旧ブロリーを(比較的)温厚な性格にしたい!   作:伝説のスーパー

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 ブロリー扱いづらすぎぃ!!(今更)


そして伝説へ

 フリーザ軍の兵士として、幾つもの星を支配したり原住民を殲滅したりしている間に、あっという間に1年が過ぎた。

 

 1年もすれば4歳児くらいの子供である俺とブロリーの身長はぐんぐん伸びるかと思ったが、実のところは全く伸びることは無かった。

 どうしてか困惑していると、あの時ブロリーに岩盤されてからやたら絡んでくるベジータが「そんなことも知らないのか」と心底馬鹿にしているような言いぐさで説明してくれた。

 彼が言うには、サイヤ人は15歳くらいになるまで相手を油断させるために幼児の姿を保ち、それからぐんと戦闘に適した身体へと急成長するとのこと。

 それを聞いて、俺は、そういえばそんな設定があったな、と納得した。幼児時代が長いことより、若者の姿を80歳ぐらいまで保てることが印象に残りすぎていてすっかり忘れていた。

 おかげで、毎月同じ柱に自分の身長の線を刻んでいたのが馬鹿らしく思えてきた。どれくらい伸びているか期待しながら線を刻んで、昨月と変わらないことに落胆する日々を送っていたのは無駄だったようだ。

 そのことを恥ずかしい思いをしながら正直にベジータに吐露したところ、「まぁ、女の貴様は成長したところで戦闘に適した身体にはなれんがな」と言ってきた。セクハラやめろ。

 かなりイラついたので、俺は我慢することなくベジータを岩盤に埋め込んだ。

 

 それからも俺やブロリーは何回もベジータを岩盤にぶち込んでいるのに、彼は折れることなく関わってくる。

 映画のヘタレっぷりは何処に行ったんだろうか。もしかしたら、俺たちが超サイヤ人の姿を見せていないことが関係しているのかもしれない。

 それに、彼は己と比べてあまりにもレベルが違う力を目の当たりにすると挫折してしまうが、今の彼は気を感じる力も無ければ、相手の実力を素直に認めるほど大人でもない。あるのは己こそが最強だと信じる矜持のみで、この世のどんな相手でもちょいと修行して力をつけてしまえば追い付けると幻想している。

 それはフリーザに対しても、俺やブロリーに対してもそうである。

 だからこそ、彼はヘタレることなく突っかかってくるのかもしれない。

 

 それにしても、幼児体型の期間が長いというのは、中々に不便である。

 背が低いから高いところにある物は取りづらいし、初対面の相手には舐められる。前者は空を飛べば解決するが、後者にはかなり困っている。

 ただ舐められるだけならいい。ちょっとやそっとの愚弄ぐらいでムキになるほど俺は子供ではない。

 ただ、フリーザ軍とは基本的にチンピラの集まりだ。それも、サイヤ人を恐れる必要がないほどの戦闘力を兼ね備えたエリートチンピラだ。

 食事中に背中を押してきたり、ボール代わりにしようと蹴ってきたり、一部のロリコンが迫ってきたりと散々な目に遭った。まぁ、1人残らず岩盤送りにしたが。

 おかげで今では殆どの奴が関わってこない。しかし、偶に来る新人は別だ。

 こうして、新人が来るたびに俺かブロリーが岩盤送りにしていると、どういうわけか、いつしかこの支部の慣習となってしまい、1度でも岩盤送りにされないとこの支部の一員として認められないという雰囲気が出来てしまった。

 そのせいで、この星の岩盤はクレーターだらけで、一部のものは蓮コラのようになっている。

 気持ち悪いから撤去してほしい、そのボロクズを。

 

 ちなみに、ベジータはこの星で最も岩盤送りにされた者として、一定の信頼と嘲笑を受けている。それはすなわち、彼の敗北の記録がこの星全体に広まっていることに他ならず、そのせいか彼は常に怒り心頭な様子だ。

 己のプライドを傷付けた愚か者として、ベジータは俺やブロリーに強い怒りを抱いており、特に俺に対しては”女にやられた”ということもあってかとても当たりが強くなっている。

