Undertaker〜Deus Ex Machina〜   作:カラメル

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プロローグ

 

「......あーお前達は既に包囲? され______てはいないな......兎に角、詰んでいる。大人しく人質を解放しろー」

 そこはある郊外のスラム。

 荒廃した家屋が立ち並ぶその場所のある一角。

 倒壊しそうな5階立のビルで、外観を見る限り元々はオフィスビルのようだった。

 そんなビルの屋上へ、メガホン片手にどこかやる気ない声色で呼びかけている一人の男がいた。

 180センチ以上はあるその背丈に加え、赤紫色の歯車型のヘイロー。

 顔には白い骨のような仮面をつけており、表情は伺うことはできない。

「だ、黙れ! 人質がどうなっても良いのか!?」

「ひ、ひぃぃぃ!! 止めてくれ!!」

 呼びかけた先にはアサルトライフルを持った戦闘型ロボットが3人と、その得物を突き付けられているスーツを着た老齢のパグ(老人)がいた。

 所謂人質になっているその老人は縄で拘束され、情けない声をあげながらひたすらに震えている。

「......じゃあ、どうする? 俺がここに来て既に1時間は経ってるけど」

 面倒だ、そう男は思いつつ空いている手で後頭部を掻きながらまた呼びかける。

「だから、金と逃走用の車両を用意しろっつってんだろ!? さっきっから言ってるよな!?」

 イライラしている犯人のロボットは銃を振り回しながらそう答える。

 そう、このやりとりは既にしていた。

「はぁ......逃走用の車両を用意したとしてお前らはそれに素直に乗るのかって、これも言ったよな......」

 溜め息を吐きながら再度、犯人達へ向けて話し始める。

「俺が用意した車両に乗るんだぞ? タイヤに細工してるかもしれないし、下手したら爆弾(C-4)を積んでるかもしれない。......何、お前ら死にたいの?」

「ふ、ふざけるな! 人の命を何だと思ってやがる! こいつがどうなってもいいのか!?」

「ひぃぃぃ......!」

 男のそんな言葉に激昂した犯人ロボットは銃口を人質の頭部に突き付け、身体を震わせている。

 いつ弾丸が射出されてもおかしくないこの状況で人質である老齢のパグ(老人)はまるでRPGのモブキャラクターのように同じ台詞を吐くしかない。

「......人質取ってるやつ言うことじゃだろ。......あのさ! ここはどこだと思う? 学園都市キヴォトスだぞ(・・・・・・・・・・・)? 安心しろよ、どんな生命(いのち)だって簡単には死なないよ」

 男はそう言いながら徐ろにスマートフォンを取り出し、画面を確認しながら更に続けた。

「俺も鬼じゃない。ここで大人しく投降してくれればヴァルキューレ警察学校(ヴァルキューレ)安全に(・・・)お前らを引き渡してやる」

 さあ、どうすると男はビルの屋上を見上げる。

 うんざりする程に眩しい空は青く、太陽がきらきらと照り輝いていた。

「......さっきから俺達を舐めやがって、人質(こいつ)をマジでぶっ殺して_____」

「______それはやめといた方がいいぞ。それした瞬間にお前ら全員解す(殺す)

 底冷えするような声がメガホンを通して彼らの聴覚センサーに届く。

 思わず全身の動きが止まる程だ。

 人質も冷や汗が止まらないでいた。

「もう一回聞くぞ? 大人しく、投降してくれるよ______」

 ピピピピッと電子音が鳴り響く。

 音の発信源は彼の持つ通信端末(スマートフォン)で、所謂アラームであった。

 その規則的な音はメガホンを通して、屋上にいる彼らにも届いていた。

「あ、時間じゃん」 

 男は画面をタップしてアラームを切り、ズボンのポケットへ仕舞うとメガホンを持っていた腕を下ろす。

 

 

 

 

「じゃあ時間切れなんで、解す(殺す)わ」

 

 

 

 

「はっ______」

 

 

 次の瞬間、人質の一番近くにいた犯人ロボットの頭部が消失した。

 

 

