とうとしていた。宇宙船には遠目で見ても分かる程度に人がしがみ付いており、必死にこの星から逃れようとしていた。

 しかし、一心不乱に飛び立った宇宙船の殆どが、飛来してきた緑色の閃光によって破壊されていた。

 その光景を見て残った者は悟った。この星から生きて出ることは出来ないのだと。

 

 「もうだめだ…おしまいだぁ…。生き残れるわけが無いよ……」

 

 そんな嘆きを横目に、パラガスは悠々と目的の場所へと足を運んでいった。

 そこは人里離れた小山の頂上で、草木は全く生えていないが、ポッドと山肌の色が似ているため保護色となっており、発見は非常に難しくなっている。

 パラガスはポッドに乗り込み、扉を閉めた。そして、とりあえず安全を手に入れるため、行先を指定せず宇宙に飛び立とうとしたその時、扉に付いた円形の窓ガラスが緑色に光った。

 

 「バカな――」

 

 瞬間、パラガスは爆発に飲み込まれた。

 しかし、彼はビーナスが張ったバリアのおかげで無傷だった。そのことに一旦安堵するが、すぐに焦る気持ちが芽生えてきた。

 何せ、脱出用のポッドが粉々に消し飛ばされてしまったのだ。これでは避難することが出来ない。

 パラガスは急いで気弾を飛んできた方向を見た。

 

 そこにはビーナスがいた。

 彼女は無傷のパラガスを一目見た後、ふぅと安堵したように息を吐いた。そして、興味を失ったかのように向かってくるブロリーに向き合った。

 その様子を見て、パラガスは動揺した。

 

 「あの気弾は偶然飛んできたのではなく、ビーナスがわざとやったのか? しかし一体何故だ。俺が避難してもあいつらには何も損は無いだろう…!」

 

 パラガスにはビーナスの行動理由が分からなかった。

 思い当たる理由としては、彼女は何故か1人用のポッドをやたらと警戒することだろうか。特にブロリーの前ではそれは顕著になり、ブロリーが先にポッドに乗り込まないと近づこうともしない程だ。

 昔、彼女がパラガスに言った「ブロリーの前で1人用のポッドに乗らないで」という発言が関係あるのだろうか。

 しかし分からない。何をそこまで恐れる必要があるのかが、パラガスにはさっぱりだった。

 

 パラガスは塵になったポッドの真ん中でゆっくりと腰を下ろした。

 もう己に出来ることは無い。彼は観念したように、ただ兄妹喧嘩の行く末を見守ることにした。

 

 ー

 

 ブロリーと戦い始めてから早数十分。

 俺はある感情に心を支配されていた。

 

 それは快楽。戦いが楽しい、楽しすぎるのだ。

 

 それは今までブロリーにボコボコにされていた鬱憤を晴らせているから、というのもあるだろうが、色々なことに気を遣わず思う存分に力を振るえるという点が大きいだろう。

 今までは違った。

 星々を流浪している頃は、敗北は死を意味するため、”負けないこと”、ただそれだけを一点に立ち回らなければならなかった。一戦のたびに精神をすり減らしていくのだ。到底楽しんでいられる状況ではない。

 ブロリーが伝説の超サイヤ人に覚醒してからは一方的で、彼の情で死ぬことはなかったが、俺は成す術なく敗北を積み重ねてきた。敗北するたびにブロリーの機嫌が悪くなっていくし、それに負け続けるのはシンプルにつまらなかった。

 

 だが今は違う。

 敗北は死を意味せず、勝利の可能性が常に見え隠れしている。

 実力が拮抗している。拳を打ち付けて、一方が痛がる展開は終わりを告げたのだ。

 どちらが負けてもおかしくないという緊張感、そして勝つかもしれないという高揚感。その両方が戦闘民族サイヤ人としての本能を強く刺激し、脳が待ってましたとばかりにアドレナリンをドバドバと放出している。

 それは俺だけでなく、ブロリーも同様だ。

 その証拠に、彼は今までで一番いい笑顔をしながら戦いに臨んでいる。

 きっと俺も、いや、()もそうなのだろう。

 

 「アハハハハハハハハハハハハハ!!」

 「フハハハハハハハハハハハハハ!!」

 

 気が付けば笑い合っていた。もちろん、拳やら気弾やらなんやらを打ち付け合いながら。

 アドレナリンのせいか痛みは感じない。もし感じたとしても、快楽に塗りつぶされてそれが痛みだとは気づかないだろう。

 