 ブロリーしかりベジータしかり、俺はどうもサイヤ人の男のプライドを傷付けるのが得意なようだ。

 おかげで、殆どの矢印が『嫌い』で構成された三角関係が出来上がってしまった。唯一ある『好き』の矢印は俺からブロリーに向けられたものだけ。

 

 「まったく、私も罪な女よな」

 「は?」

 

 黄色の髪を掻き揚げながらそう言うと、相対していたブロリーが困惑の声を上げた。

 彼はすでに超サイヤ人となっており、家族にぶつけるにしてはあまりにも濃密すぎる殺気を放っている。今にも飛び掛かってきそうだが、パラガスが『よし』を言っていないのでそうしてくることは無い。

 

 これから俺たちは喧嘩をする。場所はここ、溶岩と火山地帯で覆われた星だ。

 何故喧嘩をするのかは、言われなくとも分かるだろう。ただ、今回は少しだけ事情が違った。

 俺たちがフリーザ軍に入隊してから、パラガスはブロリーに俺への憎しみを我慢するよう言い続けていた。もちろん、いつものように飯を盾にしながら。

 ブロリーはしぶしぶだが、それに従っていた。俺を見るたびに心の奥底から湧いてくる憎しみを、手を握りしめ歯を食いしばることで耐えていた。

 数日、数週間、数カ月、そして、1年経った時、ついにその理性の防波堤が崩れてしまった。

 

 任務中、ブロリーは荒れ狂う怒りと憎しみの嵐に我慢できなくなり、ついに彼は巨大な気弾を放ち、俺をポッポル星ごと消し飛ばそうとしてきたのだ。

 このポッポル星は後に売る予定のため消し飛ばされたらまずい。そう思い、俺は死に物狂いでそれを宇宙の彼方へと跳ね返した。

 彼を責める気にはなれない。むしろ、よく1年も耐えたものだ。その憎しみは俺が想像しているよりもずっと大きいだろうに。

 面と向かって彼を称賛してやりたいが、その怒りと憎しみの原因である俺がやると嫌味にしかならないのでやめておいた。

 そして、今にも俺とブロリーの喧嘩が勃発しそうになったその時、パラガスが待ったをかけた。

 ブロリーはパラガスを殺意の目で見つめ、彼はそれに酷く怯えたが、屈すること無く大量の冷や汗を掻きながら俺たちに言い放った。

 向こうの星で戦ってこい。それだけだったが、意外にもブロリーはこれに従った。

 もしかしたら、彼は我慢できずに暴れてしまったことによって飯抜きになることを恐れていたのかもしれない。そして、パラガスから、むこうでなら暴れてもいい、という許可をもらったことで安堵したのだろう。

 

 こうして、俺とブロリーはこの原始惑星のような星で戦うことになったのだ。

 

 パラガスの『よし』の指示をただ待つのは暇なので、俺はブロリーに話しかけてみることにした。

 

 「兄さん、戦うのは楽しい?」

 「ちっ、俺に話しかけるなッ!」

 「…少しくらいは話そうよ」

 

 俺と話す気など毛頭ないらしく、ブロリーはそっぽを向いた。それでも、目はこちらを見ておりその警戒を解いていない。

 前から努力しているものの、彼との関係性は悪くなる一方だ。今のように話しかければ拒絶されるし、酷いときは目が合うだけで殴り飛ばされる。昔に比べれば軟化しているものの、それは態度が変わっただけで好感度そのものはむしろマイナスに突き進んでいっている。

 和解策として俺が料理を出すというのがあるが、正直、俺が料理を出したとて「いらぬぅ!」と言ってひっくり返されるのがオチなような気がしてきていた。

 それも確かに彼らしいと言えば彼らしいのだが、なんというか、彼の妹としては、お話ぐらいはしたいなと思っている。最近、彼の態度には少し寂しさを覚えるのだ。

 …おっと、いかんいかん。俺としたことが、少し弱気になってしまった。

 弱い姿を見て改心するほどブロリーはまともではない。常に強気な姿勢を心掛けねば彼の勢いに気圧されてしまう。

 しっかりしなければ。

 

 「私は結構好きだよ。特に、兄さんと戦うときはね」

 