「えっ______」

 それに気づいた矢先、別の犯人ロボットの頭部も重く鋭い衝撃と共に分かたれる。

 頭部は______10m程離れたところに転がっていた。

「ふざ______」

 言い切る前に、最後の犯人ロボットの両腕が肩から斬り落とされる。

 全くの無音で一瞬知覚センサーが反応できないほどに。

「ぎゃあああああああああ!!!!!?!?!」

 膝から崩れ落ち、激痛に身悶える。

 いくらロボットと言えど痛覚は搭載されていた。

 失われた両腕はすぐ横に転がっており、それが尚更に自身の腕が切り落とされたことを理解させ、痛みが跳ね上がる。

「うるせぇよ」

 犯人ロボットの背中に凄まじい衝撃が襲い、そのまま吹っ飛ばされる。 

 放たれたのはただの前蹴り。

 十数メートル程吹き飛ばされ、パラペットに直撃した犯人ロボットの意識は完全に消失していた。

「......死んでないよな? 一応あれには手加減したはずなんだけど」

 男はやってしまったかともう少し軽くれやれば良かったかと少しだけ後悔しつつ、人質の方に顔を向けた。

「大丈夫か? 怪我は?」

「ひ、ひぃぃぃぃ!!」

 しかし、突然目の前で起きた殺戮に老人は半狂乱というべきか喚き散らしている。

 そんな姿を見た男は内心でお前ヤクザの組長だよなと思いつつ、老人を縛っていた縄を引きちぎり、肩を叩いた。

「……おい。落ち着けって。あんたは助かったんだよ。おーい」

「......っは! お、お前! 請負人(・・・)だな!? どうしてもっと早く助けない!? これができるならとっくにワシは______」

 漸く落ち着いたのか目の色を変えて老人(組長)は男、請負人へ詰め寄る。

 完全に目が血走っていた。

「あー、悪く思わないでくれよ。軽い時間潰しなんだ。次の予定までのな。別にあんたを助けるのに明確な制限時間は言われなかったし」

「じ、時間潰しだと!? ふ、ふふざけているのか!?」

「別にふざけてねぇよ。てかあんたもこっちの世界で生きているなら分かるだろ? こいつら、その辺の半グレかチンピラだぞ。銃の扱いもままならないほぼ素人だったし、プロだったらもう1秒くらい俺に抵抗もできてただろしな。だからあんたが殺されることはないと読んだ。それに何発か撃たれても別に問題ないだろ?」

 良いもん食ってそうだしなと、老人のそのよく出ている腹を指しながら請負人は淡々と答えた。

「き、き、き、貴様ぁ!! ワシを侮辱しおって!!」

「まあまあ、落ち着けよ、血管破裂するぞ______おっ、来た来た」

 すでに血管が浮き出て今にも爆発しそうな老人を宥めながら、別で用意していたもう一つの通信端末が振動したの確認して電話に出る。

 一言二言会話をすると、その端末を老人へ渡した。

「.......クライアント、あんたの組の若頭からだ」

「もしもし! ああ! ワシは無事だ!」

 すごい勢いで通信端末をひったくられると、老人は少し安心したようにして自身が無事だということと早く迎えに来いということを延々と繰り返ししている。

「ちょうど迎えのヘリも来たな」

 プロペラのホバリング音が響き渡り、廃ビルの屋上に一機のヘリが近づいてくる。

 真っ黒に塗られたアグスタA109が今にも崩れ落ちそうな廃ビルの屋上に降りてくるのはヒヤヒヤしたが。

「親父! よくご無事で!」

 降りてきたのは今度はスーツを着たロボットだった。

 いかにもインテリという感じのヒョロヒョロとした見た目で、一瞬若頭の顔ってこんな感じだったかと思ったが、あれは犬顔であったので全く違う。

 老人は今度こそ助かったと完全に弛緩仕切った表情で安心してもっと早く助けろとロボットへ切れていた。

 見れば頭部を殴られており、普段からそういう関係性なのであろうが見ていて気持ちの良いものではない。

「さーてと、じゃあ報酬の話しだ。前金2000万に加えて人質救助と実行犯一人の確保による完遂でプラス3000万。振り込みタイミングは完遂が確認できた時点。契約はそうだったよな」

 依頼は敵対組織に誘拐された組長の救出と誘拐犯の確保。

 救出は当然として、生きた誘拐犯の確保にはきちんと意味がある。

 どこの組織が差し向けた馬鹿なのかを聞き出した上での報復戦争を行うためだ。

 まあ、組織のトップを誘拐してただで済む方がおかしいのでそこは間違っていない(・・・・・・・・・・)

「ああ、それなんだがな。支払いのタイミングを待って欲しいとの若頭からの______」

 

 

「______あ?」

 

 

ここにいる誰もが死を覚悟した。

仮面越しで表情は何も見えないはずなのに。

憤怒という感情の嵐を彼らは見ていた。

「まっ、待ってくれ! 報酬は必ず支払う! ただ今資金的にだな」

「俺はそれを知らねえよ。契約は絶対だ。そもそも支払いがすぐじゃなきゃ俺は依頼を受けてない」

 ばっさりと請負人はその旨を切る。

 最初に締結された契約は絶対であり、それを反故するのはあってはならないこと。

 裏社会において約束を破ったものの末路はどうなるか、そんなもの誰だってわかるはずだ。

「だから、必ず支払うと言っている! ただ猶予を一ヶ月貰いたい______」

 