 「ハァ!!」

 

 掛け声とともに気弾を放ち、ブロリーを吹き飛ばす。

 しかし、彼はすぐに体勢を立て直し突進。飛び蹴りのように足を突き出してきた。私もそれに対して蹴りで対応する。

 空間が波打つほどの衝撃が走り、先程までの戦いで限界が来たのか互いの骨にヒビが入ったのが分かった。

 一瞬、ブロリーの顔が苦痛に歪むが、次の瞬間には猛獣のような笑みを浮かべていた。

 彼は私の足を掴み、コマのように高速回転し始める。遠心力で私の頭に血が上り破裂してしまいそうになる。

 

 「スローイン!!」

 

 彼はそう言いながら私を近場にあった岩盤に投げつけ、すぐさま手のひらにエネルギーを溜め始める。

 

 「ブラスター!!」

 

 そして、超濃密なエネルギー弾を放った。

 いつ見てもバカみたいなエネルギーが込められているが、こちらもバカみたいなエネルギーを込めれば問題ないのだ。

 しかしただエネルギーを込めるだけでは反撃にならない。ここは一つ、スローインブラスターを突き破るような鋭利なものを撃つとしよう。例えば、どどん波のような。

 

 「どどん波(仮)!」

 

 指先から細く鋭利なビームを発射する。

 気を込めすぎたせいか、気の制御がへたくそなせいか、そのビームは本家と比べてゴン太で、さながら桃白白が放った超どどん波だ。私が放ったから伝説の超どどん波というべきだろうか?

 しかし、そんなビームでもブロリーの気弾を突き抜けるのには十分だったようで、彼のスローインブラスターを破壊しそのまま彼に直撃した。

 爆発が起こり、すぐに爆炎から突進を始めたブロリーが顔を出す。彼の音速を嘲笑うが如きスピードに呼応するように、私も突進を開始する。

 

 そして、今激突するという時に、空から飛来してきた濃紫のエネルギーが私達を包み込んだ。

 

 拳を振るおうとするブロリーを手で制し、適当に腕を振って煙を晴らす。

 そして、濃紫のエネルギーが飛んできたであろう方角へ頭を向けると、その犯人の姿が目に入った。

 

 フリーザだ。

 ここにはいないはずの宇宙の帝王の姿がそこにあった。もちろんただ視察にきたというわけではない。遠方から見ても分かる程度には敵意マシマシだ。その証拠に、彼はすでに最終形態である。

 

 「確かに呼んだけど……来るの早くない?」

 

 私たちが戦いは始めてからまだ数十分だぞ。報告を聞いて大慌てで飛んできたのだろうが、それにしても早すぎる。

 それほど短い時間で着くぐらい近い場所にいたのだろうか。おそらく、危険人物をすぐに手が届く場所に置いて管理しやすいようにしていたのだろう。いやでも、それにしても早い。流石理想の上司(機嫌が悪ければ部下を殺す)と言われるだけはある。

 

 「なんだ? あの雑魚は?」

 「フリーザだよ」

 「あんなんだったか?」

 「彼は変身するからね」

 

 そうか、といってブロリーはフリーザを見据える。その眼には隠し切れない敵意と苛立ちがあった。

 かくいう私も苛立っていた。

 何せ、せっかく盛り上がっていたのに彼の横やりのせいで興が醒めてしまったのだ。お酒を飲んで酔っ払って好き勝手やっていたところに冷水をかけられたかのような、そんな気分だ。

 こうなっては、その日のうちに同じテンションに戻ることはないだろう。また温めなおしだ。

 

 全く、どうしてくれようか。

 

 ブロリーに目配せをする。彼も同じ気持ちらしく、一瞬こちらを見てすぐに視線を戻した。

 フリーザに手を付けると原作が色々と崩れるのだが、そんなの私の知ったことではない。そういうのは()のこだわりだ。

 私はただ、サイヤ人らしく戦いを楽しみ、そして、邪魔する者は排除する。

 

 2人同時にフリーザに向かって突撃する。当然全速力だ。

 一瞬で彼の目の前まで移動し、私は腹、ブロリーは顔目掛けて鉄拳をめり込ませた。フリーザから鳴ってはいけない音がする。顔面陥没による視界不良、背骨の粉砕、そして開放骨折。彼がただの人間ならば即死してもおかしくない傷だ。