 パラガスに渡された小型の通信機から『よし』の合図が出る。

 それとほぼ同時に、俺とブロリーは飛び掛かり拳を振り抜く。拳同士が衝突し、山々を砕きかねないエネルギーがそこら中に発散した。

 ブロリーは怯むことなくもう片方の拳を振るう。俺はそれを首を傾けることによって避け、カウンターとして目潰しを行った。

 しかし、俺は喧嘩の中で幾度も目潰しをしてきた女。その被害にあってきたブロリーにとって、この一手は予想の範囲内だ。

 ブロリーもまた、首を傾けることで目潰しを回避する。

 俺はその隙にブロリーの腹目掛けて蹴りを放つが、異常なまでに硬い。まるで凡人が鋼鉄の壁に蹴りを入れているような蹴り心地だった。

 俺の脳内を「何故」が支配する。それによって生まれた隙をブロリーが見逃すはずもなく、彼は俺の顔面を殴り飛ばした。

 

 俺は顔に走る痛みに耐えながら、ブロリーの腹を観察する。すると、あの妙な堅牢さの理由が分かった。

 ブロリーは腹筋に力を入れていた。

 言ってしまえばそれだけだが、子供とは思えないような筋肉を誇るブロリーがそれをすれば、並大抵の攻撃は弾いてしまうほどの硬さを得る。

 俺にも筋肉が無いこともないが、かといって再現するには物足りない。つまり、この場において、この防御方法を取れるのはブロリーだけなのだ。

 

 「近接だと分が悪いな」

 

 俺は後ろへ素早く飛翔し、距離を取る。

 ブロリーは逃がすものかと追ってくるが、そんな彼を止めるべく俺は気弾を放った。それも一発や二発ではない。マシンガンのように大量にだ。

 

 「だだだだだだだだだだだだだだだだだっ!!」

 

 必死に腕を動かし、幾度も気弾を連射するこの技は、通称『グミ撃ち』、またの名を『連続死ね死ねミサイル』という。

 ただの気弾の連打と侮ることなかれ。この気弾一発一発が山を崩壊させるほどのエネルギーを秘めているのだ。

 普通、そんな高エネルギーの気弾を連射すればあっという間に気が底を突いてしまうため、一般的なグミ撃ちは威力が抑えられている。

 しかし、俺は伝説のサイヤ人。戦えば戦うほど気が増えていくという狂った体質によって、グミ撃ちによる気の大量消費というデメリットをカバーした。なんなら、こうして連射している間にも気が増え続け、その分威力が上がっていっている。

 そう、伝説のサイヤ人とグミ撃ちは意外と相性がいいのである。

 

 その証拠に、あのブロリーがガードを固めたまま動けないでいる。

 彼もまた伝説のサイヤ人なので今もこうして気が増え続けているのだが、お互いに増え続けるおかげで、その形勢は何時までも変わらないでいた。

 気弾の一発一発が爆発し、確実にブロリーの体力と身を削っていく。彼の皮膚が剥がれていき、筋肉がむき出しになる。外からでは分からないが、爆発の衝撃は骨にも響き、いくつかヒビが入っていることだろう。

 このまま続けていれば、いずれブロリーに限界が訪れ、その意識を落とすことになる。それが分からない彼ではないが、グミ撃ちの前に身動きが取れないでいる。

 勝ったなガハハ。なんだ、案外あっけなかったな。

 

 「ビーナスぅ…!」

 「…ん?」

 

 ブロリーが呻き声のように俺の名を呟く。

 

 「ビーナスぅ…!!!」

 

 爆煙に包まれて見えないはずの彼の身体が緑色に光る。光によって彼の輪郭が露わになり、彼の筋肉が肥大化していっているのが見えた。

 その姿を見て、俺はまさかと冷や汗を流した。

 あの時覚醒を阻止した例の形態が、再度覚醒しかけている。そうはさせるかと俺はグミ撃ちの密度と威力を上げるが、彼は止まらなかった。

 

 「ビーナスゥウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ!!!!!!!!」

 