「話にならないな」

 

 請負人はサイホルスターからハンドガン、『バディホープ』を取り出す。

 

「まっ、待て______」

 

 引き金に手を掛ける。

 

「はい、おつかれさま」

 

 スーツを着たロボットは頭部を完全に撃ち抜かれる。

 立て続けに引き金を引き、さらにはCPUが弾け飛んだ。

 

「なっ、わ、ワシは______」

 

 その隣にいる組長へ銃口を向ける。

 

「お前も用済みだよ、とっとくたばれ、クソジジイ」

 

 額を打ち抜くと、脳髄が弾け飛ぶ。

 

「お、お前っ______」

 

 直ぐ様ヘリを運転していたもう一人のロボットも同様に片付けると、そのまま機内から外へ投げ飛ばす。

 地面に落ちるその前にまた頭部を撃ち抜く。

 

「せっかく繊細な加減して生かしてやったのに、仕方なし」

 

 遠くにふっ飛ばした誘拐実行犯のロボットも頭部を狙い撃ち抜く。

 さらにもう一発、頭部を撃つ。

「ったく余計な手間増やしがって。あいつらには悪いけど、先に馬鹿共を潰さないとな」 

 請負人は再度ヘリに乗り込むと運転席に座った。

 そのまま通信端末を取り出し、画面をタップすると、そこには最近良くかける人物名が表示されていた。

「______あ、もしもし。えっと今からクライアントのところに殴り込み行くんだけどさ。6人分の処理(・・)頼むわ。座標は今送る。最速で片して。そのまま、もし俺がまだ片付けるの終わってなかったらリスト回って。じゃそういうことで」

 電話を切ると操縦桿を握り、離陸を開始する。

「あーあ、ほんっと面倒なことしてくる。マジで」

 向かうは契約を破ったヤクザ(馬鹿共)の事務所。

 行うは殲滅。

 塵一つ残さない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「サッちゃん、誰から?」

 

「ボスからだ。処理(・・)とお礼参りとのことだ」

 

「く、クライアントに殴り込みに行くって聞こえたような......」

 

「......どうせ契約破ったんでしょあっちが。ボスに喧嘩を売るそいつらが悪いよ」

 

「直ちにとのことだった。すぐ向かう。別に姫は残ってもいいが」

 

「ううん、私も行くよ。ボスのためだし」

 

「......それに4人でやった方が早く片付くでしょ。リストに載ってた事務所、それなりにあったし」

 

「世界はこんなにも残酷なんですね。でも仕方ないですよね。ボスの命令は絶対ですし。それに終わったら褒めてくれるはず。あと美味しいご飯とか奢ってくれますよね、えへへ……」

 

「......ボスに仇なすものは全て私たちの敵だ。例えそれが世界の神だったとしても」

 

 

 

「_____"請負屋デウス・エクス・マキナ"、出るぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「......ゼン、急用で来れなくなったって」

 

「えぇぇ!! 折角ゼンくんに会えると思ったのに〜!」

 

「えっ、そ、それは、残念ね......でも先輩がスケジュールをズラすのは珍しいわね。何かあったのかしら」

 

「も、もしかして、揉め事、ですかね......」

 

「予約してるお店自体はゼンが既に支払いは済ませてるらしいけど......」

 

「どうするアルちゃ〜ん? ゼンくんいないけど。私的にはゼンくん来ない時点で萎え萎えーって感じ」

 

「うっ、でも先輩が折角支払ってくれているのに行かないっていうのは......」

 

「アル様......ゼン様をた、助けに行った方が......」

 

「______それは駄目。ゼンはそういうの求めてないだろうから。それに最近ご飯ちゃんと食べれてないよね? だからゼンのためにもお店には行こ」

 

「ううっ、で、でも…..」

 

「社長、もし厄介事があったとしてもそれを対応するのはあの”神避ゼン”(・・・・・・)だよ? 何も問題ないよ」

 

「た、確かにそうよね……先輩が負けるところなんて想像できないし……行きましょうか」

 

「ちぇー、ゼンくんに会うのお預けかー。あとでモモトーク送ろー」

 

「あ、アル様が行くのでしたら、い、行きます……! あ、爆弾(グレネード)は勿論使いませんよ……ゼン様に怒られてしまいますので…….」

 

「うん、その方がゼンも喜ぶよ……色んな意味で」

 




後日、学園都市キヴォトスから一つのヤクザ組織が帰ることになった。
なお、故組長邸宅にはヘリが突っ込んでいため、現場は地獄と化していた模様。

あと神避(かむさり)になります。
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