 しかし、フリーザ、というより彼の血縁は高い戦闘力に加え生命力が凄まじい。上半身だけのまま宇宙に放逐されても生きていけるのだ。なんなら、彼の兄であるクウラは脳みそだけで宇宙を生き抜くほどである。

 そんな出鱈目な生命力を持つフリーザだが、今この場においては苦しむ時間が増えるだけだ。

 

 「がっ!? ぐっ!!」

 

 大ダメージを受けながらも抵抗してくるが、顔が潰されて前が見えねぇ状態かつ気の探知を行えない彼では攻撃を当てることは難しく、当たったとしてもこちらは無傷である。

 

 「ふ、ふざけるなァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!」

 

 そう叫ぶ彼の後頭部を蹴りつける。

 ぐるぐると回りながら飛んでいき、その先に回り込んでいたブロリーが彼を蹴り上げる。蹴り上げた先に向かって私は全力で突進し、岩盤に向かってフリーザにラリアットを食らわせた。

 彼の首を掴み、ブロリーのいる方へ思いっきり投げつける。すると、ブロリーに捕まる前にフリーザはなんとか体勢を立て直し、勘でブロリーのいる方へデスビームを放った。

 そのビームはブロリーに直撃。しかし彼の肌に傷をつけることは叶わず、その後もデスビームを撃ち続けるがまるでそんなものは無いかのように抵抗は無意味であった。

 ブロリーはフリーザの頬を殴りぬき、手のひらにエネルギーを溜め始める。

 

 「とっておきだぁ…」

 

 ブロリーは気弾を放った。一見小型の気弾だが、あなどることなかれ、あの技はギガンティックミーティアと言って途中で巨大化して対象を押しつぶす技である。

 視界不良といえど、フリーザが己に迫ってくる巨大な気弾の存在に気付かないはずもなく。腕を前方に突き伸ばし、全力で押し返そうとしていた。

 

 「こ、こんなもの…! こ、こんな…!!」

 

 しかし、ブロリーとフリーザでは天と地ほどの差がある。

 

 「うわああああああああああああああああああああああああああ!!!!」

 

 断末魔を上げながらギガンティックミーティアとともに地に沈んでいくフリーザ。彼の命の灯火は、その後起きる大爆発と共に消え去ることになった。

 

 「終わったな…。所詮、クズはクズなのだ…」

 

 くだらないとばかりに息を吐くブロリー。その背後に立ち、彼の顔を覗いてみる。

 

 「なんだ」

 「満足は…してないよね。続きする?」

 「…………今日はもう寝る」

 

 そう言って彼は変身を解き、地上へ降りて行った。

 彼の行き先はフリーザ軍基地。絶え間ない星の揺れや戦闘の余波によって倒壊しており、彼の寝床が残っているかは不明である。もちろん、それは私の寝床も同様だ。

 

 「…とりあえず父さんの場所に行こ」

 

 気を頼りにパラガスの方へと飛んでいく。

 彼はどうやらあの山からまたフリーザ軍基地に戻ったようだ。見てみると、彼の周りにはたくさん人がいるのが見えた。

 しかし、どこかおかしい。そこにいる全員がパラガスの方を向いているのだ。なんなら少し体が小さく見える。フリーザ軍は屈強な戦闘員が多いので間違っても小さく見えることなどないはずなのだが。

 試しに降り立ってみる。すると、なんと全員がパラガスに向かって跪いていた。

 

 「「「私(俺)達は、パラガス様およびそのご子息、ご息女に忠誠を誓います」」」

 

 彼らの言葉に満足げに頷くパラガス。

 なにしたの親父ぃ。

 

 

 




ビーナス
5100万
SS:25億5000万
SS2:51億

ブロリー
5000万
SS:25億
LSS:50億


Q.これビーナスに原作守る気ある?
A.あるにはあるけど、ブロリーMAD化が一番の目標なのでそこまで意欲的ではない。

Q.こんなあっけなく覚醒できるもんなの?
A.伝説のサイヤ人やしこんくらい許されるやろ

Q.なんでフリーザ来たの? 何で戦ったん?
A.持ってた爆弾が爆発しそうだったから解除しに来た。解除できると思って挑んだ。

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展開のスピードについて…

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  • ウスノロ…
  • さっさと映画まで行け
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