 彼の咆哮と共に、世界の色が何度も変化するような衝撃が走った。それと同時に彼を覆っていた爆煙がはじけ飛び、その姿が露わになる。

 彼の変わり果てた姿に、俺は思わず手を止めてしまった。

 未だ幼い子供であるブロリーは確かに年齢に似合わない筋肉の持ち主だが、今の彼はその比ではない。

 顔の数倍はありそうな肩幅に、異様に発達した上腕二頭筋。逞しすぎる大胸筋に、板チョコのように割れていて、かつ風船のように膨らんだ腹筋。その他の筋肉も肥大化しており、まるで筋肉の戦艦だ。

 幼児なのにボディビルダー顔負けの筋肉をしているというアンバランスさが、俺の目を狂わせる。

 そして、注目すべきは彼の髪色。普通の超サイヤ人のような金色では無く、黄緑色をしているのだ。そうだ、あの髪色こそが俺の恐れていたもの。

 あれこそが『伝説のサイヤ人』の権化、黄緑色の毛が生えた肉の無敵戦艦『伝説の超サイヤ人』である。

 

 ブロリーの気を感じれば分かる。彼は今、俺の2倍以上の力を持っている。

 あの一瞬で、彼は俺と隔絶した実力を持ってしまったのだ。

 変身の阻止が出来ないなんて、まったくこれだからグミ撃ちはダメなんだ。

 

 彼は呆然としている俺に指を差して言った。

 

 「ビーナス、今度こそお前を血祭りに上げてやる」

 「……ははっ、その台詞はカカロットに言ってほしかったな」

 

 俺はブロリーに向かって光線を放つ。

 その構えはさながらかめはめ波のようだが、本家のような詠唱は無く、さらには実物を見たことが無い以上ただそれっぽいだけの光線である。しかし、込められたエネルギーは驚異の一言、星の1つや2つ消し飛ばして見せるほどの威力を持っている。

 それほどの威力を持った光線に、ブロリーは避けることなく真正面から突っ込んだ。

 そしてそのまま傷を負うことなく俺に向かって飛翔し、光線の上部から上半身を出して俺の頭へ肘を振り下ろした。

 頭蓋骨が砕けてしまうような衝撃が俺を襲う。脳が揺れ、意識が混濁する。

 そこにブロリーは追撃をしかけ、俺の腹に拳をめり込ませ、殴り飛ばした。胃が潰れ、内容物が口から噴き出る。内臓に深いダメージを負ったせいか血も混じっていた。

 吐血しながら飛んでいく俺にブロリーはさらなる追撃をしかけるべく速度を上げて飛行する。やがて彼が追い付くと、そのままの勢いでラリアットをして岩盤にめり込ませてきた。

 まだ終わらない。ブロリーは俺の頭を掴み、思いっきり振り下ろした。凄まじい勢いで地面と衝突し、巨大なクレーターが出来上がる。そこに彼は気弾を放ち、それによるドーム状の爆発が俺の身を焦がした。

 

 「くっ……ぅ」

 

 あまりに重すぎる攻撃の数々に、俺の身体は瞬く間にボロボロになった。皮膚は焦げ、筋肉は断裂し、一部の骨は砕けてしまっている。

 サイヤ人の身体は頑丈に出来ているが、格上の手加減なしの攻撃には耐えられない。特に、ブロリーは俺に対する憎しみもあるため、その威力は本来のものよりも底上げされているだろう。

 まだ大丈夫だが、追撃を食らえば確実に死ぬ。そんな状態にあると俺は理解していると、ブロリーが目の前に降り立ってきた。

 彼の表情は依然として険しいが、何処か驚いているようにも見えた。

 

 俺は悲鳴を上げる身体に鞭打って何とか立ち上がり、距離を取るべく足に力を込める。

 しかし、脚がガクガクと震えて全く力が入らず、距離にして数十歩程度しか取ることが出来なかった。

 体はもう限界に近い。それでも戦わなければならない。もし負けたら、その後にあるのは死だけだ。

 ふぅっと息を吐き、構えを取ってブロリーを見据える。

 

