機動戦士バイファム   作:EINGRAD

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第十一話 衝突

 第一次サイド3攻防戦。

 圧倒的な質量の機動要塞を前面に押し出し、その周囲を艦隊で取り囲んだククトニアンの軍勢が侵攻して来たのが発端となった。

 敵進行方向は外惑星方面からサイド3を横切り、月の制圧か直接地球侵攻かは意見が分かれていたが確かなのはサイド3に浮かぶコロニー群が壊滅的な被害を負う事だった。

 それに対抗すべくサイド3のジオン軍は全戦力を投入してこれに対応。

 サイド3最終防衛線であるア・バオア・クーの上部を分離し、核パルスエンジンを増設した上でこれを敵機動要塞にぶつける質量弾として運用を行い、機動艦隊はその側方を取り囲む様に布陣し、敵機動部隊による核パルスエンジン破壊を阻止すべく待機していた。

 宇宙世紀0079年12月31日9時30分、サイド3の絶対防衛線に侵入してきたククトニアンの機動要塞に対しジオン軍へ出撃命令が下された。

 ア・バオア・クーの核パルスエンジンに火が灯された。

 巨大な凹面の城壁の衝撃に干渉するバーニアの前面に核燃料ペレットが射出され、設置された強力なレーザー加熱器によって一瞬で臨界を超えた核燃料ペレットは核融合反応によりその莫大なエネルギーを放出した。

 放出される衝撃波と放射線、そして熱量に耐えたバーニアはそれらを推進力に変換し巨大な岩塊を前方へと僅かに推し進めた。

 発生したガスと熱量が拡散すると続けて核燃料ペレットが射出され同様に核爆発を起こして推進力に変えてゆく。

 これが短期間で繰り返され、ア・バオア・クーの後方は核パルスと放射線が渦巻く地獄の様な環境になる為、周りを取り巻く艦隊は人体に与える影響から逃れる為に前面と側面に展開しア・バオア・クーの進行速度に合わせて敵機動要塞へ向けて加速していった。

 ここでククトニアンと地球人の文明の進み具合が違う事があからさまになった。

 ククトニアンの機動要塞は現地点から太陽と地球と月の重力をほぼ無視して地球の公転速度に合わせて一直線に進んでくるのに対し、ア・バオア・クーの描く軌道線は地球の重力に引かれる公転速度を加速する事によってより高高度へと移動する遷移軌道へと送り込む方法しか採れない。

 それは正面から直進して来る物体に対し横を向いて曲線を描いて狙い撃つ必要がある為、随時軌道変更が必要になるのだ。

 敵機動要塞に座する敵司令部は要塞同士の撃ち合いを嫌ったのか、早々に守備に就いていた艦隊をア・バオア・クーに向けて出撃させた。

 キノコ型をしたXU23a中型輸送機を従えた大型宇宙戦闘空母が群れを成し機動要塞から先行し、ある程度の距離まで接近してくる。

 ジオン軍の迎撃艦隊司令官であるコンスコン少将はア・バオア・クーに設置していた無人ロケットランチャーを起動する様に座乗するチベ級重巡洋艦から命令を下した。

 

「良し頃合いだ。ア・バオア・クーに設置して置いたビーム攪乱幕ミサイルを発射せよ」

 

 ア・バオア・クーの表面に無数に仮設してあったミサイルランチャーから大量のビーム攪乱幕ミサイルが敵艦隊方面に射出されると近距離から中間距離で自動的に起爆し、ビームを吸収、反射しビームの直進を攪乱する粒子が宙域にばらまかれる。

 これにより最大でも重巡洋艦しか持たないジオンの艦隊が砲雷撃戦で打ち負ける可能性を減らす為である。

 一応ジオン軍にもジェイナス号の搭載兵器である『ニュートロン・バズーカ』を基にした大型メガ粒子砲『ヨルムンガルド』が開発されているのだが、取り回しが不便な為に首都コロニー防備用としてサイド3にて防衛線に配備されている。

 展開されたビーム攪乱幕をみてピケット艦を先行させて試射を数発試みたククトニアンの艦隊だが、ビームの減衰が激しく効果が薄いとみたのかARVの発艦を開始した。

 空かさずコンスコン少将は自軍の機動兵力の対応を決める。

 

「全艦モビルスーツを発艦せよ。敵機動兵器を近寄らせるな」

 

 異形の機動兵器が群れを成して接近してくる中、ジオン軍の中で実力を伸ばしてきたエース級(実戦未経験の為)のパイロット達が手ぐすねを引いて待ち受けていた。

 ジオンの艦隊の中核を成すムサイ級軽巡洋艦のモビルスーツデッキにはパイロット達が既にコクピットに就き、出番を待っている。

 

「さて、我々の機体が高機動の敵ラウンドバーニアンにどれだけ通用するかだが。皆、ザクマシンガンの弾倉は新型の弾丸に変更済みで有る事を確認しろ」

 

 赤いパイロットスーツに角付きのヘルメットを着込んだシャア・アズナブル少佐は、パイロットスーツ、最近はモビルスーツに対応する形でノーマルスーツと呼ばれる宇宙服の生命維持装置を搭載したバックパックを座席のアタッチメントに装着し、全天周コクピットとリニアシートで構成される新型のコクピットに身体を固定した。