 ブロリーが飛び掛かってくる。

 そして飛んできた拳を俺は腕をクロスさせてガードするが、堪えることが出来ずに吹っ飛ばされてしまう。

 腕の骨はもちろんのこと、防御したはずの肋骨までダメージが響いた。

 その痛みに悶えていると、ブロリーが険しい表情から一転して頬を吊り上げた。俺の弱った姿を見て上機嫌になったのだろう。

 彼は生物が出すには無理がある足音を鳴らしながら、こちらへ歩いてくる。

 そして、すぐそこまで来たところで、俺は素早く彼の顎にアッパーカットを食らわせた。 

 

 「…っ!?」

 「フフフ、どうした? そんなものか?」

 

 しかし、ブロリーには全く効いていない。

 普通は顎を強打すれば脳が揺れるはずなのだが、彼の丸太のような首がそれを許さなかった。

 彼は手に気を溜め、驚愕している俺に押し当てる。すぐに爆発し、俺は投げ捨てられた人形のように吹っ飛んでいった。

 俺は幾度も地面を転がったあと、なんとか体勢を立て直し、反撃に気弾を放つ。かなり力を込めて撃ったので、普段のブロリーがこれを食らえばダメージは避けられないだろう。

 しかし、ブロリーはそれをノーガードで受け、全くダメージを受けなかった。そのことが面白かったようで彼は豪快に口を開けて上機嫌に笑った。

 

 「フハハハハハハハハハッ!!! その程度のパワーで俺を倒せると思っているのか?」

 「……ちっ、化け物め…っ」

 「俺は悪魔だぁ!! フハハハハハハァッ!!!」

 

 ……本当に上機嫌だな。俺を追い詰めていることがよほど嬉しいらしい。

 いや、当たり前か。彼にとって、俺は家族では無く、長年憎しみ続けた因縁の相手だ。

 ブロリーにとって己は『最強』の冠を被って生まれた存在だ。そんな自分が、最初は正面から、時には目潰し、時には奇襲で、何度も何度も負かされてそのプライドを傷付けられてきた。

 本来であれば『伝説のサイヤ人』であるブロリーが、同じ相手にそう何度も負けるはずがない。彼は戦っている限り戦闘力が上がり続けるという、戦いにおける最強のアドバンテージを持っているのだから。

 しかし、俺と言う存在もまた、その体質を持っていた。

 おかげで、お互いが生まれてから今日にいたるまで、戦闘力の差が広まっては狭まり広まっては狭まりのイタチごっこを繰り返してきた。

 その差は永久につかないものなのかと、もしかしたら彼は思い始めていたかもしれない。しかし、今日やっと、憎き存在(ビーナス)よりも力をつけ、追い詰めることが出来た。

 そう思うと、彼がまだ子供ということを加味しても、この有頂天っぷりは納得できるものだ。

 

 ブロリーはブランとした手のひらにエネルギーを溜め始める。緑色の光が集約し、はち切れんばかりのエネルギーが込められているせいかその気弾は揺らいでいた。

 あの構えは何度も見たことがあるから分かる。彼の技である『スローイングブラスター』だ。どうやら、彼は本気で俺を殺す気らしい。

 あれに抗える力は持っていない。このボロボロの肉体では避けることは不可能だろう。俺が何かの拍子に『伝説の超サイヤ人』になれれば分からないが、俺はそれに覚醒するほど怒りを感じたことが無いので、現実的ではない。

 

 「これで終わりだ、ビーナス!! 死ねぇ!! スローイングブラスター!!!」

 

 ブロリーが緑色の光弾を俺に向かって勢いよく放り投げる。

 凄まじい速度で飛来してくる光の前に、俺は走馬灯を見た。

 ブロリーとの喧嘩、喧嘩、喧嘩、ベジータに岩盤、喧嘩。改めて振り返ると碌なものじゃない。

 実際、碌な人生では無かった。ブロリーを更生させると意気込んでいながら、結局何もできずにこうして他ならぬブロリー自身に始末されようとしているのだから。何も残せず、少し原作を改変しただけの人生。実に空虚だ。

 俺の人生の価値とは何か? 死の間際だというのに、そんなネガティブな疑問が浮かび上がる。

 誰かの役に立ったかという視点で見れば、俺の人生は無価値だろう。しかし、俺自身の満足という視点で見れば、確かに価値のある人生だった。

 ブロリーとパラガス、そして短い間だったがベジータやナッパ、ラディッツ、フリーザなど、多くの人物と関わることが出来た。

 それに、ほら。ブロリーがあんなに楽しそうに笑っている。唯一の敵が居なくなることに歓喜しているのだろう。思えば、俺は彼を不機嫌にさせてばかりだった。

 彼を温厚にするという目標は叶えられなかったが、今ここでこうして殺されることで推し(ネットのおもちゃ)が幸せになれるのなら、それも悪くない。

 

 ―――んなわけあるか!! 普通にめっちゃ生きていたい!! 

 (前世)は何故か満足げだが、(今世)は生きる気満々だぞ!! まだ5年しか生きてないのに死にたくないッ!!

 

 「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

 

 己の全てを込める思いで光線を放つ。

 まだ名前が付いていないそれは、今私が撃てる最強の攻撃。太陽系すらも消し飛ばしてしまいそうなほどのエネルギーが、迫りくるスローイングブラスターにぶつかった。

 そして、私の死に物狂いの抵抗はブロリーが放った脅威をどんどん押していき―――なんてことはなく、抵抗を感じさせない勢いで深緑の脅威はどんどん私の方へと迫ってきていた。

 

 「あ、だめだこれ」

 

 その言葉を最後に、私の身体は光に包まれていった。

 

 _

 

 爆発による地響きが治まると、今度は周辺の火山が一斉に噴火した。至る所から溶岩が溢れ出て、ブロリーとビーナスの喧嘩が生み出した数々のクレーターが溶岩湖として生まれ変わろうとしていた。

 そんな地獄絵図の中で、ブロリーは、これまでの人生で上げたことが無い笑い声を出した。

 

 「フハハハハ、フハハハハハハハハハハハハッ!!!」

 

 彼の心中は歓喜で埋め尽くされていた。

 何せ、これまで5年という短い人生の全てを使って憎み続けてきた宿敵であるビーナスを始末できたのだ。

 何十何百という敗北の記録に、1度の勝利を掴むことが出来た。生後間もなくから今日に至るまで、傷付けられ続けてきた己のプライドが、今日やっと修復されたのだ。

 嬉しくないわけがない。彼に教養があれば、歌の1つや2つは歌っていたことだろう。それほどまでに、彼は有頂天になっていた。

 

 「ハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!!!!」

 

 笑いが止まらない。これほど愉快な日があっていいのだろうか。

 そうだ。この心地よい気分のまま、やることをやってしまおう。ブロリーはそう思い、むかつく奴を脳内に浮かべようとした。もちろん、浮かんだ奴を殺しに行くためである。

 しかし、これといって浮かばなかった。

 

 「ハハハハハ…………?」

 

 ブロリーの笑いが止まる。

 むかつく奴の顔が思い浮かばないという異常事態に、彼は混乱していた。むかつく奴が1人もいないというのは、彼にとってありえないことだったからだ。例えば、自分を従えた気になっているフリーザのことは気に入らないと思っている。ベジータだって、雑魚のくせに偉そうなのが癇に障る。

 だというのに、あまりやる気が起きない。目の前にいるのなら喜んで殺しにかかるが、わざわざそいつらのもとに行くのが面倒に思えるのだ。まるで、そいつらの生き死になどどうでもいいと思っているような、そんな無気力感にブロリーは襲われた。

 何故、急にこんな気分になってしまったのだろうか? ブロリーは必死に頭を働かせた。

 そして、不意にある人物の名を呟いた。

 

 「ビーナス…」

 

 ブロリーはその名を呟いた後、何故彼女の名を口にしてしまったのかと困惑した。

 彼にとって、ビーナスとは憎むべき相手であり彼女の死を願わなかった日は無いほどだ。彼女を始末したことは喜ぶべきことであるし、実際に彼はこれまで感じたことが無い程の喜びを感じていた。