 連邦の規格品を使用出来る設計のハイザックに連邦から流れてきた新型コクピットの耐G設備はシャアの操る機体のポテンシャルを十二分に引き出させ、赤いハイザックの機動性能をラウンドバーニアンに匹敵する運動性能を実戦で使用出来る迄になった。

 機体自体にザクⅡには無い肩部のスラスターを始めとするロケットモーターが増設されていて、元々パイロットの安全性を考えなければ充分な性能を持っていたのだ。

 現在では全天周ではなく半天周位のモニターにリニアシートを備えたジオン製作のコクピットをMS-106ハイザックのみならずMS-06FZにも換装しつつ有り、ジオン軍全体の性能改善を始めていたが、期間が短く未だに旧来のコクピットのMS-106ハイザックやMS-06FZザクⅡ改の姿も多い。

 因みに連邦軍のGM-79ジムにリニアシート改修を加えた物はGM-79R、ジム改と呼ばれており、正史のジムⅡに相当する。

 兎に角、MS第1.5世代とも云えるモビルスーツに進化した事により漸くラウンドバーニアンに互する機動能力を持ちつつあった。

 とは云え現在の機体性能はやや劣勢であり、同程度の戦力規模のARVとの戦闘は推奨されていない。

 なので手数を多く、弾幕を以て敵を迎撃する方針は変わっていなかった。

 そこで打たれた手が旧来のザクマシンガンの弾頭を貫通力の高い新型に切り替える事により弾幕の強化を行う事だった。

 連邦のジムは電気回路の都合上強力な威力を持つビームスプレーガンを1秒間に1発撃つ事が出来たが、ザクマシンガンは機械的な構造で1秒間に10発以上の弾丸を放つ事が可能なのだ。

 もちろん1発命中しただけでは敵機を撃墜出来ないだろうが数打ちゃ当たるの精神で兎に角弾幕を張る事で敵の行動を阻止する方針が採られた。

 この戦法は連邦にも逆輸入する事でGM-79ジムの携帯武器をビームスプレーガンから90mmブルパック・マシンガンに持ち替える事で弾幕効果を向上させている。

 

「こちらデニム曹長、武装確認オールグリーン」

「ジーン伍長、こちらも大丈夫です」

「スレンダー伍長、問題ありません」

「こちらアンディ少尉、アポリー小隊全機異常なし」

「こちらリカルド少尉、ロベルト小隊全機異常有りません」

 

 シャア少佐が率いるモビルスーツ部隊はシャア少佐を頂点にシャア少佐麾下のアズナブル小隊・MS-106ハイザックとデニム、ジーン、スレンダーのMS-06FZが3機、アポリー小隊ロベルト小隊はMS-06FZがそれぞれ4機づつの計12機が所属している。

 全機コクピットをリニアシート化改修しており、ジオン軍のMS隊の中でも優遇されている。

 因みにリニアシート改修前の機体をMS-106A、回収後の機体をMS-106Bと呼んでいる。外観上の変化はほぼ皆無だが、機動性能は段違いに向上していた。

 シャア麾下のモビルスーツ隊はそれぞれが基本兵装のザクマシンガンを構えていたが、アズナブル小隊のMS-06FZはキャノン装備に改修されている為に背部キャノン砲と両腰に対空2連速射砲が増設されていた。

 その他大型目標対処用にパンツァーファーストを装備と実弾兵器てんこ盛りの武装を行っていた。

 この時代のMSの機体のエネルギーキャパがビーム兵器を運用するには微妙に低く、敵ARVがほぼビーム兵器を使用しているのに対して遅れていると見られていた。

 敵の機動メカにはARV-Gドギルムが近距離ミサイルを積んでいる以外の実弾兵器は廃れている。

 よってビーム攪乱幕の中を突っ切る敵機動メカと艦船は尋常で無い速度でこちらに向かっているのが観測されていた。

 それを冷静に観測したコンスコン少将は麾下の艦隊に指示を下す。

 

「全艦、対艦対空ミサイル発射準備! 悪いが向こうはまだ撃てない! 撃てっ!」

 

 ムサイ、チベ各艦からそれ程多いとは云えないが対艦対空ミサイルが射出され、未だにビーム攪乱幕の中にいる敵艦や機動メカに襲いかかる。

 機動メカ、ARVは高い運動性で誘導ミサイルの追撃を振り切るが、対艦ミサイルの目標は投影面積も広くそれ程機敏でも無い為に大多数が敵艦に殺到する。

 だがビームが攪乱するとは云え至近距離ではビームの威力も拡散し切れずに、また熱量を吸収した粒子がバリアーの様な役目を果たしてしまい被弾した数はそれ程でも無かった。

 しかし、ビーム攪乱幕と云う手段を取り、実体弾を使用してきた地球人に対して『骨董品を使いおって、野蛮人め』と敵軍指揮官は憤慨していた。

 低度の被害を受けたが意気軒昂な敵ククトニアンの艦隊は機動兵器を帯同したまま戦場へと突入してきた。

 機動メカで勝負の決まる戦術ドクトリンを持つククトニアンの戦術的には正しく、そして大艦巨砲主義の連邦と戦うべく鍛え上げられてきたジオン軍の最も得意とする超接近戦が開始された。

 

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