 だから、この無気力感の正体は決して彼女ではない筈なのだ。さっさとこんな奴は記憶から抹消すべきなのだ。

 しかし、ブロリーの意思に反して彼の脳みそはビーナスの存在意義について無意識的に思考する。

 パラガスは雑魚、ベジータも雑魚、フリーザも雑魚。他の奴らも話にならない雑魚ばかり。その点、ビーナスはブロリーと唯一対等に戦える存在だ。なんなら、今日を除けば彼女はブロリー相手に全勝している。

 彼は自分が負けることを許さない。それは生まれながらの強者が持つ当然の矜持であり、それを否定する者はたとえどんな奴であろうと息の根を止め、己の最強を確固たるものにしなければならない。

 しかし、彼の戦闘民族サイヤ人としての本能が、強者との戦闘を嬉しく思っている。敗北はつまらないが、その分燃える心があった。

 今回は圧倒的な勝利を得たが、生きてさえいれば彼女はすぐに追いつくことだろう。

 ビーナスとは、互いが伝説のサイヤ人であるがゆえにどれだけ戦ってもその差はつくことが無い、最高の戦闘相手なのだ。

 

 だが、ブロリーはまだそのことに気付いていない。

 彼にとってビーナスは憎むべき相手。ビーナスについて無意識的に思考しようと、認識はそこで止まっている。

 しかし、彼の心には拭い切れない不安と漠然とした虚無感があった。

 

 「……」

 

 ブロリーは目の前に先ほど出来たばかりのクレーターに目をやる。

 その中心には変身が解けたビーナスがおり、ピクリとも動かず地面に突っ伏していた。今はまだ溶岩が流れてきていないが、このまま放置すればビーナスは親指を立てることも叶わず溶岩に呑まれてしまう事だろう。

 

 「…チッ」

 

 ブロリーは忌々し気に舌打ちした。

 彼はビーナスのもとへ飛び、うつ伏せな彼女の首を掴む。そして、そのまま飛び立ち、その勢いでぐわんぐわんと揺れる彼女を気にも留めずにこの星を離れることにした。

 ただ、それだけだとなんだか気が済まなかったので、ブロリーは腹いせとばかりに気弾を放ち、惑星を破壊した。

 

 その後、ポッポル星にて、ブロリーとパラガスは合流した。

 ビーナスが負けたこと、そしてブロリーが筋肉ダルマになっていることに、パラガスは驚きと困惑がごちゃ混ぜになった。

  

 

 




パラガス「ブロリー、一体どうしたというのだ…」
ビーナス「でも、幸せなら、OKです。そんなわけないが?」
ブロリー「スローイングブラスター!!」(嬉しそう)

ブロリー
 1100万 SS:5億5000万 LSS:11億
ビーナス(瀕死パワーアップ)
 1500万 SS:7億5000万

ベジータ 
 12000 → 40000
 ブロリーら兄妹の献身的な岩盤トレーニングによって飛躍的な戦闘力の向上を成し遂げた。
 これだけのパワーがあれば憎き兄妹を倒せると意気込んでいるらしい。
 俺が、超ベジータだ!

岩盤
 「ブロリーに吹っ飛ばされたはいいけど、どこまで飛んで行ってしまうか不安だ」
 そんな問題を抱えるあなたを、何処からともなく生えてきては優しく受け止めてくれる存在。
 凄まじいクレーターが作られようとも、決して崩れない堅牢さも兼ね備えている。
 必ず受け止めてくれる包容力と頼りになる頑丈さ。
 岩盤こそ、理想の彼氏そのものだった。

オリ要素
ポッポル星:そこそこ環境が良い星。多分もう二度と出ない。

Q. 1年経ったわりには戦闘力あんま伸びて無くない?
A. 互いに喧嘩せず、圧倒的格下相手に蹂躙していただけで、戦闘した判定にすら入らなかったから。

Q. ベジータがヘタレたのはサイヤ人としての本能が訴えかけてきたからなのに、ブロリーたちを前にしてヘタレないのはおかしくない?
A. 子供って割とそういうのに逆張りしがち。ベジータも多分そう(独自設定タグに甘えていくスタイル)


というわけで、ちょっとだけブロリーとビーナスの仲が深まりました。
これからトントン拍子で事が進むと良いなぁ(願望)

展開のスピードについて…

  • 速い
  • 普通
  • ウスノロ…
  • さっさと映画まで行